概要
避妊、去勢などの適切な手術の実施や、飼育小屋を分けるなどの適切な処置を講じることなく同じ愛玩動物をつがいで飼育した結果、無尽蔵に繁殖し、飼育環境が崩壊してしまう現象。
動物虐待の類型としてはネグレクトの一種であり、ホーディングの一形態でもある。
手に負えないほどに増えた動物は飼育設備に収まりきらなくなり、室内に放し飼いをせざるを得なくなり、糞や尿により衛生環境が悪化。縄張り争いの激化により傷だらけになり、さまざまな病原菌や害虫を寄せつけることにより、飼い主は自宅を放棄することを余儀なくされる。動物はそれでもなお無尽蔵に増殖するため、病気による肉体の部分的死や近親交配による遺伝子異常による奇形などの問題に直面する。
ボランティアによって多頭飼育崩壊から救出された動物の多くは、悪質な衛生環境による感染症への罹患、ケンカや強制的な交尾行動による大怪我やそれらによる壊死、切断、失明、奇形個体の有意な増加など、地獄絵図となっている。
また、現場となった物件も糞尿や吐瀉物、死体により汚染され、事故物件と化すことも多い。
主に繁殖・増殖による飼育環境の崩壊を意味するが、狭い小屋で多頭の動物を飼って自然界以上の不要の殺し合いが起きる現象や、金魚をザリガニと同じ水槽で飼ったり犬や猫の近くに金魚の水槽を置くなどして金魚を死なせてしまう現象など、無意味に生存数を減らす現象と誤認されることもあり、こちらも対策不全という意味では多頭飼育崩壊と大いに関係がある。
原因
多頭飼育崩壊に陥る原因はいくつかあるが、主な例としては
・ペット販売業者などの経営悪化や売れ行き予測ミスから抱え込んでしまったペットが手に負えず、放置されてしまう。
・個人が軽い気持ちで手に入れたペットに対して、適切な対応を取らなかった。
などがある。
経過
個人の愛好家が多頭飼育崩壊に陥る経過の一例である。
①異性個体の飼育の開始
性別の誤認や、安易な気持ちによるお嫁さん/お婿さんのプレゼント、放し飼い中に見過ごした外部での交尾の放置など。
②対策の不存在
単純な知識不足・経済的事情や、「手術はかわいそう」「放し飼いでは野性が育たず、飼い主が見てつまらない」「仲良くしない動物が悪い」という心理からの不妊・去勢手術、放し飼い、広い小屋の使用の拒否。
③繁殖の開始
生まれた子供が性成熟し、複数回の交尾と出産が繰り返され、人の見ていないところで近親交配(兄妹婚など)を行うことで、累代繁殖が起こる。
この時点でも適切な去勢措置を講じようとしない。
④崩壊
一気にねずみ算式に個体数が増加し、短期間で多頭飼育崩壊に至る。
段々増えていって手に負えなくなるケースもあれば、飼い主が倒れたり逮捕されたことなどによって飼育を担えなくなっての崩壊もある。
⑤崩壊後
飼い主の手には全く負えない。
解決の見通しも全く立たないまま飼育を続けたり、ペットごと自宅を放棄し、前記した地獄絵図となる。
悪臭などを原因とした近隣などからの通報でボランティアなどが介入した時点では、多くの動物は死に、生き残りも飢餓や病気で弱りきってしまっている。
⑥介入後
支援団体や役所の介入があっても、後述する心理からペットの引き取りを拒否し、崩壊状態での飼育を無理矢理続けようとする飼い主も多い。
また、多頭飼育崩壊からペットを引き取っていたボランティアがペットの受け入れすぎによって連鎖的に多頭飼育崩壊となってしまうケースもある。
起こりやすい動物
よく多頭飼育崩壊が報告される動物としてはネコが挙げられるが、単位飼育頭数あたりの絶対数としてはそこまで多くはない。そもそも猫を飼う人間が圧倒的に多いため、よく報告されるといった程度のもの。
実際の単位飼育頭数あたりの絶対的な件数が圧倒的に多いのは繁殖力の強い草食系の小動物である。具体的にはモルモットやハムスターなどの齧歯類系やウサギである。
とりわけ、ウサギは多頭飼育崩壊が起こりやすい動物である。
ウサギには月経がなく、交尾の刺激により排卵する交尾排卵動物である。
このため、一回の交尾における妊娠確率は100%である。
さらに、妊娠から出産までの期間が1ヶ月と短い上、子宮が二つあるため、片方の子宮が妊娠中でももう片方の子宮で妊娠が可能なので、スパンとしては半月ごとに妊娠が可能である。さらに、性成熟の期間は生後わずか4ヶ月である。このため、油断するとあっという間に増えてしまう。
さらに、発情期がないため年中妊娠、出産が可能なので、増殖に歯止めがかからない。
