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麒麟将

きりんしょう

『麒麟将』とは、小説投稿サイト『小説家になろう』にて連載されていたファンタジー小説。全170話。
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概要編集

著者は水無月花鏡(みなづきかきょう)。サイト内では『花鏡』名義。2020/12/27より連載されており、2021/6/2に投稿された後日談を以て完結。

家畜人ヤプーからインスピレーションを受けた著者が世界観をオマージュしつつ、転生ものベースの成り上がりファンタジー活劇として再構築した作品となっている。性描写や残虐描写は少年誌程度に抑えられてはいるが、著者によるレイティングは一応R-15指定。


あらすじ編集

主人公は自宅での読書中に突然の大地震に見舞われ、倒れてきた本棚の下敷きになり意識を失う。

再び意識が覚醒すると主人公は暗闇の中で体を拘束されていた。闇の向こうから聞こえる声。

これが例の被験体です、新月の夜に捕獲したことから『冥月(めいげつ)』と呼んでいます」

外の会話から底知れぬ悪意と同時に生命の危機を感じた主人公は力一杯身体をひねり、拘束具を引きちぎらんとする。するとなんと体から雷が放たれ、拘束具を焼き切り、目の前の闇に穴を穿つ。

箱から脱出してまず目に飛び込んできたのは、悪意のこもった視線を主人公へ向ける金髪碧眼の美女二人。自身を取り押さえようと襲い掛かってくる彼女たちへ先ほどと同じ電撃を浴びせ、一瞬の隙を突いて主人公は自らが囚われていた部屋から脱出した。


主人公改め冥月は逃げ延び流れ着いた森の中で、たった一人で原始的な生活を送る少女・莉乃(りの)と出会う。彼女の口からこの世界は人種至上主義が蔓延り、金髪碧眼を持つ『EMS(イムス)人』以外は徹底して家畜・奴隷として扱われる世界であることが告げられる。


追手との戦いの中、紆余曲折を経てEMSに虐げられている人々を救い出した冥月は彼らから恩人として慕われることに…。他者の命と尊厳を平然と弄ぶEMSの非道な行いの数々を目にし、自身と世界の真実の一端を知った冥月は全ての生きとし生けるものたちの自由と尊厳のために、思いを新たにEMSと戦う決意をする。


白光を纏いし麒麟の将の、歪んだ世界を革新するための戦いの旅が幕を開ける____!



主要人物編集

冥月一味【麒麟将】編集

冥月

主人公。現代日本で生まれ育ち、司祭として人々の悩みを聞きながら己を磨く日々を送っていたが、突然の大地震により命を落とし異世界に10代後半の姿で転生する。

転生直後は前世の記憶を失い彷徨っていたようだが、『メイプル』と呼ばれていた未知の生物の化石との接続実験の被検体にされたことで、断片的にだが前世の記憶を取り戻す。しかし前世の名前はまだ思い出せていないため、人体実験中に呼称された自身のコードネームである「冥月」を名前として名乗るようになる。

戦闘時には『メイプル』由来の超能力である理気と電撃を操り戦う。また、前世では自己鍛錬のひとつとして剣術を学んでおり、棒状の物を変化させた直剣『麒麟剣』を得物とする。

この世界に伝わる伝説により、敵味方双方から『麒麟将』と呼ばれるようになる。

前世での職業柄、聡明かつストイックな性格の博愛主義者。たとえ悪人や敵対者が相手でもその罪を憎みこそすれ相手は憎まず、無意味な殺生もしない懐の深さを持っている。一方で、改心や自身の過ちを正す兆しすら見せないような悪人には全力で立ち向かい、これを討つ姿勢を見せる。


莉乃

冥月が「養殖領ヤーハン」の森で出会った和人の少女。本作のメインヒロイン。190㎝前後筋骨隆々とした長身に加えて放漫な胸と下半身を備えた、かなり恵まれた体格をしている褐色肌の美少女。これでもまだ15歳である。黒髪の中にメッシュ状の金髪が一房だけ混じっており、瞳は右が碧眼、左が真紅のオッドアイとなっている。

