概要
タンサン先生が2018年10月に小説家になろうで投稿され現在でも執筆中。その後は書籍化、コミカライズ化された。
内容は高校生の結城幸助が入学初日に老人を助けようとして命を落としたが助けた老人が神様だったため、助けたお礼に異世界転生されると思いきや目覚めたら元居た世界だったが代わりにめちゃくちゃ強いチート能力を手に入れ、現実世界で平凡に生きようとするが…。
本作は札幌を主な舞台としており、札幌の名所等が、時折出てくる。
航島カズトの漫画版が連載中。
ラジドラ☆パラダイスで、物語の序盤がラジオドラマ化されて放送された。主演はファンティーヌ。
登場人物
- 結城幸助(ゆうき こうすけ)
アニメや漫画・ラノベが趣味の高校生。一人称は「俺」。
高校入学初日に神様を助けてお礼に異世界転生するはずだったが手違いで現実世界に戻された。しかし神様から与えられたチート能力を手に入れた。
もとは滝川市の出身。札幌の高校に入学するため、実家を離れて、祖父母が昔住んでいた日本家屋に、一人暮らしをする予定だった。
なお両親は健在であり、幸助の札幌移住後も、滝川市に在住。母親は看護師で、父親は農家の共働きである。
あらゆる「術」・「異能」・「技」を一目見ただけで取得できる能力を持っている。
それは人だけでなく、力を失った術具に対しても可能で、幸助の底なしの霊力のためか、オリジナルを上回る出力を出せる。
ただし妖怪の固有技などの、人間には習得不可な能力は、取得できない。
その他にも、霊魂やステルス付式神など、優れた陰陽師にも視えない存在を視認できる。
身体能力も底上げされて、洗濯機が発泡スチロール箱並の感覚で持ち上げられる怪力……等、常軌を逸脱した強大な力を持つ。
だが本人はあまり見せびらかすことはせず平凡に生きたいとのこと。
だが何故か気づかぬ間に、他所の特殊能力者の諍いに巻き込まれる事が多く。相手側の内情や事件の全貌を、本人もよく知らないままに解決させてしまう展開が、初期に多かった。
漫画版ではこの話の流れが、一部変更されており。事件の内情をある程度知った上で、知人を傷つけられたことに、強い怒りを見せたり。間違った道を進み始める敵に、必死で説得したりと。熱血主人公的な一面が描かれた。
なお前述の通り、能力値は作中でも規格外だが。本人の戦闘技術が未熟なことや、殺人を躊躇する性格から、格下相手に苦戦することがある。
書籍絵と漫画版デザインで、容貌がかなり異なっており。漫画版では中性的な顔立ちからか、単行本番外編で、女装エピソードが描かれた。
中学時代に親友が、イジメを受けて転校してしまい、自身も心身共に傷つく経験をした過去がある。
イジメ加害者は相応の罰を受けたが、その後同級生達は、この件を忘れようとして、彼のことを一切口にしなくなった。この件で、地元の同級生と不和が生じ、地元を離れて札幌の高校に進学する理由の一つになった。
この過去の話は、原作者から「イジメは繊細な問題だが、高校生の成長を描くうえで必要な話だった。今後もこの話が出てくるが、必ず爽快な終わり方にする」という、読者への弁明のコメントがあった。
- クロ
猫の妖。通称「猫神」。一人称は「儂」で、幸助のことは「主人」「お主」と呼んでいる。年季を感じさせる威厳のある口調で喋る。
神と崇められるほどにまで至った大妖怪で、数百年にわたって札幌を守護してきた。
普段は黒い家猫の姿をしているが、真の姿は巨大な獅子。タテガミがあることから、雄と思われる。
あらゆる術・異能を疑似的に模倣する、幸助に似通った能力を持つが、オリジナルよりは力が劣るらしい。
ある事件で幸助と知り合い、事件解決後に、偶然幸助が彼の本名を言い当てたことで、従魔契約がなされてしまい、以後幸助の家に共同生活することになる。
「クロ」という名前は、かつて怪我をした時に、彼を助けた旅人がつけた名前。
つけた名が和名であることや、漫画版で描かれた姿からして、明らかにアイヌではなく和人。
つまりクロは、名前を与えられた後に、北海道に移住したことになる。
- 水上 潤叶(みずかみ うるか)
