作品解説
1997年から2000年にかけて衣谷遊によって連載されたデビルマンのスピンオフ作品でデビルマンこと不動明と合体したデーモンのアモンを主軸として展開している。
漫画版は全6巻で一巻は原作終盤の美樹が暴徒たちに虐殺された後に明が勇者アモンに体の主導権を乗っ取られ、サタンを探し求める展開で2巻以降はアモンの過去について触れられている。
後に2000年にOVA(メイン画像)化されたが漫画版とは関係なく別の物語となっている。
ストーリー
漫画版
暴徒たちに美樹を殺され、飛鳥了こと大魔神サタンと戦う決意を露にした不動明。だが、後日明を探しに来たミーコが発見したのは美樹の首だけだった。その頃、明は暴徒たちに囲まれていたが彼は何のためらいもなく虐殺する。デビルマン軍団の招集及び明の行方を捜していたボンズ・オブ・ヒンズーは彼が不動明ではないことを見抜く。
「俺は不動明じゃない。俺は・・・・・・・アモンだ。」
デーモン族最強と謳われた勇者アモンは自分の身体を乗っ取られる元凶となったサタンを倒すために抹殺に来たデビルマン軍団を返り討ちし、探し求める。
OVA版
デーモンの攻撃により、混沌と化した世界。明たちデビルマン軍団は人間を襲うデーモンを日々狩り続けていたがその日の夜、テレビ中継で了は明がデビルマンへ変身した映像を世間に公表、デーモンが身内の中にもいると言い、不安に駆られ暴徒と化した住民たちによってタレちゃん、美樹を惨殺されてしまう。
美樹の死から立ち直れずにいた明だったがそこへデビルマン軍団を狩るセーロス率いるデーモンたちが現れる。
ところが次の瞬間明の肉体を突き破り、デーモン族最強の勇者アモンが体の主導権を取り戻してその全貌を露にする。
その圧倒的なパワーと仲間であったデビルマンを喰い殺すだけの獰猛さを兼ね備えたアモンは、セーロス含めるデーモンたちを返り討ちにし、自分の身体を乗っ取られた屈辱と怒りを晴らすべくサタンの下へと行く。
だがサタンは「不動明はまだ完全には死んでいない」と指摘されてしまい、アモンは明を完全に消し去るために精神世界で激闘を繰り広げる。
OVA版の登場人物
「俺は・・・・・・俺は人間であることを捨てた・・・・だが!人間の心は捨ててはいない!!」
主人公。デビルマン軍団のリーダーで日々人間を襲うデーモンを倒していたが美樹の死をきっかけにアモンの身体を乗っ取られてしまう。
アモンCV大塚明夫
「一つだけ聞く。サタンはどこだ?」
デーモン族最強の勇者。明によって意識を乗っ取られていたが美樹の死をきっかけに明の精神力が弱くなった影響で復活。同じデビルマンであったユミを喰い殺すなどやることは最早野獣。自分をこんな目の合わせたサタンの復讐するために動き出すが彼に明がまだ完全に死んでいないことを見抜かれ、決着をつけるべく明と精神世界で戦う。
「私は魔女よ・・・舐めるな!!」
ヒロイン。物語序盤で暴徒たちに惨殺されてしまうがその後は明の回想・幻影として登場する。ちなみに惨殺シーンが映像化されたのは本作が初。上記の台詞は飽くまで明が見た幻影が言ったことで本人は言わなかった可能性がある。
「美樹姉ちゃん、大変だよ!明兄ちゃんが!」
美樹の弟。明がデビルマンになる映像を見てお漏らしをしながら上記の台詞を言って美樹に知らせようとするが暴徒に惨殺される。本作での殺害シーンはある意味原作よりもエグイ。
「明・・・・・・目を覚ませ、明!!」
明の友人。本作では原作同様に明の正体を世間に暴露するが明が美樹の首を抱きながら泣いているところをサイコジェニーと共にサタンの姿で見ていた。その後は何処か知らぬ廃墟で沈黙していたがアモンが現れた際にはまだ明の精神が死んでいたいことをいち早く察知し、目を覚ますように叫んだ。
間違っても「爆烈!ゴッドフィンガーッ!!」とは叫ばない。
原作ではあまり出番がなかったが本作ではチラチラと姿を見せている。戦闘能力は高くないはずなのだがアモンの破壊光線を跳ね返すなど本作では意外に高い。
ミーコCV田中理恵
明の側近的存在のデビルマン少女。原作では助けられたところでフェードアウトしたが本作では同じデビルマンであるユミと組んでデーモンを討伐していた。危うくアモンに殺されそうになるが別のデーモンに標的を変えられたため、命拾いする。
本作オリジナルのデビルマン少女。頭部が軟体デーモンと融合しており、普段は帽子で隠している。序盤はミーコと組んでデーモンをおびき寄せるための囮役をやっていた。アモンに喰い殺されてしまい、美樹のさらし首と並ぶ本作のトラウマの一つ。
ズーボォCV鈴置洋孝
冒頭でユミとミーコが対峙したデーモン。普段はサラリーマンの男性に変身し、人間を捕食していたようでユミをターゲットに追いかけていたところをミーコの毒液により溶かされる。だが、どうやら再生能力が高いらしく、別の形態に変化して二人を返り討ちにする。ミーコを殺害しようとしたが駆けつけた明の手で始末される。
「敵に背を向けて逃げ出すとは・・・・許せん。」
セーロスCV矢尾一樹
