演:浅利陽介
概要
警視庁入庁まで
Season14第15話「警察嫌い」で一般市民として初登場。
警察官である父親と確執があるらしく、エピソードのタイトル通り、極度の警察嫌い。とはいえ、警察嫌い云々を差し引いても常日頃から反社会的でモラルが欠如した言動が多い問題人物で、単に「犯罪を起こしていない」だけで性根はサイコパスのそれに極めて近い。
地方公務員として役所に勤めていたが、盗撮の対象としていた部屋で殺人事件が起こり、重要な証拠である映像を残していたこともあり、特命係に目を付けられ紆余曲折を経て証拠を提出させられた。その証拠映像を提出させられる羽目になった際、右京から半ば脅しめいたことを言われたこともあり、「だから警察は嫌いだよ!!」と怒鳴り散らしている。
この事件における不法行為は亘が法務省を辞める原因となったが(※)、青木の方も根に持ったのか役所を辞め、父親の知り合いである衣笠副総監の根回しを受けて警察学校へ入り、亘と同期の警察官となる。
※ ちなみに、亘が行った事は、被害者がヤクザの隠し子だったため、「ヤクザに情報を流して脅迫させて証拠ビデオを提出させる」こと。いくら青木が嫌な奴で、一応、角田課長を間に入れてその後も青木への干渉が行われない様にしたとは言え、一般人にヤクザに素性を明かして脅迫させたのだから、治安維持組織にあるまじき許されない行為であり、それを通告したせいで亘が解雇されても、詮無き事である。
警視庁入庁後
S.15以降、警視庁サイバーセキュリティ対策本部に配属となり、特別捜査官に任命されて、警察官としてのキャリアをスタートさせる。
とはいえ、上司の目を盗んでネットサーフィンやネットゲームに興じていたりと真面目に仕事をしているとは言い難い面もある。もっとも、情報収集能力や捜査能力自体は非常に高いため、捜査一課の事件報告会議にも頻繁に駆り出されており、少なくとも表向きは普通に勤め上げている。資料を集めるのは上手いが、その資料を一体どこで手に入れているのかは謎。
その性格上、部署内でも友人と言える人物がいないのか、時折、特命係の部屋で弁当を食べたり、愚痴をこぼしたりして周囲を引っ搔き回す。
基本的に女性は苦手なようで、特に美人で気の強いタイプの女性には露骨に敵意を示す。
同じくパートナーが居ないが、それを気にして婚活に励んでいた事もある伊丹憲一とは異なり、女性との関わりを自ら忌避しており、同期の亘から「あいつモテないから」と言われている始末。
その反面、女性の免疫が無いためか誘惑されると弱く、美人局に引っかかりかけたりもしている。
また詐欺の潜入捜査の際には清楚な美人相手に思わず一瞬見惚れてしまったり、酒の勢いで蓮っ葉な女性と(彼女も詐欺グループの一味のため恋愛目的ではないとはいえ)たまたま意気投合して盛り上がってしまうなどという一面も見せる。
意外にもチェスが得意で、その腕前は右京も唸らせるほどで、ランチタイムなどによくチェスに興じている。
休日も家に引きこもってはチェスの腕を磨いているとの事で、シーズンごとにチェスの腕前も上がってきている模様。
これまで特命係にとって強い味方であった米沢が警察学校に転属した今、彼が新たな協力者となっており、自身も「警視庁内での数少ない友人」として、表向きは右京達と友好的に接しているが、その裏では右京たちの写真に画びょうを突き刺すなど、かなり陰湿な一面を持つ。
実際、内心では転職のきっかけとなった前記の事件を根に持ち続けており、その意趣返しとして特命係を潰そうと本気で目論んでいる。Season15第11話では、これまでの特命係の活動資料を密かに衣笠副総監へと提出し、彼に特命係への危機意識を植え付けていた。
なお、特命係に協力し、礼を断りながらも態度で謝意や感謝の念を求めるも、礼を言われずに去られることもしばしばで基本的に扱いは雑だが、たまに右京から素直に感謝されると逆にひねくれた反応を示すのが恒例。
特命係へ異動した経緯
season16最終回にて、以前から警視庁を散々騒がせた「週刊フォトス」の記者風間楓子がエスカレーターから転落する事故が発生。そこへたまたま居合わせた内村完爾、中園照生、社美彌子、甲斐峯秋、衣笠藤治と共に容疑者の一人となってしまう。
そこで特命係が渋々捜査を開始(運の悪い事に彼女の実家がヤクザで、事件を聞きつけた母親が若い衆をけしかけて報復に乗り出し、青木と中園が負傷したせいもある)、最終的に犯行を目撃していた中園の一言から、さんざん「自分は違う」とゴネ回った青木こそが真犯人であったと判明する(オマケに自分が詳細に書き記した聴取資料も間接的な一因になった)。
