「冴・凛(おれたち)2人で世界一になるぞ」
概要
冴凛とはブルーロックに出てくるキャラクター、糸師冴×糸師凛の非公式BLカップリングである。
本編の絡み
単行本17巻までと「小説ブルーロック戦いの前、僕らは。千切・玲王・凛」の凛のエピソードのネタバレを含みます。
幼少期時代
当時8歳の頃から冴は幾つものトロフィーや賞状を獲得していた。そして、天才サッカー少年として冴の名は世界から注目された。また、この当時6歳の凛はまだサッカーはしてない。
この頃から自己中心的で他人に対して無愛想な態度を取る冴は、テレビのインタビューにも「うるせー」 「黙れ」 「俺の勝手」の三言葉で勝手にインタビューを切り上げ、傍に居た凛に声をかけ一緒に帰宅する。
その帰宅途中、冴から凛にアイスを食べるかどうかを尋ねる。その冴の問いかけに凛は食べると返事を返した。そして、冴のお小遣いにて自分の分と凛の分のアイスを買ってあげる。そして、アイスの袋を開けて中身を取り出すところまでしてあげている描写もある。
その際、凛が食べていたアイスの棒が『あたり』で自分が『はずれ』だったのを少し気にしている描写も見受けられる。
冴が凛にアイスを買い与える描写は他にも複数あり、小説には『いつも駄菓子屋で凛に買ってあげる』と書かれてあり、その冴の行為に対し凛の方は『冴が買ってくれるなら、アイスでもチョコでも、凛は何でも好き』と書かれている。
このことから読み取れるように、当時から兄弟仲はかなり良かったと判断しても過言ではない。
因みに、筆者にも一人姉がいるのだが、何かを奢ってもらった、買ってもらったことなど全く無いことから、糸師兄弟の仲の良さがうかがえる。
当時の凛はまだ、サッカーよりも戦隊ものの人形で遊ぶことに興味があり、冴の試合を見学にも人形を持って行き遊んでいたが、何時の日か凛はあんなふうになれるかな……と思うようになり始めたその試合で、冴が山なりの放物線を描いたパスを放ったが、チームメイトは誰もそのパスに届かない……と思ったところに、さっきまでフェンスの外に居た凛が突然飛び出してダイレクトシュートを放つ。
この瞬間、凛の中に眠っている『ストライカー』の才能を冴は見抜いたのではないかと推測できる。
凛が打ったボールはゴールネットの中に入るが、着地に失敗した凛は地べたに倒れる。チームメイトは突然飛び出して来た凛に怒りをぶつけるが、冴がその言葉を遮り凛の元へ厳しい顔をしながらやって来る。厳しい顔をしている冴を見た凛は、謝罪を口にして弁解をしようとするがそれよりも早く、冴が凛の頭をわしわし撫でる。この時には、既に厳しい顔から普段の顔に戻っている。
そして凛の頭を撫でながら、凛の行動を褒め自分とサッカーをしろと言う。
これが凛がサッカーを始めたきっかけであり、冴と凛。二人で世界一になることを目指す始まり。
冴渡西前~ナイトスノウ前
凛は冴と同じ鎌倉ユナイテッド・ユースのチームに所属。
クラブチームのジュニアユースカテゴリでの試合にて、冴とのコンビネーションで相手チームを振り切り、冴からタイミングバッチのラストパスを貰った凛は迷いなく打ち抜きゴールを決める。しかし、冴から出た言葉は厳しい言葉だったが、凛は素直に聞き入れる。そんな凛に対し、冴はもっと上のプレーを要求しソレができるかどうか凛に尋ねる。その問いかけにも凛は何の迷いもなく了承の返事をする。
そして、次のプレーにて冴のリクエスト通りのプレーができるということを証明する凛。
このことから、自分よりもサッカー歴が短い凛の実力を冴が認めていることが断言できる。凛の方は読めばわかるので割愛。
帰宅途中、夕方の海が見える堤防にてお馴染みの棒アイスを2人で食べる。
その時、冴から何を考えてサッカーをしているのかの問いに、凛は冴の質問の意図がわかっていなさそうだが、質問の内容はわかったため返事を返す。その返答の中にあった『ヤバい方』の言葉に引っ掛かった冴は、再度その部分を凛に尋ね、凛から返って来た返答に無言の冴の顔アップの一コマが描写される。
このことから、U-20の試合で見せたFLOW状態の凛がこの当時から存在していたのではないか。凛はまだ、自身自分のプレースタイルを理解していないが、冴は凛のプレースタイルを理解しているのではないか。だから、冴がそのあとに言った『直感に頼り過ぎ』の言葉は、今の凛のプレーに適応できる人材は自分以外いない。そんな自分がスペインへ行ったあと凛が今の感覚のままプレーをすれば、周りは付いて来れず、必然的に凛が周りの実力に合わすしかなくなり結果、冴が認めた凛のプレースタイルが消えるのを恐れて忠告したのではないかと推測できる。
