概要
冥月が『養殖領ヤーハン』の森で出会った和人の少女。本作のメインヒロイン。2m近い筋骨隆々とした長身に加えて放漫な胸と下半身を備えた、かなり恵まれた体格をしている健康的な褐色肌の偉丈夫…もとい美少女。これでもまだ15歳らしい。
ほかの和人と同様に日本人に近い顔立ちだが、黒髪の中に金髪が一房だけメッシュ状に混じっており、瞳は右が碧眼で左が真紅のオッドアイとなっている。
物心ついた時から言語以外の文化と遮断された環境で育ったため、羞恥心をはじめとした文明人的な感情は希薄であり、全裸を見られても全く意に介さない。服装は獲物から剝ぎ取った獣皮で必要最低限の面積を隠しただけという煽情的なものだが、これは本能的に急所を守ろうとした為らしい。
人物像
野生児じみたプリミティブな容姿通りの純粋無垢な性格。一人称は「俺」で口調も男口調だが、これは育ての親であり兄貴分だった『平蓮(ひょうれん)』やヤーハンの集落の和人たちの影響だと推測される。
当初は自らを人間とも思っておらず、EMS人のために生きて死ぬだけの種族だと語っていたが、冥月との出会いで自己意識に変化が生まれてからは無邪気な少女らしさを見せるようになった。一方で、勇猛で情に厚い女傑の片鱗も現し始める。
元々はEMS人に放牧される形でヤーハンの和人の群れの中で暮らしていたが、平蓮がEMSに召集されたことへ悲観的な態度を見せたために、EMSに従うことが喜びと刷り込まれていた他の和人たちから異端者として爪弾きにされてしまい、ヤーハンの片隅で自給自足のサバイバル生活を送っていた。
冥月と出会ってからは彼が持つ現代日本の価値観・死生観・道徳に感化され、一人の『人間』として生きたいと願うようになり、彼にとって心強い相棒となる。
冥月を兄貴分として慕う一方で異性としての恋愛感情も抱いているようだが、文明人的感情の希薄さと純粋さ故に莉乃本人はこれを理解しておらず、生殖本能と一纏めにしている。
独りきりで猛獣を相手に狩猟生活を送っていたため、筋骨隆々とした体格に恥じず、身体能力と戦闘力はかなり高い。狩猟道具としても使っていた経験から手斧の扱いに長けており、EMSや魔螂族との戦いにおいても手斧を得物にしている。
冥月に呼応するように理気使いに目覚め、EMSとの追走劇の中で麒麟族の宝珠である『炎駒帰和(えんくきわ)』を手にしたことで『火の麒麟将』として覚醒する。また本人は無自覚だが、理気を通じて星が持つ記憶から知識を得ているらしく、知力や語彙力を急速に身に着けて知勇兼備の将へと成長し、冥月を驚かせている。
麟眼・炎駒帰和
ヤーハン近くの遺跡に安置されていた、所有者の潜在能力と理気を何倍にも引き出す赤い宝珠。『炎駒』とは中国の五行思想において『火』を司る幻獣の名前。その名前の通り、身に着けた者に強力な火属性の理気の加護を授ける。
冥月たちと共に遺跡に逃げ込んできた莉乃を主と認めると、彼女が持っていた手斧を吸収し、指輪となってその指に収まる。手斧と融合したことで炎を纏った赤い戦斧を召喚する機能を獲得しており、以降はこれが莉乃の得物となる。
麟眼には所有者の深層心理を反映した衣服や防具を仕立てる機能も存在するが、莉乃は先述のように被服という文化自体を知らなかったため、衣服が変化することはなかった。
また、莉乃は清白から何か吹き込まれたようで、炎駒帰和を左手薬指に嵌めることに拘っている。
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双極の魔眼を持つ少女、その出生の秘密
※これより先は物語の根幹にかかわる重大なネタバレが存在します |
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清一「そう、彼女は……私とここにいるクララの娘だ」
莉乃と平蓮の間に血縁関係は無く、10年以上前にヤーハンを訪れた二人の男女から平蓮に預けられ、今日まで育てられた。その男女こそ莉乃の両親であり、『太陽を喰らう者ギラファ』こと『斎部清一』とEMS帝国宰相『クララ・ガドウィン』の二人だった。莉乃が和人でありながら、メッシュ状の金髪や碧眼と赤眼のオッドアイといった特徴を備えていたのは、赤い瞳を持つ斎部一族と西洋人の混血によるもの。
15歳という年齢には不釣り合いな体格も「赤い瞳の女性は極端に発育が良いか、10代前半で成長と老化が止まるかのいずれか」という斎部の血筋に起因する。彼女の正体と出生を推理するための材料の多くは物語の序盤で既に出揃っていたのだ。
清一とクララは、元々は冥月や清白と同じ時代と世界の出身であり、恋人同士であった。しかし、時空移動の実験により現代に現れたEMS元老院議長パウリナ・イェンセンと遭遇し、日本人である清一は和人の奴隷として、西洋人のクララはEMS人としてEMSの世界へ連れ去られてしまう。その後、クララはパウリナの手により記憶の改竄と洗脳を施され、冷酷な為政者と化してしまう。しかし、『禁足地』の調査に奴隷として同行させられた清一が麟眼を手に入れ、EMS内乱の際に『太陽を喰らう者』と化して暴れ回る姿を見たことで和人への畏怖が生じ、現実逃避をするようにかつての優しかった少女の人格と記憶が多重人格として表出するようになった。
そして18年前、禁足地で謎の化石を発掘したクララは、これがEMSを滅ぼし得る存在であることを悟る。その発掘作業中に落盤事故に巻き込まれ、現地民の爬人に助けられたことで『少女』の人格に主導権が移る。その後療養と称して清一とともにヤーハンへ渡り、EMSを打倒するための準備を行うことを決意・・・・・・したまでは良かったものの清一と長期間一緒にいたことにより、かつて奪われた日常・・・すなわち普通の恋人として過ごしたいという願望が首をもたげてしまい、クララは莉乃を身篭ることとなった。
妊娠と出産を隠蔽しなければ莉乃の身に危険が及ぶと考えた二人は、ヤーハンの和人から莉乃の育ての親となる人物を探すことになり、その末に選ばれたのが平蓮であった。
二人は平蓮に仕込まれていたEMSによる洗脳を解きつつ、テレパシーを通して人として生きるための知識をインプットすると、「赤ん坊が『莉乃』という名前であること」「自分の家族として愛情を以って育てて欲しいこと」「EMSよりも家族が大事と教え込むこと」を厳命し、その場を後にした。
莉乃が勇猛で情に厚い、強さと優しさを持ち合わせた女傑であるのも、両親の血統と平蓮の育児の結実だろう。
以降、クララは科学者・アルルという偽の身分を作り、ヤーハンの研究施設でEMS打倒のための研究を秘密裏に行いながら莉乃のことを見守っていた。
そのため、清一の妹である清白とは叔母と姪の関係、クララの娘(厳密には彼女の遺伝子を元に作られたデザイナーベビー)であるヴィルヘルミナとは(一応)姉妹となっている。
尚、冥月は清一とクララの二人とは固い信頼で結ばれた親友同士だったこともあり、未来の婿養子として太鼓判を押されている。