杉元佐一
すぎもとさいち
『俺は不死身の杉元だ‼』
概要
アニメCV:小林親弘
顔面をはじめ全身に傷跡のある元・陸軍軍人。除隊後も軍帽と軍服姿で三十年式歩兵銃を携帯し、マフラーを巻いている。日露戦争では普通助からないような傷を受けても持ち直し、その鬼神のごとき活躍から不死身の杉元と呼ばれた。本人いわく、気に入らない上官を半殺しにした為に軍人恩給の資格が消滅し満期除隊したとのこと。
陸軍での所属は第一師団。階級は一等卒。
神奈川県出身。家族を全て結核で亡くし、家も自らの手で焼き払って故郷を捨てた天涯孤独の身。
戦死した親友・剣持寅次(ケンモチ トラジ)の妻であり、かつては相思相愛の仲であった剣持梅子(ケンモチ ウメコ)(旧姓:柿崎)の眼病をアメリカで治療する為、一攫千金を求め北海道へ砂金採りに行く。
偶然耳にしたアイヌの埋蔵金を巡り、アイヌの少女アシㇼパと共に、入れ墨の脱獄囚を追う。
年齢は、アニメ化に向けての原作者とスタッフの打ち合わせにより、二十代前半と判明。
性格
普段は気さくで茶目っ気もある恥ずかしがり屋で、敵でない相手には温厚で義理人情に厚く、子供やお年寄りを大切にする。好奇心旺盛で抜けた所もあり、可愛いものや癒されるものが好きで、ヒロインであるアシㇼパを差し置いて乙女チックなムードメイカーになることもしばしば。
酒を飲むとおとなしくかつボケボケにもなる。
結核によって、故郷で村八分の迫害を受けた過去があるため差別や迫害を憎む。
反対に人から拒絶されてきた経験からか、個人の信念や生きる意志を尊重する節があり、アイヌの人達や彼らの文化にも好意的に接する。
特にアシㇼパに対してはサバイバル知識を持つ相棒として常に「さん」を付けて呼び、金塊を求めての共闘、彼女の父親との再会の旅を経て、次第に彼女の将来を本気で案じるようになっている。
果ては独自の理屈で襲い掛かってきた殺人鬼の辺見和雄にも理解を示したり、姉畑支遁の狂行に素直に感動したりとある意味では独特の倫理観の持ち主。
しかし軍人が掲げる大義などにはあまり理解を示さず、確かな信念に基づく鶴見中尉の野望を「付き合ってられん」と一蹴している。
そんな「やさしい」性格を有する一方で、相手を「敵」や「アシㇼパに危険を及ぼす存在」だと認識すると、瞬時にスイッチが切り替わりキリングマシーンと化す。
人を殺し過ぎたためか血や殺気の匂いが染み付いており、辺見和雄に「僕と同じ人殺しの匂い」と言われ、ほとんど目が見えなくなった梅子からその匂いのため杉元と認識されず拒絶されるほど。
いざとなれば他者の殺害を一切躊躇しない姿は白石由竹をして「コイツが一番おっかねえ」と言わしめている。
この姿勢は「悪人(ロシア人や脱獄囚達)は善人と違って心が欠けているから、死んでも苦しむ事はない」という自己暗示によって、自分を壊して「別の人間になって」戦っていることに由来する。
一方で、殺した人を覚えておくことを己の償いとしており、その責任を重く受け止め続けているという自己矛盾を抱えており、故郷や家族といった帰る場所を失っていることも相まって、戦争を終えても元の人間に戻れなくなった「心がずっと戦場にいる人間」を体現してしまっている。
戦闘能力
鬼神と呼んでも差し支えないほどの、凄まじい戦闘力を誇る。一個分隊並みの人数もほぼ一人で殲滅してしまう等、まさにワンマンアーミー。
自らを「俺は不死身の杉元だ」と鼓舞し、負傷しても戦意が一切衰えない。除隊後も、陸軍の制式装備である三十年式歩兵銃や銃剣、二十六年式拳銃で武装しており、飯盒など武器以外の装備品もそのまま携行している。
攻撃に転じる際は一切の容赦がなく、仕留め損ねても体力にものを言わせて相手を追い詰める。
銃撃戦、白兵戦共に多人数の敵を相手に一切ひるむ事をせず、天才柔道家である牛山辰馬に格闘戦で引けをとらないなど、とりわけ近接戦闘能力は抜きん出ている。
異名通りに常人離れした回復力を持ち、大怪我を負っても短期間で完治している。
悪運も強く、頭を狙撃されて脳の一部が飛散しても一ヶ月足らずで復活を果たしている。
ただ、射撃はそこまで下手ではないが少し苦手意識があるらしく、アシㇼパに「杉元は銃が苦手だ」と言われても反論しておらず、自覚しているフシがある。銃を使って戦闘する際も射撃よりは銃剣や銃床での攻撃を好んで用いている。
また、銃の取り扱いを間違えて(薬室に水が充満したまま発砲して)壊してしまったこともあり、尾形百之助に「軍で何を習っていたんだ」と嫌味を言われたことがある。
余談
名前は第七師団歩兵27連隊乗馬隊に所属し、日露戦争に出征した作者・野田サトルの曽祖父、杉本佐一から。
実在の人物へのリスペクトが多々ある今作において、身体能力などは舩坂弘(剣道・柔道など武道に秀で、全身に重傷を負いながら戦闘を敢行。傷の回復も異常に早かった)もモデルかもしれない。
連載当初は生食の多いアイヌの食文化に及び腰だったが、徐々に慣れた。好物欄に「干し柿」(北海道では実らないため、これを食せるのは彼がこの冒険から生還できた時である)に加え、6巻からは「塩をかけた脳」も追加された…が食べる時は目が死んでいる。
ウサギの目玉を差し出された時は「イーッ」「いいのぉ? いいのぉぉ?」、毒矢で獲ったカワウソが生食出来ないと聞いた時は「生で食べちゃだめえぇ?」と奇声を上げて笑いを誘った。
一方、まじめな食文化描写においては優秀なグルメリポーターでもある。ちなみに猫舌。
白石から「もともとモテそうな顔」と言われたことがあり、戦争に行く前の顔立ちはかなりの美形に描かれている。
また物語途中から、何故か入浴時、入院時等においても軍帽をとる事がない仕様になった。(ただし、アイヌ集落を訪れた際等、礼を必要とすると当人が判断したとおぼしき場面ではちゃんと取る)