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横溝正史の長編推理小説。 また、同小説を原作にした映画作品。

概要

1949年3月から1950年3月にかけ、雑誌『新青年』で連載されるも、横溝の体調不良で休載中に『新青年』は休刊してしまう。

その後1950年11月から1951年1月まで雑誌『宝石』で『八つ墓村 続編』として連載され、先んじてそれまでのあらすじも掲載された。


数ある横溝作品の中でも知名度が高く、最も多く映像化されている作品。


1977年の映画では、CMで頻繁に流されたセリフ「祟りじゃ~っ!」は当時の流行語にもなるほど有名だった。

ただし、この台詞自体は本編には無い、映画版の独自要素である。


この影響やいかにもなタイトルのせいか、本作(特に原作)をよく知らない人からは「サイコホラー」「ジャパニーズスリラー」扱いされる。

しかし、残虐な場面は昔話でのほんの一部分にとどまっており、本編の殺人は毒殺がほとんど。

だからと言ってごあんしんくださいとは言えないのだが……


映像作品では割愛される事が多いが、原作では長年天涯孤独な主人公の直系親族(最初の被害者とは別人)が生存している事が判明する、最初はさほど魅力的ではなかったヒロインが女性として成長してゆく経緯が描かれるなど、横溝正史らしい怪奇事件に見せ掛けて、実は……という構成となっている。


あらすじ

時は戦国の世、永禄9年(1566年)。

現在の鳥取県岡山県の県境に当たる所にある小村に、尼子義久の家臣だった8人の落ち武者が、財宝とともに逃げ延びてきた。

最初は彼らを歓迎した村人たちだったが、やがて毛利氏による捜索が厳しくなるにつれ災いの種になることを恐れ、また財宝と褒賞に目がくらみ、共謀して武者達を皆殺しにしてしまう。

武者大将は死に際に「七生までこの村に祟ってやる」と呪いの言葉を残して果てた。村人達は彼らが鍾乳洞に隠したであろう財宝を探すが、ついぞ見つかる事はなかった。


その後、村では財宝を探す者達が怪事に巻き込まれるなどの怪事が相次ぐ。

そして遂には虐殺の指揮をとった田治見庄左衛門が発狂し、7人の村人を殺害した上で自害するという事件が発生。

犠牲者は庄左衛門を含めて都合8人。これは落ち武者の祟りであると恐れた村人たちは、野ざらしになっていた落ち武者の遺体を手厚く葬り、村の守り神とした。

これが「八つ墓明神」となり、いつの頃からか村は「八つ墓村」と呼ばれるようになった。


時は下り、大正11年(1922年)。

八つ墓村の分限者、田治見家の当主・田治見要蔵が発狂し、村人32人を惨殺した上で姿をくらますという大事件が発生、世間を驚かせる。

要蔵はかつて狂死した庄左衛門の子孫であり、犠牲者の数が8人から32人に増えたと人々は口々に噂した。更に要蔵の行方が解らない事もあり、いまだ祟りは続いているという噂が流れる。

これら陰惨な事件の積み重なりで、村人は長らく古い因習に囚われながら日々を送っていた。


それから歳月は流れ、26年後の昭和23年(1948年)。


本作の語り手であり、主人公の寺田辰弥から物語が始まる。

彼は母の連れ子であるということ以外、郷里については何も知らず、また母が亡くなるまで尋ねる事はなかった。

その為、太平洋戦争から復員した際に、養父の消息が途絶えたのを最後に、自分は天涯孤独の身となったのだと思っていた。


しかし復員から2年近く過ぎたある日、ラジオ放送で「諏訪法律事務所」なる弁護士事務所が彼を捜している旨を知る。

いぶかしく思いながらも面会した諏訪弁護士により、彼が田治見家の人間であること、当主が嫡流の断絶を恐れて彼の面倒を見たいと言っていることが伝えられる。

ところが後日、田治見家の使者である母方の祖父・井川丑松と面会した時、二人きりになった途端、彼は血を吐いて死んでしまった。


だがこれは、その後続く世にも恐ろしい連続殺人事件の、ほんの始まりに過ぎなかった……


登場人物

本編の主人公であり、語り部。

正義感の強い青年で、色白の美男子。29歳(数え年)。本人に自覚は無いが、女性に好意を持たれる事が多い。

裸になるのも憚られるほど酷いやけどの跡が無数にあるが、本人は何があったのかを記憶しておらず、母に尋ねても泣くばかりで教えてくれる事はなかった。7歳で母を亡くした後、後妻を迎えた養父と行き違いになり出奔。その後徴兵され、終戦後に帰国した時には養父の消息は不明となり、天涯孤独の身となっていた。

辛い人生を送ってきたせいか、人間不信とまではいかないが、いざというときに他人を頼ることが出来ず、孤高の道を選びがちな面があり、これが災いして事件は彼にとって良からぬ方向へ発展していく。

通夜の席で出された酢のものが嫌いだった為、箸を付けなかった事で犯人扱いされたり(この料理に毒が仕込まれていた)、「辰弥が村にやってきたせいで、落ち武者の祟りが起きた」と思い込んだ村人達に襲われるなど、不遇な展開が多い。しかしそれを乗り越えた最後には、辛い半生から救われる展開が彼を待っているのだった。

