概要
『流浪の月』は、凪良ゆうによる日本の小説。
東京創元社より単行本が2019年8月に出版された[1]。2022年2月には、創元文芸文庫の創刊ラインナップとして文庫版が刊行された。
BL作家として活動していた作者が出版した初の単行本作品であり、第1章「少女のはなし」から終章「彼のはなし II」の全6章で構成されている。作者は『ダ・ヴィンチ』2021年5月号のインタビューの中で、2013年に出版したBL小説『あいのはなし』をベースにした作品だと説明した。2022年5月現在で、累計発行部数は80万部を突破している。
2022年に映画化。監督は李相日が務め、広瀬すずと松坂桃李がW主演を務めた。
あらすじ
主人公の家内更紗は、父を病で亡くし母に見捨てられ、母方の伯母の家に引き取られた。更紗は従兄(伯母の息子)の孝弘から虐待を受けており、学校が終わるといつも公園で過ごしていた。その公園には、小学生からロリコンと呼ばれる19歳の大学生・佐伯文がいた。ある日、公園では雨が降った。更紗がびしょ濡れになっているのを目にした文は、更紗に傘を差し出す。そして、引き取られている伯母の家に帰りたくないという更紗の気持ちを知り、自分のマンションに招き入れる。更紗は文のもとで2か月を過ごす。その間、更紗は行方不明の女児として、全国に実名報道されていた。そして、文と更紗が一緒に外出した先で通行人に見つかり、文は誘拐犯として逮捕されてしまう。警察官に抱えられ保護される更紗。更紗が「文と別れたくなくて」泣き叫ぶシーンは、居合わせた人の携帯電話で撮影・拡散されていった。その後更紗は「傷物にされた可哀想な女の子」、文は「ロリコンで凶悪な誘拐犯」というレッテルを貼られ続ける。二人の関係は、周囲の人たちが思うものとは全く違うものであったにも関らずに。そして事故から15年過ぎ、24歳になったある日、更紗は偶然文と再会する。
外部からは見えない真実や、恋愛でも友情でもない言い表しにくい2人の関係性が描かれる。
登場人物
- 家内更紗(演:広瀬すず)
誘拐事件の被害者。父親が幼少期に他界し、母親からは捨てられたため、伯母夫婦の下に預けられるが、日常的に虐待を受けており、公園に居たところを文が保護した。その後、文とともにひっそりと暮らしていたが、自身の名前が「誘拐事件の被害者」として実名報道されてしまい、ある日外出先で通行人に目撃されたことで警察に通報されて文が逮捕されることとなり、生き別れることとなってしまう。
15年後、ファミリーレストランの店員として勤務し、中瀬と婚約していたが、文との再会を機に徐々にその運命が狂い始めていく。
- 佐伯文(演:松坂桃李)
誘拐事件の加害者。事件当時は大学生。他人とのコミュニケーションが苦手であるが、例外として子供とは比較的話せる方だったため、よく公園にいることが多かった。そのため、小学生から「ロリコン」呼ばわりされていた。日常的な虐待により家出していた更紗の心中を察して自宅のアパートに連れて帰り保護した。その後、更紗とともにひっそりと暮らしていたが、彼女の名前が「誘拐事件の被害者」として実名報道されてしまい、ある日外出先で通行人に目撃されたことで警察に通報されて逮捕されることとなり、生き別れることとなってしまう。
保護観察処分となったことでしばらく実家で暮らした後、15年後は小さな喫茶店を営んでいた。しかし、更紗と再会したことでその運命が狂い始めていく。
- 中瀬亮(演:横浜流星)
更紗の婚約者であり、有名企業の社員。しかし、独占欲の持ち主であり、自分にとって気に食わないことがあればDVすら平気で行う。更紗が文と再会したことをきっかけに彼女との関係、そして自身の人生が狂い始めていく。
- 谷あゆみ(演:多部未華子)
文の恋人。文の過去については何も知らないものの、彼に誰にも言えない過去があることは察していた。彼女もまた文が更紗と再会したことを機に、彼との関係が狂い始めていく。