箱根登山鉄道
はこねとざんてつどう
概要
小田急電鉄の子会社である。
通常の電化された鉄道線(箱根登山電車)と鋼索線(箱根登山ケーブルカー)のほか、グループ会社の箱根登山バスがバス事業を行っている。
鉄道線は通常のレールと車両のみを用いる「粘着式鉄道」としては日本で最も急な勾配(80パーミル)。同社車両の3両編成であれば編成の両端で高低差が3,6mにもなる。
系列の路線バスは静岡県内でも走っていたが、箱根へ行く路線を除いて東海バスへ車両ごと譲渡。
その際の車両は塗装はそのままで社名だけ書き換えられた。
かつては国府津駅前から箱根湯本駅までの軌道線路面電車があったが、東海道本線の新線開通や小田原駅~箱根湯本の鉄道線への変更などにより廃止(1956年)になっている。
2019年10月の台風19号で甚大な被害を受け、鉄橋が流出するなどの事態になった。
24日に比較的被害軽微だった小田原~箱根湯本間は復旧し、2020年7月23日に箱根湯本~強羅駅間の運転を再開させた。
路線
小田原市小田原駅と箱根町強羅駅を結ぶ。全線単線区間。
箱根湯本までは現在小田急電鉄の車両のみで運用されている区間で、特急ロマンスカーも乗り入れている。
箱根湯本以降が本格的な山岳路線となり、自社の2、3両の短い編成の車両のみで運行。
途中スイッチバックが数カ所存在し、停車のたびに運転士と車掌がホームを歩いて交代する。
鉄道線の車両
以下は2016年現在箱根湯本~強羅間で乗客運用にあたっている車両である(予定も含む) 。
小田急1000形の一部が箱根登山鉄道の車両のカラーリングに合わせた赤系のデザインに塗装されて運用されている。
モハ1形(101~)
湯本~強羅の開通に備えてアメリカ合衆国から基礎部分を輸入した日本国内で組み立てられた車両。
2020年現在、104号-106号の1編成2両が運用されている。
片運転台の車両による2両編成で、多客時はモハ2形1両を増結して運用される。
2019年7月に最後まで釣掛式で残った103号-107号が廃車された。
モハ2形(108~)
スイスから輸入した電車を、車体を乗せ換えた108~110と、足回りや機械だけ輸入したものに後から鋼製車体を乗せた111・112とした。
2016年現在2両が運用されている。
両運転台車両であり、基本2両編成を組むか1両をモハ1形の編成に連結して運用されることもある。
モハ1形共々現在では貴重(?)な非冷房車。
1000形(ベルニナ号)
1981年に新製された車両で、「ベルニナ号」の愛称がつけられている。
元々は2両編成車両であったが、2004年の改造時に冷房電源供給のため2000形の中間車2200形を組み込み3両編成に組み替えられた。
現在2編成が運用中である。
2000形(サンモリッツ号)
1989年から導入された車両で、「サンモリッツ号」の愛称がつけられている。
当初は2両編成であったが、1993年に中間車2200形が追加されて3両編成になり、さらに2004年に1000形に中間車2200形を挿入し組み替えたため、2編成が2両編成、1編成が3両編成で運用されている。3000形と連結可能。
3000形・3100形(アレグラ号)
3000形は2014年11月より営業運転を開始した。VVVFインバーター制御の両運転台車。
2両が在籍し、3001号車と3002号車を連結して2両で運用するか、2000形2両編成、あるいは3100形と連結して3両で運用する。
3100形は2017年5月より営業運転開始の2両固定編成で、VVVFインバーター制御の片運転台車。
片運転台になったことで連結部分も展望スペースとした。
鉄道線駅一覧
駅番号 | 駅名 | 乗り換えや説明など。 |
