概要
都市において中心市街地の人口が減少し、郊外の人口が増加する人口移動現象。決してメインイラストのような事例ではない。
人口分布図で見ると中心部に穴が空き、その見た目が菓子のドーナツに似ていることからこの名前がついた。
詳細
わかりやすく日本で例を挙げれば、三大都市圏で顕著で、例えば東京23区で比較的郊外に位置する世田谷区の人口は2015年9月現在の推計でおよそ90万人と政令指定都市に匹敵するレベルなのに対し、都心の千代田区の人口は2015年9月現在の推計でおよそ5万5千人と小規模な地方都市レベルとなっている。
原因
このような状況になる原因としては、主として土地価の高騰およびそれに伴う建築物の変化や、公共交通機関の縮小廃止、住民の高齢化などが理由として挙げられる。
先に例を挙げた千代田区は国会議事堂や東京駅を始めとする重要建築物、多目的ホールなどの公共建築物、店舗は百貨店や大型家電量販店などの利便性の高い建物・施設が多く集中し、それらへのアクセスが容易い住宅地価も他の区と比べると高い傾向にある。
一方世田谷区は住宅街が多く立ち並ぶ他、23区内でも上位に位置する広い面積を持つため地価が安い所も多い。この格差こそがドーナツ化を招いている元凶ともいえる。
また、公共交通機関、これは路線バスや鉄道などであるが、特に鉄道の廃線などにより不便となり、中心地域への客離れが進む、という事例も存在する。
さらに、団地などを中心とした人工的に作られた都市においては住民の子孫が郊外や他の土地に行くことも多く、団地に残る住民が高齢化あるいは減少し、そのうち団地の建物にも住民にも魅力は失われ、商店も店をたたむこととなる。
放置すると
この状況を放置するとどうなるか、といえば中心地の都市型スラム化を招く。特にこれは地方都市に顕著にみられるが、都心部の地価が高額になるにつれ地価がそれほど高くなく、かつ大きな土地が取れる郊外に利便性の高い建物が新規作成、あるいは移転してしまい、中心がそちらに移ることになる。一方それまで中心地であった地域は地価は下落するが、不便な土地となる。すなわち都市の内部に過疎地域が発生することになる。
この状態になると開発のメリットが薄れ、最悪の場合、商店街はシャッター通りとなり、町中に廃墟が立ち並び、そのような建物に低所得者が居住する状況になる可能性が存在する。
そうなってしまう前に公共交通機関の整備、新たな居住地区および商業地域の再構築など、都市の新たな開発が必要となってくるが、これもまた自治体および土地所有者や権利者などの予算などの関係上難しい面が存在している。
ただし現在(2010年代)は高層マンションの登場などによりドーナツ化現象はむしろ収まりつつあり、都心回帰の流れに向かっている。日本の大都市の多くは中心部の区の人口増加率が上がっている。