さらに発覚後も大河内監察官に対し、反省どころが「あれは事故だった!悪気はなかった!!」とひたすら喚き散らすという往生際の悪さを見せ、動機を一切語らない彼の真意
(衣笠が日頃から週刊フォトスの警察官の不祥事を頻繁にネタにするゴシップ記事を不快に思っていた為、衣笠の鬱憤を晴らそうと考えた為に行った。犯行後にどこか嬉しげに衣笠の方を振り向いていた為、彼からすれば本当に悪気はなかったのかもしれない。)を察した衣笠の最低限の労いにより懲戒免職こそ免れたものの、彼自身は特命係に島流しとなった。また、内村の協力により風間楓子の母親の下へもしょっぴかれる事になり、その後の怪我の様子からして、母親と若い衆からそれなりの報復を食らったようで、その後のシーンで顔に治療の跡が見られる。
当人はあまり懲りてないようで、週刊フォトスを「低俗な雑誌」と吐き捨てたり(ゴシップ雑誌なのであながち間違ってはいない)、season18最終回では、サイバー攻撃を食らった週刊フォトス内に赴き、風間楓子の目前でサイバー攻撃であるDos攻撃、DDos攻撃について解説をしに来ている。
左遷後
season17より特命係の一員となったものの、普段は特命係の部署の一角(入口から左側の手前角)をパーテーションで区切ってデスクを構え、その入口に「サイバーセキュリティ対策本部分室」の暖簾を掲げて引きこもり、右京や冠城との慣れ合うことを拒否している(一応第2話で衣笠から「くだらない事をするな!!」とお叱りを受けた)。
たまにパーテーションの中から嫌味や批判を浴びせてくるが、冠城に仕切りを乗り越えられて弄られたり、捜査一課の面々に灸を据えられたりと、牙城は脆い。
衣笠とは裏で繋がっており、特命係の状況をリークしてキャリアへの復活を狙っていた。
最初は捜査協力を拒絶していたものの、一度右京からピシャリと叱られて以降(特命係に加入する以前も珍しく右京に怒られて思わず動揺したところを突かれて捜査協力をさせられている)、嫌味を零しながらも情報収集を手伝うようになったりと譲歩している。
同じく一時的に特命係であった陣川公平からは可愛い後輩と捉えられてしまっているようであり、嫌味がまったく通じない熱血漢な彼のキャラクターには敵わず巻き込まれがちである。
また、右京が偶然拾った亀の世話を冠城に押し付けられて戸惑うも、きちんと小松菜を与えたり、芹沢が無遠慮に触れようとしたら止めたりとそれなりに世話をしていたようであり、亀が動物園に行ってしまったあとは、からっぽになった巣を特命係とともに見つめて寂しがるような一面も見せた。
だが、特命係となってなお2人とは基本的にあまり交流する事はなく、最終的に同シーズン第10話で衣笠の不祥事を揉み消そうと根回しした事により再び古巣に戻れたが、その後もなぜか頻繁に特命係へ訪れては憎まれ口を叩いたり捜査協力を強要されたりと、結局は以前とあまり変わらない関係性になっている。
なお、この件に関して同じサイバーセキュリティ対策本部に所属する土師太(演:松嶋亮太)からは「出戻り」と呼ばれて弄られている模様。
season18からは衣笠副総監との関わりは薄れ、特命係のほか捜査一課の伊丹や芹沢、鑑識の益子との絡みが目立つようになり、初期の陰湿さよりも権力・圧力に歯向かいたがる生意気な性格の方に焦点が当てられるようになり、それなりにレギュラー陣とも馴染めるようになった模様。
特命係へ島流しされて以降は右京たちにネコを被る必要も無くなったため、愛想をよくする事もなく特命係に対して素直に不平不満をあらわにするようになり、特命係からも更に遠慮なくこき使われまくっている。
サイバーセキュリティ対策本部に属している事から、捜査資料をハッキングさせるため拉致されるという災難にも遭うが、目前でナイフをちらつかされてもひねくれた態度を貫いたままであり、恐怖から情報を漏らすといった浅はかな行動は取らず(用済みになれば殺される可能性が高い為)、言う事を聞くフリをしつつ右京たちが自身の拉致に気付いて確実に助けに来るように画策したりと、初期に比べると肝が据わりだいぶ思慮深くなっており、彼なりに特命係を信頼している事も窺える。
しかし右京が、自身の早期救出より事件の全容を知ることを重視していたのを知って憤り、憎まれ口を叩いて立ち去るなど、ひねくれた態度は変わっていない。