幸助のクラスメイトであり、クラス委員長を務める少女。第一章ヒロインであり、その後の出番の多さから、実質本作の正ヒロインと思われる。
一人称は「私」で、幸助のことは「結城くん」と呼ぶ。常に落ち着いた礼儀正しい口調で喋る。
黒い長髪で、見た目と性格の良さから、校内でも大人気の美少女。
幼いころから多くの男性に告白されており。校内には「水上様ファンクラブ」という熱狂的な信者の団体ができるほど。なおこの団体は、漫画版では存在消失している。
家族構成は父親と一つ下の妹がいる。母親は本作より十年前に、ある事件が元で亡くなっている。
その正体は、日本を影から支える、陰陽師組織の五大陰陽師家の一角である、「水上家」の長女で次期当主であり、派閥内では最強の術師である。
水を操る術が得意であるが、その技はあまり戦闘向きではなく、他の派閥の有力術師には、正面からの戦闘では劣る。
ある事件で派閥内で起きた問題を、幸助に助けてもらい(当初は正体を隠していたが)、その恩義があって、後に幸助との交流を深めることになる。
水上家は、幸助の身の安全を、外部勢力から守るために、彼の功績の一部を、潤叶のものにしており。その結果、政府や他能力者組織から、本来の実力以上の過大評価をされている。
無類の動物好きであり、かわいい動物を見ると、目の色が変わる。
それは敵に操られて、明らかに様子がおかしい、今にも人に襲い掛からんとする動物を見ても、全く気付かないほど。
漫画版では、自宅内では和服で生活している。陰陽師としての職務中では、巫女服を着ている。
漫画版での彼女は、原作よりも戦闘での出番が増やされており。また幸助の内情を知る展開が、原作よりも大きく前倒しされた。
また原作での幸助は、まだ明かしていない「神様」に出会った事実も教えられているなど。漫画版ではかなり扱いが優遇されている。
なおそこにいくまでの過程の、彼女の幸助の正体を探ろうとする行動は、完全にストーカーにしか見えないものであった。
彼女と幸助との関係は、第一章時点で、お互いが特殊能力者であることに気づいていた。
だが幸助の方は、まだ自分の正体はバレていないと思い込んでいた。にも拘らず、潤叶の方から積極的に話しかけてきたり、学校行事に誘ってきたりしたため、幸助を戸惑わせることになる。
第五章で、お互いの事情を明かし、以後明確な協力関係を気づくことになる。
幸助は彼女のことを主に「委員長」と呼称しており、直接会話する時は「水上さん」と呼んでいた。
だがそれだと、同じ苗字の父や妹と混同するとして、潤叶から自分のことを名前で呼ぶよう提案され、以後お互い名前で呼びあうようになった。
この一連のやり取りは、青春的な会話だと、仲間達から茶化されていた。
漫画版では、第一章の終わりの時点で、互いの素性を明かしたため、以後校内でも普通に会話するようになる。
その様子を見た他の同級生からは、二人の交際関係を疑われた。
書籍版番外編では、潤叶が徐々に、幸助への好意を自覚し始める話がある。
だが漫画版では、この話がカットされているため、幸助への好意の有無は、現時点では不明である。
- シロ
幸助が召喚した式神。首にしめ縄をした、白いカラスの姿をしている。
人語は喋れず、台詞は全て「カーカー」とカラスの鳴き声である。
彼が生まれた経緯は、幸助の異質な力に気づいた潤叶が、偵察用の式神で彼の動向を探ったこと。
常人には見えないはずの式神を、幸助は認識できただけでなく、習得能力でその術式まで理解した。帰宅後に試しに覚えたての式神召還を行ったところ、彼が誕生した。
これが作中で、幸助が初めて使用した習得能力のコピー技である。
本来の式神の定義から外れて、作成してからいくら時間が経っても、彼が霊力切れで消える様子がなく。人語は話せないものの、明らかに人間以上の知性を持っている。
鳥の姿でありながら、パソコンの使用方法を覚え、更には作曲もできるなどの多芸ぶり。
また市中で、人間に苛められていたカラスを助けたことがきっかけで、市内のカラスたちの頭領になってしまい。そのネットワークで大規模な偵察・監視で役立つことができる。
