概説
古代国家における皇帝専用の印鑑。
主に国書への印判を成すために用いる、いわば「国家の意思決定」の表れとしての印である。
日本の皇族が代々継承しているものは、別個に「御璽(ぎょじ)」と呼んでいる。
そのため主に「玉璽」と呼ばれるのは、古代中国王朝で用いられた「伝国璽(でんごくじ)」である。
伝国璽
それまで、中華統一王朝の象徴は「九鼎(きゅうてい)」と呼ばれる鼎であったが、始皇帝が周を滅ぼした際、その混乱の中で泗水(泗河)に回収した九鼎を落として喪失してしまう。
その後、霊鳥の巣が見つかり、そこに宝玉があった。
始皇帝はこれを瑞兆(天のお告げ・祝福)と捉え、宰相の李斯に命じて璽へと作り変えさせ、自身専用のものとした。
同時に、それまで【璽】は判子全般を指す漢字だったが、始皇帝は「皇帝専用の印判のみに使用する」と定め、皇帝の用いる印鑑のみを「璽」と呼ぶようになった。
これ以後、材質と名前による格付けが為されるようになる。材質は上から玉、金、銀、銅、名前は璽、章、印の順であり「玉璽」はその最上位に当たる。したがって玉璽を所有・使用できるのは天子すなわち皇帝のみとされ、臣下には立場に応じた序列のものが下賜された。
また、鈕(つまみの部分)の意匠や飾り紐の色や形などの組み合わせによって印影を見なくとも持ち主の大まかな身分がわかるようになっている。
印の持ち手に龍の彫刻が為されている。
伝承では、前漢代末期に権力簒奪を目論んだ王莽の使者が、元帝の皇后・王政君に保管された伝国璽の譲渡を迫った際、王政君が怒りのあまり「王莽の恩知らずめ!」と罵って使者に伝国璽を投げつけ、龍の片角を折ってしまったと伝わっている。
折れた角は金で補修され、以後は伝国璽が本物である証左として、欠けた角を金で補修していることが挙げられるようになった。
以降、九鼎に代わって伝国璽が権力の象徴となり、漢王朝、三国時代と受け継がれ、権力の象徴として受け継がれていった。
『三国志』でも重要な宝物として登場。
西洋における「レガリア」、日本での「三種の神器」と同類のものでもある。
最終的に、五代十国時代に後晋の出帝が遼の太宗に捕らえられた際に紛失。
以降、伝国璽は歴史から姿を消し、後進の歴代王朝では伝国璽を模した玉璽を作り、それを用いている。
関連タグ
金印:玉璽を持つ皇帝の臣下に与えられた判子。日本の国宝である「漢委奴国王印」や、卑弥呼に与えられたと言われる「親魏倭王印」はこれ。
三國志:コーエーの制作したゲームシリーズ。玉璽=伝国璽が登場し、プレーヤーがこれを持っていると皇帝を自称するイベントが起こせたりする。