その後、凛に対し自分がいなくなったらどうすると尋ねる冴。その言葉に、冴の代わりを探すと言う凛にそんな奴いるかと否定の言葉と共に足蹴りする冴だが、改めて自分が世界一のクラブであるレ・アールの下部組織でサッカーする旨を告げそのあと「先に行くだけだ。お前も来い」 「俺がいない間諦めんなよ」と凛に言っていることからも、自分がいなくなったあと凛がぶち当たる壁を想像して心配している。
凛の方も、小説にて冴がいなくなって自分はどう戦えばいいかちょっと不安になっていると書かれている。因みに、凛の口から冴がパスを出してくれるからいい。他の奴らじゃ物足りないと言っているも描写ある。
そして「冴・凛(おれたち)2人で世界一になるぞ」と片手のハイタッチで発破をかける。
冴がスペインに旅立つ日。
凛のモノローグにてはっきりと、冴がスペインに行くのを寂しいと書かれている。
両親が手を振り声をかける中、凛が空港中に響き渡るほどの大声で「兄ちゃん。いってらっしゃい!」と笑顔で言えば、冴は振り返り「いってきます。"世界一のストライカー"になるために」と言った。その際、小説には『弟の凛にだけ見せる冴のほほ笑み』と書かれている。
このことから、冴と凛の間には誰にも入れないほど深い絆で結ばれていることがわかる。
ナイトスノウ
冴がスペインに行ったあと、凛は冴との約束を糧に1人のサッカー生活が始まった。
冴がいなくなったチームでプレーする凛にとって、その場所は窮屈で不自由だった。しかし、凛には冴との約束のため負けられない。試合に勝つためにはどうしたらいいかを考えた結果、凛は冴の代わりになることを選んだ。その選択肢を選んだ詳細は、小説の『エース』の章を読んで頂ければわかるので割愛。
凛が冴の代わりを務めればチームは勝てる。
凛がシュートを打ってゴールを決めることよりも、チームが勝つことを優先した。自分で選んだことだが、凛の気持ちは冷めていた。しかし、冴に追いつくために凛は自分を殺しチームのために尽くし、その結果、凛が貰うトロフィーは増えた。だからこそ、凛は自分の選択が間違っていない。これで冴に追いつけると信じて疑わなかった。この部分の詳細は、小説の『自分を殺してでも』の章を読んで頂ければわかるので割愛。
凛が中学三年の頃、日本クラブユース選手権(U-15)大会決勝戦。試合内容の詳細は小説の『決勝戦』の章を読んで頂ければわかるので割愛。
結果、凛のシュートが決まり鎌倉ユナイテッド・ユースは優勝し日本一に輝いた。けれど凛の生活は特に変わらず、クラブの練習が終われば、1人でシュート練習に励んだり、凛の好きなホラー映画を見たり。ある日のそんな最中、凛が一人シュート練習をしていたところ、夜空から雪が降る。小説では、鎌倉では珍しい雪に見入っていた凛に冴は背後から声をかけ、この時の冴の表情は空港で別れた時と比べて険しく、隈がありひどく疲れたように見えるという描写。冴は空港から直で凛のもとへ来てくれたという描写がされている。
冴は、凛がこの時間は一人でシュート練習に励むことを知っていた。 疲れていたのにもかかわらず、凛のもとへ来た。という解釈ができる。
冴の表情に戸惑いつつも凛から冴に話しかける。何回か、言葉のキャッチボールをしていたところ、冴から本題を切り出した。
冴の口から「世界一のストライカーじゃなく世界一のミッドフィルダーになる」という言葉が出る。いきなりそんなことを言われて余計に戸惑う凛の口から「勝手に決めんなよ……!!一緒に戦おうって言ったじゃん……?」と冴に考え直すよう説得の言葉が出た。
その言葉に対し、冴は「だから俺がミッドフィルダー。お前がストライカーとして世界一に――……」と言葉にしているが、物凄い剣幕で凛が被せてきたため冴の続きはわからない。わかる範囲で読み解けば、自分はストライカーの夢は諦めてミッドフィルダーとして凛と一緒に世界一になるぞといいたいのではないかと推測できる。つまり、冴にはまだ凛と一緒に世界一になるという夢は捨てていないことの裏付けでもある。
が、凛はそのことに気づていないのか頑なにその言葉を否定し「俺が一緒に夢を見たのはそんな兄ちゃんじゃない」とハッキリと口に出す。
