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ハラール

はらーる

イスラム法で許された項目(許可)。禁止されたものは「ハラーム」という。
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概要編集

イスラム教で許されている項目。端的にはイスラム法上で食べることが許されている食材料理を指す。


本項目ではイスラム教におけるハラールとハラームについて解説する。


解説編集

「ハラール料理」という文言は、主にイスラム法の法源たるクルアーンハディース(ムハンマドの言行録)において食べる事を許可されている動物を所定の方法で屠殺・解体した肉を供しているものを言う。主にヒツジやウシ、ラクダなどの屠殺された肉がハラールとされており、屠殺する際には必ず「偉大なるアッラーの御名において(ビスミッラーヒ・アッラーフ・アクバル)」(この文句をバスマラと呼ぶ)という文句を唱えて頸動脈を切断し血抜きせねばならない。


クルアーンで食することが禁止されているもの(ハラーム)もあり、欧米などでは中世からイスラームの特徴としてブタやイノシシの肉を食する事が禁じられていることは有名であった(ユダヤ教もブタやイノシシの肉は禁じられている)。バスマラを唱えず屠殺された肉、荒野で放置されていたり崖から墜落死した動物の死骸、犬などもハラームとされている。


ハラールの規則もムスリムによっては厳格に守っているわけではなく、またハラールの基準を問題視する事は、他人の信仰に口を挟むことと同義となるため、ムスリムが自分の考えとは異なる基準のハラールを問題視することは難しい。このため、イスラム系食材が手に入りづらい日本に滞在するときですらハラールとされた物しか絶対に口にしない人や、禁忌とされる食品が入ってなければ大目に見るという人や、バスマラを唱えれば何でも食べてよいと考える人までおり、ハラールをどのように守るかはその人個人の信仰心や、その人の属する国家・社会の信仰に対する考え方次第といっても良い。


ギャンブルをするようなリベラルなイスラム教徒でも基本的に豚肉は食べないようだが、豚肉を平然と口にするムスリムも皆無ではない。また、災害時など「他に食べるものがない時」は食べても良いとされ、スマトラ沖地震の際には豚肉を食べても良いとする伝達がなされたことがある。

なお、ムスリムが多数派の地域で生まれ育った人の中には、ムスリムでなくとも、そもそも食べ慣れていないので豚肉が苦手という人も居るので注意が必要である。「豚肉も食べたがっているような『日本人に都合がいいムスリム』」像を仮定する事は、一歩間違うと「体質的に酒が飲めない相手に、無理矢理、酒を勧める」のにも似た宗教上以前に常識的にどうかと思われるハラスメントにつながりかねないので注意が必要であろう


マレーシアでは国家がNPO団体などに「ハラール認証機関」というお墨付きを出しており、この認証を受けた機関が飲食店や食品メーカーに「ハラール認証」を下ろしている。

しかし、ムスリムの間でも「ハラール認証は利権であり宗教への冒涜行為」と考える者もおり、この「ハラール認証制度」はあくまでイスラムの一派閥、一定の地域の考え方であり、すべてのムスリムがこれを基準にしているわけではないことを頭に入れておいた方がいいだろう。

また、非イスラム圏の企業が生産する「ハラール認証」とされた商品にもハラールの手順を踏んでいるか疑わしいものも混ざっているトラブルもある。

このため、ハラール認証をあまり信用していない・もしくは否定的なムスリムの中には「ハラール認証よりも原材料表示をきちんとしてくれた方がありがたい」との声もある。


酒類について編集

類については、クルアーンでは飲酒は酩酊によって理性が覆われてしまうため益よりも害が大きいとして禁止・忌避すべき行為(ハラール)として言及されている。礼拝時には酩酊した状態で行ってはならないとも書かれており、製造や販売も禁止されている。しかし、酒の種類や酩酊の定義、飲酒の量について法学者の間でも議論があり、中東では飲酒は忌避すべきとしながらも実際には葡萄酒や麦酒などの様々な種類の酒が古くから愛好され飲まれ続けていた。


