曖昧さ回避
概要
長野県駒ケ根市にある光前寺で飼われていた山犬で、本堂の床下で出産した母犬が1匹だけ寺に残していった子犬である。成長すると風のように早く走る非常に強い犬となったことから早太郎と呼ばれ、別名を「悉平太郎」ともされる。以下の伝説で知られる。
昔、信濃の隣国・遠江(現在の静岡県西部)にある見附村で、村人に対し娘を生贄に要求する神の名を騙る邪悪な怪異が毎年、見附天神の祭りの際に出現し、生贄を拒めば凶作をもたらすことで拒むことが出来ない村人達を苦しめていた。この事情を知った旅の僧侶が密かに生贄を見張ると大きな影が現れて「今宵、今晩、早太郎はおるまいな」「早太郎には断じて知られるな」などと言いながら生贄を連れ去った。
一部始終を見聞きした僧侶は長旅の末に早太郎を探し出し、光前寺の和尚に事情を話して早太郎を借り受けると見附村へと戻り、丁度天神祭りの時期であった事から村長や村人達を説得して共に生贄を入れるための棺に忍び込み、生贄の娘を毎年喰らっていた怪異(狒々あるいは猿神と呼ばれるモノ。巨大な猿の妖怪といえる存在)を退治した。
しかし激戦の末に早太郎は致命傷を負って、僧侶の腕に抱かれながらどうにか光前寺に帰り着いた直後に一声鳴くと和尚に撫でられながら眠るように事切れ、光前寺の本堂の横には早太郎の墓が立てられたという。見附天神がある静岡県側の伝承ではほとんど早太郎より悉平太郎の名で通っており、怪異を退治するところまでは同じだが、亡くなったという伝承はない。
また、上述の様に怪異は自分の悪事を早太郎に知られる事をかなり恐れていたようで(そのため、怪異が漏らした言葉を忍び聞いた僧侶が早太郎を探してくる端緒になった)、この早太郎の実力がどれほどのものかが窺える。伝承のバリエーションによっては怪異が光前寺の近くで子供をさらって喰おうとした事があったが、早太郎が駆けつけてきて怪異は逃げ出し、以来、早太郎を恐れていた、というものもある。また、棺に潜んで怪異と戦ったのは早太郎単独というものもある。
怪異についても1匹であったり、3匹であったり、多数の小さな(通常の猿と同じ程度の大きさの)同類の怪異を従えているなど、その類型は多様である。怪異が複数いる場合、僧侶が早太郎と共に潜み戦う形になっている事が多い(この類型の場合、怪異と直接戦っても勝ち目がない僧侶は、配下の多数の怪異を相手にしたり、あるいは怪異の一部が逃げおおせないように牽制したりなど早太郎を援護する形で戦っている。また、僧侶が戦う場合、武術の心得がある理由として僧侶を元武士とする事が多い)。
余談
日本各地で類似した伝承があり、それに合わせて名前も「疾風太郎」「しゅけん」等と変化している。
民間伝承には珍しい正確な日付や場所がわかっているお話。
『ゆるキャン△』に登場する伝説の霊犬
CV:高橋李依
上記「悉平太郎」の伝説と同じ。
主人公・志摩リンは「悉平太郎」の聖地・長野県駒ケ根市の光前寺、静岡県磐田市の見附天神をそれぞれ訪れている。
光前寺参拝直後では、各務原なでしこ扮する法師と共にリンの夢の中に現われ、彼女が頼んだソースかつ丼のつけあわせのサラダを食い散らかす意地汚さを見せている。
その一方、見附天神では、天神で飼われる「悉平太郎3世」に会おうとして、巫女さんに「数年前に亡くなった」と知らされ、犬の寿命のはかなさを斉藤恵那と語りあっている。