概要
NovelAI(ノベルエーアイ、略称はNAI)は、デラウェア州に拠点を置くAnlatan社によって運営されている有料サブスクリプションサービス。元々は小説作成が主であるため、NovelAIという名称であるが、AIイラスト作成機能もある。
会員登録は無料だが、無料の状態で利用可能なのは小説生成の一部のみ。小説生成機能の拡張と画像生成には、月額サブスクリプションへの加入もしくはAnlasというNovelAI内通貨の購入が必須となる。
NovelAI関連年表
2021年6月16日 : Sigurd/シグルドをリリース
2021年7月16日 : Calliope/カリオペをリリース
2022年1月9日 : Euterpe/エウテルペをリリース
2022年3月11日 : Krake/クレーク をリリース
2022年9月25日 :NAI公式が機械学習に画像転載サイトDanbooruを使用したと公表
2022年10月3日 :画像生成機能正式サービス開始
: NovelAI Diffusion Anime キュレート版
: NovelAI Diffusion Anime フル版
: NovelAI Diffusion Furry ベータ版V1.3
の3種の画像生成AIがリリース
2022年10月5日 : DanbooruがNAIとは関係無いと声明を出す
2022年10月6日: NAIがクラッキングされ、画像生成モデルやモデルのトレーニングに使用するコードなどが流出。
2022年11月10日 : Snek/スネック: Genji/ゲンジをリリース
2023年5月23日 : Clio/クリオをリリース
2023年6月23日: NAI公式が流出モデルの使用に法的措置を取る可能性がある、とTwitter上(現X)で公表
2023年7月28日 : Kayra/カイラをリリース
2023年10月21日 : NovelAI Diffusion Anime V2 をリリース
2023年11月16日 : NovelAI Diffusion Anime V3をリリース
2024年4月22日 : NovelAI Diffusion Furry V3をリリース
2024年8月23日: NAI公式が: NovelAI Diffusion Anime キュレート版
: NovelAI Diffusion Anime フル版: NovelAI Diffusion Furry ベータ版V1.3 を一般公開
NovelAIのサービス、モデル紹介(2024年10月時点)
- 小説生成サービス
使用可能なテキスト生成モデルはSnek/スネック、Genji/ゲンジ、Sigurd/シグルド、Euterpe/エウテルペ、Krake/クレーク、Clio/クリオ、Kayra/カイラの7種。
引退モデルはCalliope/カリオペ、モデル選択リストではもう利用できないが、GPL-2.0ライセンスの規約に基づき公式ブログで配布されている。
小説や物語を作る方法は「Storyteller」と「Text Adventure」の2種類から選べる。
またAIモジュールによって、テキストのスタイルを変更する事ができる。
- 画像生成サービス
使用可能な画像生成モデルは下記6種
NovelAI Diffusion Anime V3:SDXLベースの最新モデル
NovelAI Diffusion Furry V3:SDXLベースのケモノ特化型最新モデル
NovelAI Diffusion Anime V2:おそらくSD1.5ベースのモデル(公式にベースモデルの言及は無いが、RedditでNAI関係者がSD1.5ではないかと言及している)
NovelAI Diffusion Furry (ベータ版V1.3): SD1.4ベースのケモノ特化型モデル
NovelAI Diffusion Anime (キュレート版) :SD1.4ベースのモデル
NovelAI Diffusion Anime (フル) :SD1.4ベースのモデル、NSFWに対応している
またNovelAI Diffusion Furry 、NovelAI Diffusion Anime (キュレート版)はNovelAI Diffusion Anime (フル) の3種の古いモデルは
CreativeML Open RAIL-M の規約と CC BY-NC-SA 4.0 ライセンスの規約に基づいて、公式ブログで配布されている。
プロンプトを入力する事で画像生成するtext to image(t2i)
元画像を加工し新しい画像を生成するImage to image(i2i)
元画像にマスクし、マスク部分だけを変化させるインペイント
(NovelAIのインペイントは優秀で、モデルに影響されず元画風を維持したままインペイントが出来る)
入力した画像に近い画風やキャラクターを出力できるバイブストランスファー
画像を編集するディレクターツール(背景の除去、線画化、スケッチ化、カラー化、表情の変化、文字やノイズの除去)が使用できる。
NovelAIで扱えるのはNovelAI独自のモデルのみであり、他のLoRAやモデルを使用して生成する事はできない。
利用料金(2024年10月時点)
Paper (無料プラン): 100回のテキスト生成と8,192 トークンのメモリ。Anlas(NovelAI内通貨)は貰えないので、画像生成機能を使用したい場合は別途Anlasの購入が必要になる。
Tablet ($10/月): 無制限のテキスト生成、4,096トークンのメモリ。毎月1000 Anlasが貰える。
Scroll ($15/月): 無制限のテキスト生成、8,192トークンのメモリ。毎月1000 Anlasが貰える。