ご存じ我らが名探偵。

夜歩く」の事件解決後、ある人物の依頼で八つ墓村に訪れた。村とは全く関係のない人物の為、辰弥を始めとして多くの人物から訝しがられている。

狂言回しである辰弥の登場シーンが多い為、目立ってくるのは後半になってから。

ニンテンドーDSのゲーム版では最後に犯人から自白を引き出すシーンが追加されている。

田治見家

「東屋」と呼ばれる、八つ墓村の分限者の一族。資産は事件当時の金額で、1億2000万円以上。

一卵性双生児の老姉妹。要蔵の大伯母。早くに親を失った要蔵を育てた。田治見家の財産を狙う分家筋に嫌悪感を抱いている。

当主の久弥が病床に伏している為、事実上の当代代理。周囲の人々には「小梅様」「小竹様」と呼ばれている。

田治見家の存続を最優先しており、その為には周囲がどんな犠牲に陥ろうとも、それを厭わない冷酷さを持っている。その対象は肉親であっても例外ではなく、実際にある人物を謀殺している。

一卵性の双子なので、当然の如くそっくりさん。映像作品では一人二役であることが多く、原作では美也子が見分けを付けられずにいる。

田治見家先代。癇癪という言葉では収まらないほどの激情を持っており、26年前、妻子がありながら井川鶴子を拉致して暴行、無理矢理自分の妾にした。辰弥の出生後は彼を可愛がっていたが、彼の父親が亀井陽一という噂を聞くと豹変。暴力に耐えかねた鶴子が辰弥と共に家出して10日余り後に発狂、猟銃と日本刀で武装して妻を含む32人を虐殺すると、山中へと姿を消した。

要蔵の長男。田治見家当代だが肺壊疽を起こしており、先が長くない。辰弥との面会後に血を吐いて死ぬが、後に毒殺だった事が判明する。第二の被害者。

父・要蔵によく似ているという設定で、小梅・小竹同様、映像作品では一人二役であることが多い。

要蔵の長女。一度は他家に嫁いだが、腎臓が悪く、子供が産めない体となったため離縁され、実家に戻った。

村中から疎まれる辰弥に対し、姉として親身に接してくれる貴重な味方。しかし……


里村家

田治見家の分家筋の一族。

要蔵の甥(要蔵の弟の息子)。元軍人で、階級は少佐。戦時中は参謀本部所属で、相当幅をきかせていたが、敗戦後、生家に帰郷し、失意の内に生活を送っている。美也子とは昔恋仲だったらしい。上記のような経緯があって、村人達は近づきたがらず、慎太郎自身も人づき合いを控えている。

春代曰く里村家の父は「家を継いだ兄の要蔵などよりよっぽど立派な人物だった」と小竹・小梅や久弥からは逆恨みに近い理由で疎まれており、田治見家には次代がいない為、当代の久弥が亡くなった場合、遺産を相続するのが彼であり、それを阻止するために辰弥が田治見家に呼び戻された。

本作のヒロイン

慎太郎の妹で、26年前の事件の最中に月足らずで生まれた早産児。28歳(数え年)で、辰弥とは一つ違いだが、見た目は19歳か20歳くらいにしか見えない。

天真爛漫な性格で、辰弥を「お兄様」と呼んで慕う。辰弥からは「典ちゃん」と呼ばれ、終盤では距離を詰めて「典子」と呼ばれるようになる。辰弥の第一印象では発育不良で、さほど美人には見えなかったものの、恋によって活力を得て、傍目にも美しさを増してゆく。

被害者達に共通点がなく、犯行動機もわからず、本物の祟りでは無いかと思われるような連続殺人事件が巻き起こる中で、この典子と辰弥の交流は数少ない癒し要素といえる。

早産のため、歳の割にちょっとお知恵が足らない所があるとされているが、実際の所は機転の利いた気配りが出来る人物。通夜の席ではすぐ寺へ帰らなければならなくなった梅幸に、後で彼女の寺へ膳を届けるように辰弥に手配させている。

終盤になってから暴徒化した村人から逃れるため、辰弥が洞窟に身を置かざるを得なくなった際も、危険を冒して甲斐甲斐しく弁当を届け、逐一地上の情報を教えてくれる健気さを見せる。そして時と場の流れとはいえ、洞窟内で辰弥と愛を確かめ合うという大胆さも見せるようになる。

鍾乳洞の崩落で閉じ込められた時も、自暴自棄になった辰弥に対し、警察が来ている上に長英が村人をとりなしているから必ず助けが来ると励まし、更には崩落で露わになった隠し財宝を後から誰かに取られないよう二人で力を合わせて隠すなど、MVP級の活躍を見せた。

その結果、物語の最後には辰弥との間に「ある幸せ」を授かるに至る。

DSで発売されたゲーム版では完全にロリキャラになっている。


26年前の事件の関係者

  • 寺田鶴子

辰弥の母。旧姓は井川。八つ墓村の郵便局員として働いていたが、19歳の時に要蔵に執心され、拉致監禁されて凌辱される。

その後周囲の説得(正確には、多治見家の権威)により泣く泣く妾となり、辰弥を出産。しかし父親が亀井陽一ではないかと疑念を持たれて壮絶な虐待を受け、耐えかねて辰弥を連れて逃亡。神戸に避難後再婚するが、辰弥が7歳の時に病死する。