素が偵察用の式神のために、他の仲間と比べると戦闘能力は低い。
だがそれでも霊力で衝撃派を放つ技を持ち、その力で五大陰陽師の筆頭陰陽師の一人に、単騎で勝利するなどの実力を見せた。
なお彼の素になった、オリジナルの偵察用式神は、原作では青い雀の姿であるが。漫画版では、シロと全く同じ姿の、白いカラスである。
そのためにその後の展開で、潤叶が式神を召還する場面があると、シロと混同しやすい。
- 結城 リン(ゆうき りん)
シロと同じく、幸助が生み出した式神。白髪で赤い目の、幼い少女の姿をしている。初登場時には、巫女装束のような、白い着物姿であった。
一人称は「リン」で、幸助のことは「あるじ」と呼ぶ。
幸助が敵が使用する、戦闘用の式神の術式を覚え、戦闘中に生み出した。
素になった敵の式神は、刀で戦う鎧武者の姿で、リンとは姿が全く異なる。この式神はリンが誕生した直後に、彼女によって瞬殺された。
戦闘能力は高く、短刀を使用した格闘戦を得意とし。また離れたところを斬る“飛ぶ斬撃”も使用できる。
その切断力は凄まじく、初戦闘で結界で硬められた球場の屋根を切り刻み。高層ビルの上層を、跳躍からの飛ぶ斬撃で、横から真っ二つにした。
この高層ビルの件は、斬られたのは原作では七階だが、漫画版では二十七階と二十八階の間である。つまりリンは、推定八十メートルは跳躍したことになる。また飛ぶ斬撃は、距離が離れるごとに威力が落ちる筈だが。漫画版だと目算で数百メートルは離れた位置から斬っている。
登場時点では言葉を話せず、漫画版の描写では無表情が多く、感情が読みづらい外面であった。
後から幸助に名を与えられたことで、彼との結びつきが強くなり、言葉を話せるようになる。
彼女の初台詞は、原作では“おやつ”。漫画版では“おはよう、あるじ”である。
名前の由来は、納刀の時の音が鈴の音に似ていたから。
漫画版では具体的な由来は語られず、知人に名を聞かれて、その場の勢いで名付けた流れになっている。
見た目同様に性格も幼く、興味のある事柄になると、クールな外面に反して、無邪気に飛びつき年相応の子供のような振る舞いを見せる。
また幸助への依存が強く、彼を害した者に対しては、極めて好戦的である。
消えない式神である彼女の、社会的な扱いに当初悩まされていたが。ある人物の計らいで、幸助の妹という扱いで、戸籍登録されることになった。
市役所にも登録された、この捏造された戸籍は、後から事情を知らない幸助の両親を困惑させた。生んだ覚えのない結城家長女の存在から、隠し子疑惑から離婚騒動にも繋がる事態を起こすこととなる。
ちなみに幸助の元に、戸籍謄本が届けられる話は、漫画版では単行本四巻の書下ろし番外編で描かれており、連載版では見られない。
- ニア
幸助が物質を人形にして操る異能“玩具”から生み出した自動人形。
素は幸助所持のスマートフォンであり、覚えたての能力で実践を繰り返したところ、不慮の事態で、スマートフォンに余計な力を入れてしまい、結果シロとリン同様の、新たな仲間を生み出すことになった。
一人称は「僕」であり、幸助のことは「マスター」と呼ぶ。漢字とカタカナを組み合わせた、ロボットのような口調で喋る。
素と同じ姿のスマートフォンから、変形ロボットのような仕組みで、人型の人形の姿になることができる。
その姿は掌サイズのロボットで、体色は白とシルバー。三頭身で、胴体と顔がディスプレイになっており、顔には黒い点のような目がついている。
意思があり、人語も話せるが、人間社会の一般常識を全く知らずに、幸助との生活と共に、学習を積み重ねていく。
インターネットに繋がり、あらゆるコンピュータにクラッキングが可能。また他人の操る式神や自動人形の操作権を乗っ取り操る力がある。
漫画版では、他人の使い魔を奪う場面が変更されており、自前で式神を生み出せるようになっている。
- 小さいおっさん
本作のちょいキャラ。幸助の家に住み着いている、小人のような怪人。
