『タルキール龍紀伝』の物語における主な登場人物
1280年前のタルキールで死に瀕したウギンに面晶体の欠片を差し出し、ウギンを包む面晶体の繭を作り出したサルカンは現在のタルキールへと帰還した。
そこにあったのは、サルカンが遙かな時を超えてきたことを示す、数え切れない月日を経てきた面晶体の繭。
そして、大空を舞う龍の群れ。
サルカンはついにタルキールの龍を滅びの宿命から救って見せたのであった。
プレインズウォーカー
サルカン・ヴォル
「俺はやったぞ! 時の連環は再編された!」
大空を舞う龍の群れの姿を目の当たりにし、タルキールの龍が滅びの宿命から救われたことを知って感涙するサルカン。
彼は龍の姿を取り、龍の群れと共に大空から新たなタルキール世界の姿を見届ける。
そこにあったのは、
自身が見知る枝角を持つ龍の群れや、それとは全く異なる別の龍の群れ達。
土地そのものすら様相を変えた新たな光景。
未だ空に在り続け、新たな龍を生み出し続ける龍の嵐。
龍と氏族員が共に生きる姿。
遥か古に命尽きたはずだった強大な旧き龍すら命あるものとして駆け抜ける大空。
だが、かつてマルドゥの同胞であったはずの者達に誰もサルカンを知る者はいなかった。
運命が変わり、世界が、龍が、人々が変わった。
ならば、ナーセットも。
ナーセットを探し、サルカンは大空を翔る。
時の連環を再編し、龍の栄えるタルキールへと帰還した姿が、「揺るぎないサルカン」としてカード化されている。
(『龍たちのタルキール』、『揺るぎなき、そして気高き者』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「サルカン・ヴォル」の紹介記事)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「サルカン・ヴォル」の項目)(外部リンク参照)
ソリン・マルコフ
「現地の者が言うことを信じるならば、一千年以上だ」 何世紀も年上の龍へと知識を与える、ソリンはその楽しみを声色に含めて言った。「君の顔すら忘れるところだった」
復活したエルドラージの脅威に対し、かつてエルドラージ封印のために共に力を合わせた二人のプレインズウォーカーの一人、ウギンを訪ねるべくタルキールを訪れたソリン。
サルカンによってウギンの命が救われたことで、ウギンの亡骸を目にするはずであった彼の運命も変わった。
彼が目にしたのは何百もの面晶体が組み合わさって形作られた繭であった。
ソリンは自身の魔術によってウギンを繭から解き放ち、目覚めさせる。
自身が目覚めた今、何が起こっているのかを問うウギン。
それに答え、ゼンディカーのエルドラージは封印から解かれ、自由になってしまったことを告げるソリン。
それに対し、かつてエルドラージ封印のために共に力を合わせた二人のプレインズウォーカーのもう一人、ナヒリの行方を問うウギン。
しかし、ナヒリの行方に対し、ソリンは不自然にはぐらかす言葉を繰り返すばかりであった。
(『ソリンの修復』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「ソリン・マルコフ」の紹介記事)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ソリン・マルコフ」の項目)(外部リンク参照)
ウギン
「重要に決まっておろう」 ウギンは言った。「おぬしの血魔術は偉大だ、虚空に住まうものどもに関する我が知識も同様に。だが石術師なくしては、我らの努力は何一つ永続のものとはならぬ」 ウギンは身体をひねり、頭部を下げてソリンに近づけた、まるで鳥が虫の姿をその大きな眼で認めたように。「はっきりさせよ。我ら三人が不可欠だ。おぬしと彼女との間にどのような些細な諍いがあろうとも、おぬしが我にどのような問題を隠していようとも、解決せよ。彼女とともにおらぬ限り、おぬしの顔を見たいとは思わぬ」
ソリンによって面晶体の繭から解き放たれ、現在のタルキールに目覚めたウギン。
「ニコル・ボーラスは去ったのか?」
「自分が眠りについてから、どれほどの時が経っていたのか?」
「何故ここに来て、自分を蘇生させたのか?」
ソリンに問いかけ、ゼンディカーのエルドラージは封印から解かれ、自由になってしまったことをソリンより告げられる。