辰弥に渡した守り袋が、後にある秘密を解明する鍵となる。

  • 亀井陽一

小学校の訓導(教師)、鶴子の元恋人。

事件当時は隣村へ碁を打ちに行っていたので無事だったが、その後転勤して所在不明となった。辰弥の実の父であり、当時の写真を見ると瓜二つの美男子である事が解る。そして実は……

  • 井川丑松

鶴子の父、辰弥の祖父。博労という、牛馬斡旋の職についている。最初の面会の場で毒殺され、第一の被害者となる。


その他の人物

「西屋」と呼ばれる村の分限者。美也子の亡き夫・達雄の兄だが、弟の急死に美也子がかんでいると思い込んでいる。金田一耕助に事件解決を依頼したのは、この人物。

荘吉の義妹で、未亡人。大変な美人で、都会風の姉御肌。旧弊な八つ墓村にあって数少ない辰弥の味方となったが、一方で春代や典子からの反応はあまり良くない。敗戦後の混乱の中でも上手く財産を確保したやり手の女性。慎太郎とは戦前の頃は村を出て都会にいたという過去から仲が良かった。

麻呂尾寺(まろおじ)の住職。老齢で中風(脳卒中後遺症のこと)にかかり、伏せっている。隣村に住んでいるものの、八つ墓村の村人からの信望は厚く、終盤で暴徒化した村民をなだめる為に登場。

長英の弟子で、長英にかわって麻呂尾寺のことを取り仕切る。度の強い眼鏡をかけている。夜中にどこかにふらりと出かける事がある模様。洪禅が毒殺された際辰弥を疑い人殺しと痛罵するが…

田治見家代々の菩提寺、蓮光寺の住職。書生のような風貌。第三の被害者。

通称「濃茶の尼」。迷信深く八つ墓明神の祟りを恐れている。通称の「濃茶」は、濃茶庵という庵に居を構えている為についたもので、尼という職も勝手に名乗っているに過ぎない。

映画版でキャッチコピーになった「祟りじゃ~っ!」はこの人の発言。但し、原作でも辰弥に暴言は吐くものの、この台詞自体は言っていない。

実は26年前に要蔵に夫と息子を殺されて狂ってしまったという、気の毒な過去がある。その頃は尼ですらない、ただの村人だった。

手当たり次第他人のものを盗む癖があるため、村人達からは疎まれている。そして、この窃盗行為が事件に対して重大な展開を及ぼす、様々な意味で、本作の重要人物。岡山県の真備町に濃茶ばあさんという伝承がありこちらが名前の元ネタと目されている。

慶勝院の尼。妙蓮とは対照的なきちんと修行を積んで、きちんと尼となった人物で、村人の人望もある。田治見家も把握していない「辰弥に関係する重大な事実」を知っているのだが……

村の診療所の医者で、田治見家の親戚筋。辰弥は「久野おじ」と呼んでいる。

以前は横柄で偉ぶっていたようだが、「今時こんな調薬をする医者なんていない」と言われるほど、医師としての腕は心許ない。また、自宅兼用診療所の薬品管理も杜撰で、誰でも出入り出来てしまう(当時でも違法行為)。

大家族であり、新居医師が村へやってきたことも拍車を掛けて、生活に貧している。原作においては、ある重大な事柄を行った人物なのだが、それでも本人自体は影が薄い。

疎開医者。確かな技術と円満な人柄で、村人の信頼を得ている。一方で患者を取られたとして久野医師には逆恨みされている。


落武者

過去話にしか登場しないが、映画版では夏八木勲田中邦衛といった名優が演じた。

また1995年のドラマ版では、尼子義隆の妹・菊姫が7人の武者を従えた設定となっている。

小説では首魁の武者は尼子でも知られた豪の者だったとの事。

一連の連続殺人事件は、彼らの祟りであると村人達は信じているようだが……?



津山三十人殺し

その男は詰襟の洋服を着て、脚に脚絆をまき草鞋をはいて、白鉢巻きをしていた。そしてその鉢巻きには点けっぱなしにした棒型の懐中電燈二本、角のように結びつけ、胸にはこれまた点けっぱなしにしたナショナル懐中電燈を、まるで丑の刻参りの鏡のようにぶらさげ、洋服のうえから締めた兵児帯には、日本刀をぶちこみ、片手に猟銃をかかえていた。

(原文より引用)


本作で要蔵が殺戮を行うシーンは「津山三十人殺し(津山事件)」と呼ばれる実際の事件がモデルになっており、そのときの犯人の風体がそのまま要蔵の格好となっている。


不連続殺人事件」との関係

「八つ墓村」を書くきっかけとなったのが、坂口安吾の「不連続殺人事件」であると、横溝はエッセイの中で明らかにしている。

戦時下での疎開中、横溝が何とか手に入れた雑誌連載中のこの作品の肝が「ABC殺人事件の応用」と気づいた横溝は、懸賞つきの犯人当て企画に参加したいと思ったものの、中盤以降の雑誌が取り寄せられずに果たせなかった。

その消化不良の気持ちが、後年「挑戦」という形で昇華したわけである。


犬神家の一族」との関係

よく「水面から突き出た足」のイラストに本タグが付けられていることが多いが、当然のことながら本作にはそんなシーンは存在しない

これは本作と、有名な映画版を混同して覚えている人が多くいるためと思われる。


映像化に関して

本作は登場人物が非常に多く人物相関が入り組んでいる上、トリックが複雑で巧妙なことから、映像化作品はいずれも大幅な改編・省略を余儀なくされている。

特に典子はヒロインでありながら出番がなく、代わりに美也子とのロマンスが描かれる事がほとんど。


初の映画化は1951年版で、題名は「八ツ墓村」となっている。

金田一を片岡千恵蔵が演じており、どこぞの名探偵を思わせるダンディなスーツ姿で登場。意外性を演出する為に原作に登場しない人物を犯人にし、犯人当てを宣伝に使っていた。

