ルパン三世(アニメ)
あにめばんるぱんさんせい
概要
1971年におけるルパン三世PART1(ルパン三世1st)より始まったシリーズ。
後述するが、アニメ版において作風やイメージが固まった、あるいは知名度をあげたのが第2シリーズとなるPART2からという珍しいアニメでもある。
シリーズ一覧
「ルパン三世(パイロットフィルム版)」
TVアニメ放映の前に作成された試験的な作品。次元大介を除く全てのキャストが後のPART1と異なる。ただし増山江威子はその後PART2で復活登板することとなる。あまり知られていないが、二種類のパイロットフィルムが存在し、TV版とシネマスコープ(映画版)が作成されており、それぞれキャストが微妙に異なる。
かなり原作の雰囲気を意識した内容であり、絵柄こそかなりマイルドにされているがこれ以降のルパンのアニメとはかなりイメージが異なる。また、赤ジャケットを初めて採用した映像作品でもある。後に本作で製作された映像はPART1のOPで一部改良されて採用されたり、またはそのまま声だけ再録・再編集してOPとしてそのまま利用された。
「ルパン三世PART1」
記念すべきテレビシリーズ第1弾。全23話。
この頃はルパン一味が必ずしも確立されておらず、ルパンと次元がよくつるんでいた以外はかなり不安定だった。このため、メインメンバー全員が揃う事はめったに無かった。このシリーズのルパンのジャケットは緑。
「アニメは子どもが観る物」という認識がまだ根強かった1969年、製作会社東京ムービーの当時の社長・藤岡豊の「初の大人向けアニメを作ろう」という発案の下、高校生以上の高年齢の視聴層をターゲットとして、芝山努演出のパイロットフィルムを経た後、原作者であるモンキー・パンチから正式にアニメ化の許可が下り、人形劇団を主宰していたおおすみ正秋(当時:大隅正秋)を演出家に立てるという異色の起用でテレビシリーズが1971年に製作・放送された。
その結果、飄々としながらどこかアンニュイでニヒルなルパンのキャラクター像や、単純な勧善懲悪という図式を廃したシニカルで退廃的な世界観、多くを語らない硬派でスタイリッシュな演出、赤裸々な男女の絡み等、原作の持ち味を活かしたアダルトでハードボイルドな作風を前面に押し出し、当時のアニメとしては非常に斬新なピカレスクロマン的作品となった。
……が、これらがあまりにも斬新過ぎたのに加えて、内容に関して何の説明もなく始まったせいか、大阪よみうりテレビでの本放送では視聴率で大苦戦し、局の歴代ワースト記録を叩き出してしまった(当時の同時間帯のアニメ番組の視聴率が平均15~20%だったのに対し、ルパンの平均視聴率なんと4.5%!)。
これに関しておおすみは当時「大人向けのアニメなんだから、視聴率が低いのは当たり前」と述べたというが、高視聴率を徹底的に求めていたテレビ局と東京ムービーは、当然それで納得する筈がなかった。これにより路線変更を通達されたおおすみは激怒し、「ルパン暗殺計画」で復帰するまで、二度とルパンとは関わるまいとするほどの確執が生まれたという。
そこで、後半(厳密に言うと中盤から既に色合いが変わり始めている)から演出を高畑勲と宮崎駿に交代してのテコ入れによって子供向けのアニメにモデルチェンジをする。これにより次第に誰でも楽しめるコミカルな作風に変わっていき、視聴率もそこそこ持ち直した。それでも15~20%には届かず、結局は全23話の放送で終了となった。よく打ち切りと言われているが、実際は当初確保していた放送枠より3話短くなっただけで、厳密には成功すれば放送延長を考えていたが御破算になったという方が正しい。
しかしその後、5年間も続けた再放送で人気が高まって「ルパン三世」という存在が再評価がなされるようになり、局によっては夕方の放送枠でありながら20%台という異例の高視聴率を記録。その人気を背景に第2シリーズの製作が決定した。
ちなみに、その事実を知ったおおすみはこの時、なぜ再放送で人気が出たのかテレビ局の関係者に尋ねたところ、「余計な説明をしておらず、非常に斬新」と、打ち切りの理由と全く同じ答えが返ってきて首を傾げたという。恐らくだが、多くの人が「ルパン三世」とはどんな存在なのかを、繰り返し行われたこの再放送によって、ようやく理解・認識したからだと思われる。当時のアニメに対する見方の変化が顕著になってきたことも追い風となった。
