横溝がモダニズムに傾倒していた頃から、耽美派に近い作品を書いていた頃のシリーズであるため、後の作品とは雰囲気が大きく異なる。金田一の登場を境にした作風の変化によって次第に出番が減っていった。
概要
横溝正史の戦前の作品に登場する元刑事の名探偵で白髪の紳士、洞察力と推理力に優れており相棒である新聞記者の三津木俊助と共に難事件を解決する。三津木は観察力と行動力に優れており、互いの足りないものを補う関係にある。
トレードマークである白髪は警察を辞める原因となった事件で過剰なストレスを受けた事による後遺症である。
登場する作品が映像化される場合は基本的に金田一耕助が解決した事にされ(※1)、由利麟太郎としての映像化は1947年と1998年と2020年の3回のみ。そのため21世紀における知名度はさほど高いとは言いがたいが、ファンも一定程度存在する。
金田一耕助のデビュー作である『本陣殺人事件』と同時期に事実上の最終作『蝶々殺人事件』を発表。その後、最終作である『カルメンの死』が連載されるが掲載紙の廃刊により未完となっている。
経歴
初登場は昭和8年発表の『憑かれた女』だが、時系列順での最初の事件は『獣人』(昭和10年発表、※2)。
本名を由利燐太郎といい(※3)、元々は警視庁に勤めており若くして捜査一課長にまで登り詰めた逸材で希代の名捜査課長と呼ばれていた。しかし警察組織内部の政治的軋轢が絡んだとある事件で責任を取らされる形で職を辞し(※4)、さらには精神的に追い詰められた事でストレス障がいを発症し一時は精神病院に入院する。
この時警察の限界を感じた事から私立探偵に転職し名前を由利麟太郎へと改める。私立探偵に転職してから警察組織とは一切の関係を断っているが、警察時代の実績と人望から今でも多くの刑事達から慕われており、警視庁の等々力警部や大阪府警の浅原警部等が代表例として挙げられる。
長い間独身貴族を通していたが、戦後間も無くの時点でかなり年下の女性と結婚している(※5)。
代表作(斜体文字は金田一耕助シリーズとして映像化)
映像化
1947年版
本来は金田一耕助の本陣殺人事件として企画されたが、諸事情により製作中止になり、代わりに由利麟太郎シリーズ蝶々殺人事件が映画化された。しかし、前述の諸事情によって大まかな点は変わらないもののタイトルが蝶々失踪事件に改題される等、細かい変更点は多い。
1998年版
石坂浩二主演で蝶々殺人事件を映像化、三津木役は奥山佳恵。特徴的なトリックこそ同じであるが、それ以外は三津木が女性になっているなど犯人を除いてほとんどが改変されている。また、主演の代表作の影響からかよくも悪くも市川崑監督のアレになってしまっている。
2020年版
吉川晃司主演で連続ドラマ化、全5回。三津木役は志尊淳。時代設定を2020年に、由利先生の活動拠点を京都に変更している。この他、戦前では許されていたが令和では倫理的にダメという部分が改変されているが、改変は過去の映像化と比べると少ない。また、主演の代表作の影響からかよくも悪くも2人で1人のアレになってしまっている。
注釈
- (※1) 金田一の映像作品では「こちらは探偵の金田一耕助さんです」「蝶々殺人事件を解決したあの?」というやり取りがよくみられる
- (※2) 本来ノンシリーズだった『憑かれた女』を後年由利麟太郎シリーズに改作したため初登場作が発表順と時系列順で異なっている
- (※3) 『獣人』のみ麟太郎ではなく燐太郎名義である事から改名説、別人説、作者の書き間違い説等の諸説があるが、この記事では改名説を採用した
- (※4) 三津木は「自身の推測であり真相は不明」としているが、恐らく事実である可能性が高い
- (※5) 昭和16年から20年までの間に『蝶々殺人事件』の関係者だった女性と結婚した
舞台化
- ネルケプランニングによる舞台化(蝶々殺人事件)2014:公式HP下方に配信あり。