あらすじ
ヴェトナム帰還兵のトラヴィス・ビックルは、不眠症のためマトモな職業に就くことができないという理由で、深夜タクシーの運転手として就職する。
同僚とも打ち解けず、趣味はポルノ映画の鑑賞だけという孤独な日々。真夜中のマンハッタンにはびこる性、ドラッグ、犯罪を見るにつけ、トラヴィスの中で鬱憤がたまっていく。
そんなトラヴィスも恋をした。次期大統領候補パラダインの選挙事務所で働くベッツィーという女性事務員に一目ぼれをしたのだ。積極的なアプローチでデートにこぎつけるトラヴィスだったが、いつもの癖でポルノ映画を観に連れて行ったためフラれてしまう。
ある日、トラヴィスのタクシーに少女が乗り込むが、屈強な男にすぐ連れ戻された。そのアイリスという少女は、家出をして売春婦になり、ヒモにいいように使われていた。トラヴィスは彼女を説得しようとするが、ヒモに「愛している」と囁かれているアイリスは聞く耳を持たない。
この腐った街を浄化してやる、という衝動に動かされ、トラヴィスは犯罪の計画を立て始める。
頭をモヒカンに刈り上げ、銃を手に入れ、衣服に武装を仕込んだトラヴィスは、パラダイン議員の演説現場へ現れる。しかし警備に見つかってしまい、トラヴィスは次にアイリスが売春を行っているアパートへと乗り込む。
見張りの男を撃ち殺し、自分も首と肩に銃弾を浴びながら、トラヴィスは用心棒、ヒモ、客とアパートにいた男たちを皆殺しにする。しかし自殺しようと使った拳銃に弾はもう残っていなかった。「殺さないで!」と泣き叫ぶアイリスの傍に座り込んだトラヴィスは、駆けつけてきた警察官たちに対し虚ろに笑いかけ、指鉄砲をこめかみに向けて自殺の真似をして意識を失う。
目覚めた時、トラヴィスはギャングと戦って少女を救いだしたヒーローとして祭り上げられていた。再びタクシードライバーとして働き出したトラヴィスにベッツィーは気がある素振りを見せるが、彼は意に介さずにタクシーを走らせる。
彼の人生は今や一つの方向に向けて急速に加速しつつあった。
概要
1960年代後半から70年代にかけて起こった《アメリカン・ニューシネマ》という現象の最後の代表作と言われている作品。
第26回カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)受賞作品。
監督のマーティン・スコセッシと主演のロバート・デ・ニーロは、今作でゴールデンコンビとして知られるようになり、これまで8作品を手がけている。
家出少女アイリスを演じたジョディ・フォスターは、当時13歳だった。
原案は『暗殺者の日記』。州知事の暗殺未遂事件を起こしたアーサー・ブレマーという男の手記で、孤独の中で鬱屈していく心理に共感したポール・シュレイダーが脚本化。同じく非モテであったスコセッシを紹介され、映画化に至った。
ちなみに、ブレマーは『時計じかけのオレンジ』に触発されて暗殺未遂を起こしたが、それを基に製作された今作はロナルド・レーガン大統領の暗殺未遂事件の犯人ジョン・ヒンクリーに強烈な影響を与えて事件の引鉄となり、
バージニア工科大学銃乱射事件(32人死亡)の犯人チョン・スンヒは本作の有名シーンを模倣した写真をマスコミに送りつけたといういわくがついている。
さらに言うと『時計じかけのオレンジ』の原作小説は、犯罪被害に遭った作家の経験に基づいているため、犯罪と作品化の皮肉な連鎖が続いたことになる。
有名なシーンに、モヒカンにしたトラヴィスが「俺に話しかけてるのか?」と鏡の前で抜き撃ち練習をする場面と、人差し指を銃に見立て自分のこめかみにつきたてる場面がある。
またクライマックスの銃撃戦後の光景を上から俯瞰したロングショットは、実際にマンション上階の床を取り払って撮影が行われた。
またPC用アクションゲーム『HotlineMiami』は、本作の強い影響を受けている。
キャスト
役名 | 配役 | 日本語吹き替え(TBS『月曜ロードショー』/DVD) |
---|---|---|
トラヴィス・ビックル | ロバート・デ・ニーロ | 津嘉山正種/宮内敦士 |
ベッツィー | シビル・シェパード | 田島令子/井上喜久子 |
アイリス | ジョディ・フォスター | 冨永みーな/木下紗華 |
スポーツ | ハーヴェイ・カイテル | 日高晤郎/東地宏樹 |
ウィザード | ピーター・ボイル | 寺島幹夫/浦山迅 |
トム | アルバート・ブルックス | 野島昭生/村治学 |
スタッフ
脚本 - ポール・シュレイダー
製作 - マイケル・フィリップス / ジュリア・フィリップス
音楽 - バーナード・ハーマン
撮影 - マイケル・チャップマン
編集 - トム・ロルフ
配給 - コロンビア映画
データ
公開 - 1976年2月8日(アメリカ) / 1976年9月18日(日本)
上映時間 - 114分
製作国 - アメリカ合衆国
言語 - 英語 / スウェーデン語
関連タグ
映画 / 洋画 / アメリカ映画 / ニューシネマ / 映画の一覧