"ホワイトスペースへようこそ。"
"あなたはずっとずっと、ここにひきこもってる。"
概要
OMORIとは、RPGツクールで開発されたひきこもり青春ホラー[RPG]]。
およびその主人公である。
2011~2012年に原案者の**OMOCAT**氏のブログ『omori ひきこもり』やそこに登場するキャラクターとしてスタート。
その後、短編漫画『OMORI'S STORY』を経て2013年にゲーム化が発表、2014年には最初のトレイラーが公開された。
KickStarterにて寄付金を募集したところ、目標22,000$を大幅に上回る寄付金(203,300$)が集まったことによって製作チームのメンバーを増員、原案を担当するOMOCAT氏を中心として着々と開発は進行。
そして、
6年半の歳月をを経てついに2020年12月25日のクリスマスにリリースとなった。
テーマと作風(ややネタバレ注意)
テーマは「トラウマからの再生」。
そのゲーム性は『MOTHER』、『ゆめにっき』、『Undertale』といった他ゲームの影響を強く受けながらも、それら先輩達とは一線を画す独特な作風となっている。。
夢と現実を巡る魅惑的な世界観
極力ネタバレを避けて言及すると、このゲームは“ある一人の少年が長い葛藤の末に過去に犯した過ちと向き合う”、実にシンプルかつ普遍的な物語であり、『精神世界』と『現実世界』を交互に行き交いながらストーリーが進行し、物語の8割ほどはこの主人公の精神世界で繰り広げられる。
基本的な構造自体は前述した「ゆめにっき」に似ているが、あちらはほとんど主人公の無秩序で意味不明な夢しか描写されなかったのに対し、こちらのOMORIでは現実世界の様子が繊細なほど丁寧に描写されている。
想像力の暴走ともいえる無邪気で混沌とした『精神世界』とリアルな人間の葛藤が垣間見える『現実世界』の二つの異なる世界が主人公の視点で度々入れ替わりながら、夢と現実は互いに影響し合い、現実を探索するなかで夢の中で見たモノを思い出させるような人物や道具、建物が登場し、伏線として回収され、それまで謎に包まれていた物語の全体像が少しずつ明かされていく仕掛けとなっている。
こういったゲームの性質故にネタバレに対して細心の注意を払う必要があり、イラストを投下する際はくれぐれも未プレイの方への配慮を忘れないでいただきたい。
まだプレイしてない方もどうか、頭を真っ白にして最後までプレイしてみてほしい。
きっと、忘れられない体験になることだろう。
やさしさと残酷さが同居した演出
一応はホラーRPGではあるが、ホラー演出は意外にも薄く、その作風はむしろポップで明るいもので、どちらかといえば十代の少年少女達の尊い友情を描いた青春モノに近い。
主人公を囲む四人の親友達は皆、純粋な優しさと思いやりに満ち溢れており、時にケンカしながらも、互いに支え支えられながら日常を過ごす、そのほのぼのとした交流と尊い関係性に心癒されたプレイヤーは数多い。
誰もが持ち得るありふれた苦悩と向き合う登場人物達の秀逸な心理描写はこの作品を支える魅力の一つといえよう。
無論、優しい要素ばかりでもなく、ゲーム開始時の注意書きにもある通り、「鬱・不安・自殺の描写が含まれる」作品であること間違いはなく、足元にじわじわとにじり寄り、背筋を凍らせ、息も詰まるようなサイコホラーでもある。
直接的な描写こそ少ないものの、今まで平和そのものだった夢の世界が徐々に醒めない悪夢めいたものに豹変していき、終盤になって明かされる「真実」の応酬は巧みな演出力も手伝って実に恐ろしくえげつない。
特にエンディングを見るにはそれなりの覚悟が必要だろう。
丁寧に作りこまれたクオリティ
原案を担当したOMOCAT氏を中心とした制作チームが6年半にも及ぶ膨大な期間をかけて世に送り出した大作だけあって全体的なクオリティは非常に高く、
- 細やかで暖かみがあるドット絵
- 鉛筆画タッチな手書きイラスト