それに対し、かつてエルドラージ封印のために共に力を合わせた二人のプレインズウォーカーのもう一人、ナヒリの行方をソリンに問うも、なぜかソリンは不自然にはぐらかす言葉を繰り返すばかり。
ウギンは曖昧な答えを繰り返すばかりのソリンに苛立ち、
「エルドラージを再び封印するためにはナヒリの助力が必要不可欠であること」
を今一度口にし、ナヒリの行方について不自然に隠そうとするソリンへの不信を露わにするのであった。
面晶体の繭に包まれ、永い眠りについていたウギンが現在のタルキールに目覚めた瞬間が、「精霊龍の安息地」としてカード化されている。
(『ソリンの修復』、『揺るぎなき、そして気高き者』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「精霊龍、ウギン」の紹介記事)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ウギン」の項目)(外部リンク参照)
龍王
サルカンによってボーラスに敗れたウギンの命が救われたことにより運命は再編され、タルキールの龍は滅びの道ではなく繁栄の道を辿ることとなり歴史は変わった。
かつてカンが率いていたタルキールの氏族はそれぞれ対立していた龍の群れの元に下り、
カンの称号と旧き氏族の名は再び口にすることが許されぬ、今や存在しないものとなった。
それぞれの群れを率いていた龍は、龍達と自身に下った氏族の構成員達による新たな氏族を統べる「龍王」となったのである。
コラガン
その攻撃は歳を経た強大な龍が率いていた。分厚い皮の襞が顔を囲み、鼻先から背中にかけて長い角がずらりと並んでいた。彼女は敏捷そのものの体現、引き締まった身体は機敏で翼は力強く......そして彼女はまっすぐにサルカンへと向かってきた。
運命が再編される前のタルキールにおいては、コラガンの亡骸の頭蓋骨がマルドゥの玉座とされていたことから、
サルカンはコラガンの頭部に見覚えがあり、「自身が真に成したことが見え始めた喜び」を実感する。
龍王としての姿が、「龍王コラガン」としてカード化されている。
(『龍たちのタルキール』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「龍王コラガン」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「コラガン」の項目)(外部リンク参照)
オジュタイ
「お前は来るべき所へとやって来た。知るべきことは全て、私が知っている」
「学びたいと願う者へと、私は教えるであろう」
かつてジェスカイであった者達を統べる「オジュタイ氏族」の龍王。
今やオジュタイはオジュタイ氏族において最も古く、強大なる龍にして、
最も賢明なる教授者、「大師」となっていたのであった。
オジュタイは幼き日のナーセットの才覚を見出し、龍眼の聖域より教えを授けた。
数多の知恵、研ぎ澄まされた肉体と技、呪文を操る術を学び取り、更なる教えを求めるナーセットの嘆願に応じ、オジュタイはナーセットを龍眼の聖域へと招く。
龍眼の聖域において、ナーセットは他のどの学徒よりも素早く成長し、龍眼の聖域の階級を最下部から最高まで昇り、ついには十五歳で師の称号を与えられ、オジュタイが任命した最年少の師と上り詰めた。
しかし、ナーセットはオジュタイがほぼ全ての者に禁じた龍眼の地下書庫において古の巻物、オジュタイ氏族において伝えられていた歴史が偽りであることを示すものを目にし、氏族を出奔したのであった。
氏族を出奔しタルキール世界を回り、今や世界を一周し、あらゆる地を、秘密を目にしてきたナーセットを座より見つめ、問いかけるオジュタイ。
ナーセットは真実を学んだことを答える。
オジュタイは快く受け入れ、
「すべきことを思案したなら、進むこと」
「学ぶべきものは常にある」
そう促し、空へと飛び立っていったのであった。
龍王としての姿が、「龍王オジュタイ」としてカード化されている。
(『大師の学徒』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「龍王オジュタイ」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「オジュタイ」の項目)(外部リンク参照)
シルムガル
シルムガルはほくそ笑み、その古の言語で話した。彼の声は玉座の間に反響し、それに伴って黄金の山が揺らいだ。