TabletとScrollの差異は小説生成における記憶量の違いのみ、画像生成しか使わない場合差異はない。
Opus ($25/月): 無制限のテキスト生成、8,192トークンのメモリ。
全ての試験的機能にアクセスできるようになる。毎月10000 Anlasが貰える。
また重要な点として、画像生成機能の「普通サイズ以下」がAnlasを使用せずに生成が可能になる
普通サイズの範囲内であればi2i機能やインペイント機能もAnlasを使用せずに使えるようになる。
大サイズ、品質向上、拡大、別バージョンを製作は他プランと同じくAnlasを使用しての生成となる。
またStep数を増やすなど、負荷を増やすと普通サイズであってもAnlasを消費するようになる。
プランの期間については加入日より起算されるため、月の途中で開始した場合は翌月の対応する日まで有効となるため、月末に加入したとしても問題はない。
加入日内に解約したとしても、翌月の対応する日までサービスを使用する事が可能である。
経過日数に応じた差額を支払うことで、利用ブランのアップグレードが可能。
また解約しても、使用しなかった分のAnlasは残留する。
Anlasに有効期限はないが注意点がある
月額プランで付与されるAnlasは新たなプランに加入(継続含む)した際に、それまで付与されたAnlasを上書きする形で付与される。
例えば、月25ドルプランに入っていた翌月に更新しなかった場合、プラン加入時に付与された10000Anlasは使い切るまでの間は自由に利用することが可能である。
ただ、新たに月額プランに加入した場合、その残高に関わらず新たにAnlasが付与される。
(例、月25ドルプランに入って翌月更新しなかった場合、更新するまでそのAnlasは使えるが
もし翌月は10ドルプランでいいや、と思って月10ドルプランに変更してしまった場合、残高は没収され1000Anlasだけが付与される形になる。)
その為「そんなに使わないから月25ドルプランをやめて月10ドルプランに変更しよう」と思っているなら、
まず解約し、残っているAnlasを全て使い切ってから月10ドルプランを新たに開始しないと損になってしまう。
そのため、お試しでNovelAIの画像生成機能を使用したい人向けのおすすめは
Opusに1月分加入し10000Anlasを貰い、加入日に解約する。
これで期日まで無料で画像生成機能を楽しむ事が出来、期日以降もAnlasで生成可能になる。
NAIリーク問題
2022年10月6日、Anlatan社がクラッキング被害を受け、画像生成モデルとトレーニングコードが流出した。この流出したモデルは「NAIリークモデル」と呼ばれ、インターネット上で急速に拡散された。
このクラッキング事実ついてAnlatan社及びNovelAI各種アカウントからの公式発表の際に、どのような対応をするかについて具体的な発表がなされなかった事もあり、海外や日本のアンダーグラウンドコミュニティ内で特に使用されるようになる。
これら流出モデルは高いクオリティと自由度を持ち、モデルマージに利用されるようになると、その利用事実を伏せられた状態で他の画像生成AIユーザーの間にも蔓延する結果に繋がった。
マージモデルが蔓延する混乱を経て、最終的にAnlatan社は"画像生成分野の進展に伴い、研究、個人使用、履歴の保存のため"という名目で流出モデルをhugging face上のNovelAIアカウント上で一般公開するに至っている。
事件の経緯
2022年10月6日: Anlatan社がクラッキング被害を受け、NovelAIで使用されていた画像生成モデルや画像モデルのトレーニングに使用するコードなどが流出。海外掲示板を中心にtorrentファイルなどを通じて不正ダウンロードされた。(この際、文章生成モデルは流出せず)
流出した画像生成モデルは「NAIリークモデル」と呼ばれ、当初は掲示板住人やアンダーグラウンドの場でやり取りされていたが、マージが進むにつれてインターネット上で潜在的にリークモデルを含むものが広く拡散されるに至る。
NAIリークモデルは既存のローカルモデルに比べ自由度が高いため、流出したモデルであると知りながらも、多くのAI画像生成コミュニティで使用されるようになった。
さらに、NAIリークモデルを他のモデルとマージした、マージモデルと呼ばれる新たなモデルが次々と作成され、SD1~系のモデルは、どのモデルにNAIリークが含まれているかの判別が困難になったという背景がある。
この時Twitter上(現X)でNovelAI公式アカウントよりモデルデータ流出についての言及がなされたが、NAIリークモデルの使用者に対して法的措置を取るかどうかの言及は含まれなかった。(https://x.com/novelaiofficial/status/1578660537742696449)
2023年6月23日:
NAIリーク問題に鋭敏な問題意識を持っていた個人のAI画像生成ユーザーのポストに対して、NAI公式がNAIリークモデルの使用に法的措置を取る可能性をTwitter上(現X)で公表した。
(https://x.com/redraw_0/status/1672064450751496192)
またこの頃、AI画像生成サービスPixAIがNAIリークモデルをそのまま自社生成サイトで使用できるようにしていたため、この事に気が付いた利用者がNovelAIに告発し、Anlatan社が対応したためPixAIからNAIリークモデルが削除されたという事件も起きていた。
この時、NovelAI公式は利用者に「NAIリークマージの使用にも法的措置を取るのか?」と尋ねられたが、あえて回答を行うとことはしなかった。