美樹の死亡後にデビルマン軍団を狩っていたデーモン軍団を指揮する上級デーモン。人間と合体したのか右耳に当たる部位にピアスを付けている。沈着冷静でありながら逃げてきた部下を容赦なく処刑にする残虐性を兼ね備えており、本作では唯一アモンに傷をつけた。アモンとは戦ってみたかったらしく、アモンの質問に答えることなく戦闘を開始し、列車を投げつけられそのまま高層ビルに衝突しても片手を抑える程度ダメージで済んでいる。その後、取っ組み合いへと発展するがアモンの怪力の入り両腕の関節を砕かれ、不意を突いて頭部の触手を心臓に突き刺そうとするものの右腕でガードされてしまい、最終的には胸部に大きな穴をあけられて死亡する。武器は腕の踵についている爪から放つ斬撃波と頭部の複数の触手。
デビルマン軍団(モブ)
攻めてきたセーロスたちに応戦していたデビルマン達。全員デーモンたちに手足も出ずに全滅している。
デーモン軍団(モブ)
セーロスが指揮していたデーモンたち。デビルマン軍団よりは力は強いがアモンには全く敵わなかった。アモンの姿を見た際は殺した後に合体して更なる強化をしようと我先に襲い掛かるがほとんどがワンパンで死亡。さらにユミが喰われているところを見て恐れをなして逃亡。そのうちの二体はアモン自身の逆鱗に触れて始末され、残った二体もセーロスに助けを求めるが処刑にされた。
目の前の続き(ネタバレ注意)
「何故俺に構う?」
「目障り・・・・・なんだよ。」
アモンの復活によって精神世界の奥深くへと追いやられた明は美樹との思い出に浸っていたが了の叫びで我に返り、再び美樹の殺害シーンを見せつけられた後にアモンと対峙する。アモンは美樹の首を握り潰し、明を倒して今度こそサタンを含める全てを消し去ると宣言する。
「そんなに戦いたいなら戦ってやる!!」
明はデビルマンへと変身し、荒野へと変貌した精神世界でアモンと激突する。
今まで多くのデーモンを倒して経験を積んできた明だったがアモンには全く敵わず終始圧倒され、片翼を捥ぎ取られた上に首を片手で締め付けられ、大出血。意識を失ってしまう。
意識を失った明は惨劇当時の牧村家の幻を見た後にかつての母校の教室で美樹と再会する。
「俺は・・・・俺は牧村家に不幸をもたらせてしまった・・・・・俺が・・・・・・君を死に追いやってしまったんだ・・・・・俺が・・・君を殺したんだ。」
罪悪感に狩られて我を見失いかけていた明に対して美樹は何も答えることなく彼の手を取って優しくキスをした。その姿に明は涙を流す。何か言おうとした彼に彼女は首を横に振り、両手を胸に合わせると次第にその姿が消えて行った。
場所は精神世界に戻り、明は泣いていた。
アモンは美樹一人のために泣くのを笑うが明は再び立ち上がる。
「俺は・・・・・・・俺は人間であることを捨てた・・・」
「だが・・・・・人間の心は捨ててはいない!!」
「お前に・・・・この俺の気持ちはわかるまい!もう!俺はお前に負けることはない!!」
再起した明は、アモンの攻撃に動じることなく圧倒。胸部に風穴を空けるが表情一つ変えず逆に動きを封じ、猛攻の末に倒した。その際にアモンの目からは明の背後に死んでいった仲間や美樹の姿が写っていた。
現実ではアモンは明の姿へ戻り地上へ落下。
難を逃れたミーコに発見され回収されるがその衝撃でできたくぼみはまるで巨大なアモンのようなものだった。
後日、無事にデビルマン軍団に復帰した明は美樹の首を簡素ながら埋葬していたところで了と再会する。
敵同士となった両者は睨み合いながら緊張状態へとなるが明は何も言うことなく了の脇を通り過ぎていく。
その姿を了は寂しそうな表情で去って行く明を振り向いて見ることはなかった。
物語はここで終わりを迎える。
漫画版とOVA版の相違点
- 始まり方
漫画版では美樹の首を抱きながら燃える牧村家から出てくるのに対してOVAは悪魔への不安を感じて同士討ちをしあっている人類の姿が映し出されている。
- 原作キャラがミーコしか登場しない
漫画版では他にもドス六、メリケン錠などが登場し、ドス六に関しては明の目を覚ますために同意してくれたデビルマン三人と合体して特攻していた。他にも悪魔王ゼノンも登場していたのだがOVA版では登場しない。
- 悪魔特捜隊の扱い
漫画版では敵組織の一つとして登場し、隊員たちがアモンと交戦する…というかアモンに一蹴される描写があった。
OVA版では、一応存在しており悪魔への警戒を呼びかける貼り紙を出しているのだが、隊員や本部が登場することは無かった。
- デビルマンに対する人間の姿勢
漫画版の人間は「デビルマン」という概念自体を知らず、「人間社会に潜んでいたデーモン」として迫害を加えていた。
OVA版では「デビルマン」という単語が「デーモンとは別種の悪魔」として人間に広く知られており、「デーモンとデビルマンに警戒する」というのが人間社会の常識となっている。
- アモン対デビルマン⇒×
漫画版ではアモンと明は交戦していない(但し、最終巻ではそれに近いことをしている)。
- アモンのデザイン
漫画版のアモンはデビルマンのデザインをかなり怪物化させたようなものだがOVA版は体色が赤い鬼のような姿になっている。デビルマンとしてのデザインも差異がある。
漫画版がアニメ化しない要因
飽くまでも仮説だが全体的なデザインがグロテスク過ぎるのが原因だと思われる。
OVAも残虐描写がいくつも存在していたが漫画版に関してはそれを上回る描写で特に2巻以降のデーモンたちはかなりきつめの描写となっているため、アニメ化をより困難なものとさせている。
追記予定………