概要
AIイラスト生成サービスを利用するユーザーを示す呼称。
AI絵師は筆の代わりに、指示文(プロンプト)の入力やControlnetやi2iやLoRAなどの拡張機能を組み合わせることによってイラストを作り出しており、
pixivでは多くのAI絵師が作品を投稿している。
AI絵師の定義について
一般的な絵師が自身でペンタブやアナログ画材を用いてイラストを描いている者達を指すのに対し、主にポン出し(プロンプトの入力のみで絵を生成すること)やAI加筆など、AIイラストばかりを投稿している人をAI絵師と呼ぶ
元々絵を描いていた人間が、生成AI補助的に使った手描きや、AIイラストを素材に活用した絵を投稿している場合もAI絵師と呼ばれている。
現在はcopainteなどAIによって下書きを清書する機能や、クリスタのAI自動彩色のようなAI機能サービスを提供している描画ソフトもあるが、基本的には主に前述したAIイラスト投稿者を指す事が多い。
「絵師」とは言うものの前述の通りAIイラストの主な生成方法の一つとしてプロンプト入力があるため、ユーザーがやっていることは「AIへの指示となる文章の入力」であり、絵師ではなくディレクションに近しく
「イラスト生成AI利用者」「AI術者」「プロンプター」などの適切な住み分けのできるワードを使うことが望ましいと主張する人間もいる。
しかし、語感の良さやSNSで長く使われ既に浸透しており、AIを使用している絵師という意味でも、AI絵師が最も定着しているのが現状である。
※本記事では混乱を避けるためタイトルに従いAI絵師で呼称を統一する
AI絵師側の主張と、主張に対する反論
・AI絵師は絵を描いている
→前述の通りAIイラストとは、生成者がAIに命じてAIに絵を描かせるものである。
そのため、指示者にすぎない生成者は絵を描いていないという主張。
ただしカメラでの写真撮影など、カメラが情景を写し取り写真を作っているにもかかわらず、シャッターを押した人間に写真の著作権が発生している事に注意したい。
・全てのAIイラストは著作物である
→「著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(著作権法第2条1項1号より)
AI生成物に、思想または感情を創作的に表現したもの、すなわち著作物性(copyrightability)があれば、著作権法で保護される。
文化庁の質疑によると、生成者がしっかりと意図を持ってAIに指示を出したかを説明できる、どのようにAIを使用して試行錯誤を行なったかの過程(メイキング)を説明できれば、司法が創作的寄与を肯定する方向に働き得ると説明されている。
つまり無作為に出力されたAIイラスト(プロンプトが1girlのみなど)には創作的寄与が無く著作物性が無いために、著作権は無いと考えられるため
全てのAIイラストが著作物であるというのは誤りである。
ちなみに、pixivに投稿されているAIイラストは大半が創作的意図を持って生成されたAIイラストである。
・全てのAIイラストは著作権侵害をしていない
→2024年現在の日本では、AIがインターネット上のイラストなどの著作物を収集・加工してAIモデルを作成することは、原則として合法であり、またAIイラストも原則として合法である。(詳しくはAI学習禁止の項目で解説)
ただし、AIイラストは手描き同様、類似性と依拠性があり、裁判所が著作権侵害だと判断した場合のみ著作権侵害になる。
AIを使用したからといって、罪が重くなったり軽くなったりするわけではない。
AIはあくまで人が使うツールの一種であり、AIを使用した著作権侵害をした場合、責任は生成者にある。
これは手描き絵で著作権侵害をした場合と同様である。
そのため、全てのAIイラストは著作権侵害をしていないというのは誤りである。
・AI絵師は文化庁からお墨付きをもらった
