概要
TCG『カードファイト!!ヴァンガードブースターパック「竜神烈伝」で登場した、ダークイレギュラーズに属するグレード3のユニット。
公式設定
異空間「レリクス」の中心部「神殿」を根城とする邪教の祖。
まだダークゾーンが国ですら無かった時代から存命している古の魔王らしく、それが真実であれば世界最古の魔王である可能性が高い。
神殿の外に出ることは滅多に無く、「ムジンロード」ら直属の配下に命令を下す時も、最奥の祭壇から声を飛ばすのみで、姿を現したことは無い。
普段は温厚で、何者に対しても平常心で接するが、ひとたび逆鱗に触れるようなことがあれば、周囲すべてを強制的に跪かせるほどの凄まじい重圧を発する。
なお、彼が祀る「破壊の神」の正体についても一切が謎に包まれており、推測すらままならない状態にある。その謎が明らかになるのは、彼が表舞台に姿を現す時……即ち、世界が新たな脅威に苛まれる時なのだろう。
創世の竜神「メサイア」の対存在――破壊の竜神「ギーゼ」復活を目論む危険な存在。かつては「青の魔王」と恐れられた、伝説の魔王の1人でもある。
現在はギーゼを崇拝する大規模な宗教団体「ギーゼ教」の頂点に君臨する大司教。封印されたギーゼの神託を聞くことができる唯一の存在であり、ギーゼから借り受けた邪神の力を行使して、長きに渡り歴史の裏側で暗躍を続けてきた。
負ける戦いは決してしない慎重な性格で、何事にも周到に前準備をして挑む。此度のギーゼ復活も綿密な計画の下、気が遠くなるような時間をかけて用意されており、その間に幾度大陸の形が変わったか定かではない。
誰よりも用心深い彼が表舞台に現れた――それは即ち、ギーゼ復活の時が近いということに他ならない。
ユニットとしての性能
旧シリーズ(プレミアムスタンダード)版
虚無に救いを求め、魔王は邪神司教となった。
パワー11000のノーマルユニット。能力は二つ。
一つはヴァンガード・リアガードサークルで有効な自動能力で、ライドフェイズ開始時にソウルが8枚以上あれば、深闇能力を持つグレード3のリアガードを一枚手札に戻すというもの。
基本的には超越コストを賄うためのものであるが、「グレンツェント・ヴァンピーア」など登場時の自動能力を持つユニットを出し直す目的でも使用できる。
ただしタイミングの都合上回収したいユニットとガスティール自身が盤面に残る必要があるため、妨害にとことん弱い。
もう一つはリアガードサークルに登場する際に有効な永続能力で、ジェネレーションブレイク(2)の要件を持つ深闇。
深闇とはダークイレギュラーズのキーワード能力で、ソウルにカードが置かれたターンに有効化されるもの。
ガスティールの場合はソウルからグレード2のカードを2枚ドロップし、それらのユニットが持つ登場時を含めた全能力をコピーするという豪快なもの。
「登場する際」という特殊なタイミングで有効化されるため、登場時の誘発効果もきっちり発動する。
コピーする筆頭候補は、全く同じ要件でパワーアップ+グレード0でのガードを封じる「ベイルファル・リプレッサー」。もう片方は状況に応じて選択することになるが、「愛着のサキュバス」でソウルやカウンターブラストを補充したり、「グウィン・ザ・リッパー」で相手のリアガードを潰すなど、利用法は多岐にわたる。
同じ「使徒」のグレドーラやヴァレオスと異なり、超越を条件とする能力を持たない。この都合上、真価を発揮するのはリアガードの時であり、こいつにライドするのはよっぽどのイレギュラーであると考えるべきだろう。
新ルール(Vスタンダード)版
虚無の祝福は希望を奪い、世界を沈黙させていく。
パワー12000のノーマルユニット。
旧ルールとは一転してヴァンガード向きのユニットとなっており、能力は自動能力が一つのみ。
内容はバトルフェイズ開始時、ソウル5枚につき4つの効果から1つを相手が選び適用するというもの。一見扱いにくいがその4択の内容は、
- 前列全てにクリティカル+1
- 相手のヴァンガードのパワーを1に変更