なお、打ち切られたとはいえ、本作に影響を受けた後続のクリエイターやアニメ作品は多く、今でも「テコ入れ前の第1シリーズこそ真の『ルパン三世』である」と主張するファンも少なくない。
また近年では、時代が経つに連れて視聴者の嗜好の多様化してきたのに伴い、同じルパン三世シリーズでも、本作の作風を意識した作品も製作されるようになっていった。
「ルパン三世PART2」
全155話とアニメシリーズで最も長く、日本テレビがメインを務めた最初のシリーズである。ファミリー向けの作品として当初から製作されており、かなり万人向けな内容である。
再放送にて高視聴率を挙げた第1シリーズの好評を受けて製作されたシリーズで、テコ入れされた第1シリーズ後半の方向性を継承し、1977年~1980年までの3年間にかけて放送された。
お馴染みの赤いジャケットはパイロットフィルム版及び前作のOP2で登場していたが、本作で時を経てようやく標準の衣装となる。これにメインテーマとなる楽曲「ルパン三世のテーマ」はこのシリーズで生まれたものであり、現在に至るまでのルパンの一般的な作品イメージが確立された。銭形がICPO所属になったのもこのシリーズから。
とっつきづらい性格の五エ門をマイルドにして非常に協力的な性格にしたり、PART1でもあった不二子が最後まで仲間として協力的な回も増やされている(と同時に、序盤の回からかなり裏切っているが)。また、銭形はPART1後半の路線を引き継ぎつつさらにコミカルさを強調して描かれるようになった。
コメディに寄ったシリーズとよく言われるが、実際はハードボイルド調のドラマから、本作で脚本家デビューした浦沢義雄によるドタバタコメディまで、長期シリーズだけあって非常にバラエティに富んだエピソードが存在する。いくつかパターンがあるとはいえ基本的に毎話工夫をこらしたアプローチの作品が多いことが特徴。
故に「スーパーマン」や「ベルサイユのばら」といった既存作のパロディも少なくない。
子供向けと評されることが多いが、厳密には万人向けという方が正しい。当時の子供向けとして見てもかなり大人の魅力を醸し出していた作品であり、ギャグシーンとはいえ濡れ場も描いている。OPやEDに非歌唱曲をメインに使うというのも珍しい試みで、OPの歌唱版に至っては第二シーズンの時期のみしか使われていない。
こうした大人の雰囲気を漂わせた本作は、言わば「背伸びしたい子供の欲求」に応える作品だったと言え、そういう意味では視聴者の希望をかなり満たした作品だったであろう。
先の通りバラエティに富んだ作品作りを中心とする一方で、エピソードによって設定が安定しておらず、一部は過去のエピソードの映像を使って繋がりを強調する回もあったが、概ねその回の脚本担当者の都合によりルパン一味や銭形の身体能力の評価は変わる。特に銭形はそれが顕著であり、有能だったり無能だったり、清廉潔白だったり悪役との協力体制も辞さなかったり、ほぼ安定していない。
こうした長期アニメにありがちな設定の不一致・不徹底を嫌うファンもいるものの、こうした施策が功を奏して三年間という長期に及ぶ放送を乗り越えることができた面は否定できず、功罪どちらもあると言えよう。
あまり知られていないが、代表的な劇場版にして今も続く長編の原点でもある「ルパンVS複製人間」と「カリオストロの城」が公開されたのは、ちょうどこの第2シリーズの放送が継続していた頃の事である。つまりそれら二作はPART2の劇場版ということである。
「ルパン三世PARTIII」
全50話でややアダルト風のシリーズ。1984年~1985年にかけて放送され、製作はPART1の読売テレビへど回帰する。
このシリーズにおいてルパンのジャケットは「赤以外」という厳命があり、当初は白のジャケットの予定だったが、第2シリーズのイメージから離れすぎないよう「白+赤」でピンクのジャケットになっている。
前述の第二シリーズと放送局が異なるために著作権の関係で、「ルパン三世のテーマ」を含んだ全ての楽曲が使用出来なかった。音楽担当は前シリーズからの引き続き大野雄二が担当したものの、OP~BGMまで全てこのシリーズ独自の曲を作曲し使用している。本作は『PARTIII』と表記されており、後年の『PART5』や『PART6』と同様、番組名で区別できる作品となっている。
