概要
永井豪の「デビルマン」を原作としたアニメ作品第二作。監督は飯田馬之介氏。
前作であるテレビアニメ版とは違い、こちらは永井氏が描いた漫画版を原作としており、OVAならではのオリジナル展開を挟みながらも原作の世界観を美しく描いているのが特徴。
後の永井氏が加筆した新装版などにも本作の設定が一部取り入られたり、後のデビルマン作品にも影響を与えている。
物語の構成
本作は当初三部構成を予定しており、主人公であり不動明がデビルマンになるまでの経緯を描いた「誕生編」、ジンメン並びにシレーヌとの戦いを描いた「妖鳥シレーヌ編」の二作が発売された後、完結編となる「アーマゲドン編」の発売が告知されたが諸事情により制作されることはなかった。「アーマゲドン編」に関しては1998年10月に発売されたCD「デビルマン伝説」においてドラマCDとして収録されたことで補完された。
登場人物
主人公。勇者アモンと合体する前は原作である漫画版同様に憶病ではあるが内に秘めた確かな優しさと意志の強さを持っており、「誕生編」の冒頭において不良に絡まれた際も屈しなかった。本作では両親は行方不明となっているが・・・・・
デビルマンとなった最初の戦いは迫力満点。台詞は中の人のせいでどこぞの赤いロボットと重ねてしまう人もいるかもしれない。
明の友人。父親である飛鳥教授の自殺を境に父の残した資料から地球の先住生物「デーモン」の存在を知り、明と共にデビルマンとなるべく黒ミサを行うが失敗、「誕生編」では生死不明の状態で終わるが次回作では病院で回復している姿を見せる。主要武器は改造銃で二作通して活躍している。
完結編が製作されなかったため、本作では正体を明かされることはなかった。
ヒロイン。尺の都合上で出番は少ないが明を気遣っている様子が見られる。「誕生編」では冒頭で出番が終わってしまうが「シレーヌ編」では性格が変貌している明を心配している様子。シレーヌ編では原作同様にサービスシーンを拝めることができる。
「誕生編」の登場人物
不動礼次郎CV津嘉山正種
明の父親。小説版の逆輸入で初めて名前が与えられた。妻と助手を連れてヒマラヤの調査に訪れていたが目覚めたデーモンに襲われる。その後については何も触れられていないが明の話では喰い殺された模様。
不動須弥子CV池田昌子
明の母親。設定も含めて小説版の設定を反映させている。夫ともにデーモンに襲われる。その後、「妖鳥シレーヌ編」の冒頭においてジンメンに捕食されていたことが判明、彼の甲羅のこぶの一つとなっており、迂闊に手が出せない明に対して自分の死を受け入れさせ、戦うように促した。
飛鳥教授CV寺島幹夫
了の父親で物語が始まった段階では既に故人。デーモンの存在を知り彼らの思考を探るべく合体するが破壊衝動を抑えきれなくなり、自殺する。その後、彼が残した「恐怖の遺産」は明たちの運命を大きく変える。
木刀政CV玄田哲章
明に絡んできた不良のリーダーで連れの二人からは「政兄」と呼ばれている。原作と違って大幅にデザイン変更されている。後述の連れである万次郎の暴行に屈しない明に対して「強い」と敬意を払う一方で「そのやり方だと命がいくつあっても足りない」と忠告して去る。某総司令官ではないため「私にいい考えがある」とは言わない。
チェーン万次郎CV内田直哉
政の連れで明に暴行を加えた不良。明が餌やりにきたウサギ小屋の兎を惨殺した外道で運よく無事だった「ウサ太郎」と名付けられていた兎を引き渡すように明を脅す。最終的には政に止められたため、引き下がった。
ドス六CV亀山助清
政の連れで明を馬鹿にしていた不良。漫画版では彼が初期の不良のリーダーだったのだがデザインが変更されたこともあって誰だがわからない状態になっている。万次郎の機嫌を損ねる明に対して兎を渡した方がいい言うなど意外に気遣っている。
ヒッピーの集団
了が黒ミサのために連れてきたチンピラたち。原作同様に一部のメンバーがデーモンと合体し、デビルマンとなった明に惨殺される。
「妖鳥シレーヌ編」の登場人物
冒頭で登場したデーモンで明の母親である須弥子を喰い殺した犯人。実は誕生編でも僅かに登場しており、この時は漫画版同様のデザインだったのだが本作ではよりグロデスクなクリーチャーのような外見へと変更されている。原作同様に甲羅のこぶの人面を人質にしてデビルマンとの戦いを優位に進めるが母の説得を聞き入れた明により甲羅を引き剥がされて死亡する。原作では魔将軍ザンの部下と扱われているが本作ではシレーヌ編の前哨戦として登場し、後の「Devilman_Crybaby」でもこの構成となっている。
看護婦の皆さん
了が入院している病院で勤務している看護婦たち。美形である了に夢中になっていたが本人から相手されることはなかった。
タレちゃんCV一龍斎貞友