元ネタはとある都市伝説の怪異であると思われる。漫画版では一コマだけ出番が増えて、今は洗面台の下に暮らしているようだ。
後の潤叶の発言によると、彼は妖怪ではなく、幽霊に分類される存在らしい。
- ウル
幸助が契約した精霊。
外見は掌サイズの小人の少女で、西洋の妖精の姿をしている。背中に虹色の羽が生えている。髪は、毛先が七色に輝くセミロングの金髪である。
一人称は「私」で、幸助のことを「ご主人様」と呼んでいる。やんちゃな子供のような口調で喋る。
常にマイペース·天真爛漫な性格で、真面目な話をしても中々通じず、場の空気も読めず、初期の頃から、幸助達を振り回した。
また凄まじい大食漢で、自分の体積以上の食べ物を、たやすく平らげる。
元々はイギリスの魔術組織「黄昏と夜明け団」が所持していた「妖精種」という秘宝。
だが組織内の過激派が、妖精種を盗み出す事件が発生。それがトラブルが起きて、間違って幸助の手に渡されてしまう。
それを幸助が触れたことで、種から生まれ出て、幸助自身は何も知らぬままに、彼女と契約を交わした。
この妖精種の誤配達に関しては、偶然とされているが。漫画版では、事件の真の黒幕が、意図的に幸助に渡した可能性が示唆されている。
契約主=幸助の霊力を吸収して、彼の行使する術を大幅に増幅できる。
ただその増幅力は強大すぎて、術師として未熟な幸助には制御しきれず、余計な破壊を起こす危険がある。そのため幸助は、戦闘にてウルの力を使うのには、慎重にならざるを得なかった。
またウル自身も単独で術が使える。幸助が習得した術·異能は、全て扱えるようだ。
よくニアとつるんで遊んでおり、ネット動画を投稿したり、特撮ロボットに似せたゴーレムを作って、戦闘に出したりと、常に遊び心を忘れない。
名前の由来は「Ultimate」の最初の文字から考えたと、幸助が語っている。
だがそれとは別にもう一つ由来があり、彼女のあまりに騒がしい性格から「うるさい」の最初の二文字からとったものでもある。
前述の通り、本当は黄昏と夜明け団の所有物の筈だが、なし崩し的に幸助に所有権が渡ったことで、組織内に大きな不満が起きている。
そのために強引な理屈をつけて、保護という名目で、幸助の下から、彼女を回収しようとする者も現れている。
- 月野 雫(つきの しずく)
第二章ヒロインで、幸助の同級生。一人称は「私」で、幸助のことは「結城くん」と呼ぶ。関係者に、姉の「月野 燈」と幼馴染の少年の「葛西 蒼司」がいる。
青髪ショートで、眼鏡をかけた美少女。漫画やラノベが好きなオタク少女。
人見知りをする気弱な性格に描かれているが、漫画版では絡んできた不良に反論するなど、強気な一面が描かれた。
不良に絡まれている所を、幸助に助けられ、その後同じオタク趣味があることが判り、意気投合するようになる。
漫画版ではこの順番が入れ替わっており。幸助と意気投合した後に、不良に絡まれている。
また後日に学校で再会し、不良を撃退した幸助を、勇者と褒め称えて、周囲を唖然とさせる話が追加されている。
その正体は、かつて異能組織「ディヴァイン」の施設で育てられていた異能者。
「結合」という、認識した物質やエネルギーを、結合させる能力を持つ。
だがその力が、燈と蒼司の異能と共に、ディヴァインが邪悪な目的に利用しようとしている事実を、組織の離反者に教えられる。そして本作より三年前に、彼らの手引で、ディヴァインから脱走。日本に逃亡して、捏造された戸籍の下で、札幌の学生として暮らしていた。
だが居場所をディヴァインに突き止められ、燈と蒼司が捕まり、自身も危機に陥る。だがたまたま雫を訪ねてきた幸助が、ディヴァインの刺客を撃退して助かる。
その後、捕まった燈と蒼司も、クロ達によって(漫画版では幸助自身の手で)救出され、ディヴァインは日本から撤退。
その後、再び日本の高校生として、元の生活に戻ることができた。
彼女の両親や、ディヴァインの施設に送られた経緯は不明。
だが「親という存在がいない」という記述や、書籍番外編では雫と燈は「同じ遺伝子から作られた双子の姉妹」という記述があり、常識外な出生の可能性が高い。