「龍王様はお前達の言葉で話すことを望まれないというだけで」 シディシはその男へと言った。「それを理解されていないということではないぞ」
かつてスゥルタイであった者達を統べる「シルムガル氏族」の龍王。
龍王としての姿が、「龍王シルムガル」としてカード化されている。
全くの余談だが、
「龍王シルムガル」のカードイラストのシルムガルの首元に見られる遺体は、「防腐処理を施され、シルムガルの首飾りとされたかつてのスゥルタイのカン、タシグルの遺体」であることが公式に明言されている。(『シルムガルの豪奢な装飾品』)(外部リンク参照)
(『毒入りの心臓』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「龍王シルムガル」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「シルムガル」の項目)(外部リンク参照)
アタルカ
「偉大なるアタルカ、龍王にして守護者よ。それは貢物だ。我らを生かせ、そうすればもっと多くを渡そう」
アタルカは唸り声で了承を示し、その強力な顎で骨、毛皮、皮を肉と同じように噛み砕いた。
スーラクは自身へと微笑んだ。今回も狩りに成功し、彼の民は生きるだろう。彼は踵を返し、歩いて山を降りようとした、その時、狂乱した声を聞いた。副官の声を。
「龍王アタルカよ! 我らをお許し願いたい。こうするしかなかった」
スーラクは戻り、叱りつけた。「馬鹿が、止めろ」
だが副官は続けた。「スーラクは捧げ物を守るために、貴女様の種の一体を殺しました。彼は自然の秩序を乱しました! どうか我らをお許し下さい、そして貴女様の復讐はどうか彼だけに!」
スーラクは微笑んだまま、待った。
アタルカは食事から顔を上げ、明らかに苛立っていた。彼女は短い言葉を龍詞で吼えた。「好きにしろ」
かつてティムールであった者達を統べる「アタルカ氏族」の龍王。
ある時、スーラク率いる狩人の一団がアタルカへの貢ぎ物を運ぶ途中、アタルカの種の龍の一体がスーラク達へと襲いかかり、アタルカへの貢ぎ物を喰らおうとした。
本来ならばアタルカの種の龍は知性を持ち、狩りは妨げられてはならないものだと知っているはずにも関わらず。
スーラクは龍詞で
「自分が狩猟の統率者であること」
「今喰らっている獲物はアタルカの食事であるため、直ちに喰らうことをやめること」
そう警告するも、応じる様子はなかった。
スーラクは大地より引き出した魔力を込め、放った渾身の裏拳の一撃で龍を打ち倒した。
嵐によりアタルカへの貢ぎ物を運ぶ道のりが遅れる中、スーラクは倒した龍を解体し、その肉を喰らった。
アタルカ氏族の狩人の龍王への「獲物を貢ぎ物とする代わりに自身の助命を願う」伝統的な言葉。
「偉大なるアタルカ、龍王にして守護者よ。それは貢物だ。我らを生かせ、そうすればもっと多くを渡そう」
アタルカは受け入れた。
だが、アタルカの報復を恐れたスーラクの副官は、
「スーラクがアタルカの種の龍を殺し、喰らったこと」
を明かし、スーラク以外の助命を嘆願する。
しかし、それに対するアタルカの返答は
「好きにしろ」
の一言であった。
龍王としての姿が、「龍王アタルカ」としてカード化されている。
(『狩猟の呼び声』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「龍王アタルカ」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「アタルカ」の項目)(外部リンク参照)
ドロモカ
龍王としての姿が、「龍王ドロモカ」としてカード化されている。
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「龍王ドロモカ」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ドロモカ」の項目)(外部リンク参照)
『タルキール覇王譚』のタルキールにおいてカンであった者達
運命は再編され、タルキールは変わった。
カンの存在しない世界で、カンとなるはずであった者達は異なる運命を歩むこととなる。
(『覇王ではなくなった者たちのアート』)(外部リンク参照)
ズルゴ
「野郎、俺を見て笑いやがったな?」
マルドゥ族のカンであったズルゴの運命は変わり、
コラガン氏族において敵の襲来を告げる鐘を叩く役割を担う者となっていた。
