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センシティブな作品

概要

架空の私立探偵金田一耕助を主人公とした横溝正史推理小説のシリーズで長編と短編合わせて数多くの作品が発表されている。華やかな東京や旧態依然とした田舎を舞台に、奇怪かつ妖美な連続殺人事件を描いており、1976年の『犬神家の一族』以降、多数の作品が映像化されている。

主な登場人物

  • 金田一耕助:私立探偵
  • Y先生:語り手
  • 磯川常次郎:岡山県警の警部
  • 等々力大志:警視庁の警部

よくある誤解

主に市川崑監督による映画の影響もあり、このシリーズには多くの誤解が存在している。

役にたたない名探偵編

金田一耕助のステレオタイプなイメージから、「飄々とした、どこか頼りない探偵」あるいは「役にたたない探偵」という風評があるが、原作を読むとそのイメージとは真逆の金田一がたびたび現れる。

  • 常に犯人に同情的で決して罪を責め立てる事をしない
    • 幽霊男」では犯人に痛烈な皮肉を浴びせ、「仮面舞踏会」では元凶となった人物を声高に非難している。
    • 迷路荘の惨劇」や「悪霊島」では犯人の末路や悲惨な過去には同情しているが、動機に対しては全く同情せず、不快感を露わにした。「墜ちたる天女」では犯人への嫌悪感のあまり、酒に逃げたりもしている。
    • また、たとえ惨殺された被害者であろうとも、非人道的な人物や独善的な人物には決して同情しない。「同情せざるを得ない犯人」が主に有名な長編(「悪魔が来りて笛を吹く」「悪魔の手毬唄」)に集中しているからこそ起きた誤解といえよう。
  • 唯一愛した女性、鬼頭早苗
    • 実際には「女怪」の登場人物・持田虹子がいる。原作での描写では、早苗に対しては「淡い恋心」という趣が強いが、虹子に対しては、彼女が自殺した時に成城の先生に後追いを心配される程憔悴し、数ヶ月に渡って北海道を放浪するほど思い詰めている。
    • とはいえ、「獄門島」から20年後の瀬戸内海が舞台の「悪霊島」にて、早苗の事を思い出す場面がある事から、彼女が金田一にとって特別な女性なのは間違いない。
  • 被害者を出して「しまった」と叫ぶ
    • 原作で「しまった」と叫んだのはわずか2回
    • 1回目は犯人の自殺を止められなかった時、2回目は容疑者が暴漢に殺された時。犯人に先を超されて「しまった」と叫んだ事は一度もない
  • 舞台は岡山県の農村や離島
    • 舞台は大きく分けて「岡山編」「東京編」「長野編」の3つに分類可能。
    • 評価と知名度の高い作品(「本陣殺人事件」「八つ墓村」など)が岡山に集中している事から来る誤解である。
  • 犯人は必ず自殺する
    • 現行の角川文庫に収録されている作品のうち、長編作17作では自殺5、病死2、事故死1、逮捕6、殺害3。必ずしも自殺する訳ではなく、無論逮捕が一番多い。
  • 防御率4.2
    • 事件発生から解決までの間に平均して4.2人殺されるという意味。
    • しかしこの数字は某本の雑誌編集部が独断で代表作を10作選出し、自責点(事件解決のために呼ばれてから解決までの間に犯人と共犯者によって殺された人数)を10で割ったもので、はっきり言ってしまうと選出に悪意が感じられる
    • ちなみに前述の17作での防御率は3.0、全77作での防御率は1.5となる。

市川崑監督編

市川崑監督、石坂浩二主演による一連の映画(特に「獄門島」と「女王蜂」)は大人の事情により原作を大幅に改変する事を余儀なくされているにもかかわらず、「石坂金田一シリーズは原作に忠実」という誤った共通認識が存在しており、より原作に忠実に作られた他の監督、主演による金田一耕助シリーズを原作無視と叩く構図が見られる。

ただしフォローしておくと、石坂金田一シリーズは先行の諸作品や古谷一行片岡鶴太郎の金田一耕助シリーズと比べれば、比較的原作に忠実である。

  • 犬神家の一族
犬神製薬原作では犬神製糸。ケシの栽培もしていない。
湖に浮かぶ生足スケキヨを参照。
  • 悪魔の手毬唄
放庵さん原作では犯人を脅迫していない。それどころか犯人に養われている現状に屈辱を感じていた。
娘が殺される度に歌詞の続きを思い出す原作では最初から全部の歌詞を思い出しているが、唄の途中で邪魔が入ってしまい、結局二人目の娘が殺された時点で全部の歌詞を伝えている。見ようによってはあえて手がかりとなる歌詞を出し渋ったとも取れる為、これについては原作の方がより悪辣とも言える。
ワイン樽の中に死体原作では樽の影に死体が置かれている。市川監督によるスプラッター演出。
  • 獄門島
お勝(勝野)さん映画では事件の根幹に関わる最重要人物なのだが、原作ではトリックに使われた猫を飼っているだけのモブキャラである。
釣鐘による首切断原作には存在しない描写。市川監督による(ry
  • 女王蜂
大道寺と日下部の因縁映画では親の代から因縁があるが、原作では学生になってからの親友。
時計の動作機構による人体切断原作には存在しない。はっきり言って切断は映像化にあたっての宿命である。
  • 病院坂の首縊りの家
作品全般ほぼ同タイトルのオリジナル作品と言ってもいい。

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