開発経緯
米軍が名実ともに世界最強の軍隊となった現代、正面戦闘では敵なしとなった米軍へ新たな脅威となったのがIED(即席爆発装置)である。
日用品や兵器の残骸、不発弾等を利用し手軽に制作可能で、やろうと思えば戦車だって吹き飛ばせるこの即席爆弾に米軍は大変手を焼いており、特にイラク駐留に当たっては、正面戦闘を上回る死傷者がIEDによって発生していた。
戦果的に価値の低い少人数の歩兵で先行してIEDを探したり、対物ライフルを持ち出したり、道路をローラーで潰したり耕しながら進んだり、爆薬で仕掛けられた爆弾ごと吹き飛ばしたり、と様々な爆発物処理の試みが行われてきたが、いつどこにどんな形状のものが設置されているかもわからないIEDすべてに対処するのは不可能で、犠牲者は増えるばかりであった。
結局米軍は、これに対抗する最も有効な策が耐えることだという結論に至り、IEDの爆発力に耐えきれる装輪装甲車両の開発を目指すことになる。
特徴
あくまでも一つのカテゴリを示す名前であるため一概には言えないが、概ね以下の特徴を持つ
・強力な装甲を有する
・車体底面がV字型になっていて爆圧を受け流せるようになっている
・爆風と車重に耐えるため強固な足回りとタイヤを持つ
・爆発による床面からの突き上げに対応した座席となっている
・輸送量に比して全高、全幅が大きくなりがちで重量も大きい
・トップヘビーで横転しやすく平坦な市街地でしか使えない
・単価、維持費が高い
・防護性能等を高めようとすると大型化して余計に使いづらくなる
コストの面から輸送車両のすべてを代替することは難しく、車高のせいで被発見性が高いため前線には持っていけず、横転もしやすい。サイズ、重量の肥大は現地まで船なり飛行機なりで持っていくにも不便。大型化のせいで都市部では路地に入れずに目的地から離れた場所で降車して徒歩で移動する羽目になったり、通り道が限られるので移動ルートが読みやすくなってかえって待ち伏せに遭遇しやすくなったという事も。
車種によってはアンテナの設計の問題で銃座の兵員に感電のリスクが発生していたりもする。
また、熱い、乗り心地が悪い等の理由から乗員が正しく搭乗しなかったためにその機能を発揮しきれない事もあり、本来であれば無事なはずの地雷を踏んだ程度で乗員に死傷者が出たということも起きている。
IEDに耐えるためにいろいろと欠点をしょい込む羽目になっており、しかもこれだけやってもダメなときはダメで、砲弾を束ねたものや大型爆弾を埋めたものは爆薬量が桁違いなので防ぎようがなく、近年登場した自己鍛造弾型のIEDにはなすすべがない。
そうはいっても全く対処しない、というわけにもいかない。使わないよりは死者が減ることも事実であるので、コスパがよくないからと言ってスクラップにしちまおう、というわけにもいかず、試行錯誤が続いている。
ちなみにイラク戦争においてアメリカ軍により大量に調達されたMRAPであるが、特に大型のものは使い勝手が非常に悪く、持ち帰るだけのコストをかける価値がないとして殆どが現地組織へと供与されている。