冥月と出会ってからは彼が持つ現代日本の価値観・死生観に感化され、一人の『人間』として生きたいと願うようになり、彼にとって心強い相棒となる。

冥月に呼応するかのように理気に目覚め、EMSとの追走劇の最中に麒麟族の宝珠である『炎駒帰和(えんくきわ)』に認められたことで『火の麒麟将』として覚醒する。


斎部清白(いむべすずしろ)

ヤーハンの研究施設に囚われていた赤い目の少女。実年齢は22歳だが、発育が10代で止まり老化も緩やかという特異体質の持ち主である。そのため出会ったばかりの冥月達からは年下だと思われていた。古風な口調で話すが、それも自らの容姿ゆえに年齢通りに見てもらえないことへのコンプレックスによるもの。

冥月と同じ世界と時代の出身であり、向こうの世界では女子大生として生活していた。また、独自の流派の剣術も習得しており、純粋な剣の技量ならば冥月にも引けを取らない。

EMSとの戦いの中で麒麟族の宝珠である『聳孤扶幼(しょうこふよう)』に主として認められ、『水の麒麟将』に覚醒する。覚醒してからは青い着流しと陣羽織を纏うようになる。


ベルゼルト

恵まれた体格の豪胆かつ物腰柔らかな性格の爬人の青年。清白とともに捕まっていたところを助け出してくれた冥月に恩義を感じ、ヤーハンからの脱走の後、EMSからの逃亡も兼ねて彼に同行する。

力仕事や技師として冥月たちを支える。


ボティス

ベルゼルトとともにヤーハンを脱出した爬人の少年。電子機器や計器の扱いに心得があるようで、後に冥月たちが手に入れた移動拠点であるフリューゲル号のオペレーターとしてアルルとともに冥月たちの戦いを後ろから支えるようになる。


アルル・クウォーグ

白衣に顔の半分を覆うゴーグル型のバイザーといういかにも怪しい科学者じみた風貌のEMS人女性。ヤーハンの研究施設に迷い込んだ冥月と莉乃の二人と遭遇し、成り行きで行動を共にするようになる。ヤーハン脱出後はしばらく別行動をとっていたが、後にEMS上層部の薄情さへの嫌悪感と危機感から自らの意思で冥月の下に下る。以降は参謀兼技術者として冥月たちの旅を支える仲間となった。


マスティマ

土の宝珠『角端養綏(かくたんようすい)』を持つ『土の麒麟将』である爬人の少女戦士。簡素な鎧にケープという流浪の騎士のような恰好をしており、弟のルシルと従者のフォルネスの三人でEMSから逃れるように世界中を放浪していた。

かつてはヴァスタ大陸の爬人収容施設に囚われていたが、ある爬人から渡された宝珠を手にしたことで理気が暴発。施設を崩壊させ、その機に乗じてルシルとフォルネスを連れて脱走した。

その後、放浪生活中にEMSに再び捕らえられルシルを人質にされたことで、アレーナルベルス城城主キャサリン・フリューゲルの用心棒として働かされていた。

永い間EMSの爬人狩りと戦いながら放浪生活を送ってきたため戦士としての腕前はかなり高く、理気や属性攻撃は冥月も一目置くほどの練度と威力を誇る。

理気とは何たるかを熟知しており、冥月たちによって弟とともに救出されてからは理気使いとしてまだ日の浅い彼らにとって師のような存在となる。


ルシル

マスティマの弟。人質として捕らえられていたが、アレーナルベルス城に潜入した清白とアルルによって無事救出される。


フォルネス

マスティマの従者である爬人女性。礼儀正しく謙虚な、従者として絵に描いたような人物。マスティマと共に放浪生活を送ってきたため、彼女には及ばずとも理気使いとして高い実力を持つ。

冥月たちにマスティマとルシルの救出を依頼するが、実はフォルネス自身もEMSによって二人を人質に取られ、開放を条件に冥月たちの動向を探らされていた。

マスティマたちが無事救出されると自らの行いを悔い、冥月もこれを赦す。その後、フォルネスが元スパイとして爪弾きにされることを危惧した冥月の計らいで、彼がフリューゲル号艦長へ就任した際に「監視」を表向きの口実として艦長秘書に任命される。



EMS貴族編集

クララ・ガドウィン

EMS帝国宰相。美貌の奥に冷徹な覇気を纏った美女。自他共に厳しくも頭脳明晰と評される、実質的なMESのトップであることに恥じない才女でもある。

EMS国内で禁止されていた『禁足地』の発掘調査の解禁、更には発掘品である『メイプル』を使った人体実験も彼女の提案によるものであり、冥月が記憶を取り戻す間接的な原因を作っている。冥月に行われた実験の場に居合わせており、彼がこの世界で初めて遭遇した人間の一人。脱走しようとする冥月をノリスとともに取り押さえようとしたところを、彼の放った電撃をモロに受けてしまい、しばらく意識不明となっていた。

EMS貴族らしい他種族への高圧的な気運を放っている一方で、EMSに虐げられている者たちへある種の哀れみのような感情も抱いているようだが…?


