概要
ギラ・ドーガに次ぐネオ・ジオン軍の主力機として開発されたモビルスーツ。
名目上はギラ・ドーガをベースに設計された新型機とされているが、実際はムーバブル・フレームなどの大部分のパーツはギラ・ドーガから流用した改修機である。
デザイン的にはザク系列を彷彿とさせるジオン・スタイルにまとめられているが、これはシャア・アズナブルを失い低下した組織の求心力を高める狙いもある。
また、細かい装飾として手首付近には「袖付き」の所属である事を示すマーキングが施されているほか、隊長機の頭部にはブレードアンテナ、右肩にはショルダーアーマーが装備され、階級や個人の裁量である程度の改造が可能。
「袖付き」の運用する機体の基本的操縦システムは、ハード、ソフト共にギラ・ドーガから変更されておらず、コンソールやシートの形状も同じである。即ち、円形の「メインマルチディスプレイ」を中心に、それを囲む(右)「通信モニタ」と(左)「後方警戒モニタ」、足下のフットペダル、肘掛けの位置にあるサイドコンソールと、引けば加速、押せば逆噴射する球形操縦桿「アームレイカー」により構成される。
連邦軍でも当初ジェガンに採用されていたが、パイロットの不評からすでに廃止されており、第二次ネオ・ジオン抗争で疲弊した組織の財政事情が伺える。
ギラ・ドーガを比較すると向上はしているが大幅な進歩は無く、むしろ装備や設備の近代化更新という意味合いの方が強い。
また、開発元がアナハイム・エレクトロニクス社であるため、アナハイムの規格に適合すれば連邦系の装備でもそのまま流用することが可能となっている。
ちなみに、0112年代までジオン残党軍で運用されているのが確認されている。
武装
ビーム・マシンガン
アサルトライフルの形状をしたビーム発射式銃。
ギラ・ドーガのそれと同じく銃口からペレット状のビームを連射し、またバレル下部にはアドオン方式のグレネードランチャーを装備可能。加えてEパックもバナナマガジンの形状になったため弾数も向上されている。
オプションが豊富で、上記のアドオン式のグレネードランチャーの他、スコープ式の追加センサーユニット、下記のスナイパーライフル換装オプションや、コンパクトモデル換装オプションが存在する。
デザインが旧ナチス・ドイツが使用した突撃銃ハーネルStG44とあって、上記のオプション装備も実銃のオプション装備に近いモノがある。
ビーム・スナイパー・ライフル
ビーム・マシンガンの基部を転用した長距離狙撃用ビーム・ライフル。
砲身の延長やセンサーの追加が行われている。
デザイン元はH&K社の有名スナイパーライフルPSG1に近い。
フロンタル親衛隊のキュアロン・マスカが使用した。
ビーム・マシンガン・コンパクト
ビームマシンガンを短銃身化してコンパクトなモノに換装したモデル。
銃身を切り詰め、ストックを外したことで取り回しをよくしている。
デザイン元はH&K社の有名SMGであるMP5Kである。
機動戦士ガンダムNTにて、ジオン共和国のエリク・ユーゴ中尉のギラ・ズールが使用していた。
ビーム・ガトリングガン
クシャトリヤ用の装備。ビームを断続的に発射する事が可能。
ビーム・ショット・ライフル
サザビーが使用していた物をギラ・ズール向けに調節したもの。
機体のサイズに迫る長砲身であり、反動軽減用に弾帯を模したケーブルで機体背面と接続されて運用される。
首相官邸ラプラス跡地での戦闘でアンジェロが使用。
サブマシンガン
取り回しに優れる実弾武装。
MMP-80 90mmマシンガンを切り詰めたコンパクトモデルで、主に大型火器を使用する際の予備火器として用いられる。
ビーム・ホーク
腰に懸架される接近戦用武装。上部にピック状、側部に斧状のビーム刃を発生させるデバイスを持ち、斬撃用のホーク・モード、刺突用のパイル・モードといった多彩な形態を有する。
複数のモードの併用は可能だが、エネルギー効率が悪くなるのであまり勧められていない。
ハンド・グレネード
マニピュレータで投擲する形式の実弾兵装。
時限、磁気、接触、熱感知など複数の信管を持つ。
シュツルム・ファウスト
一年戦争時から多くの機体に使用されている単発式のロケット砲。
無駄弾にならないよう、グリップ・照準サイトを追加し命中精度を向上させた改良型を採用している。形状的にはRPG-7に近い。
ランゲ・ブルーノ砲・改
ギラ・ドーガ重装型の搭載兵装だったランゲ・ブルーノ砲を宇宙戦闘用に改修した装備。
バックパックの基本的な構成はランゲ・ブルーノ砲と同一だが、サブジェネレーターを組み込んだビーム砲として運用された。
シールド
一般機と親衛隊機でその形状が異なる。一般機は右肩にザクと同様の固定式シールドを装備。
親衛隊の機体はギラ・ドーガのシールドと同形状の改良タイプを装備する。
