春荷
はるかふ
史実では永井と佐藤は師弟関係にあり、それを踏まえた回想が存在する。
以下ネタバレ注意
いの段「田園の憂鬱」でボスマスクリア後に回想が発生する。
内容は『佐藤の愚痴が書かれた永井の日記について佐藤本人が言及する』という全体的に不穏なものとなっている。しかし最後に永井が(今更謝っても仕方ないことだろう)と心の中で思っているところで回想が終了しているため、佐藤との関係回復を望んでいるようにも見えなくもない。
今後の展開に期待である。
佐藤春夫は少年時代に永井荷風の著作「あめりか物語」を読み、それ以降荷風に心服していた。一高入学試験に失敗した佐藤は与謝野寛の推薦により、当時米仏帰りの人気作家として荷風が教授に抜擢された三田の慶應義塾大学文科へ予科生として入学した。
その後荷風主催の慶応義塾大学文学部雑誌「三田文学」に参加することになる。数年後荷風が三田を退いて以降も度々交流し、その崇拝を荷風が死去するまで貫き通した。後年荷風が死去し、マロニエの枝と共に弔詞を捧げている。その内容は
奉る小園の花一枝
み霊よ見そなはせ
まろにえ
巴里の青嵐に
黒き髪なびけけん
師が在りし日を
われらしのびまつれば
である(「小説永井荷風伝 他三篇」より)。
しかし荷風の日記「断腸亭日乗」にはある時期以降佐藤春夫への不平や皮肉が綴られていた。荷風の死後発表された「断腸亭日乗」を読んだことにより長年の崇拝は粉砕され、荷風のことを「妖人」とまで評するようになった(「詩文半世紀」より)。しかし「往年の荷風崇拝から脱却した」と思ったものの、その後に荷風を夢に見てさめ(しかも二、三十年振りの色付きの夢)、「自分はまだやはり荷風崇拝から卒業しきっていないのだ」と書いている(「夢に荷風先生を見る記」より)。「詩文半世紀」に「妖人」と評したが、その後佐藤が急死したために崇拝からの落差が修正されなかったため、彼の真意は未だ不明である(「春夫の観た永井荷風 -荷風没後50年に寄せて-」より)。
一方荷風はというと、一時期は己の城たる偏奇館へと佐藤を招き入れ、主に文学談義をするなどマイナスな感情は抱いていないようだった。しかし佐藤のその後の文芸活動や行き違いや誤解などが重なったため不快感を抱くようになり、「断腸亭日乗」に不平不満が書かれてしまうことになった。
後年、仲のいい記者のインタビューで三田の生徒たちへの話に移行した際、他の生徒のことは事細かに述べている中
「佐藤春夫さんは?」
「あの人は予科で本科じゃないです」
とばっさり切り捨てている(「荷風思い出草」より)。
(加筆修正にご協力ください)
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