- 相手の自動能力を封印
- 相手の手札1枚を裏でダメージゾーンに移動
このようにとことん嫌らしいものであり、アニメのガスティールが切り札としていた「終焉のゼロスドラゴン ダスト」の能力をまんまコピーしたものである。
ただしダメージゾーン増加の効果はダストと異なりダメージ量の要件がない。ただし旧ルールと異なり、クイックシールドやプロテクトのような「手札に加わる疑似カード」を移動させることで踏み倒せる。
ソウルがとにかく大量に必要だが、20枚溜め込めば相手は全ての効果を適用せざるを得なくなるため、こいつに特化したデッキを組むと本気でゲームエンドも狙える。
ただしヴァレオスやカオスブレイカー・ドラゴン同様イマジナリーギフトアイコンを持っていないため、パワーが上げづらいことに注意。
アニメにおいて
CV:小野友樹
「全て順調……破滅を待ちわびる世界の悲鳴が聞こえるようです」
「どこの世界も同じですねぇ……。熱く、騒々しく、狂おしく、脆い。毎日、毎日……幾千年、幾万年……繰り返される果てなき呪い……生命の営み」
設定上は日比野アルテが使用するユニットで、彼の分身に当たるが、「ヴァンガードG Z」においてはディフライダーとなったガスティール自身が敵として登場。
元はダークゾーン建国以前から住まうデーモンの一人で、「青の魔王」と呼ばれ恐れられるほどの力ある存在だった。
対立していた「黒の魔王」と共に眷属を増やし土地を支配したが、王権を巡って争った結果ガスティールが勝利し、ダークゾーン建国に至ったという経緯を持つ。
繰り返される命の営みそのものが、空しく無価値なものであるという虚無的な価値観の持ち主で、この世の全ては滅ぶべきだという思想を抱いていた。
そんな折、メサイアによる法則改変の影響で生じた滅びへの志向性「かつてないほど巨大な虚無」の存在を知ってこれに取り付かれ、狂ったように研究に没頭した末、この「巨大な虚無」をユニットとしてクレイの地に召喚することに成功。
かくして破壊の竜神ギーゼとして顕現した「巨大な虚無」を前にガスティールは心服、「ギーゼ教」というカルト宗教を作り上げ、自らはその伝道師たる「邪神司教」を名乗るようになる。
ギーゼに心折られ服従を選んだ蒼波元帥ヴァレオス、ギーゼの力をメガコロニー拡大に利用しようともくろむ「百害女王 ダークフェイス・グレドーラ」と共にギーゼの「使徒」となり、世界を滅ぼすためにメサイア陣営との戦争「弐神戦争」に参じた。
だが、ヴァレオスの敗北で制海権を奪われたことがきっかけでギーゼ陣営は総崩れとなり、ガスティールはギーゼ封印に伴い撤退を余儀なくされる。
その後は長らく息を潜めていたが、その裏でコツコツと準備を整え、メサイアスクランブルと前後して、ギアクロニクルの来訪に伴う「時空異変」を機に行動を開始。
「魂の牢獄レリクス」を作り上げて本拠地とし、時空超越を応用して呼び寄せた「閻魔忍鬼 ムジンロード」、「閻魔忍竜 マグンテンプ」、「六道忍鬼 アタゴロード」を配下として暗躍。
その後、「G NEXT」以前の段階でアルテにディフライドし、同時に「忍竜 シラヌイ」に「地球のファイターの影響でクレイの運命が歪められている」と嘘を吹き込み、彼を「使徒」として操り地球に差し向けた(小説版ではぬばたまの頭領である「忍竜 シラヌイ」に憑依し、「覚醒を待つ竜 ルアード」の兄貴分である「竜刻魔導士 ダグザ」を殺害することでルアードを暴走させ、ギーゼの器にすべく布石を打っていた、という形になっている)。
そして「G Z」において本格的に行動を開始。
各地に使徒たちを派遣し、器候補をレリクスに集めると共に、最有力候補のクロノに状況を説明するなどして場を整えつつ器の完成を待っていたが、ファイターたちの奮闘によりレリクスは陥落。
この時点で既にダムジット、グレドーラが敗北し強制送還されていたが、これについても「役目を終えた駒は盤面から去る。それだけのことです」と一蹴している。