金田一は本物の辰弥の依頼を受け、辰弥に成りすまして村に姿を現し、次々と起こる殺人に遭遇。最後に本物の辰弥が登場し、密かに金田一の捜査に協力をしていた事が明らかにされる。


1971年、NHKによりドラマ化。金田一が登場せず、磯川警部が少しだけ登場する。

いくつか殺人の場面がカットされているものの、後世のドラマ版と比較すると比較的原作に忠実な内容。

典子が原作に準拠した描写となっており、辰弥も最後にある人物と晴れて親子の名乗りを交わしている。


1977年の映画版は、野村芳太郎が監督をつとめ、渥美清が金田一を演じる。大ヒットした事もあり、数ある映像作品の中でも最も知名度が高い。

原作では「祟りに見せかけた犯罪」だった部分の大半を「本当の祟り」として描き、ホラーとしてアレンジ。全編にわたって狂気に満ち満ちた展開の連続となっている。(当時映画エクソシストのヒットで心霊ホラーブームがあった為その一環だったと言われている)

武者達を酒宴の席で毒を盛り、鉈で腹部を引き裂く、槍で身体を串刺しにする、刀で首を跳ね飛ばす、生きたまま燃やすなど、なぶり殺しにする下りや、要蔵の発狂からの殺戮劇は、虐殺と言っても過言ではない。非常に凄惨な場面が繰り広げられるため、人によってはトラウマにならないよう、注意が必要である。

ただ、あまりにも強烈な印象を与えたことで客離れを起こしたくなかったのか、見るに堪えない展開を頑張って耐え抜いた結果、終盤ではお色気場面があり、スケベには嬉しい展開となっている。

この展開は原作にもある金田一耕助ものの数少ない濡れ場なのだが、相手が違う。また後に本性を表した犯人の形相があまりに怖すぎる上、炎上する田治見家の最期を、血のような夕焼けを背景に崖の上に立つ落ち武者の怨霊達が笑いながら見届けるという、凄惨かつ妖美なラストとなっている。


1978年のドラマ版では、金田一を古谷一行が演じた。

大きく内容が改変されており、動機や展開に手が加えられている。

極めつけは事件解決後、台風による川の氾濫で、八つ墓村が濁流に押し流されて消滅。辰弥は単身で見つけた財宝を持ち出そうと鍾乳洞に入っており、水死した事が報道される。

何故辰弥が鍾乳洞にいたのかは金田一にも解らず、「祟りは本当にあったのではないか」と思わせるという、非常に後味の悪い終わり方になっている。

1991年に再ドラマ化されたが、こちらでは犯人の動機が大きく異なる。そしてラストは「一年後に町村合併した事で、八つ墓村はその名を永久に消した」となっている。


1995年のドラマ版では、金田一を片岡鶴太郎が演じた。

登場人物の一部がオミットされ、犠牲者の殺害方法にも大幅な変更が入っている。

大きな所では、久弥が結構な極悪人にされており、今回の事件の元凶の一つとなっている。また小竹と小梅が要蔵の血を引く者の排除を計画しており、これに協力したと見せかけて便乗した犯人によって二人とも殺害された。更に犯人の祖先が尼子氏ゆかりとなっており、1977年の映画版同様、因縁を感じさせる内容となっている。


1996年の映画では市川崑が監督をつとめ、金田一を豊川悦司が演じた。

物語は簡略化されているが、典子の扱いが比較的大きくなっている。ただし辰弥と結ばれる事はない。


2004年のドラマ版では、金田一を稲垣吾郎が演じた。

原作に比較的近い展開だが、亀井陽一が実は落武者の謀殺に反対した人物の子孫であるという設定が追加。そして終盤、洞窟内に追い詰められた辰弥を殺そうとした村人達が、突如として起きた落盤によって多数犠牲になる。

これにより辰弥は命が助かるが、最終的に一連の事件で88名の死者が出たという、ホラー要素の強い展開になっている。


2019年のNHK・BSプレミアムでのドラマ版では、金田一を吉岡秀隆が演じた。

登場人物を最小限に絞り、科白での説明や回想を多用。その為か、真相が語られない部分がそこそこある。

事件解決後に典子は辰弥に押しかけ女房を決めて村を出る事となり、ラストで磯川警部が金田一を湯治に誘う事で次回作を匂わせる。そしてエンドロールの後、一人残された小竹が自殺する場面で終わるという、ケレン味の強い演出がされた。


事件のその後

本作はラストである登場人物が石灰岩が多い地質で適しているとの事で八つ墓村にセメント工場を建てて村の暗い風習を変える事を誓うシーンがあるが、作者の横溝正史は小林信彦との対談でセメント工場ができるという事は公害も出てくるわけでそこでまた軋轢が生まれ新たな事件が…という事を語っている。


関連タグ

小説

金田一耕助 横溝正史 金田一耕助シリーズ

ひぐらしのなく頃に(本作の影響を強く受けている作品)

津山事件(本作のモデルになった実際の事件)