そんな凛の言葉に、冴の悲痛な表情の一コマが描写されている。凛だけには自分の思想を否定して欲しくない。または、凛に必要とされていたのはストライカーとしての自分であり、その夢を諦めミッドフィルダーとして生きていく自分は不要と切り捨てられたことにショックを受けたのか。この一コマで色々な解釈ができる。
その後、冴は凛に1on1を申し込む。凛が勝てば凛の望み通りもう一度同じ夢を見る。冴が勝てば冴と凛の夢はここで終わり。という条件でのモノだった。
ここから推測するに、凛の夢は冴が"世界一のストライカー"になり、自分が"世界二のストライカー"になってW杯で優勝することであり、冴の夢はどんな形であれ凛と一緒に世界一になることで、お互いの夢に違いが発生している。因みに、凛の夢に関しては授業参観で『将来の夢』について作文を発表している描写から抜粋。
そして「冴・凛(おれたち)の夢はここで終わりだ」の冴の台詞は『冴・凛』の順番である。
冴の先行でスタートした1on1。冴が繰り出した『二段接触』 『魔法外旋回』 『また抜き』で凛を抜き、冴がゴールを決めた。
結果、冴の勝利で1on1が終わったかと思えば、凛は地面に座り込み「兄ちゃんの代わりになれるように……チームのために戦って……」 「サッカーをする理由が……俺には無いよ……」と泣き言を吐露する。その言葉のあとに、無言の冴のアップが描写される。
この描写から、凛を自分の夢から解放させようと決断した、凛は冴と違ってサッカーしか知らなわけでもなかったため、凛に世界で経験する辛さを味わわせない為に、サッカーに誘った自分ができる最後の役割だった等と解釈できる。
現に、このあと冴の口から今の凛を否定する言葉が次々と出る。
ただ、ナイトスノウはあくまでも凛の目線で書かれているため冴の思考がわからない。よって、本気で凛を否定しているのかどうかわからない。そのため、この部分の冴目線の話が出るのを私達は戦々恐々しながら待っているのだ。
その後、凛は青い監獄から招集を受ける。凛は冴をぐちゃぐちゃにするため、冴の夢を壊すためサッカーをする。
このことから、凛から昔よりも一層大きい感情の矢印が冴に向けられていることがわかる。冴から凛に向けられる矢印については、U-20日本代表戦で記載。
"青い監獄"二次選考
二次選考の3on3にて、自分以外の選手に興味がないことはセンターラインからのシュートにて一点を奪ったあと、時間のムダだと言っていることで証明されると同時に「糸師冴を潰すことが俺のサッカーの全てだ」と豪語しており、凛が冴しか眼中にないことが証明された。
また、凛の口から『サッカーは殺し合い』の言葉が出た理由として、ナイトスノウで冴に負けたことが関係しているのではないかと推測できる。何故なら、冴との1on1で凛が勝てていれば、凛の夢は終わることなく冴は凛と同じ夢を見てくれる。世界一のストライカーを目指す冴に必要とされる。凛にとっての『存在意義』を奪われることはなかったから。
U-20日本代表選までの間で、凛が冴しか見ていないことを裏付ける台詞を一部紹介。
「俺は兄貴を……糸師冴を潰すためだけにサッカーをやっている」
「俺が勝ちゃ解決するだけの、不自由で良好な関係だ」
「俺がこの瞬間をどれだけ望んだか」
他にも台詞だけではなく描写のみのもあるが割愛。
このことから、凛は終始冴のことしか頭にないのは明白である。
U-20日本代表戦
冴がU-20に参加した理由は『"青い監獄"の連中と試合ができるから』であり、冴が"青い監獄"に注目している理由は、冴が取材を受けていた会場で、青い監獄についての記者会見が行われているところを目撃し、その会見で力説するアンリの言葉を聞き青い監獄から生まれるフォワードに興味を持ったことから話が始まる。
一方、この時冴は凛が青い監獄のメンバーに選出されているかどうかの描写は書かれていないが、会見中の『優秀な高校生300人を集めた』と言う言葉は聞いているため、必然的にその中に凛が選ばれている可能性を冴の中で導き出してもおかしくない。ただ、ナイトスノウ後のことであり、凛がもうサッカーを続けていない可能性も冴の中には十二分にある。