ギーゼ復活による滅亡こそ至上の望みであるガスティールにとっては、自身も他人もそのための駒でしかなく、役目を終えればいなくなるのが当たり前だからである。
そしてここまでガスティールが直接動かなかったのは、彼に与えられた任務は「ダークゾーンのゼロスドラゴンの究極超越」と「メサイアの先導者の抹殺」であり、その機会をうかがっていたからである。
狙い通り釣り出された伊吹コウジにファイトを挑み、ユニットとしての力が何も使えないディフライダーにあって、たった一度だけ行使できる「メサイアへの呪い」を繰り出し、ファイトを通じて伊吹の命を削っていくが、事態を察知して駆け付けた新導クロノがそのファイトを引き継いだことで、メサイアを滅ぼしつつギーゼの器も用意できるという絶好のチャンスを迎える。
「儚いモノですね…貴方の言う命とやらは。光っては消え、光っては消え…まるで果てなく繰り返されるメビウスの輪、それも結局最後は虚無に落ちていく…」
「この虚しさが分かりますか? 私は今日の祝福の日を迎えるまで、悠久の屈辱に耐えてきたのです。その痛みこそ、この屈辱に対する贖罪……咎人よ、滅びの時はもう間もなくです……」
伊吹のファイトを知り尽くしたクロノは【メサイア】軸のリンクジョーカーデッキを手足のごとく操り使いこなす(ちなみにクロノ役の石井氏はリンクジョーカーの使い手である)が、ガスティールはこれを悉く捌き切り回避。
戦いの中、ガスティールのオリジンが語られる。
弐神戦争で敗戦を喫し、ゼロスドラゴンを地球に封じられたことで、ガスティールは絶望のどん底に叩き落されていた。
破壊の原動力であるゼロスドラゴンは、干渉の出来ないもう一つの惑星に閉じ込められ力を失った。
これでは、もはやギーゼの復活は叶わない。自分に出来ることは、ギーゼに祈りを捧げメサイアを呪う、その程度しかないと。
信奉者を集め、ギーゼの声を聴き、無意味な呪いをメサイアに向けながら、あるかどうかもわからない復活の望みにすべてを託す日々。
ところが、そんな中地球に生まれたクロノの存在が全てを変えた。
クロノ・ドランと呼び合い、運命力の繋がりをもたらし、二つの星を繋ぐ道と扉が開かれた。
「全ては運命! この世に生を受けて来た者達が、死ぬまで生きるために足掻き、争い、傷付け合う様を、私は飽きる程見てきた……」
「世界は滅びを望んでいるのです! 虚しい生の営みからの解放を! 繰り返される愚かで虚しい行為…ただただ無意味な、連綿と続く苦しみを、早く終わらせてくれと!」
「そのために貴様という存在が生まれた! ギアクロニクルの特異点! 貴様の存在そのものが、破滅を求める世界の大いなる発露、啓示なのだァ!!」
ガスティールにとって、世界を構成する命の営みは、あまりにも無意味で無価値なものだった。
生きるために争い、生きるために傷つけ合い、命を奪い合う。
奪っては奪われ、奪われては奪い、殺して殺されて傷つけて傷つけられて……命に価値があるのならこんな意味の分からない繰り返しは起きていない。命が大切なら奪い合うことなどない。
それでもこんな光景が広がっているのならば理由は一つ。世界は滅びを望んでいる。終焉を迎え、消えてなくなりたいと叫んでいるのだと、ギーゼこそその象徴なのだと「青の魔王」は確信し、だからこそ彼は邪神司教となったのである。
満を持して繰り出されたゼロスドラゴン、そして自分自身たる「邪神司教 ガスティール」で猛攻をかけるが、クロノは残されたリソース全てをつぎ込んでこれを回避。
返しのターンで降臨した「創世竜 ハーモニクス・ネオ・メサイア」の前に、ガスティールは敗北した。
未来を断ち切られたことに一時狼狽えるが、
「あっ……ああ! あああ! うわああああ! ……ああ成程! つまり駒である私の役割はここまで……もはや……私がこの世界にいなくても、つつがなく……滅びは成されると……!」
使徒である以上、最後に辿る運命はダムジットやグレドーラと変わらない。全てはギーゼのための駒、自身も例外ではない。役目が終わったのならば舞台を去り、ギーゼの齎す滅びを待つのみ。
