※以下5部後半のネタバレを多分に含みます。閲覧注意
概要
5部原作83話から登場するブローノ・ブチャラティの姿。
ちょうどほぼ物語の折り返しにあたるタイミングで、物語の後半ブチャラティはこの状態で行動することとなる。
ブチャラティはボスへの敵対を決意し暗殺を試みるも察知され、逆にボスはそのスタンド能力「キング・クリムゾン」のパワーで背後からブチャラティの腹を貫き、左肩から心臓に達するほどの強烈な手刀で大ダメージを与えた。誰がどう見ても致命傷なほどの大怪我を負ったブチャラティだったが、ボスも驚嘆するほどの精神力で戦闘を継続し、さらわれたトリッシュ・ウナを命がけで奪還し逃げ切った。
力尽きて倒れている彼をジョルノ・ジョバァーナが発見した頃には目から光が消え心肺は停止、周囲にハエが飛び、トリッシュの切断された腕を繋ぎ止めたジッパーは消滅しようとしていた。
だがジョルノがゴールド・エクスペリエンスの能力で損傷した体を修復して怪我を治療する最中、ブチャラティの魂が教会から脱出するように警告、そして確かに生命活動が終了していたはずの肉体が突如起き上がり「急げ」と叫ぶのであった。
ただし、人間としての機能を完全に取り戻したというわけではなく、脈はなく、傷を負っても痛みを感じずほとんど血が出ないという明らかな違いがある。なお、この状態でもスタンドは使用可能である。
過去にジョジョでは屍生人として転生する、タイムリープした事で死亡がなかった事にされるなど死者が甦るという展開はいくつか存在したが、ブチャラティの例はそれらとはまた異なる類を見ないものだった。
そして、「生物」にカビを生やすはずのスタンド「グリーン・デイ」も効かなかった。
車で敵からの逃亡中、その真実が明らかになる…
その真相
ブチャラティ「不思議だな………これは「運命」とオレは受け取ったよ
「天」がチョッピリ許してくれた偶然の運命だってな…
ヴェネツィアでおまえがオレの負傷を治してくれた時
おまえがくれた『生命エネルギー』はもう少しだけ『動く事』を許してくれたようだ」
ジョルノ「なぜ…なぜ黙っていたんだ?
あの時 ぼくの『ゴールド・E』はあの時の負傷を完全に治したんだ……
その 今の異状だって元に戻れる方法が何かあったはずだ!」
ブチャラティ「ジョルノ
それについては…おまえの『ゴールド・E』自身が誰よりも知っている事だな……?
終わったものはどうする事もできないってな
オレの「命」は…あの時 すでに終わっていたんだ
黙っててくれるな?みんなには…」
ブチャラティはボスとの戦いで負った重傷により、ジョルノが発見した時点では既に死んでいる状態だった。
しかしジョルノが治療のため、対象に生命エネルギーを与えるゴールド・Eの能力を使ったことで、生命エネルギーが分離した魂を死体に強引に結びつけた事で生きているのか死んでいるのかわからないような特異現象が発生した。
「生きているもの」にカビを生やす「グリーン・デイ」が効かなかったのはこのため。
前作でも主人公が怪我を治療する能力を有していたが、死んでしまった人間は甦らせる事は不可能だった。上記セリフからもわかるようにゴールド・Eもその点では同じである。
それがなぜブチャラティにはイレギュラーが発生したのかというと、ジョルノがブチャラティを発見し治療をしたのが死んだ直後というタイミングだった事、「スタンドの強さは精神力に比例する(わかりやすい例が「てめーは俺を怒らせた」やビーチ・ボーイ)」という特性上、死ぬ間際までボスとの死闘でスタンドパワーが強まっていた事も挙げられる。
皮肉にも死んだ人間を異なる姿で蘇生させるという行為は実父もやっており、息子もまた異なる形でやり遂げてみせたのである。
なおブチャラティはかなり早い段階で自分の肉体がすでに死んでいる事に気付いており(だから料理にも一切口を付けなかった)、カビる事のない自らの肉体の特徴を逆手に取り崖から降りた先のセッコに地面からアリアリラッシュを叩き込み動揺させ、車で逃亡する機転を作った。
本来ジョジョには屍生人という別の定義でのゾンビがすでに存在するため、ゾンビ化という表現は相応しくないのかもしれないが、最近の作品に登場する似たような例からしてもゾンビほど的を射た表現もないため、読者からはゾンビ化として扱われる事が多い。
また、スタンドの力で不死身になったというわけでもなくあくまで「死んだ人間を強引に延命している」に過ぎないため、後先はそうそう長くない。セッコ戦後に生命エネルギーが尽き始めた頃は視力を失い一人で歩く事すらままならない状態になっていた(相手の姿や声などは生命エネルギーなどで見分け聞き分けており、大まかにしか分からない)。
普通ならこのまま命が尽きるのを待つのみだったが、シルバー・チャリオッツ・レクイエムが発動した事により生身のディアボロの肉体と入れ替わった事でまたもや仮初めの体で生き長らえる事となった。なお、ブチャラティの肉体に憑依したのはディアボロから引き剥がされたドッピオのみの人格で、そのまま一方的に朽ちてゆく他ない肉体とほぼ道連れになる形で命を落としたのだった。
その後、シルバー・チャリオッツ・レクイエムをブチャラティ自らが破壊したことで今度こそ本当に死亡した。しかし昇天する際に「ゆっくりと死んでいくだけだったオレの心は生き返ったんだ、おまえ(ジョルノ)のおかげでな。」と遺言している。
つまりジョルノと出会うまでは肉体は生きていたが心は死んだ状態であった。逆にゾンビ化してからは肉体は死んでいたが心は生きていたという状態であった。
しかしその「父を死に追いやり、弱者に不幸をばらまく麻薬の蔓延を食い止めたい」「娘をてめーだけの都合で殺すような吐き気を催す邪悪を許さない」という、まさに命を賭けた想いによる真実から出た誠の行動は決して滅びることなく、ジョルノたちに無敵を謳うボスを倒すための会心の一矢を届けたのであった。
第5部のエピローグ(前日談)である「眠れる奴隷」編から数えて幾度となく命の危機に瀕し、ついには肉体が死亡してもなお運命によって生かされ続け、最期まで自身の役目を果たしジョルノに後の全てを託してこの世を去ったその生き様は、自分が絶頂を味わい続けたいがために他者を傷付け、殺し、貶め続けた末に、最後は死という結果に辿り着くことすらできなくなったディアボロとまさに対照的と言えるだろう。