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- 岸野幸正(1996年)
概要
現在の鳥取県と岡山県の県境に当たる所にある小村「八つ墓村」の旧家・田治見家の先代当主。
数十年前に起きた事件における悪鬼羅刹の如き狂人振りから、村の多くの人間達にとって憎悪と恐怖の存在となっており、実の子達からも忌み嫌われている。
横溝正史の推理小説に登場するキャラクターの中でも、『犬神家の一族』に登場する犬神佐清(青沼静馬)に並ぶ有名な存在で、実はfigmaでフィギュア化もしている。
人物
田治見家の長男として生を受ける。
幼少期に両親を無くし、その後は叔母である小竹・小梅の双子姉妹に育てられた。
顔立ちは自身の長男である久弥に似ているとされている。
しかし、二人の教育方針は徹底的に甘やかすやり方であった結果、常軌を逸するまでに狂暴な性格の持ち主へと育ってしまう。
思い通りにならない事は暴力と権威でねじ伏せる独善ぶりのみならず、猜疑心も強く、酒を飲んでは暴れ回る悪癖までもち、「暴君」という言葉がこの上ない形で当てはまる人物と化した。
村娘のおさきと結婚し、久弥と春代の二人の子供を儲けても、性格は一向に改善しなかった。
そればかりか妻子に些細な理由から暴力を振るうなどの問題行為を繰り返しており、小竹・小梅がようやく深刻な問題である事に気付いた時には、最早手が付けられない状態となっていた。
八つ墓村の村人の間では、要蔵の傍若無人振りは周知の事実だった。しかし村の最高有力者の当主であった為に誰も逆らえず、結局は見て見ぬ振りをするしかなかった。
そして、その事ですっかり味を占める様になった要蔵の問題行動は、ここから本格的に危険な兆候を見せ始める。
来歴
婦女子の拉致・暴行
既に妻子を持っていた身でありながら、要蔵は郵便局に勤める19歳の女性・井川鶴子に対し邪な横恋慕を抱いた。
当時の鶴子には、小学校教諭を務める亀井陽一という心に決めて結婚の約束までしていた人物がいた。それを知りながら、要蔵はお構いなしに彼女を拉致して強姦すると、もう自分の物だと言わんばかりに、身も心もボロボロになった彼女を田治見家の屋敷へと連れて行き、土蔵に閉じ込めてしまう。
当然、この事態は田治見家でも大きく問題視され、小竹や小梅からも最初は鶴子を解放するよう説得された。
しかし要蔵は聞く耳持たない形で鶴子を犯し続け、やがて妊娠が発覚。これが村民達にも事実が知れ渡った結果、小竹と小梅も根負けする形で鶴子を要蔵の妾にする事を決定してしまい、鶴子を返すよう懇願し続けた彼女の父親である井川丑松も、小竹と小梅に田治見家の土地を与えるという条件を与えられた結果、観念せざるを得なくなった。
この時、要蔵の怒りを買う事を恐れた他の田治見家派の村民達に諦めるよう半ば脅されたのも理由の一つである。
狂乱と虐殺
全てを諦める形で土蔵から出され、妾として離れの一棟に置かれた鶴子は、その後も要蔵に犯され続けた末に男児を出産する。
子供は「辰弥」と名付けられ、最初こそ要蔵は可愛がっていた。しかしやがて村民達の間で「辰弥は要蔵の本当の子供ではなく、恋人であった陽一と逢引きして生まれた子ではないか」という噂が流れる。
この噂を鵜呑みにした要蔵は、怒りに任せて鶴子に暴力を振るうばかりか、まだ幼い赤子である辰弥の身体に焼け火箸を押し当てるという壮絶な虐待を行う。
この凶行に耐えかね、自身と我が子の身の危険を感じる様になった鶴子は、遂に辰弥を連れて田治見家の屋敷から逃げ出した。
これまでも、鶴子は何度か田治見家の屋敷から抜け出し、その都度両親や村の人間達によって2~3日程度で連れ戻されていた。ところが今度に関しては鶴子は何日経っても全く見つからず(メディアによっては、我が娘だけでなく孫にまで暴力を振るうようになったのを見兼ねた丑松によって匿われ、親戚のいる村外へ逃がされたとされる)、日に日に苛立ちを募らせてゆく要蔵の姿に、小竹や小梅、おさき、久弥、春代は酷く恐れ、村民も誰一人とて要蔵と口を利かなくなっていった。
そして、苛立ちが頂点に達した結果、要蔵はその狂気を一気に解放する事になった。
「村の誰かが自分を欺いて鶴子を隠し、自分から鶴子を奪おうとしている」と邪推した要蔵は、詰襟の洋服を着て、首には弾帯や数珠、懐中電灯を掛け、頭には鉢巻きに棒型の懐中電灯を蝋燭の様に括り付ける等、さながら丑の刻参りの様な出で立ちとなる。
そして利き腕に日本刀、逆利き腕に猟銃を持って、怯えて命乞いをするおさきを日本刀で斬殺。
そのまま奇声にも似た雄叫びを上げながら田治見家の屋敷から飛び出し、まるで蛮族の様に鶴子の名を叫びながら、村中の人間達を老若男女を問わず手当たり次第に殺害。それは夜明けに至るまでに続いた。
この時小竹と小梅は目の前で母を殺された久弥と春代を匿うのに精一杯で、亀井陽一も隣村の和尚の元に碁を打ちに行って殺されずに済んだ。
最終的に32人もの人間を虐殺、それ以上の数の重傷者を出した要蔵は、警察官や新聞記者達が八つ墓村に押し寄せるよりも早く、雄叫びを上げながら山の中へと消えていった。
この異常事態が原因で、村民……特に身内を要蔵に殺された者達は、要蔵本人よりも、彼の元から逃げ出した鶴子や辰弥が全ての元凶と見なすようになる。最初に鶴子を自分達が見捨てたのを棚に上げる形で、親子に対し理不尽な逆恨みをぶつける事になった。
関連タグ
都井睦雄:「津山事件」の主犯で、要蔵とその凶行のモデルになった人物。ただし、本人の性格や凶行の動機に関しては、全く異なっている。
ここから先はネタバレの為、注意
山に姿を消したきり、その消息が掴めなくなった要蔵。
事件を知る村民からは、26年経った現在でも実は要蔵は生きているのでないかと考えられ、恐れ続けられていた。
しかし、実は要蔵はとっくにこの世を去っていた。
26年前に山に姿を消した後、要蔵は小竹と小梅によって田治見家屋敷の地底にある鍾乳洞へ匿われ、ほとぼりが冷めるのを待つよう命じられた。
しかしそれすら我慢の出来ない要蔵の身勝手ぶりに耐えかねた小竹と小梅により、運ばれた食事に毒を盛られ、毒殺されたのである。
その後は遺体を隠す為、落ち武者の甲冑を纏わされた上で、鍾乳洞の「猿の腰掛け」に鎮座させられた。水気のある場所に放置されていた事もあり、その遺体は脂肪が分解された「屍蠟」と化してしまっている。
鍾乳洞を探索した辰哉と春代はこれを見つけて驚愕するが、面頬の奥に父の面影を見た春代は泣き崩れ、二人はようやくその正体を知る事となる。
余談
1977年版のみ何故か「多治見」名義である。
また作品ごとに服装の違いはあれどこの作品のみ顔を白塗りにしている。(原作の小説でも顔を白塗りしてるという描写はない)