その事を思い出して冷静さを取り戻すと、
「嗚呼……出番を終えた役者は、いさぎよく退場しましょう。しかし! あなたはこの先どれほど抗おうと、運命から逃れることはできない! ギアクロニクルの特異点、新導クロノ!」
「劇的なフィナーレと幕引きはこれから。あとは頼みましたよ、ヴァレオス……」
唯一右腕と恃んだ男に全てを託し、アルテの体から追い出されてクレイへ送還されて行った。
しかし、クレイに戻されたガスティールを待っていたのは想定外の事態であった。
彼がアルテにディフライドして地球で動いている間に、クレイで潜んでいたカオスブレイカーのクローン体が空になったガスティールの肉体を破壊、クレイ側のレリクスに捉えていた「闇に縛られし竜 ルアード」を奪い計画の主導権を簒奪していたのである。
この結果、強制送還と共に行動不能に陥った上、再生能力までコピーされたガスティールだが、皮肉にもそのカオスブレイカーの手でギーゼ復活は成され、ほぼ同時期にシオンに敗れての送還後、アルトマイルに倒されていたヴァレオス共々レリクス内部のギーゼのもとで復活。
討伐のため乗り込んで来たメサイア陣営のうち、「焔魔忍竜 シラヌイ“慚愧”」と熾烈な戦いを繰り広げたが、新たな力を発揮し「邪眼明王 シラヌイ“輪廻”」となった彼の力に及ばず討ち伏せられ、今度こそ完全に滅び去った。
関連ユニット
邪神法王 ガスティール・デモナス
神なき世界で悪魔は謳う。今はこの世になき法を。
プレミアムコレクション2019で新たに登場したガスティールの新たな姿で、Gユニット。
能力は二つあり、一つはソウルにカードが置かれる度に、その数だけ前列全てにパワー+3000を与える自動能力。
もう一つはカウンターブラストとGブラストを払うことで、山札から2枚ソウルに置き、置いたカードの能力を全てコピーする起動能力である。
通常のガスティールのアッパー版に近く、フロントトリガーに近いパワーアップと能力コピーで様々なコンボを通しやすくできる。
ただし起動能力であるため登場時の能力は使えず、ヴァンガードサークルで有効な能力しかコピーできないという欠点があり、この点では通常のガスティールに劣る。
それでも本来あり得ないコンボが可能であることや、それゆえの桁外れのフィニッシャー性能などが危険視されたのか2021年10月の制限改定において使用不可カードに指定されている。
フレーバーテキストの内容からすると、「ギーゼ滅亡後=無神紀に蘇ったガスティール」という未来の姿だと思われる。
余談
Vスタンダードのユニットたちが属する原作漫画版/2018年版アニメの世界においては、惑星クレイの歴史がところどころ異なっていることがうかがえる。
特にヴァレオスの離反に伴うアクアフォースの封印は行われず、ロイヤルパラディンとシャドウパラディンの対立も比較的早期に解決していること、時空超越の概念が存在しないことなど、依って立つ法則や前史の内容にも大きな差異がある。
一方でガスティールを始めとする「使徒」の面々は普通に姿を見せているものの、使徒が奉ずるギーゼについては影も形もなく、言及すらされていない。
メサイアが存在するにもかかわらずギーゼがいない理由は不明だが、Vシリーズのガスティールのフレーバーテキストと、そもそもギーゼをユニットとして召喚したのがこの男であることを考えると、2018年版の世界においてはガスティールは「かつてないほど巨大な虚無」に魅入られたまでは同じだが、その後それをユニットとして呼び出すのではなく、その力そのものを神として祭り上げたのだと思われる(ヴァレオスのフレーバーテキストにもギーゼの言及はなく、世界を滅ぼすことが彼個人の正義であるかのような物言いになっているのが傍証)。
「魔忍竜 シラヌイ“朧”」のフレーバーテキストにも「虚無」という言及がある他、ルアード絡みで行くとダグザが存在せず、ギーゼ関連の姿である「闇に縛られし竜」「深淵を覗く竜皇」も存在しない(=「虚無」を具現化する器を必要としていない)こともそれを裏付けている。