しかし、ズルゴをはじめコラガン氏族となったマルドゥ族の戦士達にサルカンを知る者はいない。
運命が再編されたタルキールにおいてサルカンが生まれることはなく、サルカンのことを記憶している者は誰もいないのであった。
コラガン氏族の鐘叩きとなった姿が、「鐘突きのズルゴ」としてカード化されている。
(『龍たちのタルキール』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ズルゴ」の項目)(外部リンク参照)
アナフェンザ
「オレット、とても多くの祖先が皆、共通の目的に繋がれています――その子孫を、人々を守護するという。そこに政治的な意図は何もありません。龍の好意を得ようという企みも何もありません。それは純粋で、強力なものです」
アブザン家のカンであったアナフェンザの運命は変わり、
死してなおドロモカ氏族を守護する精霊となっていた。
生前のアナフェンザはドロモカ氏族の部隊を率いる隊長であり、
かつてアブザンだった者たちがドロモカに下った際禁忌として捨て去られ、忘れ去られた族樹を介して祖先の霊の力を借りる術を密かに解き明かした者だった。
ある日のコラガン氏族との戦いで、追い詰められたアナフェンザはオレットを守るべく精霊の力を借りてコラガン氏族の戦士達と龍を撃退した。
しかし、それはドロモカ氏族において死者を冒涜する屍術と見なされる禁忌であり、死罪によって罰せられるものであった。
オレットは龍への嘆願によって自らがアナフェンザの処刑人を務め、アナフェンザは逃げるそぶりすら見せず穏やかに受け入れた。
その後オレットは自身が得た地図師の役職を利用し、見つけた忘れ去られた族樹にアナフェンザの名を刻んだ。
その後、ドロモカ氏族の戦士達の間で、「氏族を見守り、助ける精霊」として伝えられるアナフェンザの姿があった。
ドロモカ氏族を守護する精霊となった姿が、「族樹の精霊、アナフェンザ」としてカード化されている。
(『守護者』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「アナフェンザ」の項目)(外部リンク参照)
シディシ
「死ぬのはお前一人ではない」 シディシは言った。「とはいえ、貢物はお前のように、龍王様を殺すことができると信じる者を連れて来る。その者達は皆このような素晴らしい毒を持ってくる」
スゥルタイ群のカンであったシディシの運命は変わり、
処刑された後、アンデッドとしてシルムガルに仕える龍詞の通訳者たる側近となっていた。
彼女はありとあらゆる猛毒を集め、熟成させては猛毒の吐息を操るシルムガルすら倒せるほどの毒となる日を、
シルムガルが警戒を解く日を、
――シルムガルを倒し、新たな統治者となる日を狙い、待ち続けている。
シルムガル氏族に仕える不死の側近となった姿が、「アンデッドの大臣、シディシ」としてカード化されている。
(『毒入りの心臓』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「シディシ」の項目)(外部リンク参照)
スーラク
「お前の行動を咎めはしない。だが彼女は知っている、俺は何も間違っていないと。何故龍は人の上にいるのか? 強いからだ。単純なことだ。だが俺達が見つけたあの龍は弱かった。病にかかっていた。ならば敬う理由がどこにある? 彼女はわかっている。お前も理解するがいい」
ティムール境のカンであったスーラクの運命は変わり、
アタルカ氏族において狩りを行い、龍王アタルカに獲物を貢ぐ狩猟の統率者となっていた。
ある時、スーラク率いる狩人の一団がアタルカへの貢ぎ物を運ぶ途中、アタルカの種の龍の一体がスーラク達へと襲いかかり、アタルカへの貢ぎ物を喰らおうとした。
本来ならばアタルカの種の龍は知性を持ち、狩りは妨げられてはならないものだと知っているはずにも関わらず。
スーラクは龍詞で
「自分が狩猟の統率者であること」
「今喰らっている獲物はアタルカの食事であるため、直ちに喰らうことをやめること」
そう警告するも、応じる様子はなかった。
スーラクは大地より引き出した魔力を込め、放った渾身の裏拳の一撃で龍を打ち倒した。
嵐によりアタルカへの貢ぎ物を運ぶ道のりが遅れる中、スーラクは倒した龍を解体し、その肉を喰らった。
アタルカ氏族の狩人の龍王への「獲物を貢ぎ物とする代わりに自身の助命を願う」伝統的な言葉。