都井睦雄(上記の津山事件を起こした犯人)

概要

1949年3月から1950年3月にかけ、雑誌『新青年』で連載されるも、横溝の体調不良で休載中に『新青年』は休刊してしまう。

その後1950年11月から1951年1月まで雑誌『宝石』で『八つ墓村 続編』として連載され、先んじてそれまでのあらすじも掲載された。


数ある横溝作品の中でも知名度が高く、最も多く映像化されている作品。


1977年の映画では、CMで頻繁に流されたセリフ「祟りじゃ~っ!」は当時の流行語にもなるほど有名だった。

ただし、この台詞自体は本編には無い、映画版の独自要素である。


この影響やいかにもなタイトルのせいか、本作(特に原作)をよく知らない人からは「サイコホラー」「ジャパニーズスリラー」扱いされる。

しかし、残虐な場面は昔話でのほんの一部分にとどまっており、本編の殺人は毒殺がほとんど。

だからと言ってごあんしんくださいとは言えないのだが……


映像作品では割愛される事が多いが、原作では長年天涯孤独な主人公の直系親族(最初の被害者とは別人)が生存している事が判明する、最初はさほど魅力的ではなかったヒロインが女性として成長してゆく経緯が描かれるなど、横溝正史らしい怪奇事件に見せ掛けて、実は……という構成となっている。


あらすじ

時は戦国の世、永禄9年(1566年)。

現在の鳥取県岡山県の県境に当たる所にある小村に、尼子義久の家臣だった8人の落ち武者が、財宝とともに逃げ延びてきた。

最初は彼らを歓迎した村人たちだったが、やがて毛利氏による捜索が厳しくなるにつれ災いの種になることを恐れ、また財宝と褒賞に目がくらみ、共謀して武者達を皆殺しにしてしまう。

武者大将は死に際に「七生までこの村に祟ってやる」と呪いの言葉を残して果てた。村人達は彼らが鍾乳洞に隠したであろう財宝を探すが、ついぞ見つかる事はなかった。


その後、村では財宝を探す者達が怪事に巻き込まれるなどの怪事が相次ぐ。

そして遂には虐殺の指揮をとった田治見庄左衛門が発狂し、7人の村人を殺害した上で自害するという事件が発生。

犠牲者は庄左衛門を含めて都合8人。これは落ち武者の祟りであると恐れた村人たちは、野ざらしになっていた落ち武者の遺体を手厚く葬り、村の守り神とした。

これが「八つ墓明神」となり、いつの頃からか村は「八つ墓村」と呼ばれるようになった。


時は下り、大正11年(1922年)。

八つ墓村の分限者、田治見家の当主・田治見要蔵が発狂し、村人32人を惨殺した上で姿をくらますという大事件が発生、世間を驚かせる。

要蔵はかつて狂死した庄左衛門の子孫であり、犠牲者の数が8人から32人に増えたと人々は口々に噂した。更に要蔵の行方が解らない事もあり、いまだ祟りは続いているという噂が流れる。

これら陰惨な事件の積み重なりで、村人は長らく古い因習に囚われながら日々を送っていた。


それから歳月は流れ、26年後の昭和23年(1948年)。


本作の語り手であり、主人公の寺田辰弥から物語が始まる。

彼は母の連れ子であるということ以外、郷里については何も知らず、また母が亡くなるまで尋ねる事はなかった。

その為、太平洋戦争から復員した際に、養父の消息が途絶えたのを最後に、自分は天涯孤独の身となったのだと思っていた。


しかし復員から2年近く過ぎたある日、ラジオ放送で「諏訪法律事務所」なる弁護士事務所が彼を捜している旨を知る。

いぶかしく思いながらも面会した諏訪弁護士により、彼が田治見家の人間であること、当主が嫡流の断絶を恐れて彼の面倒を見たいと言っていることが伝えられる。

ところが後日、田治見家の使者である母方の祖父・井川丑松と面会した時、二人きりになった途端、彼は血を吐いて死んでしまった。


だがこれは、その後続く世にも恐ろしい連続殺人事件の、ほんの始まりに過ぎなかった……


登場人物

本編の主人公であり、語り部。

正義感の強い青年で、色白の美男子。29歳(数え年)。本人に自覚は無いが、女性に好意を持たれる事が多い。

裸になるのも憚られるほど酷いやけどの跡が無数にあるが、本人は何があったのかを記憶しておらず、母に尋ねても泣くばかりで教えてくれる事はなかった。7歳で母を亡くした後、後妻を迎えた養父と行き違いになり出奔。その後徴兵され、終戦後に帰国した時には養父の消息は不明となり、天涯孤独の身となっていた。

辛い人生を送ってきたせいか、人間不信とまではいかないが、いざというときに他人を頼ることが出来ず、孤高の道を選びがちな面があり、これが災いして事件は彼にとって良からぬ方向へ発展していく。

通夜の席で出された酢のものが嫌いだった為、箸を付けなかった事で犯人扱いされたり(この料理に毒が仕込まれていた)、「辰弥が村にやってきたせいで、落ち武者の祟りが起きた」と思い込んだ村人達に襲われるなど、不遇な展開が多い。しかしそれを乗り越えた最後には、辛い半生から救われる展開が彼を待っているのだった。