---|---|---|
OH47 | 小田原 | 箱根登山鉄道線の始発駅。小田急線と同じ改札口を共有している。小田原線、東海道本線、伊豆箱根鉄道大雄山線乗り換え。小田原市街を通って箱根方面へ行くバスも出ている。 |
OH48 | 箱根板橋 | 往時の木造駅舎が今なお現役で使用されている。駅舎と反対側に使用されていないホームがあるが、これは強羅方面の車両が箱根登山鉄道の車両の場合、進行方向右側のホームと車両の間が30cm程空いていたため対策として左側にホームを新設したためである。後述の箱根湯本での分断により不要となったため現在は閉鎖されている。 |
OH49 | 風祭 | 2007年までは、ホームが箱根登山鉄道の車両用の長さしかなかったため、小田急車両の停車時は駅員・車掌が非常用ドアコックで箱根湯本寄り1号車のドアを手動で開閉する光景が見られた。現在は20m車4両分のホームが用意されている。 |
OH50 | 入生田 | 後述の通り、入生田から箱根湯本間は現在でも3線軌条が残されている。 |
OH51 | 箱根湯本 | 小田急線乗り入れ列車の終着駅。箱根登山鉄道の車両はこの駅より強羅以遠での運行となる。 |
OH51 | 箱根湯本 | 箱根登山鉄道の車両はこの駅が始発となる。駅を出た直後から80パーミルの急勾配が始まり、車窓から温泉街のビル群が見えるため、急勾配の度合いがわかりやすくなっている。箱根の各地へのバスと、湯本温泉の送迎バスも出ている。 |
OH52 | 塔ノ沢 | 両側をトンネルに挟まれた駅で、ホームに銭洗弁天を祭る祠があることでも有名。この駅を出たすぐのトンネルを抜けると有名な出山橋梁となる。塔之澤(塔ノ沢)の集落からは自動車が通れない山道を登った先にあるため、利用者は少ない。 |
出山信号場 | 本路線の有名な撮影ポイントである出山橋梁を見下ろす位置にある信号場。スイッチバック用の停車場なので乗客の乗り降りは出来ない。 | |
OH53 | 大平台 | 大平台の集落の中にある。スイッチバック用の施設を持つ駅で、スイッチバックの光景をホームから観察できる唯一の駅である。 |
上大平台信号場 | 大平台の集落の上端近くにある。スイッチバック用の停車場なので乗客の乗り降りは出来ない。 | |
仙人台信号場 | 列車交換用の信号場(スイッチバック用ではない)。元々駅として使われていたという説も有るが詳細不明。 | |
OH54 | 宮ノ下 | 宮ノ下の集落の上にあり、集落へは坂を下りていく。明治開業の和洋折衷建築が有名な富士屋ホテルの最寄り駅である。 |
OH55 | 小涌谷 | この駅の近くにある国道1号の踏切で、箱根駅伝の際に選手の通過を優先して電車を停止させる光景が有名。元箱根・箱根町方面へのバス停が駅のすぐ近くにあるほか、小涌谷温泉とその中心にある箱根小涌園(温泉施設ユネッサンで知られる)は当駅が最寄り駅。 |
OH56 | 彫刻の森 | 元々は「二ノ平」という駅名であったが、1972年の箱根彫刻の森美術館の開館とともに駅名が改められた。 |
OH57 | 強羅 | 箱根登山鉄道の鉄道線の終着駅であり、ケーブルカーへの乗り換え駅。標高は553m。駅舎は関東の駅百選に選ばれている。 |
箱根湯本での運行形態分断について
箱根登山電車と小田急線の線路の幅が異なるため、かつては小田原と箱根湯本間は乗り入れのためにレースを3本にする三線軌条であった。
2006年に小田原~入生田間で3線軌条が廃止されて標準軌に対応する線路が取り除かれたため、全線を直通する列車は物理的に不可能となった。
ただし車庫が入生田にあるため、回送列車のみであるが入生田~箱根湯本間を3線軌条を使用して箱根登山鉄道の車両が今でも走行する。