「偉大なるアタルカ、龍王にして守護者よ。それは貢物だ。我らを生かせ、そうすればもっと多くを渡そう」
アタルカは受け入れた。
だが、アタルカの報復を恐れたスーラクの副官は、
「スーラクがアタルカの種の龍を殺し、喰らったこと」
を明かし、スーラク以外の助命を嘆願する。
しかし、それに対するアタルカの返答は
「好きにしろ」
の一言。
恐れた副官はスーラクへと刃を向けたが、
スーラクは拳の一撃で副官を打ち倒し、
「龍は強いからこそ人の上にいる。弱い龍に敬う理由などない。そうアタルカは理解している」
旨を告げ、更なる狩りと、
アタルカに十分な肉を捧げるか、アタルカの食事となるかを告げたのであった。
アタルカ氏族の狩猟の統率者となった姿が、「狩猟の統率者、スーラク」としてカード化されている。
(『狩猟の呼び声』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「スーラク」の項目)(外部リンク参照)
ナーセット
「真実を、学びました」
ジェスカイ道のカンであったナーセットの運命は変わり、
オジュタイ氏族において多くを学び、心身を鍛える修行僧の最高位たる師となっていた。
八歳の幼き日、ナーセットは母親と訪れる市場の人々の事情を見通し、毎回並べられる品に共通する特徴を表す具体的な数値を正確に記憶、計算できるほどに優れた観察力と記憶力をもつ少女であった。
しかし、それほどに優れた認識力を持つ彼女にとって市場の光景は情報過多であり、自身を閉じ込める耐えがたい苦痛であった。
ナーセットはその苦痛を紛らわそうと市場から慌てて母に連れ出してもらおうとしては様々なトラブルを引き起こしてしまう問題児と見なされていた。
ある日、ふとしたことから果物屋の詰んでいた林檎の山を崩し、市場を追い出されたナーセットは川岸において自身に呼びかける声を聞く。
それは龍眼の聖域から呼びかけるオジュタイの言葉であり、本来は龍の言葉である龍詞によって話されているにも関わらず、ナーセットはそれを理解する事ができたのであった。
「お前は来るべき所へとやって来た。知るべきことは全て、私が知っている」
「学びたいと願う者へと、私は教えるであろう」
その言葉に答え、ナーセットはオジュタイの弟子となった。
その後三年間、ナーセットは市場の外の川岸においてオジュタイより学び、鍛え、精神を磨き上げ、
数多の知恵、研ぎ澄まされた肉体と技を備え、呪文を操る術を持つ者となった。
だが、オジュタイの元での更なる学びを望むナーセットは、オジュタイの側で学びを得る嘆願の言葉を送った。
ある日、龍語り(龍に仕え、龍詞を龍以外の種族の言語に通訳する役割を担う者)のエイヴンがナーセットの元に現れる。
その龍語りは、オジュタイに直に仕える龍語りのイーシャイ。
彼女は「ナーセットがオジュタイの元で学ぶことが認められた」旨の緊急の伝言を持って現れたのであった。
龍眼の聖域においてナーセットは他のどの学徒よりも素早く成長し、龍眼の聖域の階級を最下部から最高まで昇り、ついには十五歳で師の称号を与えられ、オジュタイが任命した最年少の師と上り詰めた。
しかし、それは最早オジュタイの元においてすら学ぶことがなくなってしまったことを意味する。
そう理解したナーセットは市場で過ごした幼き日の如き閉塞感に苛まれる。
ナーセットを苛む閉塞感は、飽くなき知識への渇望であった。
山を下り、ナーセットはオジュタイがほぼ全ての者に禁じた龍眼の地下書庫において古の巻物を目にする。
そこに記されていたのは、かつてオジュタイ氏族に伝えられていた
「オジュタイこそタルキール最古にして最も賢明なる龍である」
という歴史とは異なる、オジュタイ以前のカンの率いる氏族の存在を指し示すものであった。
オジュタイ氏族に伝えられていた歴史が偽りのものであることを知ったナーセットは
「オジュタイの真実を学びたい」
という渇望に取り憑かれ、オジュタイ氏族の寺院を回っては秘密の地下書庫を発見し、
精霊龍ウギンの存在を、かつて龍と氏族が争っていた古の時代を知る。
遠い昔に破壊され、略奪されたと思わしきダルガー要塞の地下書庫において、ナーセットは古のカン達の会合を記した巻物を見つける。
そこに記されていたのは、
カン達の存在とその計画。
精霊龍ウギンを救い、タルキールの龍達を救った存在。人であり、龍であり、カンであるもの、「サルカン」の名。
そして、かつてのカン達の会合は龍の襲撃によって突然の終わりを告げられたこと。