ノリス・イェンセン

アルディス大陸を治める総督。下等生物と見下していた和人である冥月が、平均的なEMS貴族を上回る理気を発揮したことで彼を危険視し、幾度もその行く先々に立ちはだかった。

大陸中央都市アルデアにおける直接対決の最中、カマキリの怪物のような姿に変貌し敵味方関係なしに暴れ回り冥月たちを苦戦させるものの、ヴィルヘルミナと共同戦線を張った冥月たち麒麟将の前に敗れる。


ヴィルヘルミナ・ガドウィン

クララの娘である少女。役職はEMS正規軍大佐。当初は母を意識不明に追いやった冥月への復讐に燃え、EMS貴族らしく当初は冥月と莉乃を下等生物として見下していたが、刃を交える中で冥月たちの高潔さや意志の強さから和人と爬人に対する認識に疑念が生まれる。

冥月たちの討伐における失態続きと和人たちに対する感情の変化や、冥月らがノリスを撃破することに協力していたことで立場が危うくなり、EMS内の不和を抑えるためのスケープゴートとして処刑されかける。しかし独房へ監禁されているところを突如現れた謎の男・ギラファにより助け出される。「自身が虐げてきた全ての生命のために戦う」という新たな決意を胸に、ギラファから与えられた試練を突破して風の宝珠『獬豸遊聖(かいちゆうせい)』を手に入れ、『風の麒麟将』となる。

その後はEMSから離反し、自らの贖罪とEMSの過ちを正すため冥月とともに戦う。


パウリナ・イェンセン

ノリスの姉にして元老院議長を務めるEMS政府ナンバー3。美しくも冷徹な美貌を備えた為政者だが、自分以外の存在は全て自分のための駒か下賤な下等生物としか見ない、利己主義と傲慢と悪意の化身のような人物。

上記の性格ゆえ冥月たちの実力を何度も見誤り続け、傲慢な悪役のテンプレと言わんばかりに幾度となく煮え湯を飲まされることとなる。


ロベルト・イェンセン

ノリスの秘書でありパウリナの愛人でもある長身の美青年。秘書としての業務やノリスの研究の補佐など、主にデスクワークが専門だが簡単な念力や気配遮断の心得も有り、一般人よりは強い。ノリスの変容を目撃し、これを元老院に報告したが、ノリスを見殺しにした言い訳と一蹴されてしまい、冥月のテロ行為へ加担したという冤罪で監獄都市ヴァスティーユに投獄される。後にヴィルヘルミナからの頼みを受けた冥月によって救出され、以降は冥月たちの拠点であるラクィア大陸へ亡命する。


メアリ・デルフィア

EMS軍元帥兼ガリアス大陸総督。かつての内乱でギラファと交戦した際に左目を失っており、自らをさらに鍛え上げるための原動力として再生手術を受けずにいることから、単眼将(モノフタルモス)の二つ名で呼ばれる。

ギラファに勝つことのみを目指して鍛えぬいた力と技はEMS最強と名高く、理気使いとしては最高位である『超越者(アイヌア)』に匹敵する。


ハンナ・テラシア・オフィルアス

EMSの女王。荘厳な気運と覇気を纏った、まさしく天帝という言葉が相応しい女傑。

和人や爬人、そして麒麟族へ絶対的な敵意を向けるが、性格はノブレスオブリージュを体現したような高潔な精神の持ち主で、汚職や互いの揚げ足取りといった自らの地位に伴う覚悟もない者たちの私欲が渦巻く現在の元老院を内心軽蔑している。


オリン&フィーア

パウリナの娘にして、彼女直属の特殊部隊『マルクト』に所属する双子。性格は年相応の少女らしさを感じさせつつも母譲りの傲慢極まるもので、作者からもキャプション内でメスガキ呼ばわりされている。

