背景
広島県竹原市に属する大久野島は、瀬戸内海に浮かぶ芸予諸島の一つであり、戦前には太平洋戦争で使用する血液剤、催涙剤、びらん剤、嘔吐剤に用いる毒ガスの製造拠点となった。
この不名誉なイメージを払拭すべく、戦後になって島のマスコットとして生きた愛玩動物を移入する計画が持ち上がった。1971年、島外の小学校から8羽のウサギを移入し、放し飼いにした結果、多頭飼育崩壊と同じ原理で大繁殖し、現在では900羽ものウサギが野生化し、観光客やボランティアからの給餌を頼りに生活している。
大久野島は夜間人口が0であるために広義の無人島として扱われるが、ウサギだらけの島として国際的に有名な観光スポットとなっており、連日国内外からウサギを目当てに多数の観光客が押し寄せる。ウサギも餌付けにより人馴れしているため、気軽に触れ合える野生のウサギとして貴重な存在になっている。
事件
2024年11月ごろ、島内でウサギの写真を撮影して生計を立てている40代の夫婦が、複数羽のウサギが骨折などの不自然な怪我を負って死んでいるのを見かけるようになった。夫婦は何者かがウサギに暴行・加虐を以て殺害していると推測。犯人を突き止めるべく、秘密裏に調査を開始した。
逮捕
2025年1月20日、夫婦は傷んだニンジンを手に挙動不審な動きをする若い男を発見した。男は周囲を警戒しながらウサギを餌で釣り、周囲に誰も居ないタイミングでそのウサギを蹴り殺した。夫婦は直ちに背後から飛び出し、動物虐待の現行犯で男を私人逮捕、広島県警に身柄を引き渡した。
動機
犯人は滋賀県に住む25歳の会社員の男であった。犯行の動機について、県警の捜査担当者に「ウサギがかわいくて、いじめたらどんな反応をするのか興味があった」と自供。パラフィリアの一種であるズーサディズムによる陵虐であった可能性が高いと思われ、さらなる捜査の行方が注目される。