その襲撃をもたらした龍の一体が師、オジュタイであるという究極の真実。
師の名前を目にしたナーセットはプレインズウォーカーの灯に目覚め、異なる世界を垣間見る。
更なる知識、可能性、行くべき場所。
それらに心惹かれながらも、最後の瞬間にナーセットは自身を引き戻した。
その日以来、
「未だ学ぶべきものがあるはず」
「見つけるものがあるはず」
と確信し、タルキール世界を回ったナーセット。
今や世界を一周し、あらゆる地を、秘密を目にしてきたナーセットは再びあの川の元に戻っていた。
座よりナーセットを見つめ、問いかけるオジュタイ。
ナーセットは真実を学んだことを答える。
オジュタイは快く受け入れ、
「すべきことを思案したなら、進むこと」
「学ぶべきものは常にある」
そう促し、空へと飛び立っていったのであった。
プレインズウォーカーとなった姿が、「卓絶のナーセット」としてカード化されている。
(『大師の学徒』、『揺るぎなき、そして気高き者』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「ナーセット」の紹介記事)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「卓絶のナーセット」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ナーセット」の項目)(外部リンク参照)
『タルキール龍紀伝』の時代の主な氏族の構成員
テイガム
「ナーセットはこの龍眼の聖域に相応しくありません。彼女は異端者、そのため法の限りをもって罰せられました。ここに彼女はおりません。去って久しいのです」
ジェスカイの元を去りシディシの側近となったテイガムの運命は変わり、
オジュタイ氏族において師を務めるものとなっていた。
龍眼の聖域を訪ねたサルカンを迎えるも、サルカンがナーセットを探していることを聞くや否やナーセットを異端者として糾弾し、サルカンを力尽くで追い返した。
『タルキール覇王譚ブロック』においてはテイガム自身はカード化されることはなかったが、
後に統率者2017において、オジュタイ氏族の僧としての姿が、「オジュタイの達人、テイガム」としてカード化されている。
(『龍たちのタルキール』、『大師の学徒』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「テイガム」の項目)(外部リンク参照)
オレット
「信じたいように信じてくれ。私の旅が成功したかどうかは、イェファのような者が現れだすまでわからない。アナフェンザにとっては、常に氏族が全てだった。死んですら、彼女の熱情は衰えることを拒否した。私は今、真実を共有するために旅をしている。彼女は、イェファが言ったように、守護者なんだ」
アブザン家において家族を裏切ったオレットの運命は変わり、
ドロモカ氏族の地図師としてドロモカ氏族の領地を放浪する者となっていた。
かつてのオレットは生前のアナフェンザ率いるドロモカ氏族の部隊の戦士の一人であった。
ある日のコラガン氏族との戦いで、追い詰められたアナフェンザはオレットを守るべく精霊の力を借りてコラガン氏族の戦士達と龍を撃退した。
しかし、それはドロモカ氏族において死者を冒涜する屍術と見なされる禁忌であり、死罪によって罰せられるものであった。
オレットは龍への嘆願によって自らがアナフェンザの処刑人を務め、アナフェンザは逃げるそぶりすら見せず穏やかに受け入れた。
その後オレットは自身が得た地図師の役職を利用し、見つけた忘れ去られた族樹にアナフェンザの名を刻み、その樹に関するあらゆる公的な記録を抹消し隠蔽した。
彼は今、ドロモカ氏族の領地を放浪し、アナフェンザの物語をドロモカ氏族の者達に語って回っている。
(『守護者』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「オレット」についての記述)(外部リンク参照)
ガヴァール・バーズィール
「俺の名はガヴァール・バーズィール、お前らの門を破壊し、城壁を崩した者だ」
マルドゥ族より拾われアブザン家の戦士となったガヴァールの運命は変わり、
コラガン氏族の戦士としてアナフェンザの敵となっていた。
(『守護者』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ガヴァール・バーズィール」の項目)(外部リンク参照)