- 葛西 蒼司(かさい そうじ)
幸助と同じ学校の男子生徒で、燈と雫の幼馴染。
学校の不良達のリーダーで身長180センチの高身長で、幸助曰く「髪の毛ツンツン不良」。
一人称は「俺」で、幸助のことは最初「結城」と高圧的な態度で呼び捨てにしていたが、後に敬意を込めた口調で「結城さん」という呼び方に変わる。
雫と燈と共に、ディヴァインから脱走した子供の一人。
「寒熱」という、熱量の吸収·放出により、温度を操作する異能を持つ。
当初は幸助を、組織の追手と疑っていたようで。初対面の幸助を、他の不良達と共に取り囲んで、喧嘩を売るも同然の態度で詰問しようとしたが、駆けつけた燈によって止められる。
その後に幸助に、一応の謝罪をした。
ディヴァインに一度捕まり、救出された後。幸助に対して、これまでの態度を一変させ、彼を兄貴分のように慕うようになる。
彼の名前「蒼司」は、作中文章では何故か、漢字読みで書かれることは殆どなく、「ソージ」とカタカナ呼びで書かれている。
- 月野 燈(つきの あかり)
幸助と同じ学校の女子生徒。月野 雫の姉であり、赤髪ショートの美少女。妹と違い、明るく誰に対してもフレンドリーな人物。
彼女も雫と蒼司同様に、12歳の時にディヴァインを脱走した、異能者の子供。
「付与」という、他人の身体機能や異能の力を、増強させる異能を持つ。
蒼司と共に、一度ディヴァインに捕まるが、幸助の仲間達によって救出された。
彼女の名前「燈」は、作中では殆んど「アカリ」というカタカナ呼びで表記される。
- 水上 潤奈(みずかみ うるな)
水上 潤叶の妹で、幸助達と同じ学校の中等部に通う中学一年生。姉の潤叶と似た顔立ちの美少女。髪型はセミロングの黒髪を、赤いリボンで後ろ手に結ったポニーテール。
一人称は「私」で、幸助のことは「結城さん」と呼ぶ。
勝ち気で行動的な性格で、同時に短気でもあり、一度怒ると相手の言葉も聞かずに責め立てることがある。
姉と同じ水上家の術者だが、陰陽術師ではなく、「ディーネ」という水の妖精と契約した精霊術師。水を扱う精霊術を得意とする。
姉の潤叶を強く敬愛している。
漫画版の単行本番外編では、潤叶が幸助のことを探っているのを見て、姉が男性に対して(恋愛的な意味で)ストーカー行為をしていると思って、ショックを受けていた。
友人のアウルと共に、ある人物の策略によって、幸助を敵だと思って攻撃し、敗北した。
その後、誤解が解けて和解し、ウルに関することで、彼と連絡を取り合うようになる。
- アウル·メイザース
水上 潤奈の親友で、彼女と同級生の少女。イギリスから日本の中学校に留学してきた。金髪ショートの美少女。
イギリス人と日本人のハーフである。
一人称は「私」で、幸助のことは「結城さん」と呼ぶ。言葉の語尾に「〜〜です」をつける特徴的な喋り方をする。
常に礼儀正しく、大人しい性格のようだが。敵との交戦では、例え状況がおかしいと気づいていても、容赦なく攻撃する。
実はイギリスの魔術組織「黄昏と夜明け団」に所属する精霊術師であり、団長の「ロジウム·メイザース」の娘である。
雷の妖精「サンダ」と、土の妖精「グラン」と契約しており、雷と土の属性の精霊術が使える。
組織の秘宝の妖精種が盗まれる事件が発生し、それを回収するために、日本に派遣されてきた。
潤奈と共に、敵の策略によって、幸助と交戦するが敗北。
その後和解したが、探していた妖精種が結城幸助の手に渡っており、既に種からウルが生まれてしまっていて、妖精種が既にないことを知る。
そのため回収を諦め、ウルの様子を定期的に報告してもらうため、幸助と連絡先を交換することになる。
- 水上 龍海(みずかみ たつみ)
水上家の現当主で、潤叶と潤奈の父親。
一人称は「私」で、幸助のことは「結城くん」と呼ぶ。
常に厳格的で、幸助曰く、近くにいるだけで圧迫感を感じる貫禄があるという。
常に和服を着ており、漫画版デザインでは眼鏡をかけている。
かつては「北の龍」と呼ばれる程の実力者だったが。今は重い病にかかっており、戦闘に出ることはできない。
