バシロサウルス
ばしろさうるす
約4500万年前から3500万年前に生息していた、太古のクジラである。
発見と命名
1830年代にアメリカのルイジアナ州で最初の化石が見つかり、古生物学者のリチャード・ハーランは爬虫類の化石と考え、1839年に「クジラのごとき王様の爬虫類」を意味するバシロサウルス・ケトイデスと命名した。後にエジプトでも化石が見つかり、エジプト神話の女神イシスにちなんでバシロサウルス・イシスと命名された。
他にはジュウグロドン(ゼウグロドン)という異名で呼ばれている。
特徴
全長はメスで18メートルほどで、オスでは20メートルを超えた。現在のクジラとは異なり皮下脂肪がついておらず、ウミヘビに似た体形をしていた。また、陸生だった頃の名残で小さな後脚を持っていた。
2メートルの頭部はどちらかというとモササウルスやティロサウルスなど恐竜時代の海棲爬虫類のそれに近く、加えて現在のイルカのメロンのような超音波を発する器官は発達していなかったらしい。
生態
北米やイングランド、パキスタンやエジプトなどで化石が見つかっている。当時のユーラシアとアフリカの間にあったテチス海などの温暖な海域に生息していた。
肉食で、動物なら何でも襲って捕食していた可能性が高い。同時期に生息した近縁種の「ドルドン」というクジラには、バシロサウルスに噛み砕かれたと思われる跡が残っていた。
基本は単独行動で、他の仲間と会うのは繁殖期ぐらいだったと思われる。その短い後脚は、オスがメスに愛撫するのに使っていた可能性が示唆されている(アナコンダなどニシキヘビの仲間も僅かながらに残っている後脚を交尾の時の愛撫に使う)。
後に南極圏の冷たい海水が北上してきて海洋環境が激変し、バシロサウルスも多くの海洋生物とともに絶滅することとなった。