当初は全26話の予定だったが、シリーズの人気も合わせた高視聴率を受けて2クール追加で延長され、全50話で終了する。本来であればもっと放送期間を伸ばせる試算があったが、当時人気のあった野球と放送枠が同じに設定されたために放送休止が相次ぎ、後半からは視聴率は徐々に低下していった。これによりせっかく放送延長されたのに打ち切りで終了という憂き目にあった作品となってしまう。
映像ソフト化はされたものの再放送もなく知る人ぞ知るシリーズとなるが、2010年代以降にルパン三世DVDコレクションに収録されたり、再放送を重ねたり、近年ではアニメ定額配信サイトによる全話配信の効果も加わり、以前よりも再評価をされるようになる。
なお、PARTⅢの放送話数最終回は打ち切りということもあって、第1シリーズと違ってあまりにも中途半端な終わり方だったせいもあり、五ェ門役の井上真樹夫は、当時ルパン役の山田康雄が「PARTⅢが放送打ち切りになる」という知らせを本気にしてなかった事を、ごく最近になって語っている。
これもあって、次元大介役の小林清志以外は本作が最後の連続テレビアニメシリーズ出演となった。
「LUPIN the Third -峰不二子という女-」
テレビアニメ40周年記念、27年ぶりの第4弾。2012年に放送。
峰不二子を主人公としたスピンオフ作品。ルパンが登場しない回がある初めての作品。
深夜に放送された原作以上のアダルト向けの作品で、不二子を中心とした女キャラの乳首が頻繁に露出されるなどの性的表現もある。全13話。
「ルパン三世PART4」
2014年10月、フランス・カンヌで開催されたエンタテインメントコンテンツの見本市「MIPCOM」において製作が発表された。TVシリーズトータルでは第5弾、ルパンが主人公のTVシリーズとしては30年振りの第4弾。また、今世紀のルパンシリーズとしては始めて、正式タイトルが単なる「ルパン三世」となった作品でもある。
アニメーション制作を「テレコム・アニメーションフィルム」に移管される事になった。
ルパンが日本国外で最も評価されているイタリアにおいて、2015年8月から先行放映。順次他国でも配給された。そして日本での放送は、発表から1年を経た15年10月1日から16年3月17日にかけて放送。全26話(日本未放映2話を含む)。
このシリーズでルパンは、イタリア現地での調査により青いジャケットを着用。
「ルパン三世PART5」
2018年1月16日に突如発表され、同年の4月4日から9月19日にかけて放送。TVシリーズトータルでは第6弾、ルパンが主人公のTVシリーズとしては2年振りの第5弾に該当する。
世界観はかなり現代的になっており、SNSテクノロジーが発展した世の中で、アイデンティティを脅かされたルパンの生き様を問う様が描かれる。
前作と同様「テレコム・アニメーションフィルム」がアニメーション制作を担当し、シリーズ構成の大河内一楼をはじめ、雑破業、野島一成、大倉崇裕、綾奈ゆにこ、時雨沢恵一、西田シャトナーの合計7名が、脚本担当として参加している。
キャラクターデザインは2015年版と同一の人物が行っているものの、ストーリー等も大きく異なり、過去作を踏襲したシリーズになっている。
そのため、このシリーズでのルパンのジャケットは基本的に青(前作とは少し違う)だが、1話完結回では物話によってジャケットの色が変わっており、それぞれのルパン像を象徴すべく、これまでの作品を意識しているともいえる。
なお、年内で放送終了したTVシリーズは、「峰不二子という女」とこの「PART5」だけである。
「ルパン三世PART6」
ルパン三世のアニメ化50周年を記念した、2021年10月から放送される令和最初のTVシリーズ。
今回はルパンという存在の善悪を問うダーク&シリアスな作風が展開されるらしく、その内前半はミステリーを主題とした、前期同様の2クール構成。
このシリーズでのルパンのジャケットは、PVでは緑、ティザービジュアルでは赤や黒で描かれており、現状では釈然としない。