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デビルマン(OVA)

おーぶいえーばんでびるまん

1987年から1990年にかけて展開されたデビルマン初のOVA。こちらはかつてのテレビアニメ版とは違い永井豪が描いた漫画版を原作としている。
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概要編集

永井豪原作「デビルマン」のアニメ作品第二弾。

監督は飯田馬之介氏。製作には永井氏本人も直接関わっている。


前作である東映の制作したテレビアニメ版とは違い、こちらは永井氏が描いた漫画版を下地にしており、OVAならではのオリジナル展開を挟みながらも原作の世界観を美しく描いているのが特徴。


後の永井氏が加筆を加えた新装版には、本作の設定が一部取り入られ、後のデビルマン作品にも影響を与えている。


因みに本作は、第一作目である「誕生編」発売の6年前に出た永井氏の実兄である永井泰宇氏の書いた小説「真・デビルマン(全四巻)」の設定も取り入れており、こちらも読むとより本作を楽しむことはできる。


物語の構成編集

本作は企画当初三部構成を予定しており、主人公である不動明がデビルマンになるまでの経緯を描いた「誕生編」、ジンメン並びにシレーヌとの死闘を描いた「妖鳥シレーヌ編」の二作が発売された後、完結編となる「アーマゲドン編」の発売が告知されたが諸事情により制作されることはなかった。「アーマゲドン編」に関しては1998年10月に発売されたCD「デビルマン伝説」においてドラマCDとして収録されたことで補完されることになる。

第一巻「誕生編」(1987年)

第二巻「妖鳥シレーヌ編」(1990年)

CD「デビルマン伝説」『音響劇 デビルマン・アーマゲドン編』(1998年)


登場人物編集


不動明/デビルマンCV速水奨

主人公。

勇者アモンと合体する前は原作である漫画版同様に憶病ではあるが内に秘めた優しさと強い意志を持っており、「誕生編」の冒頭において不良に絡まれた際も屈しなかった。

本作では冒頭で両親が行方不明となっているが了との再会とデーモンとの接触を機にその真相を察することになる(本人によると何かに食われたと言っており、牧村家も亡くなったことに関しては知っている可能性が示唆されている)。

デビルマンとなった最初の戦いは迫力満点。台詞は中の人のせいでどこぞの赤いロボットと重ねてしまう人もいるかもしれない。


飛鳥了CV水島裕

明の友人。

父親である飛鳥教授の自殺を境に父の残した資料から地球の先住生物「デーモン」の存在を知り、明と共にデビルマンとなるべく黒ミサを行うが失敗、「誕生編」ではデビルマンとなった明に倒されたデーモンの下敷きとなって生死不明の状態で終わる。

次回作では、病院で回復している姿を見せており、シレーヌの魔の手にかかった明の危機を直感で察知。病院を抜け出して明を連行中のシレーヌを建築中の高層ビルから狙撃し、明の援護をする。

主要武器は改造銃で二作通して活躍している。

完結編が製作されなかったため、本作では正体を明かされることはなかった。


牧村美樹CV澄川真琴

ヒロインであるが尺の都合上で東映版と比べて出番は少ない上に本筋にそこまで絡んでいないので存在感が薄い(しかし、『誕生編』では怪我をした明を呆れながらも心配している様子が見られる他に『シレーヌ編』では性格が変貌した明を心配している模様が描かれ、悪夢にうなされた彼の気を遣ったりしている。シレーヌ編では原作同様にサービスシーンを拝めることができる。顔が若干ジブリヒロインっぽい。


「誕生編」の登場人物編集


不動礼次郎CV津嘉山正種

明の父親。

小説版の逆輸入で初めて名前が与えられたが妻諸共本編では名前で呼ばれていない。妻と助手を連れてヒマラヤの調査に訪れていたが目覚めたデーモンに襲われる。その後については何も触れられていないが明の話ではデーモンに喰い殺された可能性が示唆されている。


不動須弥子CV池田昌子

明の母親。

設定も含めて小説版の設定を反映させている。夫とヒマラヤの調査に同行した際にデーモンに襲われる。その後、『妖鳥シレーヌ編』の冒頭においてジンメンに捕食されていたことが判明、甲羅のこぶの人面の一つとなっており、迂闊に手が出せない明に対して自分の死を受け入れさせ、戦うように促した。その最期は満足そうな顔を浮かべていた。


