概要
埼玉県入間郡三芳町に本社を置く音響機器メーカー。
かつてはコンデンサ型のマイクロフォン・カートリッジ・スピーカー・ヘッドホンを中心に、アンプ・CDプレーヤー等までを製造・販売してきたが、現在ではコンデンサ型ヘッドホンとその関連製品の製造・販売に専業化している(なお、同社ではこのヘッドホンを「イヤースピーカー」と呼称している)。
そのコンデンサ型の特長を生かした繊細な音作りには熱烈なファンが多く、特に海外において評価が高い。
コンデンサ型とは
「静電型」または「エレクトロスタティック型」とも呼ぶ。一般的なヘッドホンの方式である、コイルに取り付けた振動板を振動させて音を鳴らす「ダイナミック型」に対して、こちらは薄い導体の膜(振動膜)に直流電圧をかけ、静電力の変化によって膜を振動させて鳴らす方式。電圧に対して線形な静電力が振動膜の全面にほぼ均一に発生するため、低歪でしかも周波数特性に有害な分割振動が起こりにくいという特長がある。そのためダイナミック型に比べて分解能の高い、極めて透明で繊細な音を鳴らせる。その音の美麗さは、「スピーカーでこの音を再現しようとするなら、資金が2桁余分に掛かる」と言われるほど(もっとも、音楽のジャンル等によっては荒々しくも力強い音を鳴らすダイナミック型の方が向いているという意見もある)。
ただし、高い電圧を必要とする上に抵抗負荷ではないため、その運用には専用の特殊なヘッドホンアンプ(STAXでは「ドライバーユニット」と呼称している)を別途必要とする。音楽プレイヤーやプリメインアンプ等のオーディオ機器に繋ぐ際は、必ずこのドライバーユニットを間に挟まなければならない。
かつては複数の音響機器メーカーが製造・販売を行っていたが、採算性の問題等からその多くが撤退。現在ではSTAXの他KOSS等、ごく一部のメーカーが手掛けるに留まっている。
価格帯
イヤースピーカー単体で見ると、入門機種と呼ばれるものでも2万~4万円程、最上位機種のSR-009ともなれば30万円を優に超える。更に上述のようにドライバーユニット(5万~15万円程)も併せて購入しなければならない事を考えると、同社の製品は世のヘッドホンの中でも相当に高価な部類に入ると言える。携帯音楽プレイヤーを買うのと同じような気軽な感覚で手を出せるユーザーは少ないだろう。
しかし、その出費に見合った音を聴かせてくれるのは確かで、その性能は各方面から賞賛されている。特に海外では、(為替や関税の関係で)日本国内での価格より更に高額なのにも関わらず、同社製品に魅了されるファンが後を絶たないという(秋葉原で著名なオーケストラ指揮者が名指しで購入していったというエピソードも)。規模は小さいながらも我が国の確かな技術力を世界に示すメーカーである。
イヤースピーカーの外観
大別すると、ハウジングが円型の「Ωシリーズ」と矩形型の「Λシリーズ」に分かれる(ただ、そのどちらにも属さない機種もまた多い)。他社の一般的なヘッドホンと比べるとそのデザインは非常に武骨で、“まるで開発中の試作機をそのまま商品化したようだ”などと揶揄される事もある。しかし、その飾り気の無さが逆に良いというファンも多い。
イラストにおいては可憐な女の子とセットで描かれる事が多い(いわゆる『ヘッドホン娘』イラスト)。その武骨な外観も、彼女らが装着するとまた大きく印象が違って見えるから不思議である。
製品ラインナップ
【現行製品】
イヤースピーカー単体
STAXのイヤースピーカーはハウジングが全て開放型(オープンエアー型)で、遮音性はほぼ無きに等しい。またドライバーユニットの電源確保の問題もあり、(携帯用に作られているSR-003以外は)屋外での使用には適さない。あくまで屋内でじっくり腰を据えて聴くための機器である。
もちろん、イラストの世界においてはその限りではないが……。
名称 | 実勢価格 | 備考 |
---|---|---|
SR-009 | ¥332,000~¥368,000 | 2011年8月現在の最上位機種。Ωシリーズに似た円型のハウジングを持つが、厳密には別物 |
SR-007A | ¥167,800~¥210,000 | Ωシリーズ |
SR-507 | ¥59,800~¥73,500 | Λシリーズ |
SR-407 | ¥37,000~¥44,100 | Λシリーズ |
SR-307 | ¥29,800~¥35,700 | Λシリーズ |
SR-003 | ¥12,800~¥15,750 | 携帯用途のイン・ザ・イヤータイプ |
ドライバーユニット単体
イヤースピーカーのみならず、ドライバーユニットも価格帯によって種類が分かれている。上位クラスのイヤースピーカーには、やはり同様に上位クラスのドライバーユニットを組み合わせた方がその実力を発揮できる。
名称 | 実勢価格 | 備考 |
---|---|---|
SRM-007tA | ¥124,700~¥154,350 | 真空管式 |
SRM-727A | ¥112,800~¥138,600 | 半導体式 |
SRM-600 LIMITED | ¥105,800~¥128,100 | 真空管式。限定生産品 |
SRM-006tA | ¥88,000~¥100,000 | 真空管式 |
SRM-006tS | ¥79,800~¥95,550 | 真空管式 |
SRM-323S | ¥50,000~¥60,900 | 半導体式 |
イヤースピーカー・システム
あらかじめ特定のイヤースピーカーとドライバーユニットをセットにした販売も行われている。イヤースピーカー・SR-207等、機種の中にはこのセット販売でのみ取り扱われているものも。
名称 | 実勢価格 | 備考 |
---|---|---|
SRS-4170(SR-407 Signature + SRM-006tS) | ¥116,800~¥154,350 | Λシリーズ + 真空管式 |
SRS-3170(SR-307 Classic + SRM-323S) | ¥79,800~¥96,600 | Λシリーズ + 半導体式 |
SRS-2170(SR-207 + SRM-252S) | ¥46,800~¥54,600 | Λシリーズ + 半導体式。このセットのみの機種 |
SRS-005S(SR-003 + SRM-252S) | ¥36,500~¥43,050 | 携帯用途のイン・ザ・イヤータイプ + 半導体式 |
【生産完了製品】
同社の生産完了製品は多数に上るが、ここでは比較的最近完了された、代表的なもののみを記載する。リリースされたばかりの現行製品に比べてこれらの愛用者は現在も多く、そのためかPixiv上でのイラストにおいても、現行製品よりこれらが描かれるケースが多い。
イヤースピーカー単体
名称 | 備考 |
---|---|
SR-007 | Ωシリーズ |
SR-404 LIMITED | Λシリーズ。限定生産品 |
SR-404 | Λシリーズ |
SR-303 | Λシリーズ |
4070 | Λシリーズに似た矩形型のハウジングを持つが、ディテールは異なる |