→文化庁は「人間による創作活動が損なわれるようなことがあれば、生成AI技 術の持続的な発展もまた不可能となります。生成AIとこれに関わ る事業者、また、クリエイターとの間で、新たなコンテンツの 創作と文化の発展に向けた共創の関係が実現されていくことが 望まれます。」と述べておりA I と著作権 Ⅱより
クリエイターとAIが共に「共創」する事を望んでいる。
またお墨付きを与えるまでもなく、元から文化庁はAIを使用した創作活動者もクリエイターであるという認識である。
・レイヤー分けの内訳を掲示することでの有無が判別できる
→近年になってAIイラストをレイヤー分けするためのツールが公開されたため、この判別方法も難しくなってきている。
問題提起・絵描き側の意見
イラスト生成AIの仕組み上、特定のクリエイターの作品を重点的に学習させることでなりすましを図ったりそのためのデータを配布するなどして悪用を図る残念なユーザーも存在する。
また、そもそも「絵を描く」ことと「AIで絵を出力すること」は根本的に異なる行為であり、後者を「絵師」と呼ぶことは、前者がの精巧に絵を描くための才能、日常不断の努力の積み重ね、細部まで情熱をもって描き込む真心を蔑ろにする行為だという意見も散見される。
いくら法的に問題が無いとはいえ、データセット製作のための画像収集
(googleやX社など企業による大規模スクレイビング、個人による追加学習を目的とした画像収集)に対し、生理的な忌避感や倫理的な問題が提起されており、
創作者がwebスクレイピングやAIによる学習を意図的に拒否する技術的、法的な方法が望まれている現状がある。
生成AIを作るのに人の著作物が無断で使われているため、クリエイターが無断学習から守られる様なルール作りが求められているということである。
参考記事:人気漫画家 生成AIに絵柄を無断学習される“なりすまし横行”に苦言「削除困難ギリギリ現行法を回避する」
画像生成AIの存在に対する絵描き側の意見は主に以下の二つに割れている。
①AIを受け入れていくべき、淘汰されるクリエイターは実力が伴わなかったという意見
②現行の著作権法には不備があるため法改正のために動くべきであり、やがて違法になるAIは使わないという意見
①は、かつてデジタルドローイングがアナログ画材クリエイターから絵を描いていないと批判されたが、現在はデジタルクリエイトが主流になっており、いずれAIも同じように受け入れられるという向きがある。
また、過去にも産業革命、写真の発明など時代の流れで職を失った者が多数おり、技術革新で淘汰される側にクリエイターが回っただけという突き放す意見である。
この主張を掲げているクリエイターは、壮年以降で一定の社会的地位のあるクリエイターが多く、幾度となく技法や絵柄、画風が多くの人々に取り入れられて(=パクられて)きた世代だからこその意見といえる。
②は、主に2024年現在30代以下の比較的若いクリエイターに多く見られる意見である。
特にイラスト生成AIは他人の著作物を糧にする事で成立しており、それを用いるのは倫理的に、何よりも著作権侵害の点から黙認するべきではないという趣旨である。
また、今までの努力を先輩クリエイターのデータを使って上回られるという点は絶望的で、突き進んできた誇りと人生観を打ち砕かれると感じるものもいる。
そのため、現行法を改正すべきだという主張。
つまりクリエイター内でも意見が割れており、今後の法整備次第でこの二つの意見の大小が変化する可能性はある。
だが、無断学習のリスクに加え、画力が高すぎてAIと疑われる事案も頻発しており、イラストレーターがネットでイラストを公開すること自体をやめてしまう事も現実に起こっている。
芸大や専門学校でさえ、教諭間でも意見が割れて紛糾しており、今後は芸術教育でさえ変わっていく過渡期であるのだ。
武蔵野美術大学「生成系人工知能(生成AI)についての学長からのメッセージ」
関連タグ
反AI:主に生成AIに反対する勢力を指すが、中でもAIイラストやAI絵師に対しての反対意見が主だっている。
外部リンク
「AIと著作権」
「AIと著作権Ⅱ」
AI時代の知的財産権検討会 「中間とりまとめ」 ー 権利者のための手引き