かなり計算深い人物。派閥内で問題が起きても、それをすぐに解決できる手を既に持っているにもかかわらず、あえてその手を使わずに、娘達に解決を任せて、彼女らの成長を促すという、腹黒い行いを見せた。
一方で、潤叶と幸助の関係を気にして、探りを入れてみると、未だに進展がないのを知ってガッカリするという、並の父親らしい一面がある。この話は漫画版ではカットされているため、二人の関係をどう見ているのか不明。
一章の時点で幸助の存在に気づいており、彼の活躍と人柄を評価する一方で、幸助の存在が知れると、本人の身に危機が及ぶと考え、各事件における幸助の関与の証拠を揉み消していた。
この龍海の配慮に、幸助が知るのは第五章から。それ以前は、幸助自身は、自分の存在が水上家側に、既に知られていることに気づいていなかった。
漫画版では、早いうちに幸助は、自分のことを水上家に明かしたため、第二章で幸助と龍海が、素顔で対面することになる。
その時の会話では、本題の他に、幸助の人間性を試すような発言をして、相変わらず腹黒い性格を見せた。
- 滝川 翔(たきがわ しょう)
幸助の友人の男子生徒。クラス内では幸助は、この滝川と石田の三人でよくつるんでいる。幸助曰く、茶髪のチャラ男一歩手前くん。
一人称は「俺」で、幸助のことは「幸助」と呼び捨てで呼んでいる。
幸助の出身地の市名と同じ苗字だが、何の関係もない。
女性にモテたい願望が強いようだが、女性と付き合ったことはない。
友人の幸助が、何人もの美少女と接点があるのを知って、何度もショックを受けている。
祖父がボーイスカウトの団員で、幼い頃から祖父に、山奥に連れて行かれて、過酷なサバイバル訓練をさせられていた。
そのため野外活動の能力は高いが、幼い頃の訓練のことは、本人にとってトラウマのようである。
- 石田 成行(いしだ なりゆき)
幸助の友人の一人。幸助曰く、クールなインテリ眼鏡くん。
一人称は「俺」で、幸助のことは「結城」と苗字で呼んでいる。
常に大人ぶっており、騒がしい滝川とは対照的な人物。
三つ歳上の、大学生の恋人がおり、既に結婚の約束をしているらしい。
- 相原 栄華(あいはら えいか)
幸助のクラスメイトの女子生徒で、潤叶の友人。潤叶からは「あいちゃん」と呼ばれている。
宿泊レクリエーションで同じ班になった以外では、幸助との関わりはない。
身長は170センチの高身長で、スポーツ万能のイケメン女子。クラス内では潤叶に次いで、男女共に人気が高い。
- イワコシンプ
三章から登場する、旭川一帯を仕切る大妖怪。通称は“ワコ”。水色長髪の妙齢の女性で、正体は化け狐。一人称は“私”。
書籍挿絵及び漫画版のデザインでは共に、複数の尾を持ち、和服姿で、頭に獣耳を持つ女性の姿で描かれている。名前から元ネタは、アイヌ伝承の狐の姿の山の妖精と思われる。
作中で“元九尾”などと言われることはあるが、現在の尻尾の本数は不明。漫画版だと、小さいコマで分かりにくいが、尻尾が九本あるように見える場面がある。
かつてアイヌの強大な術師に仕えており、クロとも親交があった。それぞれの土地で信仰を集めるようになってから、クロとは数百年会っていなかった。
かつては神居古潭の川沿いに住んでいたらしいが。現在は、多くの土地や建物を所有するオーナーになっており、かなり裕福な生活をしているようだ。
かつて主人が討伐し封印した“邪神”と呼ばれる強大な存在の、胴体部分の封印の管理をしていた。
だがある日、その封印の結界に、何者かが干渉したことに動揺し、私用で現場近くに来ていたクロ·リン·シロ達一行を疑って、部下を差し向けて、交戦する事態を起こした。
その後疑いは解いたものの、すぐに真犯人によって邪神の心臓を持ち去られる、大事態になってしまう。
邪神の心臓によって起きた騒動は、幸助の手で解決したが、肝心の心臓の行方は分からなくなってしまう。容易に持ち運べる代物ではないので、心臓は消滅したものと判断したが……。