飛鳥教授CV寺島幹夫

了の父親で物語が始まった段階では既に故人。

デーモンの存在を知り彼らの思考を探るべく合体するが破壊衝動を抑えきれなくなり、自殺する。その後、彼が残した「恐怖の遺産」は明たちの運命を大きく変える。本作ではよりサイコパスらしさが強調されている。


木刀政CV玄田哲章

明に絡んできた不良のリーダーで連れの二人からは「政兄」と呼ばれている。

原作ではプロレス野球部所属の不良のリーダーで登場もシレーヌ戦の後だが本作では設定およびデザイン変更されて早く登場している。後述の連れである万次郎の暴行に屈しない明に対して「強い」と敬意を払う一方で「そのやり方だと命がいくつあっても足りない」と忠告して去る。

声は似ているが間違っても某総司令官ではないため「私にいい考えがある」とは絶対に言わない。


チェーン万次郎CV内田直哉

政の連れで明に暴行を加えた不良でこちらも漫画とデザインが大きく変更されている。明が餌やりにきたウサギ小屋の兎を惨殺した外道。運よく無事だった一匹の兎を引き渡すように明を脅す。屈しない明に対してチェーンを振り下ろすが最終的には政に止められたため、引き下がった。


ドス六CV亀山助清

政の連れで明を馬鹿にしていた不良。

漫画版では彼が初期の不良のリーダーだったのだがデザインが変更され、更に政の取り巻きにされたこともあってもう誰だがわからない状態になっている。万次郎の機嫌を損ねる明に対して兎を渡した方がいい言うなど意外に気遣っている。


ヒッピーの集団

了が黒ミサのために連れてきたチンピラたち。

原作同様に一部のメンバーがデーモンと合体し、デビルマンとなった明に惨殺され、合体しなかったものもその戦闘に巻き込まれて全員死亡している。

何気に被害者。


「妖鳥シレーヌ編」の登場人物編集


ジンメンCV青野武

漫画版同様の外道。

冒頭で登場したデーモンで明の母親である須弥子を喰い殺した犯人。実は誕生編でも僅かに登場しており、この時は漫画版準拠のデザインだったのだが二作目での登場ではよりグロデスクなクリーチャーのようなデザインに変更されている。原作同様に甲羅のこぶの人面を人質にしてデビルマンとの戦いを優位に進めるが母の説得を聞き入れた明により甲羅を引き剥がされて死亡する。原作では魔将軍ザンの部下として、シレーヌ編後の登場だったが本作ではシレーヌ編の前哨戦として登場する。後の「Devilman_Crybaby」での戦闘でもこの構成となっている。


看護婦の皆さん

了が入院している病院で勤務している看護婦たち。美形である了に夢中になっていたが本人から相手されることはなかった。


タレちゃんCV一龍斎貞友

『誕生編』では名前のみだったが『シレーヌ編』で登場。基本的にヘタレでシレーヌが牧村家を襲った際は恐怖のあまりに自室に引き篭もってしまった。ほとんど出番なし。

『アーマゲドン編』が映像化されなかったおかげであのショッキングシーンはない(但し、別作品で披露されてしまったが)


牧村夫妻

なんとCVなし。

シレーヌが牧村家を襲った際に二人揃ってアグウェルの能力で壁に取り込まれてしまう(EDでは無事に解放されたことが判明している)。


シレーヌCV榊原良子

デーモン族きっての女戦士。

悪魔王ゼノンの命令によりデビルマンを始末するために部下であるアグウェル、ゲルマーを引き連れて牧村家を襲う。

本作ではテレポートができるほか念力による波動攻撃ができる他エネルギーを集中して核爆発を起こすと言った能力が追加され、街一つを消しているなど原作以上に強キャラとして扱われている。OVAならではの動きで美しく表現されており、明がデビルマンに変身した際に「アモン・・・」と勇者アモンに対して何か特別な感情を持っていたと思われる原作にない描写がある。


ゲルマーCV立木文彦

シレーヌが連れてきたデーモンの一体で水と同化する能力を持っている。原作と比べてよりクリーチャーらしいデザインとなっており、両足が無くなっている。水を取り込む能力美樹を人質に取るだけではなく体内に忍ばせて操るなど明を翻弄させるが手から発するデビルビーム?(原作でも本作でも名称なし)により体内の水分を蒸発させられてしまい弱体化。最終的に明に徹底的に痛めつけられ、死亡する。上半身はいい感じにアレンジされていたが反対に下半身がキモくなった。