「誕生編」では名前のみだったがシレーヌ編で登場。基本的にヘタレでシレーヌが牧村家を襲った際は恐怖のあまりに自室に引き篭もってしまった。ほとんど出番なし。
牧村夫妻
なんとCVなし。
シレーヌが牧村家を襲った際に二人揃ってアグウェルの能力で壁に取り込まれてしまう。
魔王ゼノンの命令によりデビルマンを始末するためにアグウェル、ゲルマーを引き連れて牧村家を襲う。本作ではテレポートができるほか念力による波動攻撃ができる他エネルギーを集中して核爆発を起こすと言った能力が追加され、街一つを消している。OVAならではの動きで美しく表現されており、原作ではなかった明がデビルマンに変身した際に「アモン・・・」と勇者アモンに対して何か特別な感情を持っていたと思われる描写がある。
シレーヌが連れてきたデーモンの一体で水と同化する能力を持っている。原作と比べてよりクリーチャーらしいデザインとなっており、両足が無くなっている。水を取り込む能力美樹を人質に取るだけではなく体内に忍ばせて操るなど明を翻弄させるが手から発するデビルビーム?(原作でも本作でも名称なし)により体内の水分を蒸発させられてしまい弱体化。最終的に明に徹底的に痛めつけられ、死亡する。
牧村家に侵入した地面や壁に同化する能力を持つデーモン。手始めに牧村夫妻を壁に取り込み、続いてゲルマーから逃げていた明を襲う。自らを「地獄の使者」と名乗るが明を相手には分が悪く両目を潰された挙句、触覚で首を絞められ引き千切られて死亡してしまった。こちらもゲルマー同様に大幅にデザインが変更され、能力以外は別物と化している。
シレーヌの懇願でゼノンの手により召喚された増援の一体で肩から二本の角が生えた人面犀のような姿の重量級デーモン。原作同様にシレーヌを愛する戦士で瀕死のシレーヌに対しデビルマンを打ち倒す勝利の感激を捧げたいと自分との合体を持ちかける。OVAの世界観だけあって彼とシレーヌの会話は名シーンと言ってもおかしくない。
増援で召喚されたデーモンたち
カイムと共にゼノンの手で召喚された増援。
全員、カイムと比べて能力が貧弱でデビルマンの手で全滅してしまった。
未製作の「アーマゲドン編」について
尾切れトンボとなってしまった本作では別に売り上げが悪かったために打ち切りというわけではない。「アーマゲドン編」ではOVAとしては破格の1億2千万円の予算まで用意されたが、監督がその予算に納得せず製作には至らなかったらしい。
飯田監督はデビルマンに強く影響を受けた人物であり、学生時代に自主制作で「デビルマン」のアニメ化を試みたことがあるほどでデビルマンのOVA化の企画が立ち上がったことを聞いた際には「自分にやらせて欲しい」と売り込みに行ったそうで完結編も自分の満足いく作品にしたかったということかもしれない(ちなみに本作の変身シーンは学生時代に製作したものと同じらしい)。
結局、このOVAに関わったスタッフは番外編という扱いで製作された「CBキャラ永井豪ワールド」に携わることになった。
飯田監督は2010年に肺ガンで49歳の若さでこの世を去ってしまったため製作は絶望的ではあるが、2012年に六本木のシネマート新宿で行われたトークイベント『デビルマン生誕40周年!「デビルマンOVA COLLECTION」Blu-ray 発売記念上映イベント◆40th Anniversary Devilman Night◆』において本作で不動明役を務めた速水奨氏は司会に「もしいま企画が実現したら不動明役はできますよね?」と聞かれた際に「できますよ!」と即答しており、「アーマゲドン編」への意欲を覗かせてくれた。
そして、その願いは新作「Devilman_Crybaby」へと引き継がれた。
ジブリ?
「誕生編」を見るとどことなくスタジオジブリのキャラデザインに見えがちだがこれは飯田監督がかつて宮崎駿の下で「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」で助監督を務めていた影響かと思われる。動物を用いる手法なども宮崎を習ったものと言える。
因みに飯田氏の葬儀で弔辞を読まれたのは宮崎氏だったそうだ。
但し、これは「誕生編」のみで「妖鳥シレーヌ編」では明の髪型が崩れたりなど癖が抜けている。
関連動画
初の戦闘シーン(閲覧注意)
関連タグ
アイアンハイド…本作の主人公と中の人繋がり。口調が似通っている。
赤いサイバトロン…多分関係ないと思われる・・・・・多分。
エクスカイザー…こちらも主人公の中の人繋がり。こちらはデビルマン同様に正義の味方である。
Devilman_Crybaby…本作と同じく原作を基に製作している。但し、こちらは現代向けに手直しされ、キャラデザインも大幅に変更されている。