ウサギのこの並はずれた繁殖力は、自然界における絶対的な被捕食者である彼らが、命を繋いでいくために身につけた唯一の武器であるが、天敵のいない飼育下においては人の手に余る存在となっているのだ。加えて、外性器の形状が雌雄であまり異ならないため、性別の判定の誤認が起こりやすく(ペットショップでさえよく間違えて売ってしまうことがある)、うっかりつがいで飼育してしまうという事故も起こりやすい。
救援ボランティアには、近年は小学校などからの救援要請も多くあり、本来情操教育目的で飼育されているはずのウサギが、教職員らの知識不足によって、児童に対して「殺処分」という生涯消えることのない心の傷を植え付ける元凶になってしまうという事態も発生している。
多頭飼育崩壊の心理
多頭飼育崩壊に陥る飼い主は、アニマルホーダーと呼ばれており、ある種の精神疾患である場合も多いと考えられている。
自らの飼育を虐待ではなく適切な飼育や保護であると信じ込み、行政や支援団体の介入を敵視する場合も多い。
例えペットを外部で保護されても、こうした精神疾患に対策がないと再度多頭飼育崩壊を繰り返してしまう危険性もあるが、本人に病気の自覚がないため治療や対応は困難を極める。
多頭飼育崩壊と法律
ペットも個人の財産であり、憲法で財産権が保障されていることから、法律で強制的にペットを取り上げることは難しい。
劣悪な環境下での飼育を動物愛護法違反として取り締まることは不可能ではないのだが、取り締まったとしても残されたペットの引き取り手を探さなければならず、事態の解決につながるとは限らない。
その他
人間社会においても、親が無計画に子作りしたり養子縁組した結果、子供の数が多すぎて経済的にも育てきれなくなりネグレクトに陥る事も多頭飼育崩壊に例えられる。
人間は性交で動物程には個体数は増えないが、適切ではない性教育が暴力と別の理由で人間を死に導く問題、「男女七歳にして席を同じゅうせず」の掟を無視した児童虐待、部屋をバラバラにしても異常性欲者の雄が無理矢理雌を襲う問題(雌雄逆の問題もあり、雌をあまり襲わない協調性のある雄も大勢いる)、大人達がそこを注意せずに不必要に恋愛や結婚を促す問題、不要不急の暴力や強姦を「仲良し」と言い変える問題も多頭飼育崩壊に通じるものがある。
人間は社会的な生き物なので「本能」は理由にならず、幼児は共感性と学習能力があり繁殖以外の行動に集中しているので「精神の幼児性」も言い訳にならず、外部の人間ではない家族の一部の人間による合意ではないしつこい性加害も多いと言われ、極論として強姦かつ近親相姦かつ精神疾患かつ望まない妊娠かつ殺人に発展しそうな関係も多いと言われ、家族内の異性全員がその特徴を持つ訳ではないという。
動物の多頭飼育崩壊はいわば乱交状態だが、人間社会では異常性欲者の雄たちを避雷針代わりの雌に一極集中させて他の個体を安全な位置に置こうとする苛め、風俗店と創作物以外で異性をパートナーではなく性玩具や財布(物)として扱わせる誤った教育、協調性のある雄と温和で慎重な雌を悪者にする教育、避妊具を付けない性交を娯楽化して中絶費をケチって自らの手で胎児を殺害する反省の色が見られない犯罪者、奴隷役を増やすために個体数を増やすのを斡旋する独裁者なども問題視されている。
ルッキズム、恋愛、不要な暴力、それを使ったマウントを最重要視して汚れの出来方や風呂の入り方や掃除の仕方や物理科学の知識などをろくに付けさせないダブルスタンダードも近い結果を導く。
ニュースで多頭飼育崩壊が報じられた際に、飼い主の「血統書付きだけがかわいい、不細工は全員死刑」という差別発言が報じられたことがあり、勝手に個体数を増やした飼い主が言っていい言葉ではなく、罪のない動物の子どもを生き物扱いしておらず、人の子を同じ目線で見ているヒトデナシもいるのかもしれない。
2022年現在、世界人口は80億人を突破しており、これは食糧、水、燃料などの地球資源を、自然環境を破滅的に崩壊させることなく十分に行き渡らせることが物理的に可能な限界を大幅に超えているとされる。この状況を形容して、地球を大きな飼育設備、人類をそこで飼育されるペットに例えて、多頭飼育崩壊と同じ状況であると形容する地理学者、環境学者も多い。
関連タグ
ゴミ屋敷・・・アニマルホーダーと同様の原因で発生すると言われている。
法玄・・・『銀牙伝説WEED』に登場するグレートデーン。飼い主の逮捕による多頭飼育崩壊で凄惨な事態になった犬小屋から生き残ったという経歴を持つ。