アルディス砂漠で冥月たちを取り逃がした後、黒衣の男によって異空間を漂流するフリューゲル号の甲板へ送り込まれるも、冥月と莉乃の前に敗れる。冥月から降伏するよう迫られた直後、黒衣の男によって刻まれていた紋章から火が上がり、悶え苦しみながら甲板から異空間へ転落していった。


キャサリン・フリューゲル

アレーナルベルス城城主である30代ほどの女性。かつてはEMS貴族としては珍しい博愛に満ちた才女で、反女王派として和人や爬人のための人権運動を行っていた。しかし、ある時期を境に人が変わったかのように和人と爬人を差別するようになり、性格面もEMS貴族らしい傲慢なものへと変わってしまった。パウリナから「もう従うしかない傀儡」と言われており、豹変には何者かがかかわっていたらしい。

ノリスと同じようにカマキリの化け物へと変身し冥月たちに襲い掛かるが、マスティマの加勢を受けた冥月によって倒される。今際の際にかつての人格と記憶を取り戻し、罪滅ぼしとして冥月たちへ自身の全財産を託し息絶えた。彼女の慈愛の心と意志は、彼女より託された発掘戦艦・フリューゲル号の艦名として冥月たちの胸に生き続けている。


オットー=ティーネ・オフィルアス

EMS王族の一人にして天才科学者。研究や目的のためならば他者どころか自分の命すらも顧みないマッドサイエンティスト。EMSで現在用いられている理力兵器や生体兵器の多くは彼女による発明である。影武者、あるいはスペアの肉体として自身のクローンを無数に従えている。



その他編集

平蓮

莉乃の兄。現在はEMSに召集され消息不明となっている。


セザンヌ

ヤーハン脱出直後に冥月たちが身を寄せていた無人の屋敷の主だった人物。キャサリンと同様にEMS人でありながら他種族への差別意識は持っていなかったらしく、歴史の闇に葬られたこの世界の真実や麒麟族の遺跡について研究していた。

現在は屋敷と研究資料を遺して失踪しているが、冥月がこの世界の一端について知るきっかけとなっている。


ギラファ

黒衣と漆黒の鎧を纏い、顔を東洋龍を思わせる仮面で隠した異様な出で立ちの、赤い瞳をした男。二振りの剣を得物とする。かつてEMS内乱の際にこれに乱入し、正規軍と反乱軍双方に甚大な被害をもたらした。この時にメアリと交戦しており、以後、彼女に仇敵として執着されるようになる。その暴れ様からEMSでは『太陽を喰らう者』と呼ばれ恐れられている。

理気使いとしては既に最高位である超越者に至っている。彼もまたEMS打倒を掲げているらしく、冥月たちの行く先々に現れては彼らを助けたり、また時には障害として立ちはだかるなど、まるで冥月たち麒麟将を育てようとしているかのような行動を取るが、その真意は謎に包まれている。

冥月を『詠冥(よみくら)』とどこか親しみを込めて呼ぶことから、彼の前世と失われた本当の名前について何か知っているようだが…?


スサノオ

ラクィア大陸に住む少女。金髪碧眼というEMS人と似た容姿をしているが、日本風の名前のほかにマタギのような狩猟衣を身に着け、その瞳には温和な気運を宿している。普段は修道都市アラドラキアスを中心に各都市のまとめ役のようなものを任されていた。

彼女以外にも、ラクィア大陸には大昔に和人や爬人とともに亡命してきたEMS人の子孫たちが暮らしている。


オリンフィア

ティーネがオリンとフィーアの細胞から生み出したクローンに、遺体からサルベージした記憶を移植した生物兵器。記憶は生前のままだが、口調はかなり乱暴なものへと変わっている。

3メートル超筋骨隆々とした青灰色の巨体を持ち、身に着けているものはビキニアーマーのみという、出自も併せてフランケンシュタインの怪物の女性版を連想させるいでたちをしている。


清一(きよかず)

冥月の前世の記憶と思わしき夢に出てきた男。冥月の大親友であり、剣術の師匠でもあった。後に冥月が思い出した記憶によれば、本編開始の数年前に恋人とともに留学先で行方不明となり、現在も見つかっていないらしい。