サイバーセキュリティ対策本部に戻れてからも、衣笠副総監へ特命係の動向をチクりに行く事もあるが、右京たちを陥れようと画策する素振りはほとんど見せなくなった。
それにも関わらず、何故か頻繁に特命係に入り浸っているためか、周囲からは完全に「特命係一派」と見なされてしまい(社美彌子からも「あなた、ここそんなに居心地いいの?」とツッコまれる始末)捜査から外されてしまったのを理由に、屈折した性格から特命係に徹底的に協力してみせるといった態度を示してもいる。
もしかしら最初こそ特命係をぶっ潰そうと画策していたが、右京と亘が予想以上に癖者過ぎたことと、特命係最大の協力者の米沢が居なくなってしまったタイミングでやって来てしまったがため、思った以上に散々こき使われまくったことで、一周回って色々と吹っ切れちゃったのかも知れない。
偏屈故にわかりにくいが、青木年男の根底には自分を褒めてもらいたい子供と言う幼稚ながらも純粋な側面を常に垣間見せている。
まだ特命係と腹の探り合いをしていた頃に「いやあ…誰かに褒めて欲しくて。誰にも褒められずに育ったもので」と冗談っぽく語った事もあるが、実際ただ誰かに褒めてもらいたいがために行動する傾向にある事からその話もあながち嘘では無いのかもしれない。
そのため、偏屈な同僚ばかりのサイバーセキュリティ対策本部より、まがりなりにも自分の能力を正当に認め、期待をしてくれる特命係の方に心地良さを覚えたのかもしれない。
シーズン19では、特命係のために自ら情報を集めてはサイバーセキュリティ対策本部をしばしば飛び出して嬉々として持ち込んだり、右京から煽てられついでに頼まれごとをされて表面上は反抗的な態度を取りつつどこか嬉しげなリアクションを見せたり、時には徹夜してまで特命係の無理難題にきっちり応えるといった健気さも垣間見せている。
余談
特命係に左遷されるまでは、そこらの犯罪者よりもよほど悪辣な人物」として行動しており、警察官でありながら正義感や倫理観を持たないインモラルさもあり、特命係寄りのポジションでありながら賛否両論あるキャラクターである。
しかし、警察嫌いである彼の言い分も、正義や犯人検挙と言えば聞こえはいいが、そのために「警察の無法を許せ」と言う言い分を的確に皮肉っている面もあり、もしも青木の登場が「相棒」ではなく「正義を大義名分に強引を通り越した悪質な捜査」を風刺する刑事ドラマの場合はかなり痛快なものでもあっただろう。実際、作中で彼の警察学校で教官だった人物に、「警察嫌いだからこそ警察組織に飲み込まれない」といった部分を高く評価されている。
その一方で、辛く重苦しくなりがちな物語内において、警察嫌いゆえに組織を意識しない彼の奔放な振る舞いや、レギュラー陣のなかでは一番若く立場も低いことから、特命係や捜一に気兼ねなく絡まれたりからかわれたりする受難体質でもあり、憎まれ役でありながらコメディリリーフの役割も担う。
杉下右京と同様に因縁のある冠城亘とは、警察学校に入学した際に思いがけず警察学校の同期となってしまったという複雑な経緯もあってか、恨みを抱きつつも数少ない友人ともみなしているようで、一緒に食事や飲みに行きたがったりタメ口をきいたりと年齢差を気にしない付き合いをしており、また冠城亘からは彼なりの親愛表現としてしばしば髪の毛をいじられたり頭や顔を撫でられたり抱き寄せられたりと強烈なスキンシップの被害(青木のパーソナルスペース自体は広くはないが、触れ合いになると極端に嫌がり出す傾向にある)に遭うのが恒例のやり取りとなっており、反町隆史氏と浅利陽介氏のアドリブの応酬も見所である。
浅利氏は続投に際して、「season14の青木年男役を結構気に入っていたので、また同じ役で出演できることはとてもうれしかったです」と喜び、青木を演じる難しさについても「脚本に書かれる青木の警察嫌いを、職業も立場も変わった今、どう演じるか、どうふくらませるかを考えると、演じる側としては力が入ります」と語り、「相棒のお二人にとって、嫌な青木として対峙できるのが楽しみです」と述べている。
特命係に加入後の浅利氏のインタビューでは、「特命係になっても右京と亘を監視する立場は変わらないが、実は青木は2人の事が好きでもあり、シーズンごとに2人に感情移入をしていっている。警察嫌いも変わらないが、『警察の組織が嫌い』という意味合いに変わりつつあり、特命係に対して親愛の情が芽生えている。」と語っており、今後の青木の変化にも注目すべき点かもしれない。
なお、浅利氏は亀山時代の『相棒』に一度ゲストで出演している(シーズン6第10話)。