概要
本作のダークヒーロー。
主人公・孫臏たちクーフェンツおよび斉の宿敵である匈奴(きょうど)族全体のリーダー(首長)であり、狄戎(てきじゅう)の統率者。匈奴19種族のうちの屠各(とかく)種の族長でもあり、先代の屠各種の長(大人、たいじん)・鞮頓(ダイトツ)と、現在の副官であり、実の祖父でもある赤沙(せきさ)種大人(族長)・喘突(ゼントツ)の娘・テシクとの間に生まれた混血児。同じく妹にテノウェルデ(通称「テノ」)がいたが、母と共に故人となっている。
顔の左半分が剥がれているのが特徴で、目は乾いている。己の欲望に忠実であり、本能のまま戦を求め続ける戦闘狂。匈奴・狄戎全体のリーダーでありながら先頭に立って敵軍の大将を討ち取ろうとする。
呼び名
通称は「単于(ぜんう)」。これは、自身が屠各種の長および匈奴を統べる存在となった暁に、それまでの「大人」に代わって用いた、「天の子」を意味する「撐犁孤塗単于(とうりことぜんう)」の称号である。ほかの首長からは「冒曼単于」の敬称で呼ばれる。
来歴
先述の通り、ダイトツと、彼の第一夫人・テシクの間に生まれ、後に妹のテノが誕生する。
だが、父のダイトツが捍蛭(かんしつ)種大人・デグメの娘で第二夫人・ハバンとの間に冒曼の義弟・ハギルが誕生し、捍蛭種と盟約するとテシクと、彼女の子供たちが命を狙われ、母は自ら死を選び、彼女の遺言通りに冒曼はテノと生き残る決意をする。そのため、冒曼はハギルの戦者になることで命をつなぎ、やがて自身の実の祖父・喘突率いる赤沙種族との戦に臨む。結果、瀕死に追い込まれて敗北したが、死体の中に埋もれて死んだふりをしていた。その後、薄れゆく意識の中でテノに救われ、目が覚めるとダイトツの幻影に怯え、彼女を犯してしまう。
その後、赤沙の血を引く自分たち兄弟が気に食わないというデグメに、ダイトツは冒曼に「お前の顔の皮膚をはがし、氷漬けにしたセルワ(テノの友達)をテノと偽ってデグメに送る」と言われ、父の言うがままに大人しく顔の左半分をはがされる。しかし、その直後にテノの死体を見て激怒し、死んでいる理由(ハギルがテノをモノにすれば赤沙との裏の盟約になったかもしれない、使えない娘だった)を聞かされた挙句、その隙をついて殺害されそうになるが、テノの死体を盾にして目を潰し、返り討ちに追い込み、惨殺。その後、テノの腕に付いていた「赤沙の腕輪(テシクの形見)」を持ち、ダイトツ殺害の現場を目にしたハギルと手下に追われる形で、北方にある赤沙の邑に軽装かつ単身で乗り込む。
そして、ようやくたどり着いた冒曼は、実の祖父・喘突と対面。ダイトツを殺したことで自分に兵を貸すように要求するが、「先の戦いで部下が殺されたから貸しても従わない」、「テシクの仇でもあるダイトツの息子だから」と要求に応じなかった。しかし、「命はいらない」、「自分は天の子だ、妹のテノがそういった」と言う言葉に刺激されて、その気迫から「将来は匈奴の全ての王になるだろう」、「ハギルとデグメの軍団を統べて屠れば生涯副官を務める」と約束し、ハギル率いる屠各種の幹部および義母・ハバンを斬首し、ハギルの手足を切断、目を潰し吹雪の中に放置。その後、デグメ率いる捍蛭種も全滅する(デグメ本人は喘突が討ち取った模様)。
その後、各国を征服し、やがて頂点に立つが、ダイトツの所業・テノの死というトラウマに苛まれ続けており、「だれか自分を殺してくれ」と言わんばかりに戦を求め続けた結果、稀代の天才軍師・孫臏の存在を知ると、匈奴族を集めて斉を襲撃。
総評
紛れもないラスボスである彼だが、彼がいなければ奴隷だったギュチが渾庾(こんゆ)族の族長になるきっかけ(全族長は殺害)を作ることも、同じく奴隷同然の一族だった儉胡(けんこ)族の大人・ゼムが捨て身で大活躍して一族に報いることもなかったため、冒曼が活躍しなければ救われなかった人物たちも少なくなかったため、ダークヒーローとしてストーリーの影の立役者としても魅力を感じるところであろう。
関連タグ
冒頓単于 - 実在した人物。父を殺して単于になったなどの点が共通している。
谷豊 - 実在した人物。妹を殺されて激怒し、義賊の頭目になり英雄となった点が共通している。