「こんな時、綾波レイならどうするの?」
【注意】この記事には『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』序盤に関するネタバレを含んでいます。
概要
CV:林原めぐみ
アニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』に登場するキャラクター。
主な登場作品は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』と『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』の2作となる。
「(仮称)」まで含めた名前が正式名称。バックアップのための綾波レイのクローンであり、アスカ曰く”綾波タイプの初期ロット”。なお、マリの台詞によれば「ゼーレの暫定パイロットさん」らしい(本編AR台本より)。普段は黒いプラグスーツを身に着けており、『シン・エヴァ』の序盤では第3新東京市立第壱中学校の制服を着るシーンが存在する。
命令に拘っており、自我を持たないような言動が多く、悪い意味では多くの人が知っている様な物事への知識や感情も欠けていた。ただし良い意味では純粋無垢で、『シン・エヴァ』での第3村の人々との交流によって、人を、生きることを、幸せを知っていき、最終的には自我が形成されていった。だが...
劇中での扱い
いわゆる、旧エヴァにおける「三人目」の綾波レイに当たるキャラクターだが、その役割と行動は大きく違う。最大の相違点は、劇中で碇シンジと出会うまでの時間。
旧エヴァにおいては、「二人目」の綾波レイが死亡して直後に「三人目」の綾波レイと出会っていたが、新劇場版において碇シンジは『破』のラストに14年間の眠りについており、正確な時間は不明だが、その14年間の内にアヤナミレイ(仮称)は存在しているため、碇シンジとアヤナミレイ(仮称)と出会うまでには大きなタイムラグがある。
このタイムラグが生じた結果、「二人目」と「三人目」がある種の同一人物として描かれているような旧エヴァに対して、アヤナミレイ(仮称)は『破』までの綾波レイとは確固たる別人としてのアイデンティティを持っている。記事の見出しにある「こんな時、綾波レイならどうするの?」と言うセリフは、それを端的に表していると言っても良い。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
NERV(碇ゲンドウ)の命令により碇シンジをヴィレより回収する為に、EVANGELION Mark.09に搭乗し、AAAヴンダーを襲撃した。当初シンジは彼女を『破』の終盤で助け出した「綾波レイ」と思い込み、再会を喜び彼女に話しかけるも、彼女は何を問いても「知らない」と答えるだけであった。
その理由は、「綾波レイ」は第10の使徒のコアから助けられたはずだったが、実は彼女の魂はサルベージされず、EVA初号機のコアに残されていたのだ。その事実を、冬月コウゾウより「彼女の出生の秘密」と共に教えられたシンジは、ますます絶望していく。
終盤では、エヴァンゲリオン第13号機の護衛の為に付いていくが、改2号機及び8号機と交戦。戦闘の最中に機体を失ったことで、交戦後はシンジと式波・アスカ・ラングレーに付いていくことになった。
シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇(ネタバレ注意)
シンジと共にヴィレの下部組織KREDITが援助する小さな村「第3村」で暮らすことになる。彼女はそこで、田植えや農作業、他にもそこに住む人々の手助けをすることになる。トウジとヒカリ夫婦からは綾波レイの「そっくりさん」と呼ばれ、娘のツバメからは非常に懐かれていた。村の子供との交流では、それまでシンジに差し出されながらも無関心だった本にも興味を持ち始める。それにより、普通の人間がどのように生きているのかを知り、生活のなかで綾波レイと同様に感情が生まれた。そして、次第にこの村で生きていきたいと願うようになり、その為に自分が何者であるか明確にするために名前を欲しがるようになる。
また、数多くの絶望とショックにより失語症と自己嫌悪に陥り、村を離れNERVの元本部跡に座り込んでいたシンジに、毎日彼女はアスカから食料のレーションを受け取り運び続け、話しかけていた。そしてある日、シンジは彼女に「どうして皆僕にかまうんだ」とその辛さを吐き出すが、彼女はシンプルに一言こう述べた。
「皆、碇君のことが好きだから」
その後、シンジは村に戻り、時間と共に現実を受け入れ始め、同時に人それぞれに秘めている「思い」を知っていき、立ち直っていった。
だが、元々ネルフでしか生きられない彼女の身体は限界を迎えており、手に黒い痣が出来たことで本人も自分の死期を悟り、鈴原邸に「おやすみ」「おはよう」「ありがと」「さよなら」という別れの手紙と制服を置きシンジのもとに行く。
最期はシンジからアヤナミレイという名前を貰い、もっと村で遊びたかったこと、少しの間だけでも人間として生きられたこととシンジとのわずかな時間を過ごせたこと、仮称ではないアヤナミレイの名前を貰えたことに「ありがとう」「さよなら」と告げ、目を瞑り、倒れながらシンジの目の前で破裂し、LCL(橙色の液体)へと溶け、死亡した。
死後、彼女のLCLに濡れたプラグスーツはシンジに号泣されながら抱えられた。
なお、彼女が着ていたスーツは碇ゲンドウの嫌がらせなのか、最期に黒いスーツから徐々に綾波レイと同じ白いスーツに変わるという残酷な仕様になっていた。
アスカによると、綾波レイを含めアヤナミタイプは基本的にシンジに好意を抱くように設計されていると説明されたが、彼女はそれすらも受け入れようとしていたのである。
その後の冬月からは、「『ナンバーシックス』は無調整故に個体としての姿を保てなかった」ことが語られている。
作られた存在であろうと、歪な生命であろうとも、彼女は彼女なりに多くを学び、不器用ながらも人と交わり、最後に自らの名前を手にしたことで一人の人間へと到ったのである。
劇中で黒いスーツではなく綾波レイと同じ制服を着るシーンもあるが、それも名前と同様、救いになったことであろう。
彼女の最後を看取ったシンジは衝撃を受けつつも、人生を全うした彼女の姿に何かを感じ取り、自己嫌悪やショックから立ち直り、自分の運命に決着を付けることを決意する・・・
結果はどうあれ、かつての綾波レイと同じように、シンジの決意を促した重要な存在と言えるだろう。