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概要編集

1914年(大正3年)12月に発表。

鏡花の生前は上演されなかったが、1955年(昭和30年)、歌舞伎座にて新派により初演となった。


いわゆる異類婚姻譚であり、人と人ならざるものの間に横たわる認識の壁や諍い、それを超える赤心の美しさが、鏡花独自の美麗な言葉遣いで描かれている。


初演以来、鏡花作品を愛する坂東玉三郎や芥川比呂志らが積極的に再演している。特に玉三郎は『夜叉ヶ池』『天守物語』と共に「泉鏡花三部作」とみなして上演している。


2001年、ゲーム『サクラ大戦』に登場する「帝国歌劇団」の声優陣が出演した舞台『サクラ大戦歌謡ショウ』五周年記念公演として『海神別荘』が上演。これをベースとして2019年、OSK日本歌劇団が京都・南座で歌劇として上演した。


あらすじ編集

時は現代(大正時代)。

一人の美女が、海神の世継ぎである公子に見初められ、妻となるべく人柱として海へと送られた。約定に従い、女と引き換えに莫大な海の財宝を寄越す公子。


新夫人を迎えるに当たり、海の底なる宮殿では侍女達が装いを洋装に改め、島田髷に振袖の花嫁を引き立たせようと振舞う。

妻を待つ公子の無聊を慰めるべく双六遊びに興じるうち、好色の入道鮫が侍女の一人を攫うという騒動が持ち上がる。憤った公子は竜の本性を露わし、奪還へと向かった。


一方で茫洋の心地で花嫁道中を終え、海神の別荘に到着した美女。

公子の美しさに魅了され、夢心地となりながらも故郷と両親を恋しく思い、遂には公子の制止を振り切り陸へと戻る。しかし……


登場人物編集

  • 公子:主人公。海神の世継ぎであり、その本性は毒竜。姉は乙姫。「面玉のごとく臈丈たり」=イケメン。やや傲慢ではあるが、弱者を庇護する者としての意識を持つ。激情家でもあり、意に添わぬ事があると癇癪を起こす。
  • 沖の僧都:公子の教師。その本性は年老いた海坊主。碇をさかさまにした細い鉄杖をつく。今回の婚儀において、美女の親元に魚介や珊瑚など海の財宝を贈る手配を行い、その目録を読み上げるが、途中で間違えて侍女達にからかわれる一幕も。
  • 侍女:公子に仕える美女達。新夫人を引き立てるべく何れも洋装に身を包んでいるが、本性は海の精であり、望めばたちまち姿や装束を変える事が出来る。またその身は雲のごとく柔らかく、鮫に噛みつかれても血にも肉にも障りがない。
  • 入道鮫:中盤で眷属と共に乱入し、好色な本性故に侍女の一人に噛みついて連れ去ろうとした外道。狼藉に憤った公子の追撃によって追い散らされた。
  • 黒潮騎士:公子に仕える黒甲冑の戦士達。花嫁道中の警護に当たっていた。
  • 美女:公子に見初められた人間の女。莫大な宝物に目のくらんだ両親により、人柱として海に捧げられた。故郷と両親を想うあまりにもう一度海の上に出たいと願うが既に人ならざるものへと変化しており、これを嘆いた事で公子の勘気をこうむってしまう。遂には命の危機にまで発展するが……
  • 博士:終盤に登場。紆余曲折の末に夫婦の誓いを結んだ公子と美女が盃を交わした折、故郷に咲いた美しい花の正体について説明する。これをもって公子に悪意がない事を知らされた美女は「お見棄てのう、幾久しく」と告げ、宮殿は万歳で満ちる。

関連項目編集

泉鏡花

戯曲

坂東玉三郎

サクラ大戦

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