彼女が仕えたというアイヌの青年は、具体的な詳細は語られないものの、幸助と同系統の力を持っていた可能性が示唆される。
漫画版では、事件の後の話で、原作にはない出番が追加され、温情深い人柄を見せた。
- セイ
イワコシンプの三人の部下の一人。少女の姿をした妖怪で、死骸を操る能力を持つ。
クロ達一行と、死骸カラスとの戦闘場面は、原作·漫画共に、インパクトのある場面だが。操っているセイ本人は、恐らく作中で最も影の薄い人物。
台詞は極僅かしかなく、詳細な描写は一切ない。漫画版では名前だけは出るものの、原作ではその場にいる筈の場面でも、その姿は一切なく、まるでそんなキャラクターはいないかのような扱いになっている。
作中用語
- オーブ
幸助が各所で見かける、浮遊する白い光の玉。その正体は、人間や動物の魂。かなり強い霊感がないと、優れた陰陽術師でも視認できない。
他にカラフルな光の玉もいるが、こちらは妖精で、陰陽術師でも見える。
作中当初から、何度か登場しているが、これらのストーリー上の意味はまだ不明。
- 陰陽術
日本に古来からあるという、超常的な力。五行の属性があり、術師ごとに得意属性が異なる。
霊力の消耗が多く、作中ではすぐに霊力切れを起こす描写がある。だが何故か幸助は、全く霊力切れを起こさず、いくらでも撃ち続けられる。
- 五大陰陽一族
日本にいる陰陽術師達を束ねる、五つの名家。
この世界の陰陽術師は、明治維新後は歴史の表舞台から姿を消したが、現在でも超常現象の解決などを日本政府から任され、国を裏側から支えている。
これらの勢力下にいない、フリーの陰陽術師もおり、幸助が術師として自己紹介する時は、フリーを名乗っている。
幸助が深く関わる水上家は、札幌に拠点を置く派閥であり、猫神=クロ等の、人間に友好的な妖怪と共存を謳う勢力である。
歴史的に新しい札幌に、何故古来からの陰陽術師の本家があるのかは不明である。
- 神前試合
陰陽術師同士で起きた問題解決に使われる儀式。真実や物品を賭けて、陰陽術で試合をし、勝者がそれらを得られる。
第一章で火野山家が、水上家に一方的な言い掛かりをつけて、この試合を申し込んだ。
その時の試合内容は、3vs3の混戦で。水上家からは、潤叶と潤奈、そして幸助が仮面で顔を隠して匿名で参加した。結果、水上家側の勝利に終わった。
- 異能
陰陽術とは異なる系統の超常的能力。エネルギー源に、人間の霊力を使う点は同じだが、陰陽術とは原理が大きく異なるとされている。
燃費が良く、威力が強力であることから、陰陽術よりも優れているとされる。だが一つの能力のみに特化しているため、陰陽術のような多彩な技は使えない。
陰陽術とは同時に習得はできないと、一般には言われているが。幸助含めた例外が、作中で複数人登場している。
- ディヴァイン
異能者達で構成された、世界中で暗躍する組織。ある人物いわく、組織の活動で多くの人が救われたが、亡くなった人も多くいる……とのこと。
異能を持つ子供達を、隔離施設に収容して、実験体兼ね、組織の構成員としての教育を施すなど、明らかに人道に反する行為も描かれている。この子供等の出生は不明だが、文章から見るにクローンと思われる。
組織の最終目的は、神を人工的に作りだし、その力で世界を支配するというものである。
その計画に必要な人材の、月野雫・月野燈・葛西蒼司が脱走し、日本の札幌に逃亡したため、幸助と対峙する原因となった。
- 妖精·精霊
イギリスの魔術師等が、能力強化の為に契約する霊的存在。これらと契約ができた者を精霊術師という。
妖精と精霊の違いは格の差であり、妖精が長い年月をかけて昇華した上位種が精霊である。幸助が契約したウルは、何故か妖精の段階を踏まず、最初から精霊として誕生した、特例の存在である。
妖精はカラフルな光の玉の姿をしているが、精霊になると人の姿になるとされているが。漫画版では妖精も同様に人の姿で描かれている。
- 学校
幸助達が通っている学校。何故か校名を誰も知らず(校門の札や、生徒手帳を見ても、誰も認識できない)、不自然な程に、その事実を誰も気にしない。
