解説
頭の前後に二つの顔があり、四本の腕に剣もしくは斧を持った姿で象られる。
『日本書紀』では怪物として描かれ、仁徳天皇の御代に和邇氏の祖・武振熊命と争い敗れたとされる。
書紀では両腕と両足も前後に二対あったとされ、弓矢と剣をもって現れる。
その正体については諸説あるが「大和朝廷による日本列島東側地域への侵略の過程で淘汰された地方豪族が神格化されたもの」という解釈が一般的とされている。ただし両面宿儺を訴えた時代には、飛騨地域に斐陀国造(ひだのくにのみやつこ、飛騨国の支配者)があり、またこの時代には既に近隣諸国(三野前国、三野後国、牟義都国、本巣国、洲羽国、科野国、近淡江国、伊彌頭国、加我国など)は全て大和朝廷の支配下にあったことを考えると、大和朝廷支配下での内部抗争(斐陀国造による反乱)であった可能性もある。
また「宿儺」の名は「宿禰」(すくね)にも通じると考えられ、斐陀国造の実態が尾張国造同族ではなく、少名毘古那神(すくなびこな、八咫烏鴨武角身命と同一視される)の後裔である賀茂縣主と同族であったと見られることにも通じよう。
「二つの顔を持つ」という姿で記録された理由としては、モデルとなった集団の長が、双子もしくは兄弟などの容姿がよく似た二人組だったからという説が有力とされるが、一部では伝説で描写された通りの姿を持つ結合双生児だったとする奇説も存在する。
また上述の「仏教を伝えた」という説については、日本への仏教伝来が六世紀前半なのに対して、両面宿儺が討伐されたのは仁徳天皇の在位された四世紀末から五世紀前半であるため、矛盾がある。これについては、「朝敵」として斃された両面宿儺を崇拝する勢力がその後も隠れて信仰を続け、後世に「仏教の保護者」というありがたい肩書をつけることで、再びその存在を世間に認めさせようとしたためと考えられている。
創作での扱い
『地獄先生ぬ~べ~』
飛騨地方へのスキー合宿にて、御鬼輪の精巧な贋作を利用して封印されていた。
ぬ~べ~が御鬼輪に目が眩んで封印を解いてしまい、吹雪の中で死闘を演じることになる。
古代の武具を纏った双頭四臂の大妖怪として描かれ、古代の銅剣と弓矢を武器とする。
『魔法先生ネギま!』
巨大怪獣の姿で登場する。
1巻「妖界大決戦」に登場する上級妖怪。妖界一の暴れ者。
『呪術廻戦』
主人公である虎杖悠仁の呑んだ指であり、全部で20本の指を遺し世を去った悪しき呪術師。虎杖の体を乗っ取った際には身体に文様が浮く。詳細は「宿儺(呪術廻戦)」の項目を参照。
スレに関連する「実話系怪談」の一つに、結合双生児を呪術の犠牲とした後ミイラとし、両面宿儺として祭り上げたものが怪異を呼ぶという一遍がある。
封印が解かれ、現代に蘇った二面鬼の妖怪。詳細は「宿那鬼」の項目を参照。