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小公子

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しょうこうし

バーネットの代表作「Little Lord Fauntleroy」の邦訳表題。アニメ化されたことでも著名。

概要

フランシス・ホジソン・バーネット(1849~1924)の代表作として著名な児童文学作品。

原題は『Little Lord Fauntleroy』(小さなフォントルロイ卿)で、『小公子』の訳題は日本で最初の訳者となった若松賤子によるもの。

1885年から当時のアメリカで大人気の児童雑誌『St. Nicholas』(セント・ニコラス)にて連載され、1886年にニューヨークとロンドンで単行本が出版されるや否や絶賛を博す。

その後50万部を売り上げるベストセラーとなり、バーネットを一躍流行作家へと押し上げた。

作中ではバーネットの生い立ちが反映され、アメリカ独立戦争後の英米の確執や、19世紀後半のイギリスの階級社会などが描かれている。

原書ではアメリカ英語とイギリス英語による言葉の遣い分けも顕著。

表題の『小公子』

明治期の1890年から若松賤子が『Little Lord Fauntleroy』の言文一致体による翻訳を発表し、日本の近代文学に大きな影響を与える。

訳題の『公子』は中国で言う君主の子や王子の意味ではなく、貴族の子弟を指す名称。若君や幼君を意味する『Young Lord』に相当する。

外来語にまだ馴染みがなかった当時、若松は『Fauntleroy』を省いて簡潔に訳したことで、『小公子』の表題を日本に定着させた。

『Earl』はイギリスでの伯爵の称号。ドリンコート伯爵の正式な呼称は『Earl of Dorincourt』だが、『Lord Dorincourt』(ドリンコート卿)とも呼ばれる。

『Lord』は侯爵以下男爵までの男性貴族への敬称。公・侯爵の子息や、伯爵の長男に対して用いる略式の尊称でもある。

フォントルロイ卿(Lord Fauntleroy)もドリンコート伯爵家の跡継ぎたる嫡男への呼称であり、代替わり前のセドリックは当然ドリンコート卿ではなく、フォントルロイ卿と呼ばれる。

あらすじ

1880年代のアメリカ・ニューヨークに生まれ育つセドリック・エロルは、慎ましいながらも母と二人で幸せに暮らしていたが、突如イギリス貴族の跡取りとなるべく渡英することになる。

引き合わされた祖父のドリンコート伯爵は、米国人の女性と結婚した息子を勘当するほど大のアメリカ嫌い。

伯爵は当初セドリックを母親から引き離し、手元で跡取りにふさわしい養育をしようと試みる。

しかし天真爛漫なセドリックは偏屈な祖父をも一途に慕い、次第に伯爵もセドリックの純真さに頑なな心が解きほぐされていく。

そんな中、正統な後継者だと名乗る母子が現れ、セドリックのフォントルロイ卿としての立場は揺らいでしまうのだった。

登場人物

本作の主人公。

両親譲りの美しい顔立ちと、心根の優しさを持つ7歳の男の子。

  • エロル大尉(Captain Cedric Errol)

セドリックの父で英国人。長身で逞しく口髭があり、金髪碧眼。

アメリカで妻となる少女と出会い結婚するが、それが原因でドリンコート伯爵に親子の縁を切られてしまう。

  • エロル夫人(Mrs Errol)

セドリックの母。元孤児のアメリカ庶民で、気立てが良く美貌の持ち主。

セドリックの父方の祖父。気難しい老人。

  • ハヴィシャム(Mr Havisham)

ドリンコート伯爵家に40年近く仕える顧問弁護士。

イギリスからセドリックを迎えに来る。

ニューヨークの人々

  • ホッブス(Mr Hobbs)

食料雑貨店の主人。禿頭でずんぐりした体形。

セドリックの一番の友人。イギリスと貴族を毛嫌いしている。

  • ディック・ティプトン(Dick Tipton)

セドリックの友人で、下町の靴磨きの少年。

セドリックへの選別にシルク製の赤いハンカチを贈る。

  • メアリー(Mary)

セドリックが生まれた頃からエロル家に仕える古株のメイド。

子守役も務めており、どこぞの貴族の若様よりも立派なセドリックが自慢。

  • ブリジット(Bridget)

メアリーの妹。

12人の子供を抱えるが、煉瓦工の夫マイケル(Michael)がリウマチで働けず困窮している。

  • ビリー(Billy Williams)

セドリックと同い年の友人。

イギリスの人々

  • メロン夫人(Mrs Mellon)

ドリンコート伯爵家のハウスキーパー。

息子と離れ離れのエロル夫人に同情的で、慰めとなるよう純白のペルシャ猫を手配する。

  • ドーソン(Dawson)

伯爵家のメイドで、セドリック付きの世話係。

戦争未亡人でもあり、息子は水夫。

  • トーマス(Thomas)

伯爵家の長身フットマン。

  • モードウント牧師(Mr Mordaunt)

ドリンコート伯領の牧師。

  • コンスタンシア・ロリデール夫人(Lady Constantia Lorridaile)

ドリンコート伯爵の唯一の妹。

甥のエロル大尉を気に入っていたが、兄との仲は35年も顔を合わせぬほど冷え切っている。

  • ハリー・ロリデール卿(Sir Harry Lorridaile)

ロリデール夫人の夫。

  • ヴィヴィアン・ハーバート嬢(Miss Vivian Herbert)

すらりと背が高く、黒髪に菫色の瞳を持つ美貌の令嬢。

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