近現代ではイスラーム運動の結果、改めて酩酊を引き起こす酒類全般の禁止を唱える法学者たちや運動家の活動によって飲酒を忌む風潮が一般的となった。トルコやエジプト等の西欧をモデルとした政教分離型の国家は程度の差はあれ酒類は販売されているが、サウジアラビアやイランなどのイスラーム政権を標榜する国家は基本的に酒類の製造や販売、所持については厳しい罰則が設けられている。また、歴史的には特に飲酒を伴う宴会が社会的・政治的に重要であった中央アジアなどのテュルク・モンゴル系の遊牧民のあいだでは比較的飲酒に緩和的なハナフィー派法学が支持されていた。


コーヒーも現在のような煮出した液体を飲む習慣は15世紀前後のイエメンやエジプトで流行し中東全域に広まったものだが、当初はコーヒーの作用が酩酊にあたるかどうかでハラームとすべきか否かで議論があった。しかし、かなり早い段階で有力な法学者たちのあいだでハラームにあたらないという見解が大勢を占めたため、その後の流行の下地を作った。


厳格な信者だと調味料に使われているアルコールも拒絶する場合があり、醤油を使うことにも否定的なものがいる。


解釈の多様性編集

シャリーアの立法権と司法権は神にあるが、非シャリーア法同様に解釈をし、実行するかどうかは前述の通り信者にあるので敬虔であればあるほど逐一守っているわけではない。

例えば、ヘジャブを身に纏っていない女性が実は宗教的には敬虔で禁じられている異教徒との結婚を「ありえない」と言う一方、ヘジャブを身に纏う女性が「個人の自由」と考えることも一般的ではないが存在する。外部リンク


イスラム教では最大の禁忌で多神教崇拝と比べれば他は罪の軽重があっても些末なものという考えがあり。信者同士で信仰に干渉することを禁じる。服装について自分と違う人間を非難したり、飲酒をしていないか家に押し入ることは許されていない。

また、最後の審判における評価システムは善行が高く評価される傾向にあり「礼拝したかったけどうっかり寝たり、色んな理由でできなかった」「酒を飲みたかったがやめた」という行為も善行としてカウントされるため、ガチガチな宗教生活を送らずとも天国に行けるという認識が一般的である。


そのため敬虔な信者もある程度の破戒をしてもその分善行を積めばよいと考える余地が生まれ、さらに宗派や地域、民族によって重視する点が変化していく。

若しもイスラム教徒と付き合う機会ができた場合は、ステレオタイプな信者を想定したものより各信者の基準を聞いた方がわざわざハラル認証の飲食店を探す時間が省けるなど、効率的になるだろう。

上記の通り平気で飲酒と豚肉を楽しみにして日本にやってくるイスラム教徒も多数ではないが、存在するのである。


他宗教からの配慮の困難さ編集

上記のように個人、地域、宗派によっても許容範囲は様々でありイスラム教を国教とする国家でも国によって規定が違うのが当たり前であり、異教徒からは理解やすり合わせが困難な部分も大きい。

この部分を無視して「ハラル認証のものを出せばいい」と軽率に考える向きもあり度々論争になっている。

また、これらの教義は発祥の地である中東地域の気候や昔の状況により出来上がった部分も大きく、気候や文化の違う地域や文明の力が発達した現代では理に合わない部分も多い。

例えば日本においては湿気が多く腐敗による感染症などの蔓延リスクも鑑みれば火葬の方が望ましい環境にあるが、在日ムスリムが土葬の墓地を求める運動と度々軋轢となっている。


また、日本人の一部運動家がハラルの温度差に対する理解不足や他宗教信者とのバランスを考えず、「公立学校でのハラル給食」などを企画してムスリムに寄り添ったつもりになることでトラブルや論争が起きることも多い。

非イスラム地域に移住して育児をするムスリムだと、子供の世代が現地の風習で育った友人と一緒に食事などを楽しみたい時に親世代との衝突が起こる場合もあり、ムスリム親が信仰に従わない我が子に虐待を行うトラブルも発生している。

(参照、イスラム圏出身の外国人を父に持つライターのスオミアッキ氏が語る親との軋轢の体験談


参照編集

日本ムスリム協会

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