アグウェルCV中嶋聡彦

牧村家に侵入した地面や壁に同化する能力を持つデーモン。手始めに牧村夫妻を壁に取り込み、続いてゲルマーから逃げていた明を襲う。自らを「地獄の使者」と名乗るが明を相手には分が悪く両目を潰された挙句、触覚で首を絞められ引き千切られて死亡してしまった。こちらもゲルマー同様に大幅にデザインが変更され、能力以外は別物と化している。目が三つある汚いスライム。


カイムCV石塚運昇

シレーヌの懇願でゼノンの手により召喚された増援の一体で肩から二本の角が生えた人面犀のような姿の重量級デーモン。原作同様にシレーヌを愛する戦士で瀕死のシレーヌに対しデビルマンを打ち倒す勝利の感激を捧げたいと自分との合体を持ちかける。OVAの世界観だけあって彼とシレーヌの会話は名シーンと言ってもおかしくない。


増援で召喚されたデーモンたち

カイムと共にゼノンの手で召喚された増援。

全員、カイムと比べて能力が貧弱でシレーヌとの戦闘で片腕を失ったデビルマン相手に出てきてから短時間で全滅してしまった。一体何しに来たんだ、コイツ等。原作でも時間稼ぎ程度だったが。


悪魔王ゼノン

デーモン族を束ねるリーダー格。二作通してシルエットなどの登場のみ。


ドラマCD「デビルマン・アーマゲドン編」編集

未完に終わったOVA版を引き継ぐ形で、1998年10月21日に発売されたCD「デビルマン伝説」に収録された音響劇。

諸事情で製作できなかった「アーマゲドン編」を補完する形で主役である明並びに了の出演はOVAから引き継いで演じているが美樹役を務めていた澄川真琴が当時引退してしまったため、代役として「美少女戦士セーラームーン」の月野うさぎ、「新世紀エヴァンゲリオン」で葛城ミサトなどを演じた三石琴乃が務め、本編ではシルエットなどしか出てこなかった悪魔王ゼノンを堀勝之祐が担当している。

冒頭は明と了の対話から始まり、美樹の死、交渉の決裂、最終戦争と移り、最終的に明の死にサタンが涙するところで物語は完結する。

因みに本ドラマは2012年に発売された『デビルマン OVA COLLECTION(Blu-ray)』に再収録されている。

迫力のある音楽と共に繰り広げられるボイスドラマは十分聞く価値あり。



未製作の「アーマゲドン編」について編集

尾切れトンボとなってしまった本作ではあるが決して売り上げが悪かったために打ち切りになったというわけではない

「アーマゲドン編」は上からOVAとしては破格の1億2千万円の予算まで用意されていたのだが、監督である飯田氏がこの予算に納得せず話がこじれてしまい、製作には至らなかったと言われている

飯田監督はデビルマンに強く影響を受けた人物の一人で学生時代に自主制作で「デビルマン」のアニメ化を試みたことがあるほど。デビルマンのOVA化の企画が立ち上がったことを聞いた際には「自分にやらせて欲しい」と売り込みに行ったらしい。(ちなみに本作の変身シーンはこの学生時代に自主製作したものとほぼ同じ作りらしい

完結編も自分の満足いく作品にしたかったこだわり様は世に出た二作を見ても明らかで彼がそれだけデビルマンに情熱を注いでいたのだろう。

結局、「アーマゲドン編」は製作されることなく、OVAに関わったスタッフ一同は彼と共に番外編という扱いで製作された「CBキャラ永井豪ワールド」に携わることになる(こちらでは世界観こそ違うものの二作目の明の発言から一度サタンと戦ったことが示唆されている)。

なお現在、DVD及びBlu-ray Discに収録されている飯田氏のインタビューや企画書から

・当初、45分×2部でアーマゲドン編を制作しようとし後に60分×3部の内容に変更した。

・夜の東京を舞台にした飛鳥了のデーモン狩り(明も同時に別のデーモンと追撃戦を繰り広げる)、学園を舞台にデビルマンとデビルマンの姿と能力をコピーしたラズバの戦いを描き、3部の終盤からアーマゲドン編に物語が突入する。

