概要
イスラーム女性(ムスリマ)が着用する薄絹地の服。「へジャブ」などと表記されることもある。
頭を覆う頭巾状の衣服が特徴。チャドルやブルカと比べて、戒律を守りつつ活動的かつ様々な気候に対応できることもあり、最もイスラム教徒に広く受け入れられている衣服である。
宗教上の理由で着用するものであることから国によっては政教分離などの観点から公での着用を禁止しており、度々論争の種などになる。
本来は男性を劣情させることを防ぐためのものだが、お洒落をしたいという女性の感情を完全に防ぐには至らず流行りの色、柄、生地などがシーズンごとにあったりする。
イランにおいては髪を一部見せてお洒落を楽しむ女性の姿は珍しいものではなく、あまりに多いので街を巡回する宗教警察も指導あるいは逮捕はほとんどせず、時折見せしめに行う程度となっている。
戒律と解釈
よくイスラム教の戒律において着用が義務付けられているとの言説を見聞きするが、これは全くの誤解であり、コーランにおいてもハディースにおいても一切言及されていない。
言及されているのは「髪の毛を隠すこと」だけであり、外部から髪の毛を直接目視することができない状態になっていれば、頭部を覆うものはヒジャーブである必要は全くなく、ツバの深い帽子や手ぬぐい、バンダナ、風呂敷など、何でも構わない。そもそも、ヒジャーブ自体が19世紀ごろ登場した比較的新しい装束であり、それまでは各地の伝統的な衣装に見られる何らかの帽子類かスカーフ類をそのまま流用していたと考えられる。
また、解釈によっては「髪の毛が風に靡いて揺れることが男の情欲を誘う」との理屈により、実際に髪の毛が覆われていなくても、島田髷やお団子ヘアーなどで硬くまとめられていれば構わないと考える人も(少数派ではあるが)いないわけではない。したがって、極論を言えば、ストレートとポニーテールがダメという、日本の管理教育に近い判断基準に落ち着いていく。
むしろ、ムスリマが好んでヒジャーブを着用する背景には、自身の宗教と信仰の証として、己の出自たる国や民族を誇りを持ってアピールすることを主目的としている場合も多々ある。そのため、リベラルな欧米社会などでは回教文化圏の女性抑圧の象徴として、ヒジャーブの着用を「女性解放」を大義名分に禁止することさえあるが、当のムスリマの立場からすれば勘違いも甚だしく、大きなお世話そのものである。
コスプレへの転用
日本のアニメや漫画における美少女の髪の毛は、ディズニーなどの他国の作品に比較して、
①髪の毛の本数がギザギザで省略され、平面的である
②基本ベタ塗りである
③ピンクや水色などの現実離れした派手な色合い
④現実の物理空間で再現することが困難な異形の髪型
が常であり、ウィッグなどで表現する場合に大きな違和感を伴う場合も多い。
こういった髪の毛を原作通りに再現する場合に、意外にもヒジャーブ、もしくはそれを流用した布類との相性が良い。
そのため、マレーシアやインドネシアなどでは、コスプレを楽しむムスリマも多く、中には法学者からのお墨付きをもらって活動しているレイヤーもいる。
近年は人気のアニメ作品が少年漫画ベースからラノベベースにシフトしていることもあり、スカートの長いキャラクターが増えている現状もあるため、数年前に比べても格段にムスリマのコスプレ趣味へのハードルが低くなっている。