ご存じ我らが名探偵。

夜歩く」の事件解決後、ある人物の依頼で八つ墓村に訪れた。村とは全く関係のない人物の為、辰弥を始めとして多くの人物から訝しがられている。

狂言回しである辰弥の登場シーンが多い為、目立ってくるのは後半になってから。

ニンテンドーDSのゲーム版では最後に犯人から自白を引き出すシーンが追加されている。

田治見家

「東屋」と呼ばれる、八つ墓村の分限者の一族。資産は事件当時の金額で、1億2000万円以上。

一卵性双生児の老姉妹。要蔵の大伯母。早くに親を失った要蔵を育てた。田治見家の財産を狙う分家筋に嫌悪感を抱いている。

当主の久弥が病床に伏している為、事実上の当代代理。周囲の人々には「小梅様」「小竹様」と呼ばれている。

田治見家の存続を最優先しており、その為には周囲がどんな犠牲に陥ろうとも、それを厭わない冷酷さを持っている。その対象は肉親であっても例外ではなく、実際にある人物を謀殺している。

一卵性の双子なので、当然の如くそっくりさん。映像作品では一人二役であることが多く、原作では美也子が見分けを付けられずにいる。

田治見家先代。癇癪という言葉では収まらないほどの激情を持っており、26年前、妻子がありながら井川鶴子を拉致して暴行、無理矢理自分の妾にした。辰弥の出生後は彼を可愛がっていたが、彼の父親が亀井陽一という噂を聞くと豹変。暴力に耐えかねた鶴子が辰弥と共に家出して10日余り後に発狂、猟銃と日本刀で武装して妻を含む32人を虐殺すると、山中へと姿を消した。

要蔵の長男。田治見家当代だが肺壊疽を起こしており、先が長くない。辰弥との面会後に血を吐いて死ぬが、後に毒殺だった事が判明する。第二の被害者。

父・要蔵によく似ているという設定で、小梅・小竹同様、映像作品では一人二役であることが多い。

要蔵の長女。一度は他家に嫁いだが、腎臓が悪く、子供が産めない体となったため離縁され、実家に戻った。

村中から疎まれる辰弥に対し、姉として親身に接してくれる貴重な味方。しかし……


里村家

田治見家の分家筋の一族。

要蔵の甥(要蔵の弟の息子)。元軍人で、階級は少佐。戦時中は参謀本部所属で、相当幅をきかせていたが、敗戦後、生家に帰郷し、失意の内に生活を送っている。美也子とは昔恋仲だったらしい。上記のような経緯があって、村人達は近づきたがらず、慎太郎自身も人づき合いを控えている。

春代曰く里村家の父は「家を継いだ兄の要蔵などよりよっぽど立派な人物だった」と小竹・小梅や久弥からは逆恨みに近い理由で疎まれており、田治見家には次代がいない為、当代の久弥が亡くなった場合、遺産を相続するのが彼であり、それを阻止するために辰弥が田治見家に呼び戻された。

本作のヒロイン

慎太郎の妹で、26年前の事件の最中に月足らずで生まれた早産児。28歳(数え年)で、辰弥とは一つ違いだが、見た目は19歳か20歳くらいにしか見えない。

天真爛漫な性格で、辰弥を「お兄様」と呼んで慕う。辰弥からは「典ちゃん」と呼ばれ、終盤では距離を詰めて「典子」と呼ばれるようになる。辰弥の第一印象では発育不良で、さほど美人には見えなかったものの、恋によって活力を得て、傍目にも美しさを増してゆく。

被害者達に共通点がなく、犯行動機もわからず、本物の祟りでは無いかと思われるような連続殺人事件が巻き起こる中で、この典子と辰弥の交流は数少ない癒し要素といえる。

早産のため、歳の割にちょっとお知恵が足らない所があるとされているが、実際の所は機転の利いた気配りが出来る人物。通夜の席ではすぐ寺へ帰らなければならなくなった梅幸に、後で彼女の寺へ膳を届けるように辰弥に手配させている。

終盤になってから暴徒化した村人から逃れるため、辰弥が洞窟に身を置かざるを得なくなった際も、危険を冒して甲斐甲斐しく弁当を届け、逐一地上の情報を教えてくれる健気さを見せる。そして時と場の流れとはいえ、洞窟内で辰弥と愛を確かめ合うという大胆さも見せるようになる。

鍾乳洞の崩落で閉じ込められた時も、自暴自棄になった辰弥に対し、警察が来ている上に長英が村人をとりなしているから必ず助けが来ると励まし、更には崩落で露わになった隠し財宝を後から誰かに取られないよう二人で力を合わせて隠すなど、MVP級の活躍を見せた。

その結果、物語の最後には辰弥との間に「ある幸せ」を授かるに至る。

DSで発売されたゲーム版では完全にロリキャラになっている。


26年前の事件の関係者

  • 寺田鶴子

辰弥の母。旧姓は井川。八つ墓村の郵便局員として働いていたが、19歳の時に要蔵に執心され、拉致監禁されて凌辱される。

その後周囲の説得(正確には、多治見家の権威)により泣く泣く妾となり、辰弥を出産。しかし父親が亀井陽一ではないかと疑念を持たれて壮絶な虐待を受け、耐えかねて辰弥を連れて逃亡。神戸に避難後再婚するが、辰弥が7歳の時に病死する。

辰弥に渡した守り袋が、後にある秘密を解明する鍵となる。

  • 亀井陽一

小学校の訓導(教師)、鶴子の元恋人。

事件当時は隣村へ碁を打ちに行っていたので無事だったが、その後転勤して所在不明となった。辰弥の実の父であり、当時の写真を見ると瓜二つの美男子である事が解る。そして実は……