作中用語編集

種族編集

EMS人

「万星帝国(Empire of the Million Stars)」通称EMSの民。金髪碧眼に色素の薄い肌という西洋人種に似た特徴を持ち、優れた科学技術も有する種族で美男美女揃い。しかし、上流階級の多くは利己的で傲慢な性格かつ他種族に対して侮蔑的で、時には同胞すらも平然と切り捨てる。

実力主義の階級社会のため力を示せば平民でも貴族階級へ加わることが可能だが、平民には貴族たちによる重税が敷かれており、一部の地域を除いて日銭を稼ぐことに精いっぱいで十分な教育を受ける機会が得られないのが現状である。そのため、多くの平民はこの世界の在り方に疑問を抱くことも、異を唱えることもできずに貴族たちに支配され搾取され続ける生涯を送ることとなる。

女王からなる女性優位社会でもあり、政治家、軍人、科学者などの政府の要人・要職のほとんどが女性で占められている。


和人(わじん)/卑猩(ひしょう)

黒髪に薄橙あるいは褐色の肌という東洋人種の特徴を有する種族。文化や言語も現実の東洋人、特に日本のものに近しい。『和やかなる者』の意から和人と呼ばれる。

EMSからは「卑猩」と呼ばれ、各地に点在する養殖領で生物兵器や生体ユニットの「材料」として放し飼いにされている。養殖領で暮らす和人の多くは、自分たちが家畜として消費されることが至高の喜びであり世の理であると信じ切っている。


爬人(はじん)/隷爬(れいは)

和人の身体的特徴に加え、耳など体の所々が鱗で覆われており、トカゲのような手足と尻尾を持つ種族。『地を爬(か)く者』の意から爬人と呼ばれる。

屈強な体と底知らずな体力が最大の取り柄であり、このことからEMSでは「隷爬」と呼ばれ労働力として酷使されている。

EMSによる支配が進んだ世界でも旧世界を綴った伝承や麒麟族への信仰を守り続けており、冥月たちに理気の極意や世界の真実の一端を告げている。

この世界に伝わる伝承では「麒麟族」と呼ばれる高次元生命体と和人の混血児の末裔だと言われている。その伝承に違わず、マスティマをはじめとした爬人の多くは理気使いとして高いポテンシャルを持つ。


麒麟族

太古の昔にこの世界を治め、あらゆる命を見守っていたとされる高次元生命体。メイプルが化石になってもなお冥月に力や助言を授けていたように、高次元の存在ゆえに生死すらも超越している。

かつて人類をはじめとするこの星のあらゆる生命体と共存共栄の道を歩んでいたが、魔螂(まろう)族との抗争の果てに衰退し、所有者の潜在能力を引き出す宝珠である『麟眼』をはじめとしたオーパーツを各地の遺跡に遺して歴史の表舞台から姿を消した。


魔螂族

かつて麒麟族を打ち破り、和人や爬人たちを家畜へと堕とし、星の覇権を握った惑星外からの侵略者。知的生命体の脳に寄生し、その理気を喰らいながら成長するが、女性の胎児にしか寄生できないという弱点を持つ。EMS人女性が持つ他種族への侮蔑的な態度や利己的な思考も魔螂族の寄生による影響である。また、魔螂族は宿主が生命の危機に陥ったり、負の感情が爆発したときに宿主の身体と意識を乗っ取り、怪物のような戦闘形態へと変身することができる。これを『魔螂羽化』と呼ぶ。




理気編集

理気とは、この世界に存在する万物が有するエネルギー謂わば星の命そのもの。理気を操ること自体ならば修行次第で誰でもできるようになるが、理気使いとしてのレベルを上げるには鍛錬による経験の蓄積や技能以外にも精神面での成長が大きなカギとなる。

理気使いのレベルは大きく五つに分かれており、低いほうから順に六識、七識(まなしき)、八識(あらやしき)、九識(あまらしき)、十識/乾栗陀耶識(けんりつだやしき)、超越者(アイヌア)となる。これ以外に、超越者クラスに至りながらも星の敵対者へと堕落した者はバウグリアスとも呼ばれる。基本的に、理気使いは自身より高位の理気使いには傷を負わせることはできず、理気による攻撃を防ぐこともできない。