の二種によってデザインされたキャラクターや背景はどれも高品質で洗練されてある。
特に手書きアニメーションにいたってはOMORIが誇る最大の個性と言っても過言ではなく、絵本のようなかわいらしさと不気味さを共に内包した唯一無二の雰囲気からは何度も試行錯誤を繰り返し、数十年の歳月を作品の完成に捧げた製作陣の熱意が感じられる。
ボリュームに関してもRPGツクール発はケタ外れなほど豊富で、
- 個性的なダンジョンの数々
- 60人以上のNPC
- 耳に残る良曲ぞろいな戦闘BGM
- 充実したサブクエストとトロフィー(実績)
- 色々な意味で心をえぐるエンディング分岐
等々、全要素をやり込めばゆうに二十時間~三十時間は遊べる。
日本語化について
2021年6月現在、PLAYISMにより日本語化が進められており、2021年12月16日配信。OMOCAT氏の声明によると、当初21年5月に配信予定だったが、想定以上にボリュームが大きく、「最高のOMORIにする」ためにはもう少し時間がかかると発表された。
日本語以外にも中国語・韓国語への翻訳と他ハードウェア(PS4・XBOX One・Switch)への移植も計画されている。
2021年12月16日、Steamにてついに日本語版が発売された。
早くもその作風の虜になったプレイヤーも多く、着実にファンを増やしている
ストーリー
主人公オモリは"ホワイトスペース"で暮らしている少年。壁がなく肌寒い床と(どこにあるのか分からない)天井から垂れ下がる黒い電球だけのほぼ何もない真っ白な空間だが、毛布とノートPC、ティッシュ箱にスケッチブック、そして猫と必要なものはそろっているため不自由はしなかった。
そんな彼も「いつか訪れるかもしれない誰かとの出会い」に期待を膨らましながら過ごしていたが、かすかに「かつてとても大切な友達がいた」ことを思い出し、自分の記憶と世界の秘密を解き明かすため、奇妙で夢のような精神世界へと冒険の旅に出るのであった。
戦闘システム
戦闘はRPGの鉄板であるターン制のバトル。
ステータスはハート(HP),ジュース(MP),攻撃,防御,素早さ,幸運、命中率の6つ。
コマンドはこうげき(攻撃)、スキル(ワザ)、おやつ(回復アイテム)、おもちゃ(その他アイテム)
また、敵の攻撃を受けることで溜まるエンゲージを消費して味方との連携を行う「畳み掛け」のサブコマンドがある。
感情バトル
本作の特徴として、敵味方に「感情」の概念が存在することがあげられる。
感情は味方・敵の行動やアイテムによって変化し、ステータス変化や感情による3すくみの相性が勝負を左右し、キャラクターによっては2段階・3段階に重ねがけでき、段階が進むごとにステータスも大きく変動する。
感情一覧
- ふつう
いつもの表情。能力・相性変化は特になし。
- 喜び(にこにこ⇒るんるん⇒さいこ~)
ハッピーな気持ちになって素早さとクリティカル率が上昇するが、命中率が下がり攻撃が外れやすくなる。
怒りに強く、悲しみに弱い。
- 悲しみ(しょんぼり⇒どんより⇒がっくり)
陰鬱な気持ちに包まれ防御力が上がるが素早さが下がる。
また、被ダメージの何割かをMPで肩代わりする。
喜びに強く、怒りに弱い。
- 怒り(いらいら⇒むかむか⇒ぷっつん)
怒りによって攻撃力が上がり、防御力は下がる。
悲しみに強く、喜びに弱い。
- 恐怖(びくびく)
味方専用。ホラーな敵や苦手なものとエンカウントした際に強制的に変化。
怖気づいて畳み掛けや一部を除くワザを使用できなくなってしまう。
- トースト(TOAST)
HPが0になって戦闘不能になった味方は、なぜかトーストになってしまう。
(TOASTがスラングで「命運尽きた」という意味になるためかと思われるが…)
そして、当然と言うべきか蘇生アイテムもジャムだったりする。
登場人物
パーティメンバー
基本的に冒険に参加するパーティは下記4人で固定。フィールドでは「タッチ」でリーダーを変更し、キャラ固有の能力を使うことが出来る。