  • 井川丑松

鶴子の父、辰弥の祖父。博労という、牛馬斡旋の職についている。最初の面会の場で毒殺され、第一の被害者となる。


その他の人物

「西屋」と呼ばれる村の分限者。美也子の亡き夫・達雄の兄だが、弟の急死に美也子がかんでいると思い込んでいる。金田一耕助に事件解決を依頼したのは、この人物。

荘吉の義妹で、未亡人。大変な美人で、都会風の姉御肌。旧弊な八つ墓村にあって数少ない辰弥の味方となったが、一方で春代や典子からの反応はあまり良くない。敗戦後の混乱の中でも上手く財産を確保したやり手の女性。慎太郎とは戦前の頃は村を出て都会にいたという過去から仲が良かった。

麻呂尾寺(まろおじ)の住職。老齢で中風(脳卒中後遺症のこと)にかかり、伏せっている。隣村に住んでいるものの、八つ墓村の村人からの信望は厚く、終盤で暴徒化した村民をなだめる為に登場。

長英の弟子で、長英にかわって麻呂尾寺のことを取り仕切る。度の強い眼鏡をかけている。夜中にどこかにふらりと出かける事がある模様。洪禅が毒殺された際辰弥を疑い人殺しと痛罵するが…

田治見家代々の菩提寺、蓮光寺の住職。書生のような風貌。第三の被害者。

通称「濃茶の尼」。迷信深く八つ墓明神の祟りを恐れている。通称の「濃茶」は、濃茶庵という庵に居を構えている為についたもので、尼という職も勝手に名乗っているに過ぎない。

映画版でキャッチコピーになった「祟りじゃ~っ!」はこの人の発言。但し、原作でも辰弥に暴言は吐くものの、この台詞自体は言っていない。

実は26年前に要蔵に夫と息子を殺されて狂ってしまったという、気の毒な過去がある。その頃は尼ですらない、ただの村人だった。

手当たり次第他人のものを盗む癖があるため、村人達からは疎まれている。そして、この窃盗行為が事件に対して重大な展開を及ぼす、様々な意味で、本作の重要人物。岡山県の真備町に濃茶ばあさんという伝承がありこちらが名前の元ネタと目されている。

慶勝院の尼。妙蓮とは対照的なきちんと修行を積んで、きちんと尼となった人物で、村人の人望もある。田治見家も把握していない「辰弥に関係する重大な事実」を知っているのだが……

村の診療所の医者で、田治見家の親戚筋。辰弥は「久野おじ」と呼んでいる。

以前は横柄で偉ぶっていたようだが、「今時こんな調薬をする医者なんていない」と言われるほど、医師としての腕は心許ない。また、自宅兼用診療所の薬品管理も杜撰で、誰でも出入り出来てしまう(当時でも違法行為)。

大家族であり、新居医師が村へやってきたことも拍車を掛けて、生活に貧している。原作においては、ある重大な事柄を行った人物なのだが、それでも本人自体は影が薄い。

疎開医者。確かな技術と円満な人柄で、村人の信頼を得ている。一方で患者を取られたとして久野医師には逆恨みされている。


落武者

過去話にしか登場しないが、映画版では夏八木勲田中邦衛といった名優が演じた。

また1995年のドラマ版では、尼子義隆の妹・菊姫が7人の武者を従えた設定となっている。

小説では首魁の武者は尼子でも知られた豪の者だったとの事。

一連の連続殺人事件は、彼らの祟りであると村人達は信じているようだが……?



津山三十人殺し

その男は詰襟の洋服を着て、脚に脚絆をまき草鞋をはいて、白鉢巻きをしていた。そしてその鉢巻きには点けっぱなしにした棒型の懐中電燈二本、角のように結びつけ、胸にはこれまた点けっぱなしにしたナショナル懐中電燈を、まるで丑の刻参りの鏡のようにぶらさげ、洋服のうえから締めた兵児帯には、日本刀をぶちこみ、片手に猟銃をかかえていた。

(原文より引用)


本作で要蔵が殺戮を行うシーンは「津山三十人殺し(津山事件)」と呼ばれる実際の事件がモデルになっており、そのときの犯人の風体がそのまま要蔵の格好となっている。


不連続殺人事件」との関係

「八つ墓村」を書くきっかけとなったのが、坂口安吾の「不連続殺人事件」であると、横溝はエッセイの中で明らかにしている。

戦時下での疎開中、横溝が何とか手に入れた雑誌連載中のこの作品の肝が「ABC殺人事件の応用」と気づいた横溝は、懸賞つきの犯人当て企画に参加したいと思ったものの、中盤以降の雑誌が取り寄せられずに果たせなかった。

その消化不良の気持ちが、後年「挑戦」という形で昇華したわけである。


犬神家の一族」との関係

よく「水面から突き出た足」のイラストに本タグが付けられていることが多いが、当然のことながら本作にはそんなシーンは存在しない

これは本作と、有名な映画版を混同して覚えている人が多くいるためと思われる。


映像化に関して

本作は登場人物が非常に多く人物相関が入り組んでいる上、トリックが複雑で巧妙なことから、映像化作品はいずれも大幅な改編・省略を余儀なくされている。

特に典子はヒロインでありながら出番がなく、代わりに美也子とのロマンスが描かれる事がほとんど。


初の映画化は1951年版で、題名は「八ツ墓村」となっている。

金田一を片岡千恵蔵が演じており、どこぞの名探偵を思わせるダンディなスーツ姿で登場。意外性を演出する為に原作に登場しない人物を犯人にし、犯人当てを宣伝に使っていた。

