概要
ブルーバードの上級シフトで空白となった、1000ccクラスの小型車を埋める目的で開発された大衆車のはしり。
1960年代後半から90年代にかけ、トヨタ自動車のカローラと共に日本の大衆車の双璧を担った。最盛期にはクーペからハッチバック、ステーションワゴンにピックアップトラックまで多くのボディタイプの設定があった。
しかし、カローラが時代に合わせて進化していくのに対しサニーはユーザーの高年齢化(この問題自体はカローラにもある悩みである)や日産のシェア低下に伴い、2004年にティーダラティオに置き換わる形でその名は日本市場から消えてしまった。そのティーダラティオ→ラティオも2016年に日本市場から消えてしまったため、2021年現在もその系譜が途切れることなく続くカローラとは対象的に、サニーの系譜を継ぐ日産の小型車は途絶えてしまった。
初代・B10型
1966年登場。
1リッター直4・OHVのA型エンジンを搭載し、同年11月発売のカローラと共に高度経済成長期のマイカーブームを支えた「大衆車」の先駆となる。しかし開発には当時の社長は「中古のブルーバードを買えばいい」と言い放つレベルで消極的だったため、開発陣は商用車開発の名目でなんとか社長を説き伏せ、サニーの開発につなげたというエピソードが残る(その後サニーは好調な売上を記録したため、社長も認識を改め「サニーの開発をやっておいてよかった」と言っている)。
1968年3月にはクーペも追加された。その際広告キャラクターに峰岸徹を起用している。
2代目・B110型
1970年1月に登場。
一回り大型化した車体サイズとエンジン、TVCMでの「隣の車が小さく見えま~す」のキャッチコピーでカローラに対抗し、モータースポーツにおいても長く活躍した。
翌1971年にはブルーバードと同じ1.4リッター・OHCのL14型を搭載した上級シリーズ「エクセレント」が追加される。
このモデルのピックアップトラック仕様車は、改良に改良を重ね、日本国内向けは1994年、海外向けに至っては何と2008年9月まで生産された。
またロータリーエンジン搭載バージョンが開発され、東京モーターショーで披露されたこともあったが、オイルショックの影響などもあって市販化はされなかった。
3代目・B210型
1973年5月に登場。
外装デザインが曲線を多用したものに一新され、1975年には排気ガス浄化システム「NAPS」を採用し、排気ガス規制に対応したものに改良された。
エクセレントのクーペはテールライトの形状から「ロケットサニー」の愛称でも知られる。
そのエクセレントは途中で1.6リッターエンジンとなったため、レギュラーシリーズに1.4リッターエンジンを追加している。
広告キャラクターは、前期型は大石吾朗、後期型は関口宏と西田佐知子夫妻、末期型は佐野周二も加わった。
4代目・B310型
1977年11月にモデルチェンジ。
2代目B110型を意識した直線基調の外装デザインに回帰した一方でエクセレントは廃止された(バイオレットの姉妹車・スタンザに移行)。
1979年1月にはステーションワゴンの派生車「サニーカリフォルニア」が追加され、同年10月のマイナーチェンジでフロントデザインがスラントノーズに変更された。
1980年11月のマイナーチェンジではそれまでのエンジン排気量が1.3リッターと1.5リッターに拡大。
広告キャラクターは松坂慶子(1980年のマイナーチェンジ時)で、キャッチコピーは「サニー・マイ・ラブ」。
5代目・B11型
1981年10月にこのタイプにモデルチェンジ。
バンに関してはB310が1983年7月まで製造・販売が行われたが、1982年9月発売のADバンへの移行に伴いこのB310を持って事実上廃止となる。
このモデルより駆動方式がFFに変更された。
1982年1月に内外装をグレードアップしたモーター店向けの兄弟モデルとなるローレルスピリットが発売。
同年9月にはE15E・T型ターボを搭載した「ターボ・ルプリ」と、CD17型を搭載したディーゼル車が追加される。
広告キャラクターは先代後期に引き続き起用された松坂慶子。
ターボ仕様者の追加時には時任三郎も加わった。
1983年10月のマイナーチェンジでクーペ仕様車を廃止(海外向け仕様では継続)、3ドアハッチバックに切り替わった。
6代目・B12型
1985年9月に登場。
外装デザインをより直線基調としながら、車体剛性の強化を図るなど完成度を大幅に向上。
「トラッドサニー」の愛称で人気を博し、積雪・寒冷地でのニーズに応えてパートタイム4WD仕様車も新たに設定された。
1986年2月にはクーペの派生車サニーRZ-1が追加される。
同年8月には1.6リッターDOHCのCA16DE型ツインカムエンジン搭載車が、さらにその翌月にはフルタイム4WD車が追加されている。
1990年1月に7代目・B13型にモデルチェンジ。
外装デザインは先代・B12型の正常進化ながら、ガソリン車に搭載されるエンジンがDOHCに改良された。
その一方で3ドアが廃止され、代わりに兄弟車としてNXクーペが登場した。
サニーカリフォルニアに関しては同年10月にモデルチェンジするも、2代目ADバンの兄弟車となった。
その後1996年にウイングロードに改名し、2018年3月まで3代にわたって生産販売された。
広告キャラクターは前期型は陣内孝則と伊丹十三、後期型は一色紗英を起用している。
なお後述の8代目登場後も、メキシコではダットサン・ツルの車名で2017年7月まで販売された。
8代目・B14型
1994年1月にモデルチェンジ。
外装デザインをスペース重視且つ若々しく大幅にリファインし、1.5リッター車は10モードでリッター19.2kmの低燃費を実現。
同年5月には「ルキノ」のサブネームを付けた2ドアクーペが追加される。
なおこれまでサニーの製造を請け負ってきた座間工場(神奈川県座間市)の事業整理に伴い当時の九州工場(福岡県]]苅田町に製造を移管している。
ちなみに九州工場はその後日産の子会社として分社化された。
9代目・B15型(最終モデル)
1998年10月に登場。
B12型を意識したオーソドックスな外装デザインに回帰し、新型プラットフォームを新たに採用。
スポーティーグレードの「VZ-R」は、最高出力175馬力を発生する1.6リッター・DOHCのSR16VE型を搭載。
2004年10月に日本国内向けの販売が終了。
2006年には国外向けの生産も終了し40年の歴史に幕を下ろした。
その他
サニーには多くの派生車種や兄弟車があり、7代目B13型のプラットフォームはラシーンに流用され、9代目B15型は光岡自動車の2代目リョーガのベース車となった。
トヨタのカローラとは、「CS戦争」と呼ばれるほどの熾烈な販売競争を繰り広げたライバルであった。
また元々「サニー」はソニー株式会社の商標であったが、事業に支障がないと判断されたらしく日産への使用許可が降りている。