星の命に起因する力であるため、他者の命を尊ぶ者や善性に満ちた者は理気使いとして高い実力を示す傾向がある。また、善の心を持った者が理気を開放すると、翼の生えた竜人のようなオーラに包まれる。

惑星上の理気の流れは星の記憶とも結びついているようで、莉乃が理気に目覚めた後急激に知識を身に着けたことや、爬人が技巧に優れていることに関係しているとされる。


理法念力

空間中の理気の流れを操り、物体を自由に動かす技。端的に言うならばサイコキネシス


理力剣

武器に理気による属性エネルギーを纏わせて放つ斬撃。理気を極めれば地形すらも変える威力になる。


属性攻撃

理気に雷や火などの属性のイメージを投影し、それに応じた現象を発生させる技。


空間掌握

周囲の理気を判別することでサーモグラフィーのように相手の居場所や暗器を探り当てたり、入り組んだ地形や建物の構造を千里眼のように把握できる。超越者クラスになれば惑星全土の理気の動きを把握することや、その場から一歩も動かずに惑星の裏側にいる標的を念力で攻撃するなどの離れ業も可能。


時空捻転

目的地のイメージを強い理気に乗せて空間に干渉することで空間を歪め、目的地へ移動する技。端的に言えばテレポート。

ティーネは時空捻転についての研究も行っており、その際に並行世界の存在を観測してしまう。これにより瞬間移動どころか、超越者に至らなければ行えないようなパラレルワールド間の移動手段をEMSが手に入れることとなる。その結果がEMSによりこちらの世界へ連れてこられたという清白の存在である。


戯法理術(ぎほうりじゅつ)

思念を理気に乗せて飛ばし相手に自分の言葉やイメージを信じ込ませる、催眠術や認識阻害の一種。


理気変換

物質や他者の属性エネルギーを分解し理気へ還元および物質へ再構築する技。応用すればその場で武器を錬成したり、爆発四散した人間の蘇生や異形の姿に変えられてしまった人間を元の姿に戻すことも可能。



地理編集

五大大陸編集

アーカラ大陸

EMS首都アベルディンを擁する中央大陸。


アルディス大陸

砂漠が広がる東の大陸。養殖領ヤーハン、白霧都市アルデア、アレーナルベルス城が存在する。


ヴァスタ大陸

かつては爬人たちの聖域だった南の大陸。メイプルが発掘された『禁足地』がある。

現在は爬人をはじめとした奴隷や罪人を収容する監獄都市ヴァスティーユを拠点とした奴隷産業の拠点となってしまっている。


ガリアス大陸

工業都市ニムロドを中心とした西の大陸。士官学校を擁する学術都市でもあり、ここに住むEMS人は平民や貧しい家の者でもある程度の教養を得られる機会が存在する。


ラクィア大陸/デモニア大陸

北の大陸にして禁断の地。かつてこの世界のあり方に異を唱えた『聖女リーナ』と『白麒将(びゃっきしょう)ツクヨミ』、そして彼女らに賛同した者たちが移住し、麒麟族と彼らの下に下ったEMS人の助力を受け、大陸を結界で覆い外界と隔絶したことから不可侵にして禁断の地とされている。冥月が目覚めるまではこの世界で唯一、種族を問わずに全ての人が人らしく生きられる大陸だった。『デモニア』はEMS側の呼称であり、先住民からは『ラクィア大陸』と呼ばれている。


施設/遺跡編集

養殖領

和人の養殖施設。周囲を壁に囲まれており、中央には和人を生体兵器や汎用タンパク質素材へ加工する工場兼研究施設のゲネシスソイミートタワーが存在する。アルディス大陸の養殖領であったヤーハンはノリスが投下した理力兵器によって更地となる。


首塚

各地に点在する麒麟族の遺跡。神殿のような内装をしており、最深部には麒麟族の宝珠である『麟眼』が安置されている。

首塚同士は転移装置により繋がっている。


禁足地

古代麒麟族の遺跡。内部は理気の流れが止まっており、まるで何かを隠匿するか封印していたかのような雰囲気が漂っている。ヴァスタ大陸の禁足地からは古代麒麟族の骸が発掘され、アルディス大陸の禁足地からは古代麒麟族の戦艦が発見された。