しかしだからこそ、冴は凛以上に世界一のストライカーとなり得る存在が青い監獄で誕生するかどうか確認したかったと考えていてもおかしくない。また、冴の中に秘めた淡い期待として凛がまだサッカーを続けていてる可能性を見出し、青い監獄にて技術を磨き、冴が認めたプレースタイルを取り戻しているという可能性を確認したいと考えている可能性も大いにある。
何故なら、この会見を聞く前に取材していた記者の質問に対し『死んでも嫌』 『パスを受けられるフォワードがいない』と返している自己中心的で世界一しか見ていない冴が、掌を返したことになるため。
U-20日本代表選開戦。
前半戦30分頃にて、冴と凛の1回目のマッチアップが始まる。両チームメイトからフォローが飛んで来るが、凛がソレを拒否する。この時『兄弟喧嘩』という言葉を使われたため、ナイトスノウ時に言い合いした件は時効になることなく凛の中で継続していることとなり、冴もまたそのことに気づいた。
そのため、凛の望み通り冴は凛の相手をするが『股抜き』にて凛を抜く。その際「俺の弟でいるうちは――お前は俺を超えられない」と語っているのは、元々の凛のプレースタイルを引き出そうとしてわざと凛を煽っているようにも見える。
1回目のマッチアップは冴に軍配が上がる。
前半戦アディショナルタイム1分。冴から閃堂に出されたセンタリング。ソレに割って入る凛。高く打ち上げたボールは冴のいる場所へ落ち、冴がそのままシュートを打つシーン。お互いがお互いの思考を読んでいるのがわかる。
休憩時間。
U-20日本代表選手のロッカールームにて、シャワーを浴びて来た冴は保湿しながら、帰る宣言する。そして、冴は自分がここに来た理由を話す。その際、冴の回想シーンにて最後に凛が難易度が高いシュートを決めてガッツポーズするシーンが映し出された。このことから、冴は未だ凛のことを気にかけている。
その一方で、その時の冴の表情は哀愁が漂っているようにも見える。自分を押し殺したプレースタイルから、本当の凛のプレースタイルを自分じゃ取り戻せない、だが確実に凛の技術は青い監獄のおかげかどうか判断はつかないが、上がっているのはあのシュートでわかったからではないかと推測できる。
後半戦開始。
士道登場で早々に絡まれる凛。お互い煽り文句を口に出すが、士道の口から『お兄ちゃん大好きっ子』が出てくる時点で、青い監獄のメンバー全員に凛が冴のことを大好きなのは周知の事実だと言っても過言ではない。
後半戦ラスト15分。冴のプレーによりゲームレベルを上げられる。烏と馬狼に挟まれても難なく二人を抜く冴に対しスライディングしてボールカットを必死に喰らいついて狙う凛。そんな凛を一瞬見る冴の表情の一コマから、後半残り15分で数人はFLOWに入っている中、まだFLOWに入り切れていない凛に対し失望が見て取れる。その一方ではまるで、自分の高度なパスだけでは凛をFLOWに入らせることは無理なのか、と自分にも失望しているようにも解釈できる。
冴のボールを取れない凛。一瞬ナイトスノウ時に感じた負の感情が下りてくるが、自力で振り払い冴の背中を追いかける。冴のことを一心不乱に考え、冴と同調する。次々と凛から冴の情報が落ちてくる最中、少しずつだが確実に凛は無意識にFLOWに入る準備をしているように見てとれる。その裏付けとして、誰も止められない冴から士道へ向けたクロスパスを凛は止めた。そして、今の動きは青い監獄で見せていた凛の動きではなかったと潔が考えているシーンも存在する。
士道のパスを止めた凛に対し冴が驚く一コマがあるがそこから、凛が冴と同調していることに気づいていない可能性を上げる。冴は、自分のプレースタイルや真髄を凛はきっと気づいていない。渡西前に冴の代わりを探すと言っていた凛の言葉から、凛が冴に向ける感情の矢印は、冴が凛に向ける感情の矢印よりも小さく短いと思っており、凛は自分に一定の興味しかないと思っているのではないか。だから、凛が止めた際驚いたのではないかと推測する。
しかし、凛が冴に一定の興味しかないわけがなく、愛空から『自己中主将』と煽らわれるも『糸師冴(ジコチュー)の弟』だからと煽り返している。
残り時間5分。凛は頭を使って冴のパスの場所を導き出すが読み負ける。が、潔がフォローが上手くハマったことにより、攻守へ変わり敵陣へ走る選手たち。そんな最中、とうとう凛がFLOWに入った。
氷織のボールを奪う凛。雑念を振り払い、自分を壊すことを理解した凛は、舌を出す。その凛を見て驚く冴。もう舌を出す凛は見れないと冴の中で確定していたことがこの一コマでわかる。