2024年8月23日: Anlatan社が公式にウェイトモデルを一般公開。
公開されたのはリーク流出したモデルであり、"画像生成分野の進展に伴い、研究、個人使用、履歴の保存のため"という名目で公開されるに至った。
(https://blog.novelai.net/novelai-diffusion-v1-weights-release-jp-01d7fbad6fd7)
公開されたモデルのライセンスには以下のように設定されている。
「CreativeML Open RAIL-Mライセンスとクリエイティブ・コモンズBY-NC-SA 4.0ライセンスの両方の条件を適用するデュアルライセンスに基づいて公開されます。これにより、上記条件のもとで適切に帰属され配布される限り、非商用目的での利用、再配布、二次的著作物の作成が可能です。」
(https://huggingface.co/NovelAI/nai-anime-v1-curated)
配布によりこれ以降、ライセンスに則る形であれば利用する事自体に問題が生じる事はなくなった。しかし、それ以前に共有されたリークモデルは流出したものが利用されている事は事実であり、それに対してAnlatan社が法的措置を取る可能性が考えられる。
モデルのリークを営業秘密の侵害とするならば米国の統一法委員会による営業秘密法(UTSA)により請求時効は3年間であると考えられるため、公式に言及のあった2022年10月8日より請求時効が起算される。
しかしこれらはあくまで法的な問題であり、NAIリークモデルやそのマージモデルを利用して生成された画像の取り扱いや、SD1.5以降のモデルに対するNAIリークモデル・マージモデルが生成した画像を利用したいわゆる蒸留学習の是非など倫理的問題を訴える人は現在でも少なくない。
- NAIリーク問題における混乱
・NAI公式が流出モデルのOSS化の意向を示唆しつつも具体的な時期を明言しなかったことで、ユーザーの間で「どうせOSS化するのだし流出モデルの使用は問題ないのでは」という楽観的な見方が広がっていた。
・NAI公式が流出直後にリークモデル使用者への法的措置について明確な声明を出さなかったことで、多くのユーザーが「黙認されている」という誤った解釈を下し、流出モデルの使用が急速に広まった。
・NAIリークマージに関する法的立場が明確にされなかったことで、ユーザーの間で使用はグレーゾーンという誤った認識が広がっていた。
・AIモデル作成技術の急速な発展により、リークモデルを基にしたLoRAの作成や階層マージ、SDXLに蒸留など、モデルの派生や組み合わせが複雑化し、何が法的に問題で何が許容されるのかの線引きが極めて困難だった。ただし、当初から不正競争防止法に抵触することは指摘され、法的な理解が存在していなかったわけではない。
・派生モデル達は無料で公開されていたため、損害賠償を請求できないのではないかと言われていた。
・2023年6月23日、 NAI公式がNAIリークモデルそのままの使用に法的措置を取る可能性があるという言及以降、モデル製作者がマージ元を隠す事が増え、モデルの出自が不透明になる問題が発生した。
そのためNAIリークマージの可能性があるSD1~系のモデルを使用せず、マージされてないモデル(waifu diffusionやmidjourneyなど)を使用する、SDXLに移行するなどの対応を取る画像生成ユーザーも、2023年、2024年前半においては少数ながら存在していた。その後、SDXL系統のモデルが発展したことにより、Animagine・Pony等のアニメ系SDXLモデルへの移行は進んだが、リアル系モデルはSDXL・後続のモデルにおいて優位な成果を出せておらず(例えばFLUXはNSFWの出力が芳しくない)、現在までNAIリーク派生モデルを使用するユーザーは少なくない。
・画像生成ユーザー間でもNAIリークマージを使用し続ける人と、倫理的問題や法的問題の観点からNAIリークマージを使用しない人との間に議論や対立が発生した。
- アスカテスト
NAIのリークモデル使用禁止の発表後、「アスカテスト」または「ハローアスカチャレンジ」と呼ばれるモデル検証方法が一時的に流行した。
同一プロンプト同一シード値では、ほぼ同じ画像が出力されるという画像生成AIの性質を利用し
NAIと検証するモデルに同一プロンプト同一シード値を入力し、生成された画像が同じか似ているかどうかでNAIリークモデルかどうかを検証する方法である。
この時に生成される画像が黒い椅子に座ったアスカのため、アスカチャレンジとも呼ばれる。
この手法自体は同一プロンプト同一シードを利用する為、オリジナルのリークモデルを判別する方法としては機能した。
NAIリークマージモデルに対しても同様の試験が行われたが、同一プロンプト同一シードはオリジナルのモデルにしか機能しない為、この試験は意味をなさない。
またハッキング時、NAI公式のパスワードが「password」だったという噂が飛び交ったが
NAI公式はこれを否定している。
NovelAI生成物の使用、販売 について
NovelAIで作成したAI生成物の権利は、生成したユーザーに帰属する。
またAnlatan社は、ユーザーが生成した画像に対する所有権を主張せず、サービス外での使用から生じるいかなる責任も放棄している。
そのため、生成者はNovelAIで作成した作品を自由に使用、販売可能であり、問題が発生した場合、Anlatan社は一切責任を負わない。
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