概要
テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』が放送される少し前から、『月刊少年エース』にてキャラクターデザイナーの貞本義行がメディアミックスの一環として連載を開始した漫画作品。(1995年10月放送開始のTV版に対して本作の連載開始は1994年12月)
当然、月刊誌であの内容をアニメの放送期間中に収められるわけも無く、TV放映終了後も同誌の看板作品として掲載が続く。アニメーターとしても多忙な貞本氏の都合の為か途中から長期休載が増え、2009年には『ヤングエース』に移籍。完結したのはなんと2013年で、連載開始から19年を要しての完結となった。最終話が掲載されたヤングエースは完売が相次ぎ、次号にも最終話が再掲載されるという異例の措置が取られた。
単行本は偶然にもチルドレンの年齢と同じで全14巻。累計発行部数は2014年で2500万部を突破し、コミカライズ作品として群を抜いた売り上げとなっている。(同じ2500万部の漫画作品には「ヒカルの碁」、「めぞん一刻」、「寄生獣」などが挙げられる)2021年には愛蔵版全7巻が発売されている。
比較的低年齢層向けで始まったのもあってか、序盤はコミカルな描写も多く、貞本氏によるキャラの掘り下げも多く行われており、最終回は原作「まごころを君に」の絶望的な終焉とは異なるものとなった。ある意味ではシン・エヴァンゲリオン劇場版を先取りしていると取れなくもない。
TV版との色々な差異
同じロボットアニメのコミカライズである『ゲッターロボサーガ』や冒険王版『機動戦士ガンダム』、『遊撃宇宙戦艦ナデシコ』等に比べればそこまででもないが、本作もTV版とは異なるシーンや設定が多々見受けられる。
本作の主人公碇シンジは、TV版エヴァに比べるとやや強気で辛辣。ノリツッコミをしたり原作でエヴァに乗るのを嫌がった場面では逆ギレして乗り込んだりと、少し古典的なロボットアニメ主人公を思わせる要素がある(あくまで「ある」だけであり、物静かで空気が読める所はそんなに変わらない)。そのため、阿鼻叫喚を呼んだ旧劇場版の展開も若干『スーパーロボット大戦シリーズ』を思わせるドラマチックなものになっている。
主要人物である渚カヲル、碇ゲンドウの両名はTV版エヴァと大きく設定が異なる。また、あくまでTV版と旧劇場版が原作なため、新劇場版に関しては全く触れられていない(書き下ろしではとあるキャラの過去らしきものが描かれているのだが、設定が異なるためリンクするとは限らない)。
また、サンダルフォン、マトリエル、イロウル、レリエルの4体の使徒はこの作品には登場しない。
TV版との大きな違いとして鈴原トウジがバルディエル/EVA参号機諸共殲滅され、死亡してしまう(TV版では左足を失いながらも生存している)、アスカがシンジに対して最後まで恋愛感情を抱かず加持さん一筋、渚カヲルの性格がとてもやんちゃ(要約)でシンジとはTV版とはまた違った関係性を築いており、初対面時の出来事でシンジがカヲルとの価値観の違いを察して壁を貼り終始「渚」と呼ぶなどがある。
また、綾波レイはシンジと相思相愛だと完結後に貞本氏がインタビューで明かしている。
余談
TV版に存在しないオリジナル要素の1つとして、劇中でNHKの「ためしてガッテン(現ガッテン!)」らしき番組が放映されているシーンがある。
司会も明らかに年老いた立川志の輔師匠であり、1995年当時の氏と比べると一目瞭然。髪は真っ白になっており、現実の氏以上に年老いてしまっている。
立川志の輔は世界人類の半分が死滅したセカンドインパクトによる悲劇を生き延び、絶望感が漂うエヴァの世界でも国民の希望と健康の為にガッテンし続けていたのである。
(なお実際の「ためしてガッテン」も2015年になっても放映されていた長寿番組である)
また本作は最終巻の表紙の時点で結末の重大なネタバレが行われており、後の『シン・エヴァンゲリオン』で語られたエヴァシリーズの本当の歴史を見る限り、これも旧作や新劇場版とは違う形の「着地点」であることが明かされた。
関連項目
エヴァンゲリオン(当初はこのタイトルだった)
前歯全部折ってやる:本作でシンジが実際に発したセリフ(コラではない)、カヲルとシンジの関係性の違いとして特に顕著な例