概要
一般に木・石・金(属)に印を彫ることをいう。慣例的には「印字(や図柄)を印材に刻む事」という動作そのものを指す言葉として用いられ、「篆刻する」と表現した場合は「判を彫る事全般の動作を行う」となる。その中で彫り込む材質によって石判(石彫判子)や木判(木彫判子)等に分かれるという認識が、現代一般的な日本での篆刻という言葉の意味合いとなる。
この「篆刻」の類義語として「刻印」があるが、両者をより厳密に差別化する場合、刻印が「印を彫る事全般を指す」事に対し、篆刻は「篆書か隷書(特に篆書)を印として刻む」事を指す。故に厳密な言葉の意味としては、印として絵を彫り込む事に「篆刻」という単語を用いる事は間違いなのであるが別段、国語のテストではないのでその辺りは割愛すべきであろう。何より既に篆刻という言葉が上記の意味合いとして市民権を得ている様相は、Pixivの篆刻タグを御覧頂ければ一目瞭然である。
素材
石材への彫刻が最もポピュラーであるが、近い分野である消しゴムはんこやゴム判と比べてかなり異なる技術と知識を要し、何よりデザインナイフ数本で行うゴム判に比べ彫刻道具の種類が多く必要な点でかなりの違いがある(中には一本の印刀で全てを行う御仁も居られるらしいが)。しかも自前で彫刻刀の改造、メンテナンスを行えなければ瞬く間に財布が軽くなる為、生中に独学で学習するよりはキチンと教室などに通って教えを受ける方が体得の上で遙かに近道となるのでご検討されたい。
しかし一方で石判とゴム判とで需要が石判に偏るかといえば否で、実際にはゴム印の方が敷居も低く材料も加工道具も入手しやすく、何といっても圧倒的にゴム印の方が押印しやすく印影も美しい為、石判は総じて取り付く島を見つけ難い(しかも石材は天然素材である為、近年は石質が下降傾向にある)。更に石判は刻印する石材も数多に存在し、軽く列挙しても基本の青田石から始まって巴林石、昌化石、寿山石といった多種の材質が存在し、上記の分類も更にその中で小分類化される為、尚更に初心者にとっては極めて敷居が高いとも謂えよう(基本的には青田青白章石で充分に練習、出展が可能である。筆者も高級な分類に入る江陵凍石などで彫ってみたくはあるが、上達の為には数をこなすのが最適である為、叶わぬ夢であろう)。興味を抱かれた方はこれらの石材価格を調べてみると、石判の世界を垣間見る事が叶う。
慰めという訳ではないが、石彫判子に関しては技術をひたすら研鑽していけば象牙にすら刻印できる上限の凄まじさも特徴であり、職としても雇い口はゴム判より石判の方が多いのは実際である(但し雇用数は後述参照)。
職業としての判彫り
主に展覧会などに出展する書道作品には必ず篆刻の行われた本人印が押印されるが、その行為「落款」と称する(故に落款用の印は「落款印」)。他方で日展では篆刻作品単体での出品、評定も行われており、日展で受賞するレベルになれば篆刻のみで食碌を得る事も夢ではない。プロに落款の作製を依頼する場合、大凡の目安としては1cm未満の大きさの文字で一文字に対して一万円を乗算して頂ければ良い。上は無論ながら青天井である(芸術文化を甘く見てはいけない。冗談ではなく本当に青天井なのである)。
無論ながらゴム判の技術でも食禄を得る事は可能であるが、機械化などで現在ではかなりシェアが少なくなった印鑑業界に占める売上割合はごく一部である為、その辺りは覚悟を持って臨まれたい。厳密にはゴム判ではないモノの、ゴム判技術として身近なプロの作品を目に出来るのは何といっても、日本国内陶磁器を裏返して見る事が出来る高台内の窯印である。更に突き詰めると、陶磁器のパターン化された紋様も同様の技術で作製され、そういった意味では金型技術もある種、この延長上にあると謂えようか。
珍しい所では、過去の日本で手紙に押印された本人証明の花押も判の部類に入る。
関連タグ
刻印する石材について詳しいお店
篆刻のオーダーメイドを受け付けているお店
大阪教材社(左メニューの最も下)
キョー和(【商品一覧】→【セット・印箋・印譜・集印帳・印箱・篆刻刻料表 他(34)】)