親衛隊所属のキュアロン機のみ、この二種を同時装備し、ギラドーガ用のシュツルム・ファウストを装備する為のマウントとしている。
バリエーション
親衛隊専用機
フル・フロンタル直属の親衛隊が搭乗する機体。
両肩がスパイクアーマーになるなど、全体的に装飾が施され外見的に派手になっているほか、各パイロットが各種チューンナップを行っている為、機体性能は一般機よりも高い。
正確には、一般機は初期設計の一部を簡略化した廉価版であり、この親衛隊仕様こそが初期案に最も近いギラ・ズール本来の姿である。
特に推進器系が改修されており、これはギラ・ズールをシナンジュの高機動性に随伴可能なレベルにする為の措置だと言われている。
パックパックもザクⅡのものに近い一般機に対して、ギラ・ドーガと同様のものとなっている。
アンジェロ・ザウパー専用機
フル・フロンタル親衛隊隊長であるアンジェロ・ザウパー専用機。
紫を基調としたカラーリングが施され、バックパックはランゲ・ブルーノ砲・改に換装されている。
作戦状況によってはランゲ・ブルーノ砲・改を降ろしてビーム・ショット・ライフルやサブマシンガンを携行する場合もある。
旧首相官邸ラプラス跡宙域での戦闘でユニコーンガンダムに挑むも返り討ちにあい中破。その後は後述のローゼン・ズールに改修される。
キュアロン・マスカ機
フル・フロンタル親衛隊隊員であるキュアロン・マスカが使用した機体。
最初に登場したときは通常の親衛隊専用機だったのだが、旧首相官邸ラプラス跡宙域での戦闘では、右肩をシュツルム・ファウスト4本を装備した固定式シールドを装備し、得物にビーム・スナイパー・ライフルを装備していた。
ギルボア・サント機
ガランシェール隊の操舵手であるギルボア・サントの機体。
通常のギラ・ズールに指揮官機用の頭部ブレード・アンテナ、背部にランゲ・ブルーノ砲・改を装備し、サブ・アームにビーム・ガトリングガンを右肩の固定シールドにマウントし、ギラ・ドーガ用のシールドを装備していた。
旧首相官邸ラプラス跡宙域での戦闘で、ネェル・アーガマに囚われたマリーダを救出するために3機の僚機と共にネェル・アーガマに肉薄する。
大気圏上層部で繰り広げられるデストロイモードのユニコーンガンダムとシナンジュの戦闘に割って入り、シナンジュ庇ってビーム・マグナムの直撃を受け撃墜された。
識別マーキング仕様
袖付きから離脱してネェル・アーガマへ協力する事になったガランシェール隊所属のギラ・ズール2機を目視でも敵味方識別をし易いように太腿部分にオレンジのラインマーキングを加え、頭部エンブレムを大きめにリペイントした。
また、ネェル・アーガマから撤退する際に置いていかれたフロンタル親衛隊の機体1機にも同様の塗装を施されたのち、ガランシェール隊の戦力に加えられている。
武装も互換性を利用してジェガン用のビームライフルやビームサーベル、緑色に塗り替えたシールドを装備しており、連邦とジオンのちょっとしたハイブリッドを実現している。
ゼー・ズール
袖付きが開発した水陸両用MS。
ゼー・ズールの記事を参照。
クラーケ・ズール
漫画『機動戦士ガンダムUC バンデシネ』に登場。
サイコミュ高機動試験用ザクのコンセプトをU.C.0096年の技術レベルで再現した機体。ギラ・ズール本来の仕様であった親衛隊仕様機を母体として開発された。
ベース機の腕部を残しつつ肩部にメガ粒子砲を内蔵した有線式遠隔兵器となる大型の腕部を追加、下半身は機体名称にある「タコ」を想わせる8本の大推力スラスターユニットに換装。その加速性能や機動性は巡航形態のデルタプラスに追従可能なものとなっている。
長距離航行用のオプションとして大型プロペラント・ブースターを装備している事もある。
ローゼン・ズール
アンジェロ・ザウパー専用機として、ギラ・ズールのムーバブルフレームにシナンジュの予備パーツを流用してカスタマイズされた機体。
ローゼン・ズールの記事を参照。
ジオン共和国軍仕様機
機動戦士ガンダムNTに登場したジオン共和国軍の部隊が使用した機体。
外見はフロンタル親衛隊と同仕様なのだが、スペックは通常機と同じ機体。
RX-0 ユニコーンガンダム3号機フェネクスの捕獲を目論むジオン共和国の外務大臣モナハン・バハロの策略で投入された。
テロ組織である袖付きに偽装するためにこの機体を使っていたとされる。
エリク・ユーゴ機
上記のジオン共和国軍部隊の実質的指揮官であるエリク・ユーゴ中尉の専用機。
彼女のパーソナルカラーであるダークブルーに塗装され、2本差しのブレードアンテナとひさしが改良された頭部、アンジェロ機と同様に重装型のバックパックユニットを高機動ユニット代わりに装備して、ビーム・ナギナタとビーム・マシンガン・コンパクトを装備していた。
また、偽装のために袖付きのエングレービングが施されているが、胸部のみは本機独自のものが施されている。