概要
漢中に勢力を築いていた五斗米道の将軍として活躍。漢中は蜀に通じる重要拠点であったことから、建安20年に曹操軍の侵攻を受ける。軍権を任されていた張衛は、反撃に消極的で降伏しようとする兄・張魯に反対。天然の要害・陽平間に拠って曹操軍を迎え撃つ。積極策により一度は曹操軍を撃退するも、油断した直後に再攻撃され、陽平間と配下の楊任を失う。その後も抵抗を続けたが、野生の鹿数千頭が張衛の陣営を叩き壊す事故(曹操軍の計略なのかどうかは不明)が発生。さらに、偶然発生した高祚との夜間の遭遇戦にて、高祚が味方を呼ぶために打ち鳴らした軍鼓の音を奇襲の合図と勘違いしてしまう。これらの事件で張衛は戦意を喪失し、最終的には兄同様、降伏した。以後の消息は不明だが、後に斬首されたとも、曹操に仕えて昭義将軍に任ぜられたとも伝えられる。
三国志演義では、張魯が匿っていた馬超との離間の計にかかった際にその名が見えるほか、史実同様兄に逆らって曹操軍に抵抗しているが、許褚との一騎打ちに敗れて殺されている。
北方三国志
一応曹操を撃退したとは言え、正史でも演義でも地味な人物だったが、北方謙三による三国志では、意外にも主要キャラの一人に抜擢されている。本作では五斗米道の描写が多く、なんと彼は一巻から最終巻まで登場しており、度々張衛視点で物語が進んでいる。
漢中と言う安住の地に満足している兄とは違い、教義にはあまり帰依しておらず、兵を養いながら勢力拡大の機会をうかがっている。益州に王道楽土を築くという高い志を持っており、軍事的才能も持ち合わせているが、行動が伴っておらず、甘さがある。大勢が決してしまった後も、現実を受け入れずにいつまでも夢を諦めきれなかった結果、理想と現実が乖離し、急速に凋落していく。器を持たぬまま、天に魅せられてしまった哀れな人物。