『タルキール龍紀伝』のタルキール次元について
『タルキール龍紀伝』におけるキーワード
氏族
運命再編により、各氏族は龍へと下り、かつての氏族と龍達は龍王が統治する新たな氏族となる。
(『龍の氏族の象徴とカンの氏族の象徴』)(外部リンク参照)
氏族 | 龍王に下る以前の氏族の名 | 色の組み合わせ | 理想 | 象徴 | 固有メカニズム | 詳細 |
---|---|---|---|---|---|---|
ドロモカ氏族 | 旧・アブザン家 | 白緑 | 忍耐 | 龍鱗 | 鼓舞 | 乾燥した岩砂漠に生きるという苦難に耐えるため『家族』を重要視し、規律の取れた軍隊など相互の繋がりによって自身を防衛する氏族であることはアブザン家より変わっていないが、血の繋がりを重んじていたアブザン家とは異なり、血による相続は存在せず、その帰属意識は氏族そのものへと向けられる |
オジュタイ氏族 | 旧・ジェスカイ道 | 青白 | 狡知 | 龍眼 | 反復 | 鍛錬、学びによって悟りの道を目指す格闘家や神秘家の氏族であることはジェスカイ道より変わっていないが、「大いなる円環」と呼ばれる魂の転生の概念が説かれており、最も強く賢い最高の存在である龍への生まれ変わりを目指すことが目標とされている |
シルムガル氏族 | 旧・スゥルタイ群 | 黒青 | 残忍 | 龍牙 | 濫用 | 生ける屍の奴隷「シブシグ」を操る屍術や、猛毒による暗殺などの恐るべき術を用い、富を築いた氏族であることはスゥルタイ群より変わっていないが、シルムガルは残忍な戦いを好み、それによって生まれる死者を生ける屍の下僕とすることを好むため、いかなる手段を用いてでも氏族に属する者達は必死にシルムガルの寵愛を受けようとしている |
コラガン氏族 | 旧・マルドゥ族 | 赤黒 | 迅速 | 龍翼 | 疾駆 | 定住することなく略奪によって生計を立てる氏族であることはマルドゥ族より変わっていないが、コラガン自身のように破天荒で気まぐれなありとあらゆる束縛を嫌う内部構造の存在しない氏族となっている |
アタルカ氏族 | 旧・ティムール境 | 緑赤 | 獰猛 | 龍爪 | 圧倒 | 獲物を追い山脈の荒れ果てた領土を放浪する狩人の氏族であることはティムール境より変わっていないが、それらは全てアタルカへと捧げるためであり、十分な量の捧げ物を用意できない者は例え氏族に属する者であろうとアタルカの食料となる |
(『プレインズウォーカーのための『タルキール龍紀伝』案内 その1』、
『プレインズウォーカーのための『タルキール龍紀伝』案内 その2』)(外部リンク参照)
「タルキール龍紀伝」についての外部リンク(ネタバレ注意)
- 『タルキール龍紀伝』公式サイト
- 『プレインズウォーカーのための『タルキール龍紀伝』案内 その1』
- 『プレインズウォーカーのための『タルキール龍紀伝』案内 その2』
- 『タルキール龍紀伝』Card Image Gallery
- 『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける運命再編後のタルキール次元の紹介ページ
背景ストーリー小説
タイトルが太字のものはタルキール覇王譚ブロックのまとめである「タルキール・ブロックの物語」にて筋書きとして重要視された物語である。
非公式リンク
あなたの隣のプレインズウォーカー
あなたの隣のプレインズウォーカー ~第34回 さるかんドラゴン~ - | 晴れる屋
「アニヲタWiki(仮)」における「龍王/Dragonlord(MtG)」の項目
「アニヲタWiki(仮)」における「カン/Khanだった人物サイクル(MtG)」
『タルキール覇王譚ブロック』
関連タグ
『タルキール龍紀伝』におけるタルキールの氏族
ドロモカ氏族
オジュタイ氏族
シルムガル氏族
コラガン氏族
アタルカ氏族
「タルキールをまた離れることは考えていないのか?」 サルカンは尋ねた。「探検すべき多くの世界があるし、その全部を見ることすらできないくらいだ」
「いつか、そうすると思う」 肩越しに振り返ってナーセットは言った。「だけど、この世界にはまだ沢山の謎がある。今はまだ......私は、この世界にいたい」
サルカンは微笑み、ツンドラの彼方へと目を向けた。遥か遠くに、龍たちが舞っていた。
「ああ。君が何を言いたいかは、よくわかっている」