「開演!!」
「交響曲第5番。運命!」
CV.内山昂輝
ゲーム版
本作の主人公。ベルリン・シンフォニカの奥で眠りについていた指揮者(コンダクター)。一人称は「俺」。
シンフォニカへのD2侵攻という非常事態に際して運命によって覚醒させられる。20年にわたる昏睡の弊害か記憶の大半を喪失しており、自分が何者なのかすら忘れている。(シンフォニカによって意図的に記憶を消された可能性も示唆されている)
アニメ版で描かれた20年前に比べ、良くも悪くも温和かつ性格が丸くなっており、記憶が心許ない状態で不安を覗かせながらも、積極的に他者と関わる社交性を見せる反面、我の強いムジカート達に振り回される場面も多い。
ムジカートを指揮し、勝利へと導く存在とされているが、時には自身が最前線に突っ込む無茶な気質でムジカートを苦労させている。右腕は完全に回復しているらしく、イラストでは右手で指揮棒を振るう姿も描かれる。
一見アニメ版から人柄が大幅に変わっているが、誰とでもフラットに接する態度や、こうと決めたら曲げない強情さなど、嘗ての気質を感じさせる部分もあり、プレイヤーからは「諸般の事情で捻くれてしまったアニメ版タクトの元来の人柄ではないか」とも考察されている。
アニメ版
名指揮者と呼ばれた朝雛ケンジの一人息子で、超一流のピアニスト。一人称は「僕」。
幼少期にボストンの演奏会でD2の襲撃を受けて父を亡くし、音楽が失われていく世界に抗うように生きてきた。
自宅のガレージで一日中グランドピアノに向き合っており、生活力の無さを案じて足繫く通ってくるシュナイダー姉妹にも無愛想でつっけんどんな偏屈者。人生を音楽に捧げながらも、今の世界に自身の音楽が届くのかという不安も口にしており、コゼットの半ば強引な誘いで、演奏者としてシンフォニカパーティーへと赴いた。
コゼットとの連弾で喝采を浴びたのも束の間、不可解なD2の出現による混乱の中でムジカート・運命と契約。予期せずコンダクターとなったことで、散発的に活動するD2との戦いに身を投じることになる。
戦闘形態の運命とは感覚の一部を共有しているほか、身体能力が飛躍的に向上している様子が描かれている。シンフォニカパーティーでの騒動で致命的なダメージを負った右腕を、運命との契約時に捕食されており、平時は傷一つない状態で復元されているが、運命が戦闘形態をとると右腕が消失、左手で指揮棒を振るう。またこの間は、普段灰色である瞳も運命同様の鮮やかな青色に変わる。
運命の戦闘に必要なエネルギーの一部を自身の生命力から供給しているため、コンダクターとしての消耗が激しく、戦闘後はしばしば卒倒している。
持ち前の図太さゆえか、無我夢中だった初陣以降もD2を前に怯むような素振りは見せず、ノルマのように家屋の壁を破壊して飛び出していく運命の滅茶苦茶な振る舞いについてもあまり頓着しない。
レニーの教えを受けてコンダクターとしても新米を脱しており、運命とは文句を言い合いながらも、次第に息を合わせた戦いぶりを見せるようになっていく。
座右の銘は「音楽は全てにおいて優先される」。不器用で要領の悪いところも散見されるが「音楽以外の才能は不要」とまで豪語し、無益なことにくよくよしない、よくも悪くもアーティスト気質で割り切った性格。
友好的な相手にはそっけなくも相応の態度を見せる反面、強く出られると傍若無人の度合いを増して不遜に振る舞うため、主にアンナをヒヤヒヤさせている。
旅を通じて、D2襲撃後も音楽がなお人の心に残っていることを知り、父を知る音楽家たちとの交流を経て「自身の曲を作る」という目標を抱くようになる。
反面、コンダクターとして戦いを続けるうちに生命力を著しく失い、運命との契約の影響でできた右腕の痣は首筋や顔を覆いはじめ、戦闘指揮もままならなくなっていく。それでも音楽を取り戻したい、自分の音楽を奏でたいという意志は揺るがず命を削り戦っていくが……。
名前の由来は実在した左利きの指揮者・朝比奈隆(朝比奈氏は生前右腕で指揮している)と、ドイツ語で「指揮棒」を意味する「takt」だと思われる。「takt」はアニメ版OP主題歌のタイトルとしても使用されている。
終盤の動向
ニューヨーク・シンフォニカに到着した一行は、シュナイダー姉妹の長姉・シャルロッテの診断を受ける。彼女から告げられたのは、特殊な状況での契約がもたらした、危ういバランスで成り立っているタクトと運命の実情だった。
運命が力を振るう度にタクトの消耗は加速し、タクトの身が危うくなれば運命自身も存在を保てなくなる――調律の方法を探るためにも戦いの場から離れるよう言われ、二人は束の間の平穏を共有する。
しかしシンフォニカ内部の不穏な動きが表面化した事でまみえた強敵との戦闘によってタクトの身体に限界が訪れ、一時は運命の変身すら維持できなくなるものの、音楽を奏でられる世界を取り戻すために、二人は混乱の渦中にあるシンフォニカへと赴く。
遂に痣が顔全体を蝕み、髪さえ白く染まる中、ザーガン、そして地獄のオルフェとの戦いに決着をつけたタクト。
旅の中で構想を固めた自身の譜面を「 With Love 」の題で残しており(アニメ公式サイトのショートエピソード「Intermezzo」も参照されたい)、もはや目を開く力さえ残っていないほどに衰弱した状態で、「自作の曲を運命に聞かせる」約束をワンフレーズを歌う形で果たす。
眠るように意識を失うタクトに愛を告げた運命は、自ら消える事によって彼の生命を繋ぐ道を選び、自身のf字孔を返還した右手に残していった。ロッテらシンフォニカスタッフに発見されたタクトは、治療を兼ねて緊急にコールドスリープ処置を施され、更に万全な設備を求めてニューヨークを離れ別の場所に移されることが決定する。
アニメはゲームの前日譚であることがある人物の描写から明らかになっており、ゲーム版タクトの「ベルリン・シンフォニカで眠りについていた」設定も、ベルリンに身柄が移された後、コールドスリープと治療が継続されたものと思われる。そして深刻なダメージからようやく回復した彼が目覚めたのは20年後――2067年であった。
「Intermezzo」では「彼がたとえすべてを忘れていたとしても。彼がたとえすべてを喪っていたとしても。」と記述があり、治療とコールドスリープを終えた彼が記憶を失っている可能性がアニメ版の時点で示唆されていた。
関連イラスト
関連タグ
大神一郎… 広井王子が手掛けた『サクラ大戦』シリーズの主人公。『takt op.』自体が『サクラ大戦』のエッセンスを内包しているため、タクトの位置付けや振る舞いにも彼を彷彿とさせる部分が少なからずある。