その他キーアイテム/テクノロジー/用語等編集

麟眼

所有者の潜在能力を何倍にも引き出す、麒麟族の宝珠。一度人間と同調すると指輪となって持ち主となった人間の指に収まる。首塚の転移装置を作動させるキーになっている他にも、理気を編んで持ち主の深層心理を反映した衣服や防具を仕立て上げたり、持ち主が最も扱い慣れた種類の武器を理気で形成し呼び出すなどといった機能を持つ。


メイプル

ヴァスタ大陸メギドの禁足地から発掘された麒麟族の骸。骸となってもなお意識が健在だったようで、冥月の記憶を呼び覚まし、麒麟将の力を授けるのと同時に消滅した。消滅してからも何らかの手段で冥月の心に直接語り掛けるように助言を与えていた。


麒麟将

かつて魔螂族やEMSに立ち向かった理気使いの総称。EMSとラクィアで相違はあれども伝説として語り継がれており、聖女リーナと白麒将ツクヨミはラクィアの守り神としてラクィアの人々から崇拝されている。


ラクィア三賢人

三博士とも呼ばれる。かつてツクヨミとともにEMSと戦い、ラクィア大陸に結界を施した三人の麒麟族を指す。彼らもツクヨミと同様、ラクィアの民によって神話の英雄として今も信仰されている。


ソーラ・エンプーサ

EMS建国神話に登場する女神。和人、爬人、麒麟族の三種族を撃滅し、現在のEMSによる支配体制の礎になったとされている。


スレイブマトリクス

生体子宮とも呼ばれる、成熟した和人女性の子宮を用いて製造される代理出産用のバイオ装置。体外受精させた受精卵を人工的に着床させる、試験管ベビーと代理出産のハイブリッド技術。これによりEMSの女性は妊娠・出産による行動の制限から解放され、現在の女性優位社会を作り上げた。

和訳すると「奴隷の揺り籠」だが…?


汎用タンパク質

ゲネシスソイミートタワー内のプラントで和人を素に製造される生体素材。スレイブマトリクスの稼働エネルギーや生体兵器の材料として用いられる。


ネクロス

『変異体』とも呼ばれる、理気を引き出す人体実験を施された和人や爬人のなれの果て。無理やり変異させられたことで苦痛にうめく肉塊と化しているが、非常に高い生命力を持ち、文字通り当人たちにとっては「死にたいと思っても死ねない」生き地獄と化している。

EMS人からは理気を用いた生体電池として利用されるほか、複数体のネクロスを融合させた生物兵器『集結体』や『衛兵(センチネル)』が存在する。


理力兵器

理気を用いた兵器の総称。周囲の空間の理気へ作用して原爆や水爆のような大爆発を起こす高性能爆弾、使用者の理気を属性エネルギーに変換することで理気使いとして未熟な歩兵の属性攻撃を補助するサイコブラスターなどが存在する。


魔螂獣(まろうじゅう)

魔螂族によって使役される、頭高1mほどのカマキリ型のロボット怪獣という様相をした使い魔。魔螂羽化によって変身した魔螂族の尾部にある産卵管から生み出される。戦闘力は母体の理気使いとしての実力に比例するようで、高レベルの魔螂族によって生み出された個体は全身が金色に輝いており、『真魔螂獣』と呼ばれる。


マルクト

パウリナ直属の精鋭部隊。マルクト構成員の作戦行動にはいかなるEMS貴族や軍関係者も全面協力しなければならないという規則がある。


フリューゲル号

アルディス砂漠の遺跡から発掘された古代麒麟族の戦艦。キャサリン・フリューゲルから冥月らに託され、彼女への手向けも込めて「フリューゲル」の名を与えられた。

永久機関の発電機やリアクターなどEMSの技術すらも凌駕するオーバーテクノロジーの塊。この艦の持つ最大の特徴は、莫大な理気を要するとされる時空捻転を行えるほどの発電機関とそれを制御するための演算装置である。



関連リンク編集

連載ページ

https://ncode.syosetu.com/n6478gr/


作者のTwitter

https://twitter.com/fadirxrigu9yhtz


関連項目編集

小説家になろう


異世界転生 家畜人ヤプー ダークファンタジー 成り上がり


魔物娘図鑑公式サイトのSS投稿所にて著者である水無月氏の諸作が閲覧可能。

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