架空の私立探偵金田一耕助を主人公とした横溝正史の推理小説のシリーズ。
長編と短編合わせて数多くの作品が発表されている。またいくつか映像化されている。
主な登場人物
金田一耕助:私立探偵
Y先生:語り手
磯川常次郎:岡山県警の警部
等々力大志:警視庁の警部
よくある誤解
(主に市川崑監督による映画の影響で)このシリーズには多くの誤解が存在している。
役にたたない名探偵編
金田一耕助のステレオタイプなイメージから飄々としたどこか頼りない名探偵、あるいは役にたたない名探偵という風評がある。しかし、原作を読むとそのイメージとは真逆の金田一が度々現れる。
- 常に犯人に同情的で決して罪を責め立てる事をしない
例えば「幽霊男」では犯人に痛烈な皮肉を浴びせ、「仮面舞踏会」では元凶となった人物を声高に非難している。また、「迷路荘の惨劇」や「悪霊島」では犯人の末路や悲惨な過去には同情しているが、動機に対しては全く同情していない。また、たとえ惨殺された被害者であっても非人道的な人物や独善的な人物には決して同情しない。
- 唯一愛した女性、鬼頭早苗
実際には持田虹子がいる。原作での描写だと鬼頭早苗に対しては、淡い恋心という一面が強いが、持田虹子に対しては、彼女が自殺した時にショックで数ヶ月に渡って北海道を放浪するほど思い詰めている。とはいえ、「獄門島」から20年後の瀬戸内海が舞台の「悪霊島」にて、早苗の事を思い出す場面がある事から、鬼頭早苗が金田一にとって特別な女性なのは間違い無い。
- 被害者を出して「しまった」と叫ぶ
原作で「しまった」と叫んだのはわずか2回。1回目は犯人の自殺を止められなかった時、2回目は容疑者が暴漢に殺された時で、犯人に先を超されて「しまった」と叫んだ事は一度も無い。
- 舞台は岡山県の農村や離島
大きく分けて岡山編、東京編、長野編の3つに分類可能。比較的評価の高い作品が岡山編に集中している事からくる誤解。
- 犯人は必ず自殺する
現行の角川文庫に収録されている作品のうち、長編作17作で言うと自殺5、病死2、事故死1、逮捕6、殺害3と、必ずしも自殺する訳ではない、というか逮捕が一番多い。
- 防御率4.2
事件発生から解決までの間に平均して4.2人殺されるという意味。しかし、この数字は本の雑誌編集部が独断で代表作を10作選出して、自責点(事件解決のために呼ばれてから解決までの間に犯人と共犯者によって殺された人数)を10で割ったものであり、はっきり言ってしまうと選出に悪意が感じられる。ちなみに前述の17作での防御率は3.0、全77作での防御率は1.5である。
市川崑監督編
市川崑監督、石坂浩二主演による一連の映画(特に「獄門島」と「女王蜂」)は大人の事情により原作を大幅に改変する事を余儀なくされている。にもかかわらず、石坂金田一シリーズは原作に忠実という誤った共通認識が存在しており、より原作に忠実に作られた他の監督、主演による金田一耕助シリーズを原作無視と叩く構図が見られる。フォローしておくと、石坂金田一シリーズは先行の諸作品や古谷一行や片岡鶴太郎の金田一耕助シリーズと比べると比較的原作に忠実である。
- 犬神製薬(「犬神家の一族」)
原作では犬神製糸。ケシの栽培もしていない。
- 湖に浮かぶ生足(「犬神家の一族」)
詳しくはスケキヨを参照。
- 放庵さん(「悪魔の手毬唄」)
原作では犯人を脅迫していない。それどころか犯人に養われている現状に屈辱を感じていた。
- 娘が殺される度に歌詞の続きを思い出す
原作では最初から全部の歌詞を思い出しているが、唄の途中で邪魔が入ってしまい、結局二人目の娘が殺された時点で全部の歌詞を伝えている。
- ワインの樽の中に死体(「悪魔の手毬唄」)
原作では樽の影に死体が置かれている。市川監督によるスプラッター演出。
- お勝(勝野)さん(「獄門島」)
映画では事件の根幹に関わる最重要人物なのだが、原作ではトリックに使われた猫を飼っているだけのただのモブキャラである。
- 釣鐘による首切断(「獄門島」)
原作には存在しない描写。市川監督による(ry
- 大道寺と日下部の因縁(「女王蜂」)
映画では親の代から因縁があるが、原作では学生になってからの親友。
- 時計の動作機構による人体切断(「女王蜂」)
原作には存在しない(ry
- 「病院坂の首縊りの家」全般
ほぼ同タイトルのオリジナル作品と言ってもいい。
作品
長編
八つ墓村 獄門島 犬神家の一族 悪魔が来りて笛を吹く 悪魔の手毬唄
本陣殺人事件 夜歩く 迷路荘の惨劇 女王蜂 不死蝶 幽霊男 三つ首塔 仮面舞踏会 白と黒 病院坂の首縊りの家 悪霊島
短編
黒猫亭事件 黒蘭姫 殺人鬼 百日紅の下にて 女怪 首 人面瘡 幽霊座 蜃気楼島の情熱 瞳の中の女 七つの仮面 悪魔の降誕祭 霧の山荘