・原作では曖昧だった不動明牧村美樹の恋愛をしっかりと描く。

・不良グループの生き残りにデーモンとデビルマンたちの戦いを人間視点で目撃させる

等の構想を持っていたことが分かる。

残念ながら飯田氏ご本人は、2010年に肺ガンで49歳の若さでこの世を去ってしまったため製作は絶望的ではあるが、2012年の六本木のシネマート新宿で行われたトークイベント『デビルマン生誕40周年!「デビルマンOVA COLLECTION」Blu-ray 発売記念上映イベント◆40th Anniversary Devilman Night◆』において本作で不動明役を務めた速水奨氏は司会に「もしいま企画が実現したら不動明役はできますよね?」と聞かれた際に「できますよ!」と即答しており、「アーマゲドン編」への意欲を覗かせてくれた。


そして、アーマゲドンまでの戦いは「Devilman_Crybaby」でようやく描かれた。


ジブリ?編集

『誕生編』やヒロインの美樹の顔を見るとどことなくスタジオジブリのキャラデザインに見えがちだがこれは飯田監督がかつて宮崎駿の下で「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」で助監督を務めていた影響かと思われる。動物を用いる手法なども彼を習ったものと言える。

因みに飯田氏の葬儀で弔辞を読まれたのは宮崎氏だった。

但し、これは『誕生編』のみで『妖鳥シレーヌ編』では明の髪型が原作後半のように崩れたり、ジンメンのデザインが変更されるなど独自の物へと変化していっている。


余談編集

  • デビルマンの肌は初代アニメ版の影響で青に思われがちだが本作では褐色を採用している(それ以前の漫画版の表紙も褐色が採用されており、青が採用され始めたのはあるOVAを除いて2010年代辺りから)。
  • デビルマンの時にある胸部から背部にかけての傷のような模様は明に戻る際には大抵消えるが本作では明の時でも浮かび上がっている(逆に漫画版では初期にそれらしきものが見えたがシレーヌ戦では消えており、デビルマン時にも浮かび上がってこない)。
  • 実は実写映画版の尺は、本作二作を合わせたのと同じぐらいの長さ。
  • 漫画版の直接的続編である「バイオレンスジャック」も同様にOVA化されたが残念ながら本作との繋がりはない。
  • デザインが大分違うが実はキャラクターデザインはテレビアニメ版も担当した小松原一男氏が担当している。
  • 本作は「アーマゲドン編」が製作されなかったため、ミーコ含める他のデビルマンの姿を見ることができなかったが尺の都合を考えるととてもだがOVA一本で収まる内容ではないため省略されて彼女たちも登場しなかった可能性がある。
  • ドラマCD「アーマゲドン編」で美樹役を引き受けることになった三石氏だが声を聞くとミサトさんが喋っているようにしか聞こえない。彼女が美樹役をやったのはこれっきりだが。
  • 本作のシレーヌの反応だが「真・デビルマン」ではアモンへ愛を感じていたという設定が設けられており、それが逆輸入されたと思われる。
  • 原作終盤や近年のシリーズではサタンの参謀役扱いされているサイコジェニーだが、本作は愚かドラマCDにも出演していない。但し、「CBキャラ 永井豪ワールド」には出演し、終盤美樹と共にバイオレンスジャックとなった明を迎えに行った。

関連動画編集

「誕生編」における初の変身及び戦闘シーン(閲覧注意)



関連タグ編集

永井豪

デビルマン

不動明

飛鳥了

牧村美樹

シレーヌ

ジンメン

AMON₋デビルマン黙示録…後にOVA化された作品。本作と繋がりはないがサタンとサイコ・ジェニーは出演している。

CBキャラ₋永井豪ワールド…同じ製作スタッフにより制作された三作作られたシリーズ。こちらでも主要キャラの多くが続投している。

アイアンハイド…本作の主人公と中の人繋がり。口調が似通っている。

赤いサイバトロン…多分関係ないと思われる・・・・・多分。

エクスカイザー…こちらも主人公の中の人繋がり。こちらはデビルマン同様に正義の味方である。

真・デビルマン…一部の設定を取り入れている。

Devilman_Crybaby…本作と同じく原作を基に製作している。但し、こちらは現代向けに手直しされ、キャラデザインも大幅に変更されている。

スーパーロボット大戦DD…漫画版が参戦しており、キャラクターの声を本作の声優陣が担当。

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