売れ残った饅頭に魂が込もり
人を喰らう化生になるといいますーーー。
概要
饅頭事変……ならぬ満州事変前後の大日本帝国のような世界「帝都」を舞台に、
帝都軍人の加藤率いる「神祇部」と、
支那(中国)出身のマッドサイエンティスト、フー・マンチュー率いる物の怪一味との戦いを描いた怪奇バトル漫画。
フー・マンチューの術をはじめ、作中で使われるギミックのほとんどは東洋魔術、中でも呪術や仙術を下敷きとしたオリエンタル色の強い世界観。
また後述のパロディ元の存在からバトルアクションがかなり自由奔放で、絵画の域に片足突っ込んだ絵柄もまた、本作の大きな特徴である。
本作は様々なアジアン映画、とりわけジャッキー・チェンのカンフー映画の影響を多分に受けており、漫画のコマの構図やポージングなどにそれらのパロディが多数存在する。
元ネタの映画は20世紀のものも多く、映画好きなら知っている(けれど見たことはない)金字塔から、ネットの海に漂わないようなマイナーなものまで幅広く存在する。
なんのシーンか分かったなら相当な映画通といって差し支えないだろう。
主要な登場人物
神祇部
加藤
グラサンと切りそろえた前髪が特徴の女性軍人。階級は中尉で、神祇部のリーダー。
呪術に関する能力はずば抜けて秀でており、しばしば「魔人」「怪人」と称される。
冷徹かつ冷酷な人物であり、化生退治のためなら手段を一切選ばない。
田治見(たじみ)
糸目で背の高い女性軍人。
穏やかそうな外見に反して元は三十人殺しの犯罪者上がりの軍人で、戦闘能力は高い。
性格も豪気。
浅一
目の下にある濃いクマが特徴の男性?軍人。
ビビりでヘタレだが良心的で優しい性格。また、射撃の名手。
彼も化生なのか、感情が高ぶると人狼のような姿になる。
川島
片メカクレの女性軍人。僕っ娘。
大人しく常識的な人物だが、実は裏でフー・マンチューと通じているスパイ。
神祇部の動向を横流しする一方で、彼女自身悪事に手を染めることには葛藤があるようだが……?
李(リー)
饅頭(マントウ。まんじゅうの中国語読み)の饅尸(マンシー)。
作中の時系列上、最初に創造された饅尸。
創造者である人間の意に従うことであればどのようなことでも是とする軍人気質の持ち主。
ある理由から、彼女の創造者からはひたすら殺人の訓練をさせられ続けていた。
鯊魚(シャーユイ)
水餃子の饅尸(マンシー)。
作中の時系列上、最初に創造された饅尸で、李(リー)とは双子の姉妹のような関係。
李と比べて「食べ物として完成されること」に拘り、それとは無関係な殺人訓練を強制されることに嫌気がさして出奔。しばらく行方をくらませていた。
要領の悪い自分となんでもそつなくこなす李とを比較して劣等感を抱いており、同じ饅尸の姉妹である李自体のことも嫌っている。
水餃子の化生である関係上饅尸達の中で唯一水分に耐性があり、雨や湿気にも強い。
化生・犯罪者たち
フー・マンチュー
中国出身のマッドサイエンティスト。女性……?
人命をなんとも思っていない外道であり、首首、地蜘蛛裂餡魔をけしかけて大量殺人を繰り返す。よくも悪くも楽観的で、多少のトラブルでは動じない。
加藤個人にたいして何らかの因縁があるようで、彼女を貶めることが目標のひとつ。
首首(シャオシャオ)
フー・マンチューの手で生み出された、肉まんの饅尸(マンシー)。
フーに「人を食えば美味しくなれる」とそそのかされ、肉まんに紛れて人間を喰らう凶暴な存在。
戦闘能力は並の人間を軽く凌駕する一方で思慮は浅く、神祇部の加藤に何度も騙されてフーの拠点が暴かれる原因を作りまくっている。
それについてフーからはお咎めが特にないあたり、そこ込みで可愛がられている様子。
地蜘蛛裂餡魔(じぐもざきあんま)
フー・マンチューの手で生み出された、毒入りあんまんの饅尸(マンシー)。
はじめから大量殺人を目的として創造された経緯で餡(あん)には猛毒が仕込まれており、放出した餡に触れた人間を溶かして殺すことができる。
首首に比べれば落ち着いているが、慇懃無礼というか図々しい性格。
首首ともどもフーからは溺愛されている。
地蜘蛛裂芙蓉(じぐもざきカマラ)
三博士が協力して作ったカリー饅の化生。
本来の腕とは別に球体関節の腕が六本あり、身体中に包帯が巻かれた操り人形のような見た目が特徴。体内にあるからくりは餡子で操っている。
地蜘蛛裂餡魔の猛毒を耐えるほど頑丈で、戦いではムエタイを使うらしい。
饅頭形態は包帯の巻かれた1つ目の饅頭で、そこから鉤十字を出して回転させることで飛行する。
小白竜(シャオパイロン)
フー・マンチューの仲間。男性。
満州でその名をとどろかせた馬賊の頭目で、その名に恥じない腕っぷしの持ち主。
アウトローではあるがフーに比べればはるかに良識のある男で、フーにはその挙動に時折ドン引きしながらも同行している。
減減入(ヘル、メイル)
フー・マンチューの仲間。瓶底メガネの女性。
人間を材料とした傀儡を作る、フーとは別分野のマッドサイエンティスト。
減減入という名前は偽名であり、本名は別にある。
用語・世界観
化生
他作品でいう所の怪物。(化生という語自体は少々古いが実在の単語である)
狼男やフランケンシュタイン、といった怪物も少なからず存在が示唆されているほか、本作では独自に「饅尸」なる化生が存在する。
饅尸(マンシー)
本作に登場する化生のひとつ。
中国で労働力とするために蘇らされた遺体である僵尸(キョンシー)の仕組みをもとに、点心に命を吹き込んで創り出された人造の化生。
現在の所、登場する饅尸は肉まん、まんじゅう、餃子、といった、点心(中華まん)に類する食品が元になっている。
それぞれが明確な自我を持ち、人間以上の身体能力と耐久力を持つ。
どの個体も共通して「自らを磨き上げて美味しくなり、人間に食されたい」という本能的欲求を持っているため、「賞味期限切れの呪い」が施されたお札を貼られるとたちまち戦闘不能になってしまう。ほか、元が食品であることから雨を始めとする湿気にも弱い。
基本的にどの個体も人間の女性の姿をしているが、元になった食材(肉まんの饅尸なら肉まん、水餃子の饅尸なら水餃子、など)に変じることができる。というより、こちらが本来の姿のようで、弱った時や退却時はこの姿になる。
フー・マンチューの制作した饅尸は食い殺す、溶かす等なんらかの形で人間を殺す能力があり、このことから「人食い饅頭」と恐れられている。
神祇部
帝都軍隊の一部門。
鬼や化生のようなオカルト的な怪物を退治することを専門とする特務機関。