- オモリ(OMORI)
本作の主人公であるモノクロな少年。
壁のないホワイトスペースで長い間暮らしていた。
外の世界がパステル調のカラーで彩られている中でも唯一白黒で書かれている。
ほとんど無表情だが、無感情というわけではなくバトルでは様々な感情(もとい顔芸)を披露する。
主な武器はナイフで、攻撃力と素早さがそこそこ高いほかは「4人の中では」平均的な能力。
フィールドでは邪魔な小木やクモの巣をナイフで切ることが出来る。
イメージ花はホワイトチューリップ。
- オーブリー(AUBREY)
ホワイトスペースの外にいる、ロングヘアーにリボンをつけた強かな女の子。
おとなりさんにあたるオモリには優しい…というか片想いしている節がある。
意外と力持ちで、主な武器はぬいぐるみやバット・ハンマーといった鈍器。HPと攻撃力が4人のうちで一番高い、所謂戦士タイプ。
フィールドでも大型の障害物をバットで破壊できる。
イメージ花はグラジオラス。
- ケル(KEL)
ホワイトスペースの外にいる2人の兄弟の弟側で、やたらと声がでかいやんちゃ坊主。
オーブリーとはよくケンカをするほど仲が良い。
運動神経抜群で投げ物の扱いでは右に出る者はおらず、武器もボール類。
フィールドでは遠くのスイッチや仕掛けに物をぶつけて作動させることが出来る。
バトルでは典型的なスピードタイプで、MPも高いテクニシャン。
イメージ花はサボテン。
- ヒロ(HERO)
ホワイトスペースの外にいる2人の兄弟の兄で、料理上手な長身の青年。
4人の中では最年長。パーティのまとめ役やNPCとの交渉役を担うイケメンだが、若干運動オンチなところと大の蜘蛛嫌いなところが玉にキズ。
HPと防御力が高く、料理で味方を回復させるヒーラータイプ。
イメージ花はバラ。
冒険を支えてくれる友達
- マリ(MARI)
オモリの姉。
冒険の至る所でピクニックしている、ブレザー姿の女の子。たとえ外惑星、砂漠や水中、挙句の果ては城内の罠だらけの廊下の真っただ中だろうと、お構いなしにピクニックシートを広げ、パーティメンバーの回復やセーブをしてくれる。面倒見がよく、冒険のアドバイスもしてくれる。
イメージ花はすずらん。
- バジル(BASIL)
頭に花飾りをかぶった、気弱な男の子。
ガーデニングと写真撮影が趣味。
ある時突然姿を消した彼を探すことが、冒険の目的の一つとなる。
ある意味、この作品のヒロインとも呼べる存在である。
イメージ花はひまわり。
その他
- 苗モグラ(SPROUTMOLE)
ドラクエにおけるスライムポジションのモンスター。
知能は高いが、道に迷った(と自覚した)途端に理性を失い凶暴化するというわけのわからない性質を持つ種族。
とうふが大好き。
- スイートハート(SWEETHEART)
パーティ一行の前に立ちはだかることになる、魔法少女風の超高飛車な女の子。
- なにか(SOMETHING)
冒険の途中で現れる不気味な黒い影。
なにかとオモリにまとわりつき、ときおり意味深なセリフを呟くこともあるが…?
(※ 存在自体が作中最大級のネタバレを含んでおり、彼女のイラストを検索することは物語の真相に触れていることにもなるので十分な注意が必要である)
関連イラスト
関連動画
トレイラー
2014年版
2017年版
2020年版
サウンドトラック
主題歌: 「My Time/おやすみ」
エンディング曲:「Final Ⅾuet」
「By Your Side.」
「Title」
「World's End Valentine」
「BREADY STEADY GO Extended」
関連タグ
OMORI(キャラクター) / ??? AUBREY(OMORI) KEL(OMORI) HERO(OMORI)
ゆめにっき / MOTHERシリーズ:本ゲームに影響を与えたとされており、OMOCAT氏も比較されることを好意的に見ているとのこと。
トビー・フォックス:本ゲームに楽曲を提供している。