stop'n'swop
ひみつのこうかん
それは、ジグソーピース100個を全て集めた場合のエンディングで紹介される謎の映像から始まった。
映っていたのはこれまで辿ったステージのいくつかを巡るバンジョーの姿。しかしプレイヤーがそれまで見た風景とは何かが違っていた。
「おたからザクザクびーち」のシャークックあいらんどと書かれている大岩がせりあがり、「ゴビバレーさばく」の奥地にある開かずの扉が開き、「フローズンズンやま」のウォーザのどうくつにある氷の壁が破られている…。
そして、これらの地形変化によってバンジョーの前に現れたのは「?マークの卵」や「氷のカギ」という用途不明のアイテムであった。
もともと氷のカギだけは見ることだけなら本編中でも可能だったのだが、いずれも通常プレイでは入手できない。
しかもエンディングの映像を見た後で戻ってきても、映像にあった地形変化はまるで発生していない。
紹介したマンボは「次回作をお楽しみに!」とだけ言い残し、世界中のプレイヤーに謎を残していった…。
これを何とかして入手しようと、英語圏を中心に解析が進められた。最初にこれを取得しようと試みられたのは、非公式ツールであるプロアクションリプレイ3が発売された1999年の時点で、空中浮遊のチートを用いて氷のカギを取ったエピソードが知られている(※1)。
のちにネットが広まるにつれ解析が進んだ結果、『2』発売の翌年2001年には地形変化をもたらす公式チートが発見され、アイテム自体は入手可能となった。入手後にトータル画面を確認すると、各ステージの進行状況に加えて新たに「stop 'n' swop」という項目が追加されており、これらのアイテム入手状況が確認可能ではある。しかし、入手した所で何の効果ももたらしてはいないため、かえって謎を深めることとなった。
そしてバンジョーとカズーイの大冒険2にて、前作でマンボが予告したアイテムは当該作のステージ内で独自入手が可能となり、使い道も無事に見つかってはいた。
しかし、確かに『1』で紹介されたアイテムは3つ、『2』で入手できるアイテムも3つ(+1つ)なのだが、実は『1』で入手できるアイテムは合計7つあり、数がまるで足りていないため、さらに謎を深める一因となった。
これらの謎がハッキリしたのは2010年以降のことであろう。
どうやらもともと、N64の本体の電源を切ってもメモリは10秒間だけ保持される仕様を利用して、「『1』でアイテムを入手したのちに電源をOFFにし、10秒以内に『2』へ差し替えて電源を入れなおすことでアイテムを引き継がせる」という計画であったらしい。
ところがN64の途中出荷分から仕様変更が起こる。メモリ保持の時間が大幅に短縮され、まともにカートリッジを抜き差しできる時間猶予がなくなっていた。
ならばと、電源を入れたままカートリッジを抜き差しする案もあったらしいのだが、本体やカートリッジに大きな負担を与えるためそれも没に。
外部記憶装置のコントローラパックを頑なに使わなかった理由は、いわば広義の海賊版対策であり、その手段としてソフトを物理的に所持していないと成立しないコンテンツを作ろうとしていたようだ。
こうしてやむをえず、宣伝のみを行い、次回作でその宣伝通りに用意せざるを得なかったということである。
もともとのコンセプトは、本2作に加えてドンキーコング64、conker's_Bad_Fur_Day、パーフェクトダーク、スターツインズの合計6作でアイテムの引継ぎを可能にする壮大なものであったとか。
また、カギはともかくタマゴの中身はバンジョー&カズーイの変身にまつわるものであったらしく、実際に実装されたドラゴンカズーイを含めて4種類作るつもりだったとのこと。
タマゴが6種類あるのに4パターンにした理由は、引継ぎで想定していたタマゴは実は4種類で、残りの2種類は解析などの手段でフライング入手したプレイヤーへの罰として、もし入手したら引継ぎ不可能にさせる罠アイテムにする予定だったというのだから、何が何でも正規プレイ以外の方法を許さない意志を感じさせた。
しかも罠のうち1つは、マッドナイトまんしょん地下室のワインセラーの開かずの樽であり、やっと開けたという達成感を逆手に取ったもので、プレイヤーの心理を巧みに知り尽くしたものであった。
ちなみにXBLA版では、『2』もしくは『ガレージ大作戦』を購入しておくことによりエンディング後にアイテムの入手が可能となり、引き継がせる事が可能。中身を取り出すには『2』で使用する必要がある。また、タマゴは6種類全て利用可能なので安心されたし。
- ちなみにターボシューズをいつでも履けるチートを用いることにより、エンディングにおけるマンボの紹介映像内でゴビバレーさばくの青いタマゴをムービー内で入手してしまう。同時に全てのドアが解禁されるため、以後のプレイで7種全てを回収可能。したがってこれらのツールを厭わないなら最速入手は1999年なのだが、当時はブロードバンドさえ黎明期だったころであり、知名度は界隈でさえ非常に低かった。
- なお、このアイテムが手に入る部屋では、共通のファンファーレからスタートする専用BGMが使用される。このBGMの冒頭ファンファーレはドンキーコング64のボス部屋開通時にも使用されているため、リアルタイムでドンキーコング64をプレイしていた人がもし当時においてこのファンファーレに聞き覚えがあった場合、間違いなく解析かPARを用いてこれらのアイテムを(ドアを開くフラグ込みで)入手している証拠と言ってよい。