概要
「和」をモチーフとして取り入れた異色の仮面ライダーとして話題となった平成ライダー第6作『仮面ライダー響鬼』だったが、中盤に入った巻ノ三十をもってプロデューサーをはじめとした製作スタッフを交代し、大幅に路線変更が行われることとなった。
大規模な路線変更自体が平成ライダーでは初の事態であったが、特にチーフプロデューサーの髙寺成紀が降任(後に退社)した事が話題となった。一般的にはプロデューサー交代として知られているが、実際のところは後述するようにスタッフをほぼ全どっかえしてしまっている。
テコ入れはともかくとして製作統括者であるチーフプロデューサーの更迭は長い日本の特撮の歴史の中でも異例の出来事であった。
交代したスタッフ、およびテコ入れの内容は以下の通り。
- チーフプロデューサーを髙寺成紀から白倉伸一郎(現東映執行役員)に。白倉氏が新しいスタッフ集めに奔走する事となった。
- シリーズ構成をきだつよしから井上敏樹と米村正二に。
- 撮影監督のローテーションに鈴村展弘と田村直己が参加。
- 戦闘シーンの大幅増加。フルCGを使った巨大魔化魍を極力減らし、等身大怪人との戦いを増やす。
- メインキャラクターに桐矢京介を追加。さらに安達明日夢がヒビキに弟子入りするなど人間関係の整理。
- 山中や遠方でのロケを中止、もしくは廃止に。
この路線変更により、ファンの中で「30話以前の雰囲気のままが良かった」等の前期響鬼派と「30話以前より面白い」といった二つの派閥に分かれてしまい、商品化リクエストサイト「たのみこむ」で路線変更前のスタッフ復帰を求める嘆願が行われたほか、同時に劇場版の公式ブログにスタッフ・キャストに対する誹謗中傷を書き込むという迷惑行為に及ぶ者も現れた。現在でも「前期(後期)の響鬼が好き」という具合に、前期・後期がまるで別作品の様に語られる事も多い。
一方で、ストーリーのテーマに関しては路線変更後もなるべく維持が続けられるよう努力がなされており、この点だけは着き通した点は難色を示した方にも評価されている。
どうしてこうなった
こうなった原因は現在でもよくわかっていない。ネット上で議論されたものとして、以下のようなものがある。
- 細部まで妥協せずに作り込むという高寺Pの悪癖が出て、労力・予算・時間を好きなように注ぎ込んで趣味を追求するという高寺Pの悪癖が出て遠方へのロケなど資金や時間のかかる方法を多用した結果、製作体制が崩壊した。
- 玩具売り上げの低迷
- 製作体制崩壊と商業的失敗を受け、製作側から改善の要求が出されたが拒否したため。
一番目の製作側崩壊については後に出版された書籍でのインタビューにて高寺・白倉両プロデューサー共に認めている。また井上敏樹氏に関しては物語の方向性を守った事、汚れ仕事であることを承知で請け負ってくれた事もあり両プロデューサーから非常に感謝されてる。
松田賢二氏の証言
2015年に高寺前プロデューサーがMCを担当するラジオ番組「怪獣ラジオ」にてザンキ役の松田賢二がゲスト出演した際に、この騒動についてほのめかす発言をしていた。
要約すると
- 三つ子の魂百までということわざがあるように、小さいころ大人に見せられた価値観は大人になっても残ってしまう。そんな多感な時期に人間同士がエゴをむき出しにして醜く争うものを刷り込むのはどうかと思う。仮面ライダーとは「将来こうなりたいと思う大人の見本」であり、自分も父となった現在当時よりももっと強く子供に見せる番組に対してそう感じる。
- 井上敏樹氏は後半の路線変更脚本を不服としており、「仕事だし会社の命令だから」として嫌々ながら脚本を書いていた。井上氏としては前半の従来の東映製子供向け番組の枠を打ち破ろうとしていた高寺P率いる響鬼前半製作陣のマンネリ打破の意欲を支持しており、作風を変えろ、いつも通りに戻せと圧力をかけられながらも出来るだけ抵抗して響鬼らしさを変えすぎないように、いつもの平成ライダーになるべく戻らないように抵抗していた。
- 出演していた俳優陣も後半になってから士気が下がったり内容に納得がいかず抗議や衝突も見られた。しかし出演者の不満を解消するために井上氏の真意を聞かされて事情を説明されたのもあり、だからこそ現場ががんばって作品の質を落とさないよう演技でがんばるしかないと納得させ使命感と現場の団結に変わっていった。