CV:清川元夢
概要
特務機関「NERV」副司令。60歳。
NERV総司令・碇ゲンドウの数少ない理解者であり、彼の本当の目的を知るただ1人の人物でもある。主にNERVの実務処理面を担当しているが、ゲンドウの不在時には代わって直接作戦指揮を執ることも多い。物語後半にてゼーレに拉致されるが、加持リョウジの助けで無事帰還している。
かつての教え子にして主人公碇シンジの亡き母・碇ユイに好意を抱いていたが、思いを打ち明けた事は一度もなかった模様(厳密な話をすれば、彼女への思いが恋愛から来るものなのかは不明)。
赤木ナオコとも彼女がジオフロントの人工進化研究所で働く前から面識があった。
組織内での立場はゲンドウより下ではあるが、かつての師・教え子の関係やゲンドウの計画への賛同およびゲンドウへの信頼などから司令である彼を「碇」と呼び捨てにしている。一方、逆にゲンドウの側からも「冬月」と呼び捨てにされているが、劇場版でゲンドウは最後にセントラルドグマに向かう際に「冬月先生」と呼んだ。
人類補完計画発動後、ユイの幻影を迎え入れて魂を補完される。最期の言葉は「碇、君もユイ君に会えたのか?」という、ゲンドウヘの問いかけの言葉だった。
一人称は基本的に「私」だが、ゲンドウの前では時折「俺」になる。
趣味は詰め将棋。
経歴
元は京都の大学教授で、形而上生物学を研究していた(具体的に京都のどの大学で教授職を務めていたかは分からないが、劇場版パンフレットでは京都大学で教鞭をとっていたとの設定記述がある。なお所属は「形而上生物研究室」)。この頃学生だったユイやゲンドウと知り合う。セカンドインパクト後は一時期モグリの医者をしており、その時に招集された国連調査団でゲンドウと再会、彼とユイが結婚したことを知らされた。
持ち前の潔癖かつ正義感にあふれた性格から、当初はゲンドウやゲヒルン(NERVの前身組織)を毛嫌いし、セカンドインパクトの真実を公表しようとしたが、ゲンドウにジオフロントで開発中のEVAを見せられ、潔癖かつ正義感な性格より知的好奇心の方が上回っていたこともあり、彼の誘いに応じやがて行動を共にするようになる。
数年後、ユイはEVA初号機のシンクロ実験中に肉体を取り込まれ消失してしまうが、その数ヶ月前に冬月は彼女の口から、(ゲンドウも知らない)彼女自身のエヴァンゲリオンに対する真意を告げられていた。なお、その時に乳幼児だったシンジも居た。
チルドレン(EVAパイロット)に対して特別関心は無かった模様だが、ゲンドウ不在の時にシンジとアスカにパイロットとしての本分を直接諭したことはある(第九話)。またユイの面影を残すレイだけには、ゲンドウとは別の心情を持っていた事が明かされている(ビデオフォーマット版第弐拾参話)。
貞本エヴァ
本作では、パイロットとしての本分を諭す役割をゲンドウが直接やっていたなど、シンジやアスカとの接点がTV版以上になくなっている。
また、本人の心情がTV版よりは掘り下げられており、ユイにゲンドウとの交際を問いただしたり、LCL化する直前にエヴァに取り込まれたユイの真意を伝えず、ユイを失って苦しんでいるゲンドウを密かにあざ笑っていたことを語っていた。
新劇場版
立ち位置は大体原作と同じだが、『Q』以降は、世界を破滅に追いやろうとする人類補完計画を進行するゲンドウの側近としてほぼ二人だけとなったネルフを運営している。年齢74歳。
また、シンジにレイがユイのクローンであるという真実を伝え、ニアサードインパクトを起こしてしまいヴィレの全員から敵視され弱っていた彼の心をさらなる絶望へと叩き込んだ。
『シン』では冒頭のパリ解放戦線に大量のEvangelionMark.04を送り込みヴィレを追い込むも失敗。
最終決戦であるヤマト作戦ではNHGシリーズの2番艦「エアレーズング」に乗艦。「エルヴュズンデ」「ゲベート」と合わせた3機をほぼ一人で動かし、これらと大量のMark07、エヴァオップファータイプを使ってヴィレを疲弊させ、窮地に陥れた。
ちなみにNHGシリーズはL結界密度が高いからか、有人仕様ではないらしいのだが彼はなんと気合でLCL化を防ぎながらヴィレと交戦していた。 やっぱガーゴイルだろアンタ。
その後、NHGの主機たるオップファータイプ3機を「後はよしなにしたまえ」とマリに引き渡し、自身は儀式に加わることなくLCLと化し死亡した。
その他
スピンオフ作品における扱い
『新世紀エヴァンゲリオン2(PSP版)』における彼のシナリオでは、ユイへの思いがより強く描かれており、大学時代に読んだユイの論文を元に「精神と肉体の分離」を自らを実験台に試みる。この論文は人類補完計画の雛形とも言える理論でもあった。実験によって冬月は自分の意思でヒトの精神世界にアクセスする術を身につけ、そこでユイとの再会・対話を果たす。最終的に現世を捨てて精神世界にとどまり、ユイと共に人類の行く末を見届けることを決意する。残された肉体はL.C.Lへと還元された。
一方で、他のシナリオではユイへの思いが暴走し、シンジに女装させて写真を撮るという奇行に走った。
トリビア
姓の由来は、大日本帝国海軍秋月型駆逐艦「冬月」から。名のコウゾウについては、語呂の良さからついたもので特に由来はない。外見・容姿は声を演じた清川氏本人がモチーフとなっている。これは『ふしぎの海のナディア』で演じたガーゴイルことネメシス・ラ・アルゴールも同じであるため、ガーゴイルの素顔は冬月ほぼそのままである。パロディ作品では冬月がガーゴイル化するネタが描かれることがある(平野耕太氏がとみに好むネタである)。モデルは『謎の円盤UFO』のフリーマン副官。
「間に合ってよかったね」
アニメ版から冬月を演じる清川氏は既に高齢のベテラン声優で、新劇場版の制作が長引くにつれ、ファンからも健康状態を心配されていた。
監督の庵野秀明氏は『シン・エヴァ』の制作中に清川氏と駅で偶然会ったとき、「庵野ちゃん。エヴァ早く終わらせないと俺、いなくなっちゃうよ」と笑顔で言われたと述べている。
清川氏は『シン・エヴァ』まで収録できる状態を維持し続け、冬月を最後まで一人で演じきり、劇場公開を見届けた後翌年8月に逝去。
清川氏と庵野監督が最後に会ったのはシン・エヴァ2回目のアフレコで、収録を終えた後「庵野ちゃん、間に合って良かったね」と笑顔でスタジオを去っていったという。
ちなみになんの偶然か、『シン・エヴァ』のキービジュアルには冬月が一番真ん中に近い配置になっているものも存在している。