金田一は本物の辰弥の依頼を受け、辰弥に成りすまして村に姿を現し、次々と起こる殺人に遭遇。最後に本物の辰弥が登場し、密かに金田一の捜査に協力をしていた事が明らかにされる。


1971年、NHKによりドラマ化。金田一が登場せず、磯川警部が少しだけ登場する。

いくつか殺人の場面がカットされているものの、後世のドラマ版と比較すると比較的原作に忠実な内容。

典子が原作に準拠した描写となっており、辰弥も最後にある人物と晴れて親子の名乗りを交わしている。


1977年の映画版は、野村芳太郎が監督をつとめ、渥美清が金田一を演じる。大ヒットした事もあり、数ある映像作品の中でも最も知名度が高い。

原作では「祟りに見せかけた犯罪」だった部分の大半を「本当の祟り」として描き、ホラーとしてアレンジ。全編にわたって狂気に満ち満ちた展開の連続となっている。(当時映画エクソシストのヒットで心霊ホラーブームがあった為その一環だったと言われている)

武者達を酒宴の席で毒を盛り、鉈で腹部を引き裂く、槍で身体を串刺しにする、刀で首を跳ね飛ばす、生きたまま燃やすなど、なぶり殺しにする下りや、要蔵の発狂からの殺戮劇は、虐殺と言っても過言ではない。非常に凄惨な場面が繰り広げられるため、人によってはトラウマにならないよう、注意が必要である。

ただ、あまりにも強烈な印象を与えたことで客離れを起こしたくなかったのか、見るに堪えない展開を頑張って耐え抜いた結果、終盤ではお色気場面があり、スケベには嬉しい展開となっている。

この展開は原作にもある金田一耕助ものの数少ない濡れ場なのだが、相手が違う。また後に本性を表した犯人の形相があまりに怖すぎる上、炎上する田治見家の最期を、血のような夕焼けを背景に崖の上に立つ落ち武者の怨霊達が笑いながら見届けるという、凄惨かつ妖美なラストとなっている。


1978年のドラマ版では、金田一を古谷一行が演じた。

大きく内容が改変されており、動機や展開に手が加えられている。

極めつけは事件解決後、台風による川の氾濫で、八つ墓村が濁流に押し流されて消滅。辰弥は単身で見つけた財宝を持ち出そうと鍾乳洞に入っており、水死した事が報道される。

何故辰弥が鍾乳洞にいたのかは金田一にも解らず、「祟りは本当にあったのではないか」と思わせるという、非常に後味の悪い終わり方になっている。

1991年に再ドラマ化されたが、こちらでは犯人の動機が大きく異なる。そしてラストは「一年後に町村合併した事で、八つ墓村はその名を永久に消した」となっている。


1995年のドラマ版では、金田一を片岡鶴太郎が演じた。

登場人物の一部がオミットされ、犠牲者の殺害方法にも大幅な変更が入っている。

大きな所では、久弥が結構な極悪人にされており、今回の事件の元凶の一つとなっている。また小竹と小梅が要蔵の血を引く者の排除を計画しており、これに協力したと見せかけて便乗した犯人によって二人とも殺害された。更に犯人の祖先が尼子氏ゆかりとなっており、1977年の映画版同様、因縁を感じさせる内容となっている。


1996年の映画では市川崑が監督をつとめ、金田一を豊川悦司が演じた。

物語は簡略化されているが、典子の扱いが比較的大きくなっている。ただし辰弥と結ばれる事はない。


2004年のドラマ版では、金田一を稲垣吾郎が演じた。

原作に比較的近い展開だが、亀井陽一が実は落武者の謀殺に反対した人物の子孫であるという設定が追加。そして終盤、洞窟内に追い詰められた辰弥を殺そうとした村人達が、突如として起きた落盤によって多数犠牲になる。

これにより辰弥は命が助かるが、最終的に一連の事件で88名の死者が出たという、ホラー要素の強い展開になっている。


2019年のNHK・BSプレミアムでのドラマ版では、金田一を吉岡秀隆が演じた。

登場人物を最小限に絞り、科白での説明や回想を多用。その為か、真相が語られない部分がそこそこある。

事件解決後に典子は辰弥に押しかけ女房を決めて村を出る事となり、ラストで磯川警部が金田一を湯治に誘う事で次回作を匂わせる。そしてエンドロールの後、一人残された小竹が自殺する場面で終わるという、ケレン味の強い演出がされた。


事件のその後

本作はラストである登場人物が石灰岩が多い地質で適しているとの事で八つ墓村にセメント工場を建てて村の暗い風習を変える事を誓うシーンがあるが、作者の横溝正史は小林信彦との対談でセメント工場ができるという事は公害も出てくるわけでそこでまた軋轢が生まれ新たな事件が…という事を語っている。


関連タグ

小説

金田一耕助 横溝正史 金田一耕助シリーズ

ひぐらしのなく頃に(本作の影響を強く受けている作品)

津山事件(本作のモデルになった実際の事件)

都井睦雄(上記の津山事件を起こした犯人)

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