札幌市内の進学校。中高一貫校で、制服は男女共に紺色のネクタイブレザー。
高等部一年で二百人、中等部一年で百二十人という記載があるので、高等部·中等部総合で、全校生徒数は九百六十人と思われる。
その実態は、不遇な目にあいやすい「特別な力を持った子」達に、平穏な青春を過ごさせる目的で創られた、保護施設のような場所。
理事長の異能によって、そういった児童らが、自然とこの学校に引き寄せられる仕組みになっており。逆に彼らの力を利用しようとする悪意のある者は、この学校から遠ざかるようになっている。
生徒·教員の大部分は、何も知らない一般人。その中に、「水上 潤叶」「水上 潤奈」「月野 雫」「月野 燈」「葛西 蒼司」「アウル·メイザース」という、多数の特殊な力を持つ生徒が、一般人に混じって学生生活を送っている。
ただしこれは理事長曰く“幸助が把握している中”であるため、他にももっといると思われる。
ただ悪意のある者を遠ざける力は、完璧なものではなく。これが幸助が、超常的な事件に頻繁に巻き込まれる、最大の原因であった。
幸助は学校の正体を含めた、これらの事実を、第六章で知ることになる。
結城幸助が習得した技一覧
- 式神術
紙などを媒介にして、霊力で使い魔を作り出す陰陽術。
作中では、偵察用の鳥型や、戦闘用の鎧武者型が登場している。
通常の式神には意思はなく、内包している霊力がなくなれば、元の紙に戻るのだが。幸助が力を入れて作った式神は、完全にその常識から外れた存在になってしまう。
- 身代わり札
陰陽術で作られる人型の紙で、付けている者が受ける傷を肩代わりする。死に至る傷でも、札一枚消費することで、傷はすぐに再生する。
制作するには、五大陰陽一族の当主達が、長い時間霊力を込めて作り上げる貴重な物なのだが。幸助はそれを、一日に何枚も簡単に作れてしまう。
この事実は暴動の原因になりかねないと、身代わり札の作成能力があることは絶対の秘密にしている。
- 散炎弾
炎弾を連続発射する陰陽術。
弾道の軌道を変えて追尾弾として、敵を狙い撃ちする。足元から発射して、加速や飛行をするなど、いくつかの応用技がある。
- 炎焼燃壁
炎の壁を作り出す陰陽術。防御や敵の分断等に使用される。
- 飛ぶ斬撃
振った刀剣から、霊力の斬撃を飛ばして、離れた位置の敵を斬る陰陽術。威力は距離に応じて減衰する。
幸助は筆記用具のカッターナイフから、この技を繰り出した。
他に作中で、手刀でこの技を放った者もおり、発現用の武器は、必ずしも必要ではないようだ。
- 結界術
結界を作り出す陰陽術。単純な防御用の他に、特定の相手を拒否したり、捕獲したりと、様々な応用技がある。
幸助は自分の家周辺に、泥棒対策のために「悪意を持つ者」を拒む結界を張っている。それによって敵の刺客の侵入を防いだことがある。
- 溶解
触れた物は、どんな物質でも溶かす、殺傷力の高い異能。
幸助はこれで、リンゴを溶かしてリンゴジュースを作ったり等に利用した。
- 玩具
周囲の物質を利用し、命令に忠実に動く人形を、十二体まで作り出す異能。
漫画版で工事用車両を人形化した物は、トランスフォーマーのような特撮ロボットにそっくりなデザインで描かれた。
- 強化
自身の身体能力や、触れた物質を、強化する異能。
単純な能力だが、戦闘で使いやすく。幸助が格闘戦などで、頻繁に使う技である。
- 製鉄の歴史(アイアンヒストリー)
地中の砂鉄や、周囲の鉄材を操作して掻き集め、鉄製ゴーレムを作り出して操る魔術。
幸助はこの技で、鉄製ゴーレムを数十体作り、多勢の敵を無傷で拘束する等に使用した。
- 愚者の大軍(アーミーオブフールズ)
動物や思考力の低下した対象を、支配下に置く魔術。
凶暴な熊でさえ、飼い犬のように従順にすることが可能。
- 神の小刀(カムイマキリ)
事象や概念すら、一振りで剥ぎ取ることができる小刀を生み出す。既に力を失った、アイヌの神器から力を読み取って習得した。
敵の術を、全て無力化する凄まじい力を持つが。制御が難しくて、他の技と同時に使うことはできない。