舌を出した凛は、日本代表メンバーの得意なステージで戦い潰していく。音留には『加速』蛇来には『裏』仁王には『重心』
このことから、冴のサッカーの"真髄"である『美しく壊す』は、凛の"真髄"と真逆の『醜く壊す』であることが判明し、凛の醜く壊すスタイルは、他者から見ても狂っていて冴が計算から導き出せないスタイルであり冴が認め、求めている凛だといっても過言ではない。
この時点でわかる通り、凛の醜く壊すスタイルが冴が求めているストライカーであり、冴が何故士道を選んだのか、凛は『誰も扱えなかったから士道を選んだ』と思っているが、FLOWに入った凛と一番近く類似しているプレースタイルが士道だったから選んだのでは、と推測できる。
士道や愛空に邪魔されながら凛がシュートを打つが外れる。そのこぼれ球を拾ったのは冴。その際お決まりに近くなっている「ぬるい」発言をするが、今のところ凛にしかぬるいと言っていないところからしてみても、冴が言う「ぬるい」は特別な意味があると深読みできる。
アディショナルタイム1分。潔、馬狼、凪を抜く冴の前にFLOW状態の凛が立ちはだかり、冴と凛の2回目のマッチアップが始まる。その際、冴の口から「ベロ出してヨダレ垂らすそのクセ……まだ治ってねぇのか」と出て来たことによって『クセ』と指摘されるくらいには凛は過去、冴と一緒にサッカーをしていた時にFLOWに入り舌を出しながらプレーしていた事実が発覚した。
そのあとも、凛を煽る言葉を淡々と吐く冴はジッと何かを待っているように見て取れる。その証明として、さらに覚醒した凛を見て「何だお前、まだその表情できんじゃねぇか」と言っている。つまり、凛に煽る言葉を言っていたのは、全てこの凛を引っ張り出すためだったと言っても過言ではない。
このあと、会話なしの1on1のシーンでお互いがお互いのプレーを喰う。そして、冴と凛の2回目のマッチアップの軍配は凛にあがった。なんと、冴が繰り出したのはナイトスノウ時に見せた『二段接触』 『魔法外旋回』 『また抜き』であり、凛が止めたのはナイトスノウ時に抜かされた『また抜き』だった。
凛にまた抜きを止められフリーズする冴。凛に止められるとは思っていなかった、凛の成長を実感した瞬間でもあったと思われる。
凛が止めたボールは山なりに弧を描き、最終的に潔がダイレクトシュートを決め、4対3で青い監獄の勝利となる。
試合が終わり、コートに座り込んでいる凛に冴から声をかける。この頃には、FLOW状態の凛から何時もの凛の表情に戻っていた。
冴は日本サッカーを甘く見ていたことに対して軽く謝罪を口にしたのち「お前の本能を呼び起こし、日本のサッカーを変えるのは潔世一。あのエゴイストなのかもしれない」と続けた。その冴の言葉に絶望の表情を浮かべる凛の一コマから、冴の言葉を勘違いした可能性が濃厚である。
冴は、醜く壊すプレーをする凛を求めており、そのプレーを引き出せるのは自分だけだと思っていたが、この試合で自分ではなく潔だと判断して言った言葉で、潔は凛のFLOWを引き出すだけのトリガーとしか認識してないのではないか。今後、そのトリガーが自分にもあれば潔は不要だと内心で考えていると推測する。あくまでも、冴は凛と二人で世界一を目指しているのだから。
一方で、凛は試合中さんざん罵倒に近い煽り文句を冴の口から聞かされ、試合には勝ったが冴が見ているところで潔に負けて、冴に今以上に幻滅されたと凹んでいるところにあの言葉を冴の口から聞かされれば、自分は本格的に捨てられ潔は冴に認められたと考えてもおかしくない。
もちろん他にも、このシーンで色々な解釈はできるが変わらないモノはただ一つ。冴は凛しか見ていない。コレだけは揺るぎない事実である。
このことから、冴の欲しがった"エゴイスト"は結局、醜く壊すスタイルを持つ凛だけだったことがわかる。つまり、冴からも十二分にデカく長い感情の矢印が凛に向けられているのは明白だろう。
余談
・冴と凛のカラーはカラーチャートで見ると補色の関係。
・冴と凛は冴がスペインに行くまで、同じ部屋で過ごし同じベットで寝ていたことが小説にて断言されており、単行本にはそう捉えられる描写されている。
・ストライカーとして凛を育てて作ってくれたのは冴と小説に書かれている。
・凛がホラー映画が好きになった